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【借地権の相続】名義変更にかかる費用やトラブル防止のための注意点を紹介

【借地権の相続】名義変更にかかる費用やトラブル防止のための注意点を紹介
セゾンのくらし大研究 編集部

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自分の土地でない借地に家を建てる際は、土地の所有者や土地を使う人の権利を尊重しなければなりません。また、将来的なトラブルを回避するためにも、借地権を相続する場合の手続きや相続税がかかるのかなどの点にも注意が必要です。

この記事では、借地権とはそもそもどのような権利なのか、借地権の相続手続きや地主の許可、注意点などについて解説します。
(本記事は2023年12月27日時点の情報です)

この記事を読んでわかること
  • 借地権には、設定された時期によって旧借地権と借地借家法上の借地権の2種類
  • 借地権の相続には原則として地主の承認は不要
  • 土地の利用権である借地権にも、相続税がかかる
  • 借地権を相続放棄すると、他の遺産も一切相続できなくなるので注意が必要
相続手続きサポート
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そもそも借地権とは

そもそも借地権とは

借地権とは、建物を所有する目的で他人の土地を借りる権利のことであり、土地を購入せず、他人の土地を借りてそこに家を建てる際の権利です。

建物所有の目的で土地を借りる権利なので、建物所有の目的以外で土地を借りる場合は、借地権とは呼びません。

借地権は、設定された時期によって大きく2つに分けられます。

  • 旧借地権:旧借地法が適用される借地権で、1992年8月1日より前に設定されたもの
  • 借地借家法上の借地権:借地借家法が適用される借地権で、1992年8月1日より後に設定されたもの

さらに、借地借家法上の借地権には、普通借地権、定期借地権、一時使用目的の借地権などの種類があります。それぞれについて見ていきましょう。

旧法借地権

1992年8月1日より前に設定されたのが旧法借地権です。もともと旧法借地権の契約を結んでいた土地は、その効力が存続するとされています。

旧法借地権では契約期限が建物が、堅固建物か非堅固建物によって決まっていますが、どちらも更新することで期限を延長して借りることが可能です。

借地借家法上の借地権

1992年8月1日以降に設定された借地権です。定期借地権、普通借地権、一時使用目的の借地権に分けられます。一時使用目的の借地権は建設現場の事務所やイベント用の簡易な建物などが該当します。

普通借地権は、定期借地権ではないという意味で、現行の借地借家法が定める更新可能な借地権です。定期借地権は、期間満了により更新されず終了する借地権を指します。また、定期借地権には、以下の3つがあります。

  • 一般定期借地権:期間50年以上の定期借地権
  • 建物譲渡特約付借地権:契約後30年以上が経過した時点で、建物を地主に譲渡する特約がある借地権
  • 事業用定期借地権:事業用建物を建てることを目的とする10年以上50年未満の定期借地権

旧法借地権においては、借地上に建物がある限り、契約を更新することにより半永久的に土地を利用することができました。しかし、建物の老朽化により借地権が消滅する場合もあったのです。そこで、現法借地権においては、建物の老朽によって契約が自動的に終了することはなくなりました。また、地主の承諾が必要な場合もありますが、立て替えも可能です。

借地権の相続手続きについて

借地権の相続手続きについて

ここでは、借地権の相続における必要な手続きについて解説します。必要な書類、かかる費用も異なるので、注意してください。

借地権の名義変更は必要?

借地権が登記されている場合は、借地権の名義変更が必要です。登記されていない場合はわざわざ登記しなくても構いませんが、借地権を担保にして融資を受けたい場合などには登記が必須です。

民法上、借地権は地上権と賃借権のいずれかに分類されます。

地上権

他人の土地において工作物または竹木を所有するため、その土地を使用する権利のこと。地主の承諾を得ずに地上権を譲渡したり、土地を第三者に転貸したりできる点が大きな特徴です。

賃借権

他人の物を直接、利活用して利益・利便を得る権利のこと。賃借権を第三者に譲渡したり、土地を第三者に転貸したりする際には、地主の承諾が必要です。

地上権は「物権」、賃借権は「債権」です。借地権者にとって地上権で非常に強力な権利を、賃借権でやや弱い権利を認められているといえるでしょう。

借地権の名義変更をする際に必要な書類

借地権の名義変更をする際に必要な書類は、以下の通りです。

  • 戸籍謄本
  • 被相続人の戸籍の附票
  • 相続人の住民票
  • 遺産分割協議書
  • 印鑑証明書
  • 固定資産税証明書
  • 委任状

戸籍の附票とは、住所の履歴が載っている書類です。被相続人の死亡時の住所がわかる書類として必要になることがあります。

遺産分割協議書とは、遺産の分け方について相続人全員で話し合って決めた内容を記した書類です。

固定資産税証明書とは、固定資産税の評価額がわかる書類です。委任状は、借地権の名義変更手続きを司法書士に任せる場合に必要となります。

借地権の名義変更料

借地権の名義変更には、必要書類の取得にかかる費用と登録免許税が必要です。司法書士などに手続きの代行を依頼した場合には、報酬の費用が追加で必要になります。

必要書類の取得にかかる費用は、1通あたり数百円程度です。場合により必要な書類が異なりますが、合計でも数千円程度です。

  • 戸籍謄本:1通450円
  • 除籍謄本:1通750円
    (死亡や結婚、本籍地を移すなどして、戸籍から誰もいなくなったことを証明する書類)
  • 改製原戸籍:1通750円
    (現在の戸籍が作り直される前の古い戸籍)
  • 住民票の附票:1通400円(市区町村により金額が異なります)
  • 戸籍の附票:1通300円(市区町村により金額が異なります)
    (戸籍の表示、氏名、住所、住所を定めた年月日が記載されている書類)

登録免許税については、以下の式で算出できます。

  • 建物所有権の名義変更に関する登録免許税…固定資産税評価額×0.4%
  • 借地権の名義変更に関する登録免許税…固定資産税評価額×0.2%

また、司法書士への報酬分の費用は、事務により異なりますが、5万~10万程度が相場です。

借地権を相続するとき地主の許可は必要?

借地権を相続するとき地主の許可は必要?

借地権は、建物を所有する目的で他人の土地を借りる権利のことです。そのため、地主がどのようにかかわってくるのか心配している方もいるのではないでしょうか。ここでは、借地権を相続する際に地主の許可が必要なのか不要なのか、どんなケースがあるのか解説します。

借地権の相続には地主の許可は不要

借地上の建物自体の権利については、亡くなった方(被相続人)が所有権を有しています。

そのため、借地権を相続するだけなら、地主の許可は必要なく、土地の賃貸借契約書の名義変更も必要ありません。

地主の許可が必要なケース

以下の場合は、地主の許可が必要です。

  • 法定相続人以外の人に借地権を譲る場合
  • 相続した借地権を売却する場合
  • 建て替えを行う場合

それぞれ解説します。

法定相続人以外の人に借地権を譲る場合

被相続人が法定相続人以外の人に借地権を譲る場合は、地主の承諾と譲渡承諾料が必要です。譲渡承諾料の相場は借地権価格の10%程度ですが、個々で大きく異なるので事情を考慮して最終的に決定されます。

相続した借地権を売却する場合

相続した借地権は売却することも可能ですが、地主の承諾が必要です。地主の承諾を得て売却をする場合でも、通常は地主に承諾料を支払う必要があります。

建て替えを行う場合

建て替え、増改築を制限する規定がある場合は、地主の許可を得ることが必要です。築年数が経っている場合などに建て替えや増改築を検討する方もいるでしょう。仮に許可を得られなければ、裁判所に許可を求める申し立てをすることが可能です。また、前述のように、通常は地主に承諾料を支払う必要があります。

借地権を相続する際に気をつけたいポイント

借地権を相続する際に気をつけたいポイント

借地権を相続する際には、税金や契約の問題等の様々な問題が出てくることが想定されます。ここでは、借地権を相続する際に気をつけるべきポイントを見ていきましょう。

借地権には相続税がかかる

土地利用権である借地権にも、相続税がかかります。相続発生を知った日から10か月以内に相続税申告をしなければなりません。

普通借地権の相続税評価額は、その土地の路線価と借地権割合で算出されます。土地の評価額が高い地域ほど借地権割合も高くなる傾向にあります。評価額が高額だと、納税資金対策も必要です。

地主とトラブルになるケースも少なくはない

借地権においては、地主とトラブルになるケースも少なくありません。地主との主なトラブル事例は、以下の通りです。

【地主とのトラブル事例】

  • 立ち退きを要求される
  • 地代の値上げを要求される
  • 借地契約の更新を拒否される

相続による借地権の承継に地主の承諾は不要です。そのため、相続人が地主から立ち退きを要求されても、立ち退きに応じる必要はありません。あまりにも地主からの立ち退き要求が激しいようであれば、警察や弁護士に相談してください。

相続をきっかけに、地主が地代の値上げを要求してくることも考えられます。相続は従来の条件を引き継いで借地権を承継するため、原則として地代の値上げに応じる必要はありません。

契約期間の終了を理由に、相続人との借地契約を打ち切ろうとする地主もいます。しかし、地主が借地契約の更新を拒絶するためには、地主・借地権者双方の事情を比較した上で正当な事由がなければなりません。正当な事由は非常に厳しく判断されるので、相続人としては更新拒絶の要件を満たしていない旨を強く主張しましょう。

借地権は兄弟で共有しないほうが良い

借地権を兄弟で共有することも可能です。しかし、借地権や建物の売却、建て替えに共有者全員の同意が必要となってしまうなどの課題があり、トラブルのもとになりかねません。

そのため、借地権は兄弟で共有しない方が良いでしょう。

借地契約の内容をしっかり確認する

借地契約の内容をしっかり確認することは非常に大切です。

借地権の中には、権利が一定期間のみに限られた定期借地権もあります。期間が終了すると借地権がなくなり、土地を地主に返さなければなりません。

借地権は途中解約できない

借地権では、地主と借地人双方の利害を守るために途中解約は原則認められていません。

しかし、どうしても途中解約したい場合もあります。例えば、借地上の建物が火災により滅失した状況、経営不振によって事業から撤退せざるを得なくなった状況などです。途中解約ができないと無用の地代・賃料を支払い続けることになってしまい、大きな経済的負担になりかねません。

また、双方の合意が得られれば途中解約も可能なので、解約したい場合は申し出てみましょう。

借地権を相続放棄すると他の遺産も相続できなくなる

借地権は相続を知った日から3ヵ月以内に家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出すれば、相続放棄が可能です。

ただし、相続放棄をしてしまうと、預金や不動産などの他の遺産も一切相続できません。遺産が多いケースなのに損をしてしまう可能性があるため注意が必要です。

借地権の相続に関する相談は「セゾンの相続」へ! 

借地権の相続に関する相談は「セゾンの相続」へ!

借地権の相続に関しては、旧借地法、借地借家法と法律も変化しています。相続をしていく中では、法律をよく理解して進めていくことが肝心です。

借地権の相続については専門的な知識も必要です。そこでおすすめなのが、「セゾンの相続 相続手続きサポート」の活用です。「セゾンの相続 相続手続きサポート」では、相続手続きに強い司法書士と提携しておりますので、信頼できる専門家との無料相談や最適なプランのご提供が可能です。まずは相談だけという方も、ぜひ一度お問い合わせください。

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おわりに 

借地権とは、建物を所有する目的で他人の土地を借りる権利のことです。特に、借地権の相続に関わる地主とのトラブルは多いので、トラブルを回避するためにも専門家に相談しながら進めていくことが大切です。

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