保険は一度加入すればそれで良いわけではなく、必要な保障を過不足なく維持するために、ライフステージや家族構成の変化に合わせて、加入している保険の種類や保障内容を見直すことが重要です。本記事では、「40代」に焦点を当てて、保険の見直しのポイントについて1級ファイナンシャル・プランニング技能士の川淵ゆかり氏が解説します。
40代夫婦の生活の変化
夫婦も40代になってくると、家計支出が増えてきます。人生の三大資金というのをご存じでしょうか?
以下3つのことを指します。40代はこの三大資金が家計に影響を与える世代になります。
- 教育資金
- 老後資金
- 住宅資金
幼稚園~高校卒業までにかかる学習費
子どもが中学・高校・大学への進学時期で、入学・進学費用や受験費用のほかに塾や家庭教師といったお金もかかってくる家庭もあります。
文部科学省が隔年で行っている令和3年度の「学習費総額」は,以下のとおりとなりました。
公立幼稚園16万5,126円(前回22万3,647円)
私立幼稚園30万8,909円(前回52万7,916円)
公立小学校35万2,566円(前回32万1,281円)
私立小学校166万6,949円(前回159万8,691円)
公立中学校53万8,799円(前回48万8,397円)
私立中学校143万6,353円(前回140万6,433円)
公立高等学校(全日制)51万2,971円(前回45万7,380円)
私立高等学校(全日制)105万4,444円(前回96万9,911円)
参照元:文部科学省|報道発表 令和3年度子供の学習費調査の結果を公表します
老後資金の準備で圧がかかる住宅ローン返済
老後資金についてもそろそろ考え出さないといけません。ひと昔前に比べると、退職金や年金の額も減ってきているだけでなく、低金利の影響もあり、早めの準備が必要になりました。
「老後2,000万円問題」という言葉も出てきましたが、たとえば、2,000万円を25年で用意しようとすると、年利率3%で積み立てていっても年間54万円(月にすると4万5,000円)が必要になってくるのです。
そして、この積み立て分の支出が増加することで、住宅ローンの返済にも負担を感じるようになります。30代の余裕のある時に住まいを購入して住宅ローンを組む家庭は多いのですが、支出が増えてくると思っていたようには住宅ローンの繰り上げ返済もできなくなってきます。
もちろん、支出の増加に対して収入が増えれば良いのですが、景気の低迷が長引くなか、そう簡単ではありません。さらにここ数年は食料品や光熱費の高騰も家計にダメージを与えています。
「繰り上げ返済をして定年退職までに完済すればいいや」と思い予算オーバー気味の住まいを購入したご家庭のなかには、思っていたように繰り上げ返済ができず、老後に住宅ローンが残ってしまうケースもあります。
保険証券を確認!40代で見直したい保険
さて、結婚したときに入った保険がそのままになっている、というご家庭も多いものですが、保険を見直すことで毎月の支出を減らしたり、将来の支出の増加を抑えたりすることも可能です。
保険に加入したあとは、「どんな保険に入っていたかよく覚えていない」という方もいらっしゃいますので、一度保険証券を確認してみるのも良いでしょう。加入しているからなんとなく安心できる、という考え方は要注意です。以下のポイントをもとにご自身の保険証券で加入中の保障内容を確認してみてください。
「保険の型」をチェック
若いときに「安いから」という理由で入った死亡保険などの更新型の定期保険は、若いころは保険料が安くすみますが、こうしたものは更新の都度、保険料が上がっていきます。
30代に加入した10年更新型の保険だと、40代で更新を迎え保険料がアップしてしまうのです。放っておくとさらに10年後には保険料がさらにアップしてしまいますから、子どもの成長や独立時期に合わせて保障が逓減していく「収入保障保険」などを検討しても良いでしょう。
意外と盲点になりがちな「学資保険」
また、学資保険にも注意が必要です。金利が低い時期には保険料は高くなってしまうので、学資保険のような積立型の保険は長期間保険料を払い続けた割には満期時の受取金はほとんど利益が見込めませんし、保険によっては元本割れになることもあります。
さらに学資保険だけでは大学への進学資金が不足するケースも多いので、保険以外の方法も含めて教育資金作りを見直したほうが良いでしょう。
高額療養費制度があるから安心、ではない!? 「医療費」を考える際の注意点
最近は「高額療養費制度があるから医療保険は不要」と考える方もいるようです。しかし、病気やケガをしたときにかかる費用には、本制度だけではカバーができない部分があります。
たとえば、入院をした場合について考えてみましょう。入院にかかる費用は治療費だけとは限りません。差額ベッド代や食事代なども必要になりますが、こういった費用は本制度の支給対象ではありませんので、全額自己負担となります。
また、高額療養費制度は1ヵ月にかかる治療費について上限を設ける制度になるため、月をまたいで支払った治療費については、それぞれの月ごとに、上限額までは自己負担となってしまいます。
なお、本制度の自己負担額の計算では、入院と外来は別々に計算されますし、医療機関ごとにも別計算となります。そのため、ひと月のあいだに外来や入院、転院があると、別々の計算になってしまい、大きな支出になることもあります。
さらに先進医療の技術料も対象外です。陽子線治療や重粒子線治療などは300万円を超えてしまうので大変です。こういった先進医療には医療保険に「先進医療特約」を付けることでカバーすることができます。
入院すると自己負担が必要になるだけでなく、仕事を休むことで収入にも影響が出る場合があります。入院経験がある人の直近の入院における自己負担費用と、逸失した収入の総額は下記のグラフのようになっています。「10~20万円未満」が32.0%、「5~10万円未満」が23.3%、「20~30万円未満」が13.7%となっており、平均額は26万8,000円となっています。年齢が高くなるにつれて入院日数も延びてくるため、40代であれば最低限の医療保険には加入しておくほうが良いでしょう。
出典:生命保険文化センター|2022(令和4)年度生活保障に関する調査《速報版》
保険の見直しに併せて資産形成も考える
日本は超低金利が長く続いてきましたが、今後、金利が上昇してくるのであれば保険料が下がる可能性は高まります。しかし、まだまだ超低金利により保険料は高いといえるため、保険や定期預金等を活用して教育資金や老後資金を準備しようとしても思ったように増やしていくことはできません。
保険の見直しで家計に余裕ができたり、資産作りの方法を見直したりすることで、将来の家計にゆとりを生み出すことも可能です。ご夫婦で一度保険の見直しや今後の資産形成について考えてみてください。