退職する場合、退職日までの準備が大変と考えている方も多いと思います。しかし、実際には退職後も健康保険や雇用保険、年金の手続きなど、やるべきことが多くあります。また、住民税や健康保険料は会社が給与から徴収して支払っていましたが、退職後は自分で対処しなければなりません。住民税や国民健康保険料は、前年の年収にて支払額が算定されることにも注意が必要です。退職時に何をしなくてはならないのか理解しておくことが大切です。
このコラムでは、退職時にやるべきこと、退職時の手続きにおける注意点などを解説します。退職時・退職後のやるべきことについて詳しく知りたい方は、是非参考にしてください。
- 退職後にも大切な手続きが多い
- 住民税や健康保険料の支払など、今までは会社が手続きしていたことを自分でやる必要が出てくる
- 手続きに必要な書類は退職する際に会社が用意してくれるが、漏れが生じる可能性があるため、どのような書類が必要なのか事前に確認しておくことが重要
退職後にやるべきことは?
退職届を提出して受理されれば退職できますが、やるべきことはそれだけではありません。退職時に会社から書類を受け取る、会社に帰属するものを返すといったように、退職するとやるべきことは数多くあります。
また、退職後は社会保険や税金などの重要な公的手続きを行いますが、必要書類や手続き方法などを事前に確認しておくとスムーズに進められるでしょう。
退職後にすぐ転職する場合と、しばらくしてから転職する場合では、必要書類や手続き方法などの対応が一部異なります。ご自身がどのケースに該当するのかよく確認しておきましょう。
会社から受け取るものチェックリスト
退職時、退職後に行う手続きに必要な書類は、会社から退職時に受け取るのが一般的です。
基本的には会社の担当部署が用意してくれますが、漏れがあった場合は、後日郵送してもらうなど、退職後の手続きをスムーズに進められなくなるので、漏れがないか確認しましょう。
退職時に会社から受け取る主な書類は以下のとおりです。
- 雇用保険被保険者証
- 離職票
- 年金手帳
- 源泉徴収票
- 退職証明書
- 健康保険被保険者資格喪失確認通知書
雇用保険被保険者証や年金手帳、源泉徴収票などは、転職先に提出する必要があります。それぞれの必要書類について詳しく見ていきましょう。
雇用保険被保険者証
雇用保険被保険者証とは、労働者が雇用保険に加入した場合に発行される証明書です。転職先が雇用保険を引き継ぐ際に必要になるほか、教育訓練給付金などを申請する際にも必要になります。
離職票
離職票とは、退職した事実を証明する書類のことです。雇用保険被保険者離職票とも呼びます。会社が離職証明書と雇用保険被保険者資格喪失届を提出することで、、ハローワークが発行し、会社から後日送付されます。
離職票は雇用保険(失業保険)の受給手続きを進める際に必要です。
年金手帳
年金手帳とは、国民年金や厚生年金などの公的年金制度の加入者に対して発行される書類です。年金手帳は、会社に預けている場合が多いです。
しかし、2022年4月に年金手帳は廃止になり、その時点で会社から本人に返却された方も多いのではないでしょうか。以前は転職時に年金手帳を転職先に渡す必要がありましたが、現在はマイナンバーの確認のみで年金手帳の提出を不要としている会社も増えています。しかし、いずれにしても会社に預けている場合は年金手帳を回収する必要があるので忘れずに回収しましょう。
源泉徴収票
源泉徴収票とは、1年間の給与などの総支給額と源泉徴収した所得税額を証明するための書類です。確定申告の際や転職先が年末調整を行う際に必要となる場合があるので忘れずに受け取りましょう。通常は、最後の給与額が確定した時点で源泉徴収票は作成できますが、退職後1ヵ月程度で離職票と一緒に送られてくるのが一般的です。
退職証明書
退職証明書とは、退職したことを証明するための書類です。離職票は公的な書類なので、発行までに時間がかかります。
しかし、退職証明書は会社が独自で発行するものなので、すぐに受け取ることができます。転職先で退職証明書の提出を求められることがあるので、受け取っておきましょう。
健康保険被保険者資格喪失確認通知書
健康保険被保険者資格喪失確認通知書とは、退職によって健康保険の被保険者資格を喪失したことを証明するための書類です。国民健康保険や現在の会社の保険に任意継続加入する際に必要になります。
会社へ返却するべきものチェックリスト
退職時には以下のようなものを会社に返却しなくてはなりません。
- 健康保険被保険者証
- 会社からの支給された備品など
それぞれを詳しく見ていきましょう。
健康保険被保険者証
入社時に会社から受け取った健康保険被保険者証は、退職日までは使用できますが、退職時に会社に返却しなくてはなりません。
任意継続する場合でも返却は必要です。
健康保険被保険者証はご自身の分だけではなく、家族全員分の返却を忘れないようにしましょう。また、退職後に使用した場合、医療費負担が全額本人負担となるので注意してください。
会社からの支給された備品など
会社から支給された以下のようなものは退職時に返却しなくてはなりません。
- 備品
- 社員証
- 名刺
- 制服
- 携帯電話
- パソコン
- 業務資料
- マニュアル
返却物は会社によって異なるので、確認しておきましょう。
健康保険の手続き
健康保険は、会社員や公務員などが加入する公的な保険(社会保険)です。組合健保、協会けんぽ、各種共済組合の3種類に大きく分けられます。
退職後すぐに転職する方は健康保険証を返却して健康保険資格喪失証明書を受け取り、転職先に提出すれば1週間程度で新しい健康保険証を発行することが可能です。
転職先が決まっていない方や入社まで期間が空く方の場合は、以下の3つの公的な保険のいずれかを選択して加入します。
- 任意継続保険者制度
- 国民健康保険
- 家族の被扶養者となる
それぞれの方法を詳しく説明していきます。
任意継続保険者制度
任意継続保険者制度とは、会社の健康保険に継続して加入できる制度で、詳細は以下のとおりです。
適用条件 | 健康保険の被保険者期間が退職の日までに継続して2ヵ月以上 |
申請期限 | 退職日の翌日から20日以内 |
申請場所 | ・加入する健康保険組合 ・居住地の社会保険事務所 |
必要書類 | ・健康保険任意継続被保険者資格取得申出書 ・印鑑 |
保険料 | 従来の2倍程度 |
特徴 | ・家族を扶養に入れることも可能 ・最長2年間の制限がある |
家族を扶養に入れる場合は、家族の被扶養者届といった書類も別に必要となるので準備しましょう。
保険料に関しては、退職後は全額本人負担となるためおおよそ2倍となります。ただし、上限金額も設けられていて、多くの方が加入している協会けんぽであれば300,000円×保険料率が保険料になります。実際に保険料がいくらになるか、ご自身が加入する保険組合に確認しましょう。
国民健康保険
国民健康保険とは、各市区町村が運営する健康保険制度で、詳細は以下のとおりです。
適用条件 | 特に条件なし |
申請期限 | 退職日の翌日から14日以内 |
申請場所 | 居住地の市区町村役場 |
必要書類 | ・健康保険被保険者資格喪失証明書、離職票または退職証明書など資格喪失年月日のわかるもの ・個人番号確認書類(マイナンバーカード等) ・本人確認書類(免許証等) ・印鑑 ・申請書 |
保険料 | 自治体ごとに異なる |
特徴 | ・誰でも加入できる ・家族を扶養に入れることができない ・所得によっては保険料が高額になる |
退職日の翌日から14日以内という申請期限がありますが、14日過ぎた場合も加入できます。ただし、保険料は退職日の翌日から計算した額となるので注意しましょう。また、年収が同じであっても保険料は自治体ごとに異なりますので、ご自身のお住いの国保年金課などでご確認ください。
家族の被扶養者となる
家族が健康保険被保険者で、ご自身の年収が130万円未満の場合、家族の被扶養者になれます。
詳細は以下のとおりです。
適用条件 | 年収130万円未満 |
申請期限 | 退職後すぐ |
申請場所 | 扶養者の勤務先 |
必要書類 | ・健康保険被扶養者異動届 ・世帯全員の住民票(被保険者と別姓の場合) ・源泉徴収票 ・退職証明書または離職票のコピー ・失業保険 ・傷病手当 ・出産手当金 ・年金などの受給者は金額の分かる書類のコピー |
保険料 | なし |
特徴 | ・保険料がかからない ・期限が設けられていない ・収入制限がある |
勤務先によって適用条件が異なる場合があるため、必ず勤務先に確認しましょう。
雇用保険(失業保険)の手続き
雇用条件が「1週間の所定労働時間が20時間以上かつ雇用見込みが31日以上ある」だった場合には、退職後に雇用保険から失業手当を受給することが可能です。
ただし、転職先が決まっている方は失業手当の受給資格がありません。就職する意思がない方またはすぐに就職できない理由がある方などは対象外となるので注意しましょう。
失業手当の支給日は、退職理由が自己都合なのか会社都合なのかによって異なります。両者の違いを詳しく見ていきましょう。
会社都合の場合
会社都合とは、会社側の都合によって雇用が終了することで、詳細は以下のとおりです。
受給条件 | ・ハローワークで求職の申し込みを行い、積極的に転職活動している ・雇用保険被保険者として退職日以前1年間に最低6ヵ月以上働いた期間がある |
申請期限 | 離職票が届き次第すぐ |
申請場所 | ハローワーク |
必要書類 | ・離職票 ・個人番号確認書類(マイナンバーカード、通知カードなど) ・本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など) ・本人名義の預金通帳またはキャッシュカード ・証明写真(2枚) ・印鑑(認印) |
給付日数 | 90~330日 |
待機期間 | 7日間 |
会社都合の場合は、待機期間の7日経過後に受給開始となります。
自己都合の場合
自己都合とは、労働者側の都合によって退職することで、詳細は以下のとおりです。
受給条件 | ・ハローワークで求職の申し込みを行い、積極的に転職活動している ・雇用保険被保険者として退職日以前2年間に最低12ヵ月以上働いた期間がある |
申請期限 | 離職票が届き次第すぐ |
申請場所 | ハローワーク |
必要書類 | ・離職票 ・個人番号確認書類(マイナンバーカード、通知カードなど) ・本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など) ・本人名義の預金通帳またはキャッシュカード ・証明写真(2枚) ・印鑑(認印) |
給付日数 | 90~150日 |
待機期間 | 原則2ヵ月間の給付制限期間+7日間 |
自己都合の場合は、原則2ヵ月間の給付制限期間に待機期間の7日を加えた期間を経過後に受給開始となります。
年金の手続き
日本国内に居住する20歳以上60歳未満の方は、全員国民年金に加入しなければなりません。会社員・公務員の場合は、70歳未満で勤務日数や時間が加入条件に合致すれば、さらに厚生年金に加入します。
すぐに転職する方は、転職先で手続きを代行してくれます。しかし、まだ転職先が決まっていない方や入社が退職の翌月以降になるという方は、以下のいずれかの国民年金の切り替え手続きが必要です。
第1号被保険者へ移行
第1号被保険者へ移行するために必要な条件は以下のとおりです。
条件 | 特になし |
申請期限 | 退職後14日以内 |
申請場所 | 居住地の市区町村役場 |
必要書類 | ・基礎年金番号を確認できるもの(年金手帳、基礎年金番号通知書など) ・退職日を確認できる書類(離職票、退職証明書など) ・本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など) ・印鑑 |
保険料 | 月額16,520円(2023年) |
保険料の免除を申請する際は、失業状態であることを証明する離職票や雇用保険受給資格者証などの公的書類が必要です。
第3号被保険者へ移行
第3号被保険者へ移行するために必要な条件は以下のとおりです。
条件 | ・日本国内に居住していること(海外特例要件を満たしている方は不要) ・20歳以上60歳未満であること ・厚生年金保険に加入する配偶者(65歳以上70歳未満で老齢または退職を理由とする年金受給者は除く)に扶養されていて、原則年収が130万円未満であること |
申請期限 | 退職後5日以内 |
申請場所 | 事業所の所在地を管轄する年金事務所 |
必要書類 | ・続柄確認のための書類(被保険者の戸籍謄本、被保険者の住民票等) ・収入要件確認のための書類 |
保険料 | 不要 |
仕送りを受けている方は仕送りの事実と仕送り額を証明できる書類が必要となる可能性があります。また、内縁関係の方は内縁関係を証明するための書類が必要です。
免除の申請
失業している場合は、申請することによって年金保険料の免除も可能です。保険料の免除が認められた場合は、承認された期間も年金の受給資格期間に算入されます。
免除される額は、全額、4分の3、半額、4分の1の4種類です。詳細については居住地の市区町村役場に問い合わせてみましょう。
税金の手続き
所得税と住民税は、在職中は給与から天引きされる仕組みとなっています。しかし、退職後は税金が天引きされないので税金の手続きをしなくてはなりません。
住民税と所得税の手続きを詳しく見ていきましょう。
住民税
住民税は前年の所得を基準に課税され、6月から翌年5月にかけて支払う仕組みになります。退職した時期によって扱いが異なるので注意してください。
1~5月に退職した場合は、退職月から5月までの住民税を退職月に支払われる給与から一括して特別徴収されます。もし、退職月に支払われる給与が住民税を下回っていた場合、普通徴収にて未納分を納付しなくてはなりません。
6~12月に退職した場合は、退職までの住民税は給与からの特別徴収、退職後の住民税は普通徴収で自ら納付する必要があります。希望する方は、退職月から翌年5月までの住民税を退職月の給与から特別徴収にて納付することも可能です。
所得税
所得税は退職した年にすぐ転職するか、転職先が決まっていない・入社までに期間があるかで扱いが異なります。
退職した年にすぐ転職する方は、転職先で年末調整を受けるので、原則確定申告は必要ありません。入社時期や給与の支払い時期によっては扱いが異なる場合があるので会社に一度確認しましょう。
一方、すぐに転職しない方は、原則確定申告が必要です。確定申告では所得の金額と源泉徴収された所得税を申告しなくてはならないため、源泉徴収票が必要となります。
退職する時の手続きに関する注意点
退職時・退職後ともにやるべきことが多く、不備があるとトラブルに発展するので注意が必要です。時間が限られている中で退職後に慌てないためにも、以下の注意点を確認しておきましょう。
- 公的手続きは提出期限に注意しよう
- 重要な手続きを忘れないようにやることリストを準備しよう
公的手続きは提出期限に注意しよう
退職後の公的手続きには期限が決まっている手続きが多いです。手続きを忘れた場合は、医療負担が増える、受給できる年金額が減少するなどのデメリットが生じるので注意してください。
どこで、いつまでに、何をしなくてはならないのかを把握しておきましょう。
重要な手続きを忘れないようにやることリストを準備しよう
退職後に必要な手続きについてまとめた「やることリスト」を作成しておくと安心です。
例えば、退職時に会社から受け取る書類や会社への返却物、手続きで必要な書類、手続きする役所、期限などです。あらかじめチェックリストを作成しておけば、退職時や退職後の手続きをスムーズに進められるでしょう。
おわりに
退職するには退職届を提出するだけではなく、退職後の手続きに向けた準備を進める必要があります。
退職後に必要な手続きは多数あり、期限が決まっているものが多くあります。不備なく進めるためにも、手続きの種類、必要書類、手続きをする場所、期限などを把握して、退職後に焦ることがないように準備しておきましょう。
また、退職後は、今までは会社が半分負担していた保険料が全額自己負担になったり、前年年収から算出される住民税の支払いなどが負担となる場合もあります。退職理由が自己都合の場合、雇用保険(失業保険)の支給までに2ヵ月以上かかります。
退職する前に一時的な資金不足についても考えておきましょう。高齢になると利用できなくなるカードローンも多い中、80歳まで申込みが可能な「セゾンファンデックス かんたん安心ローン」は安心してご利用いただけます。
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