「おひとりさま」という言葉は、2005年頃からテレビ、新聞、雑誌などでよく用いられるようになり、広く定着しています。近年では、結婚されなかったり、晩婚だったことで子どもを持たない方に加え、配偶者に先立たれてお一人になられる方や、子どもや親族がいてもお一人で暮らしている方も含めて、「おひとりさま」と呼ばれることも増えてきました。
「おひとりさま」という言葉自体はよく知られていますが、おひとりさまの実際のお困りごとや、どのような準備をすべきなのかについては、あまり知られていないように思います。本記事では、実際におひとりさまからよくお受けするご相談をもとに、おひとりさまのお困りごとと対策を、おひとりさま向けサポートサービスの専門家が解説します。(全5回の連載です。)
ご相談①「独身なので終活を早めに始めたい」
ご両親の病気や逝去、ご自身の病気、定年退職などをきっかけに、そろそろ何がしかの準備をしなければならないのでは、という相談を多くいただきます。
「終活」という言葉も、「おひとりさま」と同じく広く定着しつつある言葉ですが、こちらも人生の終わりに向けて準備をする活動のこと、というところまでは知っていても、具体的にどんなことを指しているのかはあまり知られていません。
「終活」にどこまでの物事が含まれるのかは、明確ではない部分もありますが、大まかには、主に下記の4つの準備に分けることができます。
- 医療やケア、老後の過ごし方を考えること
- お住まいや身の回りの物を整理すること
- お葬式、お墓の準備をすること
- 財産の整理や相続の準備をすること
終活と一言で言っても、生前から死後までの広い範囲のことを考える必要があると知り、多くの方が驚かれます。早すぎるということはありませんので、少しずつ考えていくことをおすすめしています。
独身の方の場合、両親が亡くなられたり、兄弟姉妹が遠方にお住まいだったりすると、ご自身の希望を予め伝えておき、何かあったときにその希望を実現してもらうということが難しい場合が多く、お困りごとの根本になっています。一生懸命歩んできた人生の後半にも、ご自身の希望を叶えられるように、きちんとした形で意思を残しておくことを、私たちはおすすめしています。次の章で、その具体的な方法について解説します。
ご相談②「一人暮らしで体調が思わしくないが、親族には負担をかけたくない」
日本社会の高齢化が進むなかで、老後の生活のサポートの方法も変わってきています。少し前であれば家族や親族に在宅で老後の面倒を見てもらうのが当たり前でしたが、それが難しい状況である方や、望まない方も増えてきています。親族との関係が良いだけに、できる限り負担をかけたくないという思いがありながら、それを解決する方法がわからないという相談もよくお受けします。
元気な間は特に困ることのなかったおひとりさまも、年齢を重ねると、体調を崩す方や物忘れが始まる方も多くなります。また、身体が思うように動かせなくなるにつれて、親族間のお付き合い、地域社会や趣味のコミュニティでの活動、友人との交流も減りがちになり、孤独感や疎外感から助けを求めることが難しくなってしまうケースも散見されます。
だからこそ、できれば困ったことが起こる前に(もちろん困ったことが起こってからでも)、できるだけ早い段階でおひとりさま向けのサポートサービスを取り扱っている会社や、士業グループ等の専門家へ相談することが重要です。
もし、こちらの記事をご覧になっているあなたが、下記のうちひとつでも当てはまるお困りごとがあれば、現段階でのご相談をおすすめします。
(1)最近体調が思わしくない
(2)物忘れが増えてきた、外に出たくないと思うことが増えた
(3)入院を予定しているが、身元保証人がいない
(4)将来はシニア向け住宅や施設を探し、住み替えも検討したい
(5)両親が亡くなり、他に交流のある親族がいない/近くに住んでいない
(6)家族・親族と不仲である
(7)死後の手続きをしてくれる人がいないかもしれない
(8)財産は特定の人に渡したい、あるいは渡したくない人がいる
上記のうち、(1)(2)の体調面については、見守りサービスを利用していただくことで、信頼できる方にあなたの状況を見てもらい続けることができるため、病院の受診や介護認定などの適切な支援につながりやすくなります。
(2)の物忘れが進み、認知症等を発症した場合に備えては、士業などの専門家との間で任意後見契約を締結しておくことで、専門家が財産を管理し、希望する生活の実現のためにあなたをサポートします。
(3)については、病院や施設への入院・入居には身元保証人が必要ですが、保証人を任せられる親族はおらず、金銭も絡むので友人に任せるのも気が引けるということで、悩まれる方が多いところです。このような場合には、身元保証会社などと身元保証契約を締結することで、親族の代わりに身元保証人を務めてもらうことが可能になります。
(4)のシニア向け住宅や施設への住み替えのサポートも、シニア向け住宅や施設を探すこと、ご自宅の売却や引っ越し、入居後の各手続きに至るまで、一緒に行ってくれるところも少なくありません。
(5)~(8)は、親族関係にお悩みをお持ちの方にとっては考えたくないと仰る方も多いのですが、葬儀やお墓への納骨、遺品の整理などの死後の手続きについては死後事務委任契約によって専門家に代行してもらうことができ、遺産については遺言書の作成によって、あなたの生涯を通して築いてこられた財産の行先について、希望を遺すことができます。 そして、これらの契約やサービスを一か所でまとめて受けている会社や専門家も現在では多数あります。
専門家に依頼される際には、ご相談例①で説明したとおり、
- 医療やケア、老後の過ごし方を考えること
- お住まいや身の回りの物を整理すること
- お葬式、お墓の準備をすること
- 財産の整理や相続の準備をすること
について、専門家に希望をしっかり伝えて、これらの希望を叶えられる詳細な契約書を作成することが大切です。元気なときから少しずつ考えをまとめはじめ、専門家に相談しながら、自分の受けたいサポートを提供してもらえるかどうかを判断して依頼をすることが理想的です。
「おひとりさま」という言葉が使われ始めて約20年、「終活」という言葉が使われ始めて約15年。この言葉を使い始めた方々が、今まさに年齢を重ねてきているため、おひとりさまをサポートするサービスの歴史はまだ長いとは言えません。似たような名前のサービスでも、サービス内容が大きく異なることもあるため、
- 自分の希望を、いつどのようにして実現してくれるのか
- 料金はいつ、どのくらいかかるのか
などをしっかりと理解して契約することが大切です。
ご相談③「配偶者亡き後の自分、自分亡き後の配偶者が心配です」
特にお子様のいらっしゃらないご夫妻の場合、伴侶に先立たれることの不安や、先立たれた後の喪失感や生活のお悩み、親族との関係についてご相談にいらっしゃる方が多いです。
ご相談①②との違いは、おひとりさまになるという意識を持つことがあまりなく早い段階から対策を考え始めるきっかけが少ないため、年齢を重ねてから突然ひとりになってしまい、お困りごとが顕著になってから準備を始めざるをえない方が多いという点です。
できるならば、ご夫婦で暮らしていらっしゃるときから、二人で話し合いながら冒頭の希望について考え始めておくことをおすすめしています。配偶者亡き後の不安を持つ方にとっては、二人の希望をすり合わせておくことは不安の解消にも役に立ちます。
そうでなかった場合でも、専門家に頼るという選択肢は持っておいて損はありません。お子様のいらっしゃらないご夫妻の場合、例えば夫が先に亡くなり、妻が遺された場合、夫に兄弟姉妹がいると、遺言がない場合は、妻と亡夫の兄弟姉妹で遺産の分け方について合意をした上で、遺産の相続をしなければなりません。
兄弟姉妹が亡くなっている場合も、亡くなっている兄弟姉妹の子である甥姪がいれば、同じように合意が必要です。遺言さえあれば、合意を得るための労力やお金をかけずに、配偶者が単独で相続をすることもできたとお伝えすると、遺言を書いておけばよかったと深く後悔する方が多いです。
相続のみでも非常に苦労される方が多いため、色々と考えをまとめることはまだできなくても、遺言だけでもまずは書いておくことは、配偶者がいて、今はご自身がおひとりさまになることより配偶者のことが心配という方にこそ、特におすすめできることです。
おわりに
終活については、一人で深く考え込んでしまうと暗い気持ちになりがちです。元気なときから、将来の希望を叶えるために考え始めることが大切だと私たちは考えています。ぜひ、実践してみてください。
クレディセゾングループが提供する、おひとりさま総合支援サービス「ひとりのミカタ」は、入院や高齢者施設入居時の「身元保証」、もしものときの「緊急連絡先」、ご逝去後の「エンディングサポート(死後事務手続き)」など、おひとりさまの毎日の暮らしや終活のさまざまなお悩みごとを総合的に支援するサービスです。
お問い合わせいただいた方に、エンディングメモ付きサービス資料を進呈中!
第2回の記事はこちら