電動自転車に乗る方は日常利用が中心のため、自転車保険加入の必要性をあまり感じないかもしれません。しかし、電動自転車の普及拡大とともに、交通事故の増加が問題となっています。電動自転車は車体重量が一般の自転車よりも重く、歩行者とぶつかった際に相手に大ケガを負わせるリスクが高めです。
この記事では、電動自転車に乗る方の自転車保険への加入の必要性と、補償内容などについて解説します。
データで見る!電動自転車の利用状況
電動自転車の利用者の割合は全体の何%くらいで、どのような方に利用されているのでしょうか。
一般社団法人自転車産業振興協会「2021年度自転車の交通ルールに関する意識調査報告書」の調査結果をもとに紹介します。
参考:一般社団法人自転車産業振興協会「2021年度自転車の交通ルールに関する意識調査報告書」
電動自転車を持っている割合は?
同調査によると、家庭で最も多く保有されている自転車の車種は軽快車(いわゆるママチャリ)で、全体の約66.6%を占めます。さらに、最も頻繁に運転している自転車の電動アシスト車率は全体で18.0%です。軽快車の約20%が電動自転車であると考えられます。
電動自転車に乗っているのはミドル・シニア層の女性に多い
電動アシスト付きの自転車に乗っているのはどのような方が多いでしょうか。以下は上記の調査から、最も頻繁に運転している自転車の電動アシスト車率を男女別・年齢別にまとめたものです。
【最も頻繁に運転している自転車の電動アシスト車率】
男性 | 15.3% |
15~29歳 | 14.9% |
30~39歳 | 19.1% |
40~49歳 | 15.2% |
50~59歳 | 11.6% |
60~69歳 | 14.2% |
70歳以上 | 16.6% |
女性 | 21.0% |
15~29歳 | 16.2% |
30~39歳 | 27.2% |
40~49歳 | 22.7% |
50~59歳 | 16.5% |
60~69歳 | 20.0% |
70歳以上 | 24.4% |
全体 | 18.0% |
電動自転車の保有率は男性より女性が高めです。30代女性の利用が27.2%と高いのは、子どもを乗せて利用するケースが多いと考えられます。
また、60代女性が20.0%、70歳以上女性も24.4%と高く、高齢者の日常の足として利用されている実態が浮かび上がります。自動車免許を返納後の高齢者の利用も増加しているようです。
電動自転車の事故件数は増加している?
自転車による交通事故は減少傾向にあるのに対し、電動自転車が関係する事故は2020年に2,642件と2010年と比べると2.2倍に増加しています。電動自転車の事故が占める割合は、0.8%から4%へと5倍に増えました。
電動自転車の事故増加の最も大きな原因は、電動自転車の普及といえるでしょう。
電動自転車の主要なユーザーである30代女性の場合、2人から3人乗りでの利用が多いと考えられます。電動自転車は車体重量が一般の自転車に比べて重く、大人と子どもで乗車すると総重量が100キログラム超になる場合もあるでしょう。走行中に歩行者とぶつかると、衝突時の衝撃は普通の自転車よりも遙かに大きくなるのです。
また、出会い頭の事故も多く、電動アシストによる急加速で交差点に進入してしまうようなケースもあります。
電動自転車を利用する場合、特有のリスクを認識し、歩行者保護を心がけましょう。
自転車の保険とは?車の保険と比較してチェック!
電動自転車にかぎらず、自転車に乗る方は事故に備えて保険の加入を検討した方が良いでしょう。自転車事故の加害者になった場合、場合によっては1億円近い損害賠償を命じられるケースもあるためです。
自動車を所有する方の場合、自賠責保険の加入が義務づけられ、不足分を任意保険で補うことができます。しかし、自転車にはそのような制度がないため、自転車に乗る方は自主的に保険に加入するしかありません。
自動車の事故 | 自転車の事故 | |
損害賠償に備えた保険(強制) | 自賠責保険 | なし |
損害賠償に備えた保険(任意) | 自動車保険(任意保険) | 個人賠償責任保険など |
一般的な自転車保険とは、被害者への損害賠償をするための「個人賠償責任保険」と自分のための「傷害保険」がセットになった保険商品です。
【自転車事故に備える保険】
個人賠償責任保険 | 傷害保険 | |
被害者の生命・身体 | 〇 | × |
被害者の財産 | 〇 | × |
自分の生命・身体 | × | 〇 |
自転車保険にはどんな種類がある?
自転車事故を補償する保険にはどのような種類があるのでしょうか。
次の3つの保険について解説します。
- 個人賠償責任保険
- 傷害保険
- TSマーク付帯保険
個人賠償責任保険
個人賠償責任保険とは、他人のモノを壊したり、他人にケガをさせてしまったりして、損害賠償する場合に保険金が支払われます。
自転車で走行中に歩行者にぶつかってケガをさせたケースは、個人賠償責任保険の補償の対象となります。また、自転車で建物などにぶつかって壊してしまうケースも補償の対象です。
保険金の支払額は保険金額が上限で、1事故につき1億円、2億円、無制限などの種類があります。
個人賠償責任保険は単体で販売されている商品のほか、自動車保険や火災保険の特約として契約するタイプのものがあります。また、示談交渉の有無や重複加入がないか、チェックすることをおすすめします。
補償の対象は、被保険者本人だけでなく「生計を共にする同居の親族」も含まれます。同居していない同一生計で未婚の子どもも補償を受けられます。
傷害保険
傷害保険は、被保険者が急激かつ偶然な外来の事故によるケガで入通院や死亡した場合に保険金が支払われます。
自転車事故の加害者になった場合、被害者のケガに対しては個人賠償責任保険で補償されます。自身がケガした場合は傷害保険から補償されます。
傷害保険で支払われる保険金には、以下のような種類があります。
死亡保険金 | 事故の発生の日からその日を含めて180日以内に死亡した場合 |
後遺障害保険金 | 事故の発生の日からその日を含めて180日以内に後遺障害を負った場合 |
入院保険金 | 事故の発生の日からその日を含めて180日以内に入院した場合 |
手術保険金 | 事故の発生の日からその日を含めて180日以内に手術をした場合(手術1回に限る) |
通院保険金 | 事故の発生の日からその日を含めて180日以内に通院した場合 |
傷害保険には、被保険者が本人だけのタイプと、夫婦や家族も補償対象となるタイプがあります。
TSマーク付帯保険
TSマーク付帯保険とは、TSマーク貼付自転車に乗る方を対象とした保険です。TSマークは自転車安全整備士が点検確認(有料)した普通自転車に貼付され、保険期間は1年です。
TSマークには緑色・赤色・青色の3種類があり、補償内容が異なります。
緑色TSマーク | 赤色TSマーク | 青色TSマーク | |
賠償責任対象 | 死亡・傷害 | 死亡・重度後遺障害 (1~7級) | 死亡・重度後遺障害 (1~7級) |
限度額 | 1億円 | 1億円 | 1,000万円 |
傷害補償(死亡若しくは重度後遺障害(1~4級)) | 50万円 | 100万円 | 30万円 |
傷害補償(入院15日以上) | 5万円 | 10万円 | 1万円 |
示談交渉サービス | あり | なし | なし |
赤色TSマークのみ、被害者見舞金として15日以上の入院で10万円が支払われます。上記の内容から、赤色と青色は賠償責任保険金が支払われる対象が限定され、事故を起こしても対象外になるケースも考えられます。
自転車保険の加入状況は?
自転車に乗る方は加入しておきたい自転車保険ですが、実際のところ、加入状況はどうなっているでしょうか。先述した一般財団法人自転車産業振興協会「2021 年度自転車の交通ルールに関する意識調査報告書」によると、保険の加入状況は以下のとおりです。
- 傷害保険:54.7%
- 個人賠償責任保険:54.2%
全体の半数以上は加入しているものの、まだ半数近くは未加入であることがわかります。
参考:一般社団法人自転車産業振興協会「2021年度自転車の交通ルールに関する意識調査報告書」
自転車保険に入っていない理由
自転車保険に加入しないのはなぜでしょうか。同調査から、自転車利用者で保険未加入者の理由を紹介します。
頻繁に自転車に乗っていないから | 29.9% |
掛け金が高いから | 19.9% |
保険は必要ないと思うから | 13.3% |
補償内容が複雑でよくわからないから | 12.2% |
加入方法がわからないから | 10.8% |
交通事故にあわないと思うから | 8.0% |
継続の手続きを忘れたから | 5.0% |
その他 | 2.3% |
わからない・答えたくない | 24.4% |
「頻繁に自転車に乗っていないから」「掛金が高いから」などが主な理由のようです。ひとたび自転車事故が発生した場合、死亡事故につながるケースもあり、認識を変えるべきといえるでしょう。
自転車保険の加入を義務化する自治体が増えている
自転車事故で加害者が保険に入っていない場合、被害者は十分な補償をされずに後遺症などに苦しむおそれがあります。また、加害者側も自己破産の可能性が考えられます。被害者が経済的に救済されるには、自転車保険の普及は欠かせません。
2015年10月に兵庫県において自転車損害賠償責任保険等への加入義務化の条例改正が行われました。その後、加入義務化を導入する都道府県は全国32都府県に広がり、努力義務とする県も10道県に上ります。(2023年4月時点)
自転車保険の加入義務化により、自転車事故の危険性や経済的なリスクを多くの方が認知することが大切です。
自分にぴったりの自転車保険を選ぶ3つのポイント
ここでは、自転車保険の選び方のポイントを3つ紹介します。
損害賠償の補償がついている
自転車保険の個人賠償責任の補償額は、1億円以上が望ましいといえます。自転車事故では1億円近い損害賠償が認められた判例が、複数あるためです。
自転車保険の義務化の条例は「自転車損害賠償責任保険等への加入義務化」という名目であり、個人賠償責任の補償が求められていることがわかります。
自転車保険の補償内容では個人賠償責任の保険金額がいくらかを必ず確認しましょう。
自分のケガなどの補償が充実している
自転車保険では自分のケガについての入院・通院に給付金が支払われたり、治療費の実費が支払われたりする商品があります。それぞれの支払いの条件や、入院や通院、手術、死亡の保険金がいくらかを確認しましょう。できれば、ケガの補償も充実している商品を選びましょう。
家族で加入できるプランがある
自転車保険は被保険者が自分だけのタイプと、夫婦や家族で補償を受けられるタイプがあります。通常、家族で加入できるプランは個々に加入するよりも保険料がお得になります。保険契約の管理も簡単になりますので、家族のいる人は家族型への加入がおすすめです。
電動自転車の保険を選ぶなら、セゾンの「自転車トラブル安心保険」
電動自転車を含め、自転車に乗る人が自転車保険に加入するなら、セゾンの「自転車トラブル安心保険」をおすすめします。セゾンの「自転車トラブル安心保険」では、自転車保険で最も重要な相手への賠償が最高2億円まで補償されるので安心です。相手への賠償は、「本人コース」の加入でも、家族の事故も補償対象になります。
また、自身のケガの補償は、家族コースなら夫婦と子どもも対象になります。家族コースの保険料は毎月800円(本人コースは400円)で家族全員が加入できて、お得です。
電動自転車に乗っていて、まだ自転車保険に加入していない方は、すぐにでもご加入ください。
A2023-00070
おわりに
自転車保険は加入が義務化された都道府県がほとんどですが、加入しなくても罰則があるわけではありません。そのため、電動自転車に乗っていても保険に未加入の方もいるかもしれません。しかし、自転車事故の加害者になり、個人の収入や資産では負担しきれないような損害賠償責任を負う可能性もあります。たとえわずかな可能性でもいざというときの経済的なダメージを考えると、自転車保険の加入は必須です。この機会に加入しておきましょう。