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離婚の際の年金分割とは?仕組みや手続き方法などを詳しく紹介

離婚の際の年金分割とは?仕組みや手続き方法などを詳しく紹介
セゾンのくらし大研究 編集部

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離婚する際には、夫婦の婚姻期間中の厚生年金記録を合算し分割することで、将来の年金額を増やせる可能性があります。特に専業主婦(夫)の方であれば、年金分割によりどの程度年金額が増えるのか気になるのではないでしょうか。

そこでこの記事では、離婚時の年金分割の仕組みや手続き方法などについて解説します。注意点もわかり、安心して離婚後の生活をスタートできるでしょう。

この記事を読んでわかること
  • 年金分割は夫婦の婚姻期間中の厚生年金記録を合算し、原則として2分の1に分割する制度
  • 専業主婦(夫)の方や配偶者よりも収入が低い方であれば、離婚時に年金分割をすることで、将来受け取れる年金額が増える可能性がある
  • 年金分割には「合意分割」と「3号分割」があり、合意分割は婚姻期間中の全ての期間で共働きだった場合に、3号分割は配偶者の一方が国民年金の第3号被保険者の期間がある場合に利用できる
  • 年金分割の期限は原則「離婚をした日の翌日から2年以内」のため、早めに年金事務所で手続きをする必要がある

離婚後の年金分割とは?

離婚後の年金分割とは?

年金分割とは、夫婦の婚姻期間中の厚生年金記録を合算し、原則として2分の1に分割する制度です。

例えば婚姻期間中に夫が会社員で妻が専業主婦の場合、将来受け取れる年金は2人分の老齢基礎年金と夫名義の老齢厚生年金です。この2人が離婚すると、基本的に夫は老齢基礎年金と老齢厚生年金を、妻は老齢基礎年金を受け取ることになります。

婚姻期間中に2人で協力して年金保険料を納めたにも関わらず、年金額に大きな差が生じるのは問題です。そこで2人を平等に扱うために、年金分割の仕組みが生まれました。

年金分割できるのは厚生年金だけ

離婚時に分割できるのは「厚生年金」の年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)のみです。そのため配偶者が厚生年金に加入していたのであれば、将来の年金額が増える可能性があります。

老齢年金には大きく分けて2種類あり、「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」です。基本的に20歳以上60歳未満のすべての日本人は「国民年金」に加入し、原則として65歳から「老齢基礎年金」を受け取ります。会社員や公務員であれば「厚生年金」にも加入し、将来「老齢厚生年金」も受け取れます。会社員や公務員の年金額が多いのはこのためです。

なお「国民年金」や「国民年金基金」「確定給付企業年金」は年金分割の対象外です。そのため配偶者が自営業で厚生年金に加入していなければ、年金分割はできません。

なお共済年金は公務員や学校の職員などが加入する年金ですが、2015年10月1日より厚生年金に統一されました。共済年金の期間も年金分割の対象となります。

離婚の際に年金分割しないとどうなる?

年金分割をしないと、将来受け取れる年金額に影響する可能性があります。特に結婚年数が長いほど、年金分割による影響は大きくなります。

年金分割は「離婚届を出すと自動的に分割される」といったことはなく、年金事務所での請求手続きが必要です。将来の年金額に不公平が生じる可能性があるため、離婚を考えている方は早めに配偶者と年金分割について話し合いましょう。

年金分割には2つの種類がある

年金分割には2つの種類がある

年金分割には「合意分割」と「3号分割」の2種類があります。年金分割を受ける側が国民年金の第3号被保険者(専業主婦など)かどうかの違いです。ここでは合意分割と3号分割の仕組みや条件について解説します。

合意分割制度

合意分割制度とは、婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)の分割割合を、夫婦での話し合いまたは裁判手続きで決める方法です。分割割合は原則2分の1となりますが、その他の割合も可能です。

合意分割制度の条件は以下のとおりです。

  • 2007年4月1日以降に離婚したこと
  • 婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)があること
  • お互いの合意または裁判手続きで割合を決めたこと
  • 原則として離婚日の翌日から2年を経過していないこと

2007年4月1日以降の離婚が条件ですが、それ以前の婚姻期間中の厚生年金記録も対象となります。そのため2000年1月1日に結婚し、2024年1月1日に離婚する場合、他の3つの条件に該当するのであれば合意分割ができます。

参照元:日本年金機構|離婚時の厚生年金の分割(合意分割制度)

3号分割制度

3号分割制度は、婚姻期間中に国民年金の第3号被保険者だった方が、配偶者の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を2分の1ずつ分割できる方法です。第3号被保険者一方のみの請求で手続きができます。

3号分割制度の条件は以下のとおりです。

  • 2008年5月1日以降に離婚したこと
  • 婚姻期間中に2008年4月1日以降の国民年金の第3号被保険者期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)があること
  • 原則として離婚日の翌日から2年を経過していないこと

妻のみが請求できるわけではなく、会社員や公務員の妻に扶養されている夫であれば、夫も利用できます。

参照元:日本年金機構|離婚時の厚生年金の分割(3号分割制度)

年金分割はどの方法を選ぶのが良い?

年金分割はどの方法を選ぶのが良い?

ご自身が専業主婦(夫)・正社員など働き方によって、年金分割の種類は異なります。場合によっては合意分割と3号分割を併用することが必要です。次に、状況別の選び方について解説します。

共働きの場合は合意分割

婚姻期間中の全ての期間で共働きをしていた夫婦であれば、合意分割となります。2人の厚生年金記録を合算し、原則として2分の1とするため、収入の少ない方の年金記録が増える仕組みです。

専業主婦(夫)の場合、婚姻期間が開始された時期により異なる

専業主婦(夫)であれば、結婚した時期により対応が異なります。3号分割制度は「2008年4月1日以降の厚生年金記録」が対象のため、2008年4月1日よりも前から婚姻し専業主婦(夫)であれば、合意分割と3号分割を併用します。

例えば2000年1月1日に結婚・2024年1月1日に離婚し、全ての期間で専業主婦(夫)の場合、2000年1月1日〜2008年3月31日の分は合意分割を、2008年4月1日以降の分は3号分割を利用しましょう。

パート勤務の場合は扶養に入っているかどうかで異なる

パートで働いている方は「扶養に入っているか」で対応が異なります。配偶者の扶養に入っている場合には、国民年金の第3号被保険者となるため、3号分割を選択します。収入が上がるなど、扶養から外れた期間があれば、合意分割を利用しましょう。

年金分割の手続きの流れ【合意分割】

年金分割の手続きの流れ【合意分割】

合意分割の場合、夫婦2人の合意が必要です。はじめに夫婦で話し合い、内容がまとまらなければ家庭裁判所での調停・審判に入ります。ここでは合意分割での流れや必要書類について解説します。

合意分割の情報提供を請求する

はじめにお近くの年金事務所に「年金分割のための情報提供請求書」を提出し、「年金分割のための情報通知書」を取り寄せましょう。情報提供の請求は1人でも2人でも可能です。「年金分割のための情報通知書」には年金分割の対象期間や婚姻期間、対象期間の標準報酬総額などが記載されています。

情報提供の請求をする際に必要な書類

「年金分割のための情報提供請求書」を提出する際には、以下の書類を添えましょう。

  • 請求者のマイナンバーカードや年金手帳など
  • 2人の戸籍謄本(全部事項証明書)または戸籍抄本(個人事項証明書)(請求日から6ヵ月以内に交付されたもの)

「年金分割のための情報提供請求書」は年金事務所で取得できます。日本年金機構のホームページからもダウンロードが可能です。

分割割合について夫婦で話し合う

次に年金事務所から届いた「年金分割のための情報通知書」をもとに、分割割合について話し合います。分割割合の上限は50%で、夫婦での合意があれば30%でも40%でも問題ありません。

合意が得られた場合

話し合いで合意が得られた場合には、内容について公正証書もしくは合意書を作成しましょう。合意書や公正証書は正式な請求の際に添付する必要があります。

合意が得られなかった場合

話し合いで合意が得られなかった場合には、一方が家庭裁判所に調停または審判を申し立てましょう。調停では調停委員が間に入り、割合について話し合います。

調停で話がまとまらないときには調停不成立となり、審判に入ります。審判とは家庭裁判所の裁判官から結論を出してもらう手続きです。

決まった内容については調停(和解)調書もしくは審判(判決)書に記載されます。

分割割合が決まったら年金分割の請求を行う

年金の分割割合が決まったら、年金事務所に「標準報酬改定請求書」を提出します。「標準報酬改定請求書」の提出は離婚後に可能です。2人での請求が基本ですが、2人で行きたくないときには委任状を用意し、代理人に提出してもらいましょう。

年金分割の請求の際に必要な書類

「標準報酬改定請求書」を提出する際には、以下の書類を用意しましょう。

  • 請求者のマイナンバーまたは基礎年金番号がわかるもの
  • 2人の戸籍謄本(全部事項証明書)または戸籍抄本(個人事項証明書)(請求日から6ヵ月以内に交付されたもの)
  • 2人の生存を証明する書類(戸籍謄本(全部事項証明書)または戸籍抄本(個人事項証明書)、住民票)(請求日から1ヵ月以内に交付されたもの)
  • 年金分割の割合がわかる資料(公正証書・調停(和解)調書・審判(判決)書の謄本など)

「標準報酬改定請求書」は年金事務所で取得でき、日本年金機構のホームページからもダウンロードが可能です。

状況によって必要な書類は異なるため、あらかじめ年金事務所に問い合わせましょう。

標準報酬改定通知書が交付され、手続きが完了する

年金事務所から夫婦それぞれに「標準報酬改定通知書」が届いたら、手続きは完了です。変わった年金記録を確認しましょう。

年金分割の手続きの流れ【3号分割】

年金分割の手続きの流れ【3号分割】

3号分割の場合には、国民年金の第3号被保険者であった者1人で請求手続きが可能です。3号分割では割合が50%と決まっているため、夫婦で話し合ったり合意を得たりする必要がありません。

具体的には、離婚後に以下の流れで手続きを進めましょう。

  • 年金事務所に「標準報酬改定請求書」を提出する
  • 「標準報酬改定通知書」を受け取る

「標準報酬改定請求書」の提出時には、以下の書類を添付します。

  • 請求者のマイナンバーまたは基礎年金番号がわかるもの
  • 2人の戸籍謄本(全部事項証明書)または戸籍抄本(個人事項証明書)(請求日から6ヵ月以内に交付されたもの)
  • 2人の生存を証明する書類(戸籍謄本(全部事項証明書)または戸籍抄本(個人事項証明書)、住民票)(請求日から1ヵ月以内に交付されたもの)

年金分割する際の注意点

年金分割する際の注意点

厚生年金記録を分割してもらうためには、請求期限などについて把握しておくことが大切です。ここでは年金分割時の注意点について解説します。

年金分割の請求には期限がある

年金分割の請求期限は、原則として「離婚をした日の翌日から2年以内」です。ただし調停や審判中に2年が経過した場合には、調停成立もしくは審判確定の翌日から6ヵ月以内であれば分割請求ができます。

基本的に年金分割は拒否できない

配偶者よりも収入が高い方であれば、年金分割はできるだけ避けたいのではないでしょうか。

離婚時の年金分割は請求されると基本的に拒否できません。拒否したい場合には年金分割をしない合意を交わす必要があります。また分割割合を減らす交渉をすることで、少しでも将来受け取れる年金額を維持できるでしょう。

また請求期限が過ぎていれば、事実上拒否できることになります。

年金分割後に再婚した場合も支給は続く

年金分割後に再婚した場合であっても、厚生年金記録を分割したことを取り消すことにはなりません。請求した側・された側どちらの記録も変わらないため、注意しましょう。

年金はいくらもらえるのか

年金はいくらもらえるのか

専業主婦の妻(国民年金の第3号被保険者)が会社員の夫に3号分割をした場合に、将来受け取れる厚生年金額がいくらになるかシミュレーションします。条件は以下のとおりです。

  • 夫の対象期間標準報酬総額1億円
  • 妻の対象期間標準報酬総額0円
  • 分割割合50%
  • 婚姻期間20年

はじめに夫と妻の対象期間標準報酬総額を合計します。このケースでは「1億円+0円=1億円」となります。

次に対象期間標準報酬総額を分割割合で分割し、それぞれの対象期間標準報酬総額を算出しましょう。分割割合は50%のため、夫・妻ともに5,000万円(1億円×50%)となります。

そしてそれぞれの対象期間標準報酬総額に「5.481/1,000」を乗じ、年金額を算出しましょう。このケースでは「5,000万円×5.481/1,000=274,050円」となり、年金額は夫・妻ともに274,050円となります。

なお「5.481/1,000」の部分は年齢によって変わります。またここで算出した金額はあくまで目安のため、参考程度に考えておきましょう。

おわりに 

年金分割とは、夫婦の婚姻期間中の厚生年金記録を合算し、原則として2分の1に分割する制度です。年金分割には「合意分割」と「3号分割」があり、合意分割は婚姻期間中の全ての期間で共働きだった場合に、3号分割は配偶者の一方が国民年金の第3号被保険者の期間がある場合に利用できます。

年金分割の期限は原則として「離婚をした日の翌日から2年以内」です。離婚を考えている方はお近くの年金事務所で早めに手続きをしましょう。

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