お墓参りに行くとき、「何を持っていけばいいの?」「どんな服装で行けばいいの?」と迷うこともあるのではないでしょうか。基本的には、お墓参りは手ぶらで行っても構いませんし、服装にも決まりはありません。しかし、マナーやタブーはあるため、押さえておくと安心です。このコラムでは、お墓参りの服装、お供え、日時、掃除方法などについてのマナーやタブーを解説します。お墓参りに不安がある方は、ぜひ参考にしてください。
この記事を読んでわかること
- お墓参りに行ってはいけない日はなく、服装に決まりはなく、手ぶらでも構わない
- 年末年始や友引、仏滅のお墓参りを避ける方がいる
- お墓参りにお供えを用意するときは線香・ろうそく・花・水・飲食物を準備する
- お墓参りは華美な服装や露出の多い服を避ける
お墓参りの意義とは?
仏教や神道においてのお墓参りの意義は、主に次の2つです。
1つは、先祖や故人を弔い、冥福を祈ることです。「どうか安らかに」という思いを込めて祈ります。在りし日の故人との思い出を思い浮かべながら合掌する方もいます。
もう1つは、故人の遺した家族が元気で過ごしていることに感謝し、報告することです。「おかげさまで元気に暮らしています」「孫がこんなに大きくなりました」といった感謝の思いを込めて祈ります。また、進学や成人、就職などの節目に、お墓へ報告のお参りをする方も多いです。
キリスト教については若干の違いがあります。キリスト教徒が祈りを捧げるのは、故人や先祖ではなく神に対してです。キリスト教徒のお墓参りでは、神に対し「どうか故人に安らかな眠りを」と祈り、家族が健やかに過ごせていることを神に感謝します。
お墓参りの日時に関するマナー
多くの人がお墓参りに行くタイミングとして、以下があります。
- 祥月命日
故人の亡くなった月日のことです。
- 月命日
月にかかわらず、故人の亡くなった日にちを指します。例えば9月14日に亡くなったなら、毎月14日が月命日となります。
- お盆
毎年、8月13日から16日がお盆です。地域によっては1ヵ月繰り上がることがあります。
- お彼岸
春分の日を中間日とした7日間と、秋分の日を中間日とした7日間です。
- 年末年始
- 法要時
また、日にちにかかわらず、結婚や出産といった人生の節目に報告のためお墓参りをするケースもあります。基本的に、お墓参りの時期や頻度に決まりはなく、いつ行っても構いません。
ただし、いくつかマナーやタブーがあるため、押さえておくと安心です。
お墓参りにふさわしい時間とは?
お墓参りは日中、暗くならないうちに済ませるのが良いでしょう。手元や足元が明るいため掃除がしやすく、ケガをする心配がありません。
以前は「午後にお墓参りをするのは良くない」とされていました。他の用事を済ませた後にお墓参りをするのは、お墓参りを後回しにするようで、先祖や故人に失礼と考えられていたからです。
しかし、現代では、午前中にお墓参りができる方ばかりではありません。特に、実家から独立したなどの理由でお墓から遠く離れて暮らしている方にとって、午前中のお墓参りは難しいでしょう。そのため、最近ではこの言い伝えを気にする方は少なくなってきました。
また、かつては「夕方や夜にお墓参りをすると霊がついてくる」という言い伝えがありました。夕方や夜にお墓参りへ行くと、辺りが暗いため危険であるという戒めも含まれていたと考えられます。基本的には明るい日中に行くべきという点を押さえておけば、言い伝えを気にしすぎる必要はありません。
お墓参りに行ってはいけない日とは?
お墓参りは、基本的にはいつ行っても構いません。しかし、以下のような日取りを気にする方もいます。
- 年末
12月29日は「二重に苦しむ」と読めることから縁起が悪いとされ、年末にはお墓に行かないという方がいます。
- 年始
おめでたい正月に、弔事を思わせるお墓へ出向くのは縁起が悪いと避ける方がいます。
- 友引
友引は「友を引く」と読めることから、お墓参りをするとあの世へ導かれてしまうと考える方がいます。
- 仏滅
仏滅は凶日と考えられていることから、お墓参りをはじめ、さまざまな用事を避ける方がいます。ただし仏滅の例外として「仏事はよろしい」とされていることから、お墓参りは問題ないという考えもあります。
自分ひとりでお墓参りをする分には、日取りを気にしなくても構いません。しかし、誰かを誘う場合は注意してください。
お墓参りに手ぶらで行くのはマナー違反?
お墓参りに手ぶらで行くのは、マナー違反にあたりません。お墓参りの目的は、先祖や故人を偲んで手を合わせること、日頃の感謝を伝えることです。「お墓参りをしたい」と感じた日に、ふらりと立ち寄ってお参りするだけでも構いません。
お墓参りをしたいと感じたときに「今日は何も用意がないからやめておこう」などと思い、やめてしまったとしたら、故人の供養をする機会が減ることになります。特別な理由がなくても、お供え物がなくても、祈るだけで供養になるでしょう。
ただし、以前から予定していたお墓参りに手ぶらで行くのではなく、せっかくですからお供え物を用意しましょう。お墓参りに持参するとよいものについては、次章でご説明します。
お墓参りに持参すると良いもの
お墓参りに持参するとよいものは「五供(ごくう)」と呼ばれる5つのお供え物です。
- お線香
お線香の香りは故人の食べ物であるとされています。束線香を全て焚くケースもありますが、1人につき1~3本でも構いません。
- ろうそく
先祖はろうそくの光を感じ取るといわれています。ろうそくを灯すことで、お墓参りに来たことを先祖に知らせます。
- お花
花束を1対(同じものを2束)用意します。あまりに豪華な花束はお墓の花立てに入りません。3~7本程度の花束が適切です。
- お水
新鮮な水を水鉢に入れます。水鉢に水を張ると、故人の姿が映し出されるといわれています。
- 飲食物
故人の好きだった食べ物や飲み物をお供えします。
なお、お供え物にはタブーとされるものもありますので、後ほど解説します。
お墓参りの掃除のタブー
お墓参りをするときには、いっしょにお墓掃除も行いましょう。ただし、間違った方法で掃除をすると、かえって墓石を傷めてしまうかもしれません。次の3つのタブーは避けてください。
- 墓石をずらす
- 固いブラシやタワシで磨く
- 家庭用洗剤で洗う
それぞれのタブーの理由を説明します。
墓石をずらす
墓石の内部には「カロート」と呼ばれる納骨スペースがあります。カロートまで掃除をしようとすると、墓石をずらさなければなりません。しかし墓石をずらすと、墓石が倒れてしまう危険性があります。
墓石は大変重いものです。墓石が倒れてきたらケガを負う可能性があります。大変危険なので、墓石をずらすのはやめましょう。
硬いブラシやタワシで磨く
タワシや固いブラシで墓石を磨くと、傷がついてしまう恐れがあります。柔らかいブラシやスポンジを使用してください。
墓石そのものではなく、花立てや香炉などステンレス製の小物を磨くときには、少々固いブラシでも構いません。
家庭用洗剤で洗う
墓石を家庭用洗剤で洗うと、石を傷めてしまう恐れがあります。また、すすぎ残して洗剤が墓石に付着したままになると、シミや変色に繋がるかもしれません。
墓石は水洗いをするだけでも十分ですが、汚れが目立つ場合は墓石用の洗剤を使いましょう。墓石用の洗剤は、石材店やホームセンター、インターネットの通信販売などで取り扱っています。
お墓参りで供える花のマナーとタブー
お墓に供える花は、故人の好きだった花や故人のイメージに合う色味を基調として選んで構いません。ただし、お墓参りにふさわしくない花もあります。また、花を供えるときにやってはいけないこともあるため、確認しておきましょう。
お墓参りにふさわしくない花
お墓参りにふさわしくないとされているのは、例えば以下のような花です。
- 花粉の多い花
ユリなど花粉の多い花は、落ちた花粉が墓石について汚れとなってしまうため、ふさわしくないとされています。もしどうしてもお供えしたい場合は、おしべの部分を切ります。
- トゲのある花
バラなどトゲのある花は、故人にトゲを向けてしまうことから、また殺生を思い起こさせることから、お墓参りにふさわしくないとされています。どうしてもお供えしたい場合は、トゲを切って持参します。
- 毒のある花
故人に毒を手向けてしまうことになり、また殺生を思い起こさせるため、毒のある花はタブーとされます。スイセン、ヒガンバナ、スズラン、チューリップなどです。
- 故人が亡くなったばかりのときは華やかすぎる色合いの花を避ける
一周忌までは、赤などの華やかな色合いを避けるべきという考え方があります。淡い色合いでまとめます。
タブーを知ってなお「故人が庭で育てていた」「故人が特別好きだった」などの理由でお供えしたい場合は、咎められたときに理由を説明できるようにしておくことをおすすめします。
お墓参りの花の供え方
花は、同じものを2束用意します。2つの花立てに、左右対称となるよう活けます。お墓ではなく、お参りをする側へ向けて立てましょう。
お墓参りのお供え物のマナーとタブー
お墓参りでお供えする食べ物は、基本的には故人が好きだったものを中心に選ぶのが良いでしょう。ただし、お墓にふさわしくないものが若干あります。また、お供えの際にもマナーがありますので押さえておくことが大切です。
お供え物のタブーとマナーについて解説します。
半紙の上にお供えするのがマナー
お供えする食べ物を墓石の上に直接置くのはタブーとされています。墓石が汚れてしまう原因になるためです。
お盆やお皿、半紙、懐紙(かいし)の上に載せた上でお供えしましょう。水分のあるものはとくに、半紙や懐紙ではなくお盆やお皿を使うのがおすすめです。
帰る際に持ち帰るのがマナー
お供え物を残して帰ると、カラスや猫がお墓を荒らす原因になりかねません。お墓参りをしたら、お供え物を持ち帰りましょう。持ち帰ることを想定して、ビニール袋などを用意しておくと便利です。
肉や魚など生ものを供えるのはタブー
生ものは殺生を連想させます。仏教では無益な殺生を避けるため、魚や肉などの生ものをお供えするのは避けましょう。ソーセージなどの加工品もよくないとされています。心配な方は、お菓子などを選ぶと良いでしょう。
お酒やジュースを墓石にかけるのはタブー
「故人が好きだったから」と、お酒やジュースを墓石にかけるのはタブーです。墓石が変色してしまう恐れがあります。また、墓石がべたついてしまいますし、飲料の匂いで周囲に迷惑をかけるかもしれません。
お酒やジュースは、お供えするだけにしましょう。
お墓参りの服装のマナーとタブー
お墓参りの服装に厳密なマナーやタブーはなく、季節に応じた服装で問題ありません。ただ、気をつけたいことがあります。
ここでは、服装に関して気をつけるべき点を3つご案内します。
動きやすい普段着が良い
お墓掃除をするため、スーツなどの改まった服装をわざわざ選ぶよりは、動きやすい服装を選びましょう。
ただし、ジャージなど部屋着のような服装はあまりふさわしくないため、注意が必要です。
派手な色や露出の多い服はタブー
お墓参りに、おめでたいイメージの赤や派手な色味の服装を選ぶのはやめましょう。また、露出の多いミニスカートやショートパンツも避けるのがおすすめです。
とくに夏場は露出の多い服装をしがちですが、緑の多い霊園内では虫に刺されやすくなってしまいます。薄い七分袖や長袖を着るか、薄手のカーディガンを羽織るなどの工夫で虫から肌を守ってください。
法要や大切な節目には改まった服装を
法要時のお墓参りは、法要にふさわしい服装で行きましょう。三回忌までは喪服が基本ですが、施主の考え方により平服で法事に参加してもよいとされることもあります。
平服とは、礼服でも普段着でもないおしゃれ着のことです。男性はスーツ、女性はワンピースにカーディガンやジャケットを羽織ります。弔事なので色味は地味なものを選びましょう。黒の他、紺やグレー、茶系などが適しています。
また、結婚や出産といった大切な節目にお墓へ報告に行くときも、少し改まった服装を選ぶのがおすすめです。
その他のタブー
お供え物や服装の他にも、お墓参りで気をつけたいことがあります。その他のタブーについて見ていきましょう。
ろうそくや線香の火を吹き消す
ろうそくや線香の火を吹き消すことは、先祖や故人に息を吹きかけることになるためタブーとされています。火を消すときは手で仰いだり、火消しを使ったりしてください。
他家の墓にお参りする
知らない方のお墓に立ち入り、手を合わせることは良くないとされています。お墓はいわば、先祖や故人の家です。他人の家へ勝手に出入りする行為にあたり、失礼とみなされます。
よそのお墓に立ち入るのはもちろん、隣の区画に荷物を置かせてもらうといったことも避けましょう。
「お墓参りはひとりで行ってはいけない」は本当?
以前は「お墓参りはひとりで行ってはいけない」といわれていました。ひとりでお墓参りに行くと、霊がついてくると考えられていたためです。
ただし、この言い伝えは、危険を伴うお墓参りへひとりで行くことへの戒めでもあったと考えられています。昔、墓地はあまり人の手が入らない山中にある例もたくさんありました。お墓へ行く途中でケガをしても、ひとりでは助けを呼べないため、複数でのお墓参りが推奨されていたのです。
現代の墓地は整備されており、道中が危険ということはまずありません。そのため、この言い伝えは、あまり気にしなくてもよいでしょう。
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おわりに
お墓参りのマナーについて解説しました。お墓参りはいつ行っても良く、手ぶらでお参りしても問題ありません。お墓参りは心を込めて祈ることそれ自体が大切であり、少しのマナーやタブーに気をつければ十分です。
お墓へ行ったら、まずは草むしりや墓石洗いといった掃除を行い、きれいになったお墓にお供え物をして、最後に手を合わせましょう。お供え物を持ち帰ることを忘れなければ、マナーに沿ったお墓参りができます。