このコラムでは、花粉症シーズンに起こる肌荒れで悩んでいる方に向けて、肌荒れの原因をはじめ、花粉皮膚炎の症状やその特徴を解説していきます。また、花粉が原因で肌荒れになってしまった時の対処法やスキンケア方法についても紹介していきますので、すでに肌荒れが起きてしまっている方も必見の内容です。また、簡単にできる予防方法についてもお伝えしていくため、本格的な花粉症シーズンに備えてぜひ参考にしてください。
花粉症シーズンに肌荒れする原因とは?
まず、花粉症シーズンに肌荒れが起こる原因を解説していきます。
肌のバリア機能の低下
本来肌には、外部の刺激や異物の侵入、乾燥などから肌を守り、水分が体内から蒸発するのを防ぐ「バリア機能」が備わっています。肌のバリア機能は、肌質や環境の変化、加齢、ホルモンの変化など、さまざまな要因により働きが鈍るとされています。
特に、冬から春にかけては、毎日の気候の変化や昼夜の寒暖差が大きいことから、肌に大きな負担がかかり、肌のバリア機能が低下しやすい時期です。肌のバリア機能が低下すると、外部から受ける刺激に弱くなり、かゆみや赤み、肌がヒリヒリするといった肌トラブルを引き起こしやすくなります。
紫外線などによる肌の乾燥
紫外線は1年中私たちのもとへ降り注いでいますが、3月以降になるとその量が増加していきます。紫外線を過度に浴びると肌の1番外側にある角質層がダメージを受け、水分の蒸発を防ぐ役割となる肌のバリア機能が低下しやすくなります。
肌のバリア機能が低下することで肌の中にある水分が外へと逃げていき、肌は乾燥してしまいます。さらに、バリア機能が低下すると、肌の内部にまで紫外線が侵入しやすくなり、乾燥が進んで炎症へと繋がっていくのです。
花粉などのアレルゲン
春は花粉が多く飛散し、花粉症で目や鼻のアレルギー反応に苦しむ方も多くいますが、同じく肌にもアレルギー反応が現れます。肌のバリア機能が低下している時に花粉が肌に付着すると、花粉のアレルゲンが肌に刺激を与えて炎症を引き起こしやすくなるのです。
花粉症を発症している方は、鼻をかんだり目を擦ったりすることで肌にダメージを与えてしまい、肌バリア機能が低下しやすくなるため肌荒れも起きやすくなります。また、春は花粉症シーズンと一緒に黄砂やPM2.5といった外部刺激も多くなります。花粉症の症状をさらに悪化させることがあるため、併せて注意が必要です。
花粉は春だけではなく、一年中様々な種類が飛散しています。秋は、ブタクサ、ヨモギなどですが、河原や公園など市街地にも多く生息しています。秋の花粉症であることを自覚しないまま、症状を悪化させている可能性もあります。
花粉皮膚炎とは?
花粉症は、目のかゆみや鼻水の症状だけではなく皮膚にも影響を及ぼすこともあります。この花粉による肌荒れは、「花粉皮膚炎」と呼ばれています。ここでは、花粉皮膚炎の主な症状や発症しやすい部位、症状が出やすい時期を解説していきましょう。
花粉皮膚炎の主な症状|肌のかゆみや赤みも
花粉皮膚炎は、目のかゆみや鼻水といった一般的な花粉症の症状がない方でも、皮膚だけに症状が出るケースがあります。花粉皮膚炎の症状は、肌がかゆくなって赤く腫れたり、乾燥をともなってヒリヒリ、ピリピリしたりします。
なかには、強いかゆみが出て赤くなったところが盛り上がり、発疹のような状態となる方もいらっしゃいます。また、赤くて細かいニキビのような湿疹や、肌の所々に白い粉ふきの症状が現れる場合もあります。
そのほか、肌にマスクが触れる箇所がヒリヒリとしたり、鼻や目の周りの肌の色が他の肌の色と異なったりする時には、花粉皮膚炎である可能性が考えられます。花粉シーズンにこれらの症状が見られる時には、花粉皮膚炎を疑い、早めに皮膚科を受診しましょう。
花粉皮膚炎が現れやすい部位|首や目周りに注意
花粉皮膚炎によるかゆみや湿疹は、皮膚が薄く乾燥しやすい目の周りをはじめ、花粉にさらされやすい首や顔に起こりやすいとされています。特に目の周りは、かゆくなったり、赤く腫れたりと症状が強く現れやすいです。
また元々、アトピー性皮膚炎の疾患がある方の約30%が花粉皮膚炎を発症しやすいともいわれています。アトピー性皮膚炎の疾患がある方は、花粉の影響で首や顔だけでなく全身の皮膚炎が悪化する恐れがあるので注意が必要です。アトピーの方で肌の状態がなかなか良くならず、花粉症も疑われる時には、医療機関を受診するようにしましょう。
花粉皮膚炎が出やすい時期|花粉シーズン全般
花粉皮膚炎は、その名のとおり花粉が飛散する時期に多く見られます。花粉が飛散する時期と聞いて、スギ花粉が多く飛来する春の2~4月頃をイメージする方も多いでしょう。しかし、花粉皮膚炎の原因となる花粉は、スギ花粉だけではなくヒノキをはじめ、ヨモギやブタクサなど季節が異なる植物も挙げられます。
ヒノキの花粉は3~5月、ヨモギやブタクサの花粉が10~12月に多く飛散しており、花粉皮膚炎が出やすい時期としてスギ花粉の時期と同様に注意が必要です。なお、天気予報以外に、「花粉情報サイト」など花粉飛散状況が確認できので大変便利です。
花粉症による肌荒れは早めの対応が大切!
花粉症による肌荒れは、早めの対策が鍵となります。ここでは、花粉症による肌荒れでNGとなる行動を紹介していきます。
放置すると悪化することも!
花粉症による肌荒れをそのまま放っておくと、湿疹が広がる可能性が高まります。また、かゆいからといって掻き続けていると、赤くザラザラとした肌の状態になり、最終的に黒ずんでしまう恐れもあります。
そして放置した分、治療のためにより強いステロイドを長期間使用しなければならない場合もあるのです。短期間で早くキレイな肌に治したいのであれば、速やかに治療を開始するようにしましょう。
刺激はできるだけ避ける!NG行動とは
花粉症による肌荒れを起こしている時には、なるべく刺激を避けるようにしてください。花粉症の症状で目がかゆい時には目薬を使用して擦らないようにしたり、鼻水が出たら鼻を優しくかんだりすることを心がけ、皮膚を傷つける行為は控えましょう。
また、化粧品をつける場合も、手のひらでそっと優しく押さえ、擦らないように気を付けましょう。摩擦が肌の負担となるため、日常の動作でなるべく肌を擦らないようにしてください。
花粉症による肌荒れの対処法
続いて、花粉症による肌荒れの対処方法をお伝えしていきます。
市販薬を使う
近頃では、花粉による肌荒れを想定した市販薬も発売されています。治療には、ステロイド外用薬が効果的であるとされています。頬をはじめ、首周りや口などに広がったかゆみも、早めに薬で治療することで4~5日程度で治ることが期待できるため、完治するまで薬を塗り続けるようにしましょう。
症状が緩和しない場合は医療機関に相談を
花粉の時期の肌荒れだったとしても、花粉皮膚炎と自身で判断するのは難しいです。また、自己判断で市販のステロイド外用薬を使用することもおすすめしません。花粉皮膚炎によく似た症状で、「酒さ(しゅさ)」と呼ばれる皮膚疾患があります。
酒さ(しゅさ)にステロイドを使うと、短期的な改善は見られても、長期的には症状が悪化してしまう恐れもあります。なかなか症状の緩和が見られない場合は、できるだけ早めに医療機関を受診し、適切な診断と薬の処方をしてもらうようにしましょう。花粉皮膚炎だった場合、基本的には抗アレルギー剤の内服薬や中程度の強さのステロイド軟膏が処方されます。
花粉症の肌荒れは何科を受診する?
すでに花粉症で通院している医療機関があれば、かかりつけの医療機関に相談すると良いでしょう。特にかかりつけの病院がない場合は、アレルギー疾患に対応可能な内科・アレルギー科・皮膚科・耳鼻咽喉科などを受診しましょう。
それぞれの医療機関では、血液検査によりアレルギーの原因であるアレルゲンが特定できます。診療のガイドラインがあるため、いずれの診療科でも大きな差はありませんが、症状が重い場合には、アレルギー専門医のいるアレルギー科を受診する選択肢もあります。
花粉症による肌荒れ時のスキンケア方法
ここでは、花粉症により肌荒れが引き起こされた時のスキンケア方法を紹介していきます。
ミルクやジェルタイプのクレンジングを使う
洗顔やクレンジング時のアイテム選びも重要なポイントです。肌に炎症が起こりやすい方は、オイルタイプのクレンジングよりも、ジェルタイプやミルクタイプなど肌への負担が少ないものを選ぶと良いでしょう。また、クレンジングの使用自体が肌の負担になるため、洗顔料だけで落とせるタイプの化粧品を使用するのも一つの手です。
洗顔料はしっかりと泡立てて使う
洗顔料を使う際には、ネットや手などを使ってきめ細かく泡立てるようにしましょう。洗顔料をしっかりと泡立てることにより、肌への摩擦を軽減し、毛穴の汚れをきちんと落とせるのです。肌は、ゴシゴシと摩擦をかけて洗うと必要な皮脂膜が失われてしまいます。
そのため、しっかりと泡立てた洗顔料を顔につけ、擦らず包み込むイメージで洗い、優しく洗い流すようにしてください。また、時間をかけて洗いすぎると必要な皮脂まで奪われてしまうため注意が必要です。1分を目安に手早く洗いましょう。その後、柔らかなタオルで軽く押さえるように水分をとってください。
ぬるめのお湯で洗う
洗顔時には、使用するお湯の温度にも注意が必要です。熱いお湯で洗うと、過剰に皮脂を除去してしまいます。反対に温度が冷たすぎると、肌が急激に冷やされて顔が赤っぽくなる場合もあります。洗顔時には、32~35度のぬるめのお湯を使うのがベストです。
また、入浴時に顔を洗う時は、お風呂の設定温度のまま40度前後のお湯で洗顔をしてしまう方も多いのではないでしょうか。お湯の温度が皮脂へ影響することも考慮して、洗顔する時には温度調整をしてください。
洗顔後はすぐに化粧水や乳液をつける
洗顔後は、うるおいを保つ役目の皮脂も少なくなるため、肌の水分は急速に失われていきます。なるべく速やかに化粧水で保湿を行い、クリーム・乳液・ワセリンといったものを使って、潤いを保つようにしましょう。
これは、顔以外の肌にも同じことがいえます。体が乾燥すると肌に粉がふいたようになる場合もありますが、顔と同じように、化粧水やボディクリームなどでしっかりと保湿することをおすすめします。
花粉症による肌荒れを防ぐ対策
花粉症の時期に肌トラブルが生じている方は、花粉による肌荒れが起こる前に以下の対策をとるようにしましょう。
外出時はメガネやマスクを着用する
メガネやマスクを活用して、花粉を物理的に肌に触れさせないようにしましょう。どちらも花粉症用のものが販売されていますが、通常のものでも充分に花粉を防ぐことができます。マスクは市販されている通常のものでも、着用しない場合に比べて花粉量を約1/3にまで軽減できるといわれています。
また、メガネも着用するだけで、目に入る花粉量が未着用時の半分以下になるとも。普段コンタクトレンズを使用している方も、花粉が結膜とレンズの間に入って擦れる恐れがあるため、花粉症対策という観点からも花粉が飛び交う時期はメガネの着用がおすすめです。
日焼け止めやファンデーションで肌を守る
肌が荒れるのを予防するのであれば、肌に何も塗らない方が良いと考える方も多いでしょう。しかしそれでは肌に直接花粉がつき、余計に肌荒れを招いてしまいます。花粉症シーズンは、日焼け止めやファンデーションなどのベースメイクをきちんとし、花粉が肌に直接付着することを防ぎましょう。
さらに、日焼け止めやファンデーションを塗ることで、花粉だけでなく肌荒れの原因となる紫外線からの乾燥も予防でき一石二鳥の効果を享受できます。ただ、すでに肌荒れが起こってしまっている場合には、無理にメイクをするのは避けましょう。
帰宅後は早めに洗顔する
長時間花粉が肌に触れていると、花粉皮膚炎のリスクが高まるため、外から帰ったらできるだけすぐに洗顔するようにしましょう。また、速やかに洗顔することで、肌についた花粉を家のなかで撒き散らさずに済みます。
洗顔には、洗浄力の強い洗顔料を使ったり、ゴシゴシと強い力で肌を擦ったりする必要はありません。花粉による刺激で肌は敏感な状態にあるので、洗いすぎは肌のバリア機能を低下させ、症状を悪化させる事態を招いてしまいます。普段よりも優しい洗顔を心掛けると良いでしょう。
日頃からしっかりと保湿しておく
肌のバリア機能が低下すると、肌が乾燥し、花粉などの外部からの刺激を受けやすくなります。肌のバリア機能を高めるためには、肌の保湿が重要です。水仕事の後や入浴後には、クリームやローションなどを使用して充分な保湿を行いましょう。
肌が敏感になっている場合には、肌への刺激が少ない白色ワセリンがおすすめです。肌に蓋をして、水分が蒸発するのを防いでくれます。また、鼻をかむ回数が多い方や肌が乾燥しやすい方は、外出先にも保湿剤を持ち歩いてこまめに保湿するようにしましょう。
生活習慣を整える
花粉症による肌荒れには、生活習慣を見直した体質改善も有効であるとされています。そもそも花粉症の肌荒れは、アレルギー反応の一つです。アレルギーは、体の防御反応であるためその働きを正常に戻すことが重要であるといえます。
1日3食のバランスのとれた食事や充分な睡眠、適度な運動など規則正しい生活習慣を守り、体の抵抗力を高め、ストレスをためないようにリラックスして過ごすことが望ましいです。なお、飲酒や喫煙は花粉症の症状を悪化させる恐れがあるため、過度の摂取はしないように注意しましょう。
おわりに
花粉症シーズンの肌荒れは、季節の移り変わりによる気候の変化や花粉をはじめとする原因物質によるものなどさまざまな要因で引き起こされます。これらを予防するためには、保湿により肌のバリア機能を高め、規則正しい生活を送ることが大切です。
花粉症による肌荒れが起きてしまった場合には、適切なスキンケアや薬を塗るなどの対処を行いましょう。セルフケアだけでは改善が見られない場合には、早めに医療機関の受診をおすすめします。