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生前からできる遺留分対策を紹介!渡したくない方や減らしたい方必見

生前からできる遺留分対策を紹介!渡したくない方や減らしたい方必見
セゾンのくらし大研究 編集部

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相続の際には「遺留分」が原因で、遺産分割方法や被相続人の思いをどこまで尊重するかなど、トラブルに発展することも多いです。納得いく形で相続人に財産を相続させるためにも、生前からできる遺留分対策についてあらかじめ知っておきましょう。

この記事では、相続の際のトラブルの一因にもなる遺留分について解説し、生前にできる対策をご紹介します。

この記事を読んでわかること

  • 遺留分は相続人に法律上確保された一定割合の最低取り分
  • 被相続人の兄弟姉妹は遺留分がなく、相続人の構成によって遺留分の計算方法は異なる
  • 遺留分を減らすために生前にできるのは、生前贈与、生命保険加入、特例の活用など
  • 相続できるものが不動産しかない場合、不動産の売却・金銭のやり取りなどによる解決策もある
相続対策サポート
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遺留分に関する基礎知識

遺留分に関する基礎知識

亡くなった方(被相続人)が遺言書を残している場合、被相続人の意思を尊重し、遺言書のとおりに遺産を分割して相続するのが原則です。しかし、法律では相続人に対し最低限の取り分である「遺留分」が定められているため、すべての遺産を特定の誰かに遺贈することは難しいでしょう。ここでは、遺留分について概要を解説します。

遺留分とは相続人に認められた相続財産の最低保障額

遺留分とは、被相続人の兄弟姉妹以外の法定相続人に認められる、相続財産の最低保証額(取り分)のことです。被相続人の財産処分の自由と相続人保護の調和が趣旨とされています。

遺留分が受け取れる相続人の範囲は?

遺留分を有する相続人は、兄弟姉妹以外の法定相続人です。具体的には、被相続人の配偶者、子、父母などの直系尊属であり(民法第1028条)、孫などの代襲相続人も含まれます。

遺留分はどうやって計算する?基礎となる財産の範囲と割合

遺留分の基礎となる財産は、以下の3つです。

  • 相続財産:被相続人が死亡した時点で有していた財産のこと(負債は控除する)
  • 遺贈:遺言によって贈与された財産のこと
  • 特定の期間に行われた生前贈与

これらの合計を、遺留分に応じて分配します。

相続人ごとの遺留分の割合は下記の表のとおりです。相続人の構成によって異なります。被相続人の父母など直系尊属のみが相続人の場合、基礎となる財産の1/3となり、それ以外は1/2です。

<相続人ごとの遺留分の割合>

相続人の構成遺留分合計の割合相続人ごとの遺留分
配偶者父母兄弟姉妹
配偶者のみ1/21/2
配偶者と子1/21/41/4
配偶者と父母1/21/31/6
配偶者と兄弟姉妹1/21/2権利なし
子のみ1/21/2
父母のみ1/31/3
兄弟姉妹のみ無し権利なし

例えば、配偶者と子の場合は子の遺留分は1/4ですが、子の人数で分割して遺留分割合を算出します。

遺留分を渡さなくていい方法は4つ

遺留分を渡さなくていい方法は4つ

遺留分を渡さなくていい方法は、以下の4つです。

【遺留分を渡さなくていい方法】

  • 相続人が遺留分を放棄した場合
  • 相続排除を申し立てて認められた場合
  • 相続欠格に当てはまる相続人がいる場合
  • 遺言書の付言事項でお願いする場合

相続人が遺留分を放棄した場合

遺留分を渡さなくていい方法のひとつが、相続人が遺留分を放棄することです。

遺留分を有する相続人は遺留分を放棄できると民法で定められており(民法第1043条第1項)、遺留分の放棄が有効に行われれば、遺留分侵害額請求はできなくなります。ただし、相続人の任意であるため、強制はできません。

被相続人の生前に遺留分の放棄を行う場合、家庭裁判所に申し立てをして許可を得る必要があります(民法第1043条第1項)。これは、遺留分は被相続人であっても簡単には奪えない権利であり、遺留分権利者の真意による放棄なのか、何らかの強要がなかったか吟味する必要があるためです。

相続廃除を申し立て認められた場合

被相続人が相続人から虐待を受けたり重大な侮辱を受けたり、その他著しい非行が相続人にあった場合に、被相続人が家庭裁判所に相続排除を申し立て、その相続人の地位を奪うことです。

相続排除を受けた相続人は、遺留分を含めた全ての相続権を失います。なお、相続排除の申し立ては、被相続人が生前または遺言書で行わなければなりません。

著しい非行の例は、以下のとおりです。

  • 被相続人に対する虐待
  • 被相続人に対する重大な侮辱
  • 被相続人の重要な財産の勝手に処分すること
  • 重大な犯罪によって有罪判決を受けたこと
  • 配偶者が、不貞行為や悪意の遺棄により、被相続人との婚姻関係を破綻させたこと

相続欠格に当てはまる相続人がいる場合

相続人が「相続欠格」(民法第891条)に該当する場合は、遺留分を含めたすべての相続権を失うことになります。該当するのは、以下のとおりです。

  • 故意に被相続人、先順位相続人、同順位相続人のいずれかの者を死亡させたり、または死亡させたりしようとしたために、刑に処されたこと
  • 被相続人が殺害されたことを知りながら、告発または告訴をしなかったこと
  • 詐欺または脅迫によって、遺言やその撤回、取り消し、変更を妨害したこと
  • 詐欺または脅迫によって遺言、または遺言を撤回、取り消し、変更させたこと
  • 被相続人の遺言書を偽造、変造、破棄、または故意に隠したこと

つまり、相続に支障をきたす犯罪行為や、不法行為を行った方の相続権を強制的に奪うことです。これらに該当する相続人は、遺留分すら受け取ることができません。

遺言書の付言事項でお願いする場合

相続人が遺留分の請求をしなければ、遺留分は受け取れません。そこで、遺言書を作成する際に、付言事項として「遺留分を請求しないでほしい」旨を記載すること、口頭で請求しないようお願いする方法があります。ただし、あくまでもお願いベースであり、法的拘束力はありません。

遺留分を減らすために生前にできること

遺留分を減らすために生前にできること

遺留分を減らすために生前にできることは、以下の5つです。

【遺留分を減らすために生前にできること】

  • 養子縁組をする
  • 他の相続人に早めに生前贈与をする
  • 生前贈与を受けた方に相続放棄をしてもらう
  • 生命保険に加入する
  • 事業継承の際は経営承継円滑化法の特例を利用する

養子縁組をする

養子縁組により子の数を増やし、子1人当たりが受け取れる遺留分を減らすことができます。子全員分の遺留分が決まっており、子の数が増えればそれぞれの子の遺留分が減るからです。

他の相続人に早めに生前贈与する

他の相続人に生前贈与を早めに生前贈与をしておくことで、遺留分を減らすことができます。

遺留分の基礎となる財産は、被相続人が相続開始時に有していた財産(遺産)に生前贈与した財産を加えた額から、債務を差し引いて算出します。

ただし、この場合の生前贈与は10年以内の特別受益に当たる相続人への生前贈与と、1年以内の相続人以外への生前贈与に限られます。亡くなる10年以上前に生前贈与を行っていれば、その生前贈与は遺留分侵害額請求の対象にはなりません。

そこで、できるだけ早いうちに生前贈与を行って遺産を減らしておくことで、遺留分を減らすことが可能です。

生前贈与を受けた方に相続放棄してもらう

生前贈与を受けた方に相続放棄してもらう

生前贈与を受けた相続人の方に相続放棄してもらうことでも、遺留分を減らすことができます。相続を放棄することで初めから相続人以外の方という扱いとなります。

ただし、遺留分の基礎となる財産を算出する際に含める生前贈与には、相続人以外への1年以内の生前贈与が含まれるため、1年は経過している必要があります。

逆にいえば、生前贈与から1年間が経過していれば、遺留分の基礎となる財産から外すことができるので、遺留分を渡したくない相続人の遺留分を減らすことが可能です。

生命保険に加入する

現金などの金融資産も遺産に含まれ、遺留分の対象ですが、金融資産を生命保険の掛金にして財産を減らすことも、遺留分を減らす対策になります。死亡保険金は、受取人の固有資産となるためです。

ただし、あまりに多額の生命保険金が一部の相続人に支払われる場合には、特別受益に該当する可能性もあります。

特別受益とは、一部の相続人だけが亡くなった方から生前贈与などで受け取った利益のことです。多額の生命保険金が特別受益とみなされれば、特別受益があることを前提に遺産分割を行い、公平に財産を分ける必要があります。

事業継承の際は経営承継円滑化法の特例を利用する

会社経営者が事業継承によって後継者に株式を譲り渡す場合、「経営承継円滑化法」における特例を活用することが、遺留分対策として有効です。

企業価値は高額になることが多いため、事業継承の目的で会社を生前贈与してしまうと、後継者は遺留分侵害額を支払うために多額の金銭を用意しなければなりません。そこで、経営承継円滑化法では「除外合意」と「固定合意」という2つの特例を設けています。

【除外合意】
後継者に対して生前贈与された会社を、遺留分計算の基礎財産から除外します。基礎財産額を下げることができ、遺留分金額を下げることが可能です。

【固定合意】
会社株式の価格を推定相続人全員の合意時の評価額で固定して、遺留分計算に含めることです。固定することで、後継者が経営努力によって高めた企業価値を他の相続人によって横取りされることを防げます。

相続できるものが不動産しかない場合はどうする?

相続できるものが不動産しかない場合はどうする?

相続できる財産が不動産しかない場合もあります。この場合の対応策は、以下のとおりです。

【相続できるものが不動産しかない場合の対応策】

  • 共有不動産にする
  • 不動産を売却し金銭を分割する
  • 不動産を分ける代わりに金銭で支払う

平成30年に相続法が改正される前は、原則として不動産の共有が行われていました。しかし、金銭的解決を望む実情に合わせ、相続法改正後は遺留分を金銭に変えることなどして解決できるようになりました。

共有不動産にする

不動産は金銭と異なり、完全に公平に切り分けることは困難です。現実的に分割できない不動産については、相続人の共有不動産にするという手段もあります。しかし、所有者が複数人になると権利関係が複雑になるのが大きなデメリットです。

例えば、遺留分を払い終えるまでは共有不動産にすることもあります。

不動産を売却し金銭を分割する

対象となる不動産を売却して金銭に変えて公平に分割する「換価分割」もひとつの方法です。

ただし、相続人全員が売却に賛成する必要があります。相続人のうちひとりだけでも反対していると不動産の処分(売却)はできない点に注意してください。

不動産を分ける代わりに金銭で支払う

複数の相続人のうちひとりが不動産を相続し、他の相続人に金銭で遺留分を支払う「代償分割」という方法もあります。被相続人と長年一緒に暮らした家を出たくない相続人がいる場合などに採りうる方法です。

ただし、他の相続人への遺留分は、その不動産を相続する方が準備しなければなりません。支払いが遅れると遅延損害金が発生する場合もあるので、注意が必要です。

遺留分対策についてわからないことは「セゾンの相続」へご相談を

相続財産が不動産しかない場合は、換価分割・代償分割などで対応するのが現実的ですが、具体的にどのように進めればよいかわからない方も多いのではないでしょうか。相続については知っておくべき法的規定や手続きも多く、場合によっては被相続人との話し合い、相続人間の話し合いを進めておく必要があるでしょう。トラブルを避けるためにも、遺留分対策はできるだけ生前に行っておくことが大切です。

セゾンの相続 相続対策サポート」では、相続対策に強い専門家と提携しておりますので、無料相談や最適なプランのご提案が可能です。遺留分対策でわからないことがある方は、ぜひ一度ご相談ください。

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おわりに 

兄弟姉妹を除く法定相続人には、相続財産の最低取り分である「遺留分」が認められていますが、遺留分が原因でもめるケースも少なくありません。トラブルを回避するためにも、どのように財産を相続させたいか、生前贈与も含めてあらかじめ準備しておくことが大切です。遺留分など相続に関して不明な点がある場合は、専門家への相談も視野に入れてみてください。

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