第二抵当権は、すでに抵当権が付いている所有不動産を活用して融資を受ける際に設定する担保物権です。追加で借り入れを行う必要性が生じた際、ひとつの不動産を担保として複数の融資を受けられる有用な仕組みですが、活用するにはメリットだけでなく、デメリットも意識する必要があります。
このコラムでは、第二抵当権を設定することによるメリットに加え、デメリットと注意点も解説します。最後まで読むことで、第二抵当権を設定して借り入れを受ける際の銀行審査のポイントや、融資を受けやすい例についても理解できますので、ぜひ参考にしてください。
- 第二抵当権を活用すると無担保ローンより高額かつ低金利で借りられる可能性がある
- 借入額や金利などの条件は第一抵当権より劣る
- 銀行系は審査が厳しいため、第二抵当権が使えることを明記している金融機関に打診することも有効
抵当権設定とは
抵当権とは、所有している不動産を担保に入れてローンを組む際に活用できる担保物権です。抵当権を設定すると、お金を借りる債務者が不動産を所有したり利用したりする権利を温存したまま、借り入れの担保として提供できます。
万が一、返済できなくなった場合は、お金を貸している債権者がその不動産の売却代金から優先的に弁済を受けられる仕組みです。抵当権者となった債権者は、抵当権を実行して不動産を競売にかけ、売却代金を弁済に充てます。
抵当権は、順位を設定できる権利であることが特徴です。最初に設定された抵当権を「第一抵当権」と呼び、次に設定される抵当権を「第二抵当権」と呼びます。不動産担保ローンにおける第一抵当、第二抵当という順位は、銀行などの債権者が不動産を売却して債権を回収する際の優先順位です。抵当権は、第二順位にとどまらず、第三順位、第四順位などと設定することも可能です。
債務者と債権者の間の契約である抵当権設定を公に示すためには、法務局で抵当権設定登記を行う必要があります。登記情報を確認できる登記事項証明書には、抵当権の順位番号が明記されており、すでに抵当権が付いている物件かどうかは簡単に確認できます。
第二抵当権と設定するメリット
次に、第二抵当権について、その詳細と設定するメリットについて解説します。第二抵当権を設定することで、無担保ローンに比べ、大きなメリットが得られるでしょう。
第二抵当権とは
第二抵当権とは、すでに抵当権が設定されている不動産について、2番目に設定した抵当権を指します。二番抵当とも呼ばれ、第一抵当権に次ぐ順位の抵当権です。具体的には、住宅ローンが残っている不動産を追加で担保に入れて、新たに不動産担保ローンを組む場合に活用できます。
仮に、債務者が返済を果たせなくなり、債権者の申し立てで物件が競売にかけられて売却された場合、売却代金はまず、第一抵当権の権利がある債権者への返済に充てられます。その際、売却代金の残りがあれば、第二抵当権者となっている債権者への返済に回せるのです。
抵当権は債権者にとって融資の安全性を確保するために重要です。さらに、抵当権の効力が十分かどうかは、その順位にかかっているといえます。担保物件を売却しても、第一抵当権者への返済だけで売却で得た利益が底をついてしまうと、第二抵当権者の債権は回収できなくなるからです。
ただし、抵当権の順位は、上位の抵当権が抹消されることで変わります。例えば、第一抵当権の対象となっている住宅ローンが完済された場合には、第一抵当権は抹消されます。第一抵当権がなくなることで第二抵当権が第一順位に繰り上がるのです。
第二抵当権で借入するメリット
第二抵当権を設定して融資を受けるメリットは、無担保ローンに比べて高額かつ低金利で借り入れが可能になることです。
借入限度額や金利、返済期間などの融資条件は、その融資の安全性次第で決まります。一般的な無担保ローンは、債務者の返済能力や、融資に関連する事業の収益性などを考慮して、融資額や金利が決定されます。これに対して、第二抵当での融資は、担保物件を確保しているため、金融機関にとって無担保ローンに比べてリスクが低いと判断されるのです。
複数の金融機関から融資を受けられる可能性を生み出せるのも、第二抵当権で借り入れを行うメリットになります。第一抵当権者となっている金融機関からは追加融資を受けることが難しいケースでも、別の金融機関から第二抵当を活用した不動産担保ローンを借りられる可能性があるからです。
金融機関側から見ると、第二抵当のままでは安全面でリスクと判断される可能性がありますが、債務が弁済されて第一抵当権が抹消されれば、第二抵当権は第一順位に繰り上がり、安全性が増します。第二抵当は、新たな資金需要が生じた場合に融資を受ける選択肢を広げられる制度だといえるでしょう。
第二抵当権で借入するデメリットと注意点
前章では第二抵当権のメリットを解説しましたが、第二抵当権で借り入れをするのはデメリットもあります。ここでは、金利や借入額のほか、第二抵当権に対応していないローンについて説明します。
金利が高くなる
第二抵当権は、債務不履行が生じた場合に債権回収の方法を確保する担保物権ですので、無担保ローンに比べると金利は低く設定されるのが一般的です。しかし、第一抵当権を設定した場合と比べると、金利は高くなります。
債務者が借入金の返済をできなくなった場合、抵当権者である金融機関は抵当権を実行して担保物件を売却のうえ、回収しようとするでしょう。ただ、第二抵当権者が債権を回収できる優先順位は、第一抵当権者より劣ります。
第二抵当で融資を実行する際、担保価値が第一抵当の貸出残高より小さければ、第二抵当権者の債権は全額貸し倒れとなるリスクが高まるのです。担保価値が第一抵当の貸出残高より大きくても、第一抵当の債権回収後の残額が第二抵当の貸出残高に満たなければ、第二抵当権者の金融機関は損失を被ります。このため、一定程度リスクを低減する目的で金利が高めに設定されるのです。
借入限度額が低くなる
第二抵当権で借り入れするデメリットには、借入限度額が低くなることも挙げられます。それは、抵当権を設定する物件の担保価値は、第一抵当権が設定された融資額を差し引いた後の金額を基準に審査が行われるためです。
例えば、ある不動産の市場価値が3,000万円だったとします。この物件に抵当権を設定してA銀行から融資を受けて借入額が2,000万円残っている場合、この時点の担保価値の残りは次の表のとおり1,000万円を基準に考えることができます。
不動産の市場価値 | 3,000万円…① |
A銀行の融資残高(第一抵当権者) | 2,000万円…② |
担保価値の残り(①―②) | 1,000万円 |
もし、B銀行がこの不動産に第二抵当権を設定して融資を行う場合、残る1,000万円を基準に融資を審査することになります。この場合、担保価値の全額を融資する金融機関であれば、借入限度額は1,000万円となります。
以上の考え方から、大きな資金を必要とする借り入れを行いたい場合は、第二抵当では借入限度額が低くなり、資金を賄うのは難しくなる可能性が高まるのです。
第二抵当権を設定できないローンがある
第二抵当を利用した融資を検討する際、必ずしもすべての金融機関から融資を受けられるわけではないこともデメリットとなります。
特に銀行では、融資のリスク低減が重視され、第一抵当権の設定しか認めていないケースが多いです。第二抵当権を設定して借り入れを検討する場合は、どの金融機関が受け入れ可能なのかを事前にリサーチすることが大切です。
第二抵当権では審査が通りにくい?
第二抵当権では一般的な銀行などの金融機関では審査が通りにくい傾向があります。本章では、その理由について解説します。
債権回収できない可能性
第二抵当権では審査が通りにくいのは、債権回収できない可能性が比較的高いからです。金融機関が融資の審査を行う際には、必ずリスク評価を行います。第二抵当権での融資は、担保となる不動産の売却時に第一抵当権者の債権が優先的に回収されるため、リスクが大きいと判断される可能性が高いのです。
例えば、第一抵当権者であるA銀行の債権額の残りが3,000万円で、第二抵当権者となったB銀行の債権額の残りが2,000万円だったとします。ここで債務者の返済が滞り、担保不動産を3,000万円で売却できたとすると、A銀行は全額を回収できますが、B銀行は担保物件からは1円も回収できない事態になるのです。
第二抵当権者の債権が回収できないケース
担保不動産の市場価格 | 3,000万円 |
A銀行(第一抵当権者)の融資残高 | 3,000万円 |
B銀行(第二抵当権者)の融資残高 | 2,000万円 |
銀行系金融機関は難しい
第二抵当権では融資の審査が通りにくいとされるのは、債権回収できないリスクから銀行系のローンでは第一抵当しか扱わない金融機関が多いためです。
銀行は、預金を元手に融資を行うため、その返済に関するリスクを極力低減したい考えが根底にあります。銀行法などによっても預金者保護が厳しく義務付けられています。広く一般から受け入れた預金を原資にした貸し出しが焦げ付き、銀行経営が厳しくなれば、取り付け騒ぎや連鎖倒産など社会経済への悪影響が生じる恐れがあるためです。
金融機関が負うリスクを最小限に抑えるための対策が求められるため、第一抵当権に比べ回収の優先順位が劣る第二抵当に対する姿勢は慎重なものとなっています。
第二抵当でも借入できるケース
第二抵当権を活用した融資は、お金を貸す金融機関にとって比較的リスクが高い貸し出しであるため、消極的な金融機関が多いです。ここでは、第二抵当でも融資を受けやすいケースについて紹介しましょう。
第一抵当の借入金額が低い
第二抵当でも借り入れできるケースのひとつめは、第一抵当の借入金額が小さい場合です。第二抵当で貸し出しを行う金融機関から見た不動産の担保価値は、物件の市場価値と、第一抵当に関する借入金額との差で判断されます。
借入金額が少なければ、債務不履行が発生して担保とした不動産を売却する場合、全額回収できる可能性が高まります。つまり、抵当権を設定した物件の担保価値が高いとみなされるのです。
第一抵当の残高が少ない
第一抵当の借入金額が多くても、残高が少なくなっている場合は第二抵当が設定できる場合があります。第一抵当での借入当初は担保余力が小さいケースでも、返済が進み、不動産の市場価値に対して第一抵当の融資残高が小さくなることで担保価値が回復するからです。
また、第一抵当の返済途中でも、不動産価値が上昇を続けている場合は、融資残高の減少スピード以上に担保価値の増加が進む可能性も期待できます。
第二抵当権設定可のローン
第二抵当でも借り入れができるもうひとつのケースは、そもそも第二抵当権が設定可能な不動産担保ローンを利用することです。一般的な銀行では第二抵当権を使った融資を避けられる傾向がありますが、ノンバンクなど一部の金融機関では「第二抵当でも融資可能」と明記した商品も扱っています。第二抵当権でも融資可能な金融機関では、第二抵当特有のリスクを理解し、そのリスクを踏まえた柔軟な審査基準や融資条件を設けているためです。
第二抵当でも対応可能と明記している不動産担保ローンのひとつに「セゾンの不動産フリーローン」があります。セゾンの不動産フリーローンであれば、住宅ローンや教育ローンなど資金使途が決められた一般的なローンとは異なり、事業や投資、リフォームなどさまざまな用途に活用できます。
セゾンの不動産フリーローンは、借り入れの都度契約が必要な一般的なローンと異なり、「極度型」のローンであることも特徴です。初回の契約を済ませれば、WEBや電話での申し込みにより限度額に達するまで借り入れできるため、資金需要に柔軟に対応できるでしょう。
おわりに
第二抵当権は、1番目の抵当権が設定された不動産に設定される2番目の抵当権を指します。不動産担保ローンや住宅ローンなどで第一抵当権が設定されている状態でも、別の金融機関から新たな融資を受ける際に用いられる仕組みです。
無担保ローンと比べ、高額かつ低金利での借り入れが可能となるメリットがありますが、第一抵当と比較すると、融資限度額が低く、金利は割高です。金融機関としては、債権回収が難しくなるリスクがあることから、審査が厳しく、融資そのものに消極的なことも多いでしょう。
第二抵当権を利用した融資を検討する場合は、ノンバンクなどで扱われている第二抵当対応ローンを利用することで、資金調達の幅が広がります。