花粉の季節になると、鼻水や鼻づまりなどのつらい症状に悩まされる方も少なくないでしょう。花粉症対策に関する情報は数多く出回っており、何が自分に合っているのか判断が難しいという方もいるかと思います。このコラムでは、花粉症によって症状が起こるメカニズムや予防・対策方法をご紹介します。まず何をすれば良いのか分からないという方や、自宅で簡単にできる花粉症対策が知りたい方は必見です。
花粉症による鼻水・鼻づまりとは?
花粉症は、植物の花粉に反応してくしゃみや鼻水、鼻づまりなどの症状が起こることを指します。花粉症の原因である、スギやヒノキなどの花粉が飛散する季節に症状が出るのが特徴です。身体にとって異物であると認識した花粉に対し、身体が過剰な免疫反応を起こして、再び侵入してきた花粉を排除しようとするのが花粉症のメカニズムであり、アレルギー性鼻炎のひとつであると言われています。
日本では、1960年代にブタクサ、次にスギ、イネ科の花粉症が報告されて以降、花粉症有病者は年々増加傾向にあります。2019年の調査ではアレルギー性鼻炎患者が10年間で約10%増加したことが分かっており、年齢や地域の違いによってはさらに有病率が高いため注意が必要です。
花粉症による鼻水・鼻づまりの症状
花粉症になると現れるのが、鼻水や鼻づまり、くしゃみといった症状です。これらの症状は、鼻の粘膜に付着した花粉を取り除くためアレルギー反応の症状として認められるものです。一見すると風邪と似た症状ですが、花粉症が原因で起こる鼻の症状にはいくつかの特徴があります。ここでは、花粉症による鼻の症状の特徴を解説しましょう。
サラサラとした鼻水
風邪の時に出る、粘り気があり黄色がかった鼻水とは違い、無色透明でサラサラとしているのが花粉症による鼻水の特徴です。風邪のときは、ウイルスと闘った免疫細胞や壊された粘膜組織の死骸などがかなり多く含まれているため、色のついた粘度のある鼻水が出ます。一方、花粉症で出る鼻水はアレルギー物質である花粉を流しだすためのものなので、風邪とは違い水のようなサラサラの鼻水が止まらずに出てきます。
鼻粘膜の腫れによる鼻づまり
鼻のなかにある鼻甲介(びこうかい)と呼ばれる「壁」のような構造物が存在します。鼻の入り口から一番近い壁を下鼻甲介(かびこうかい)といいますが、入り口に最も近い壁なので花粉の暴露を最も強く受けます。花粉がこの下鼻甲介に付着すると、上記のようにアレルギー反応を起こして表面粘膜が腫れ、鼻の中の空気の通りが悪くなり、これにより鼻づまりが起きます。鼻腔を拡張するテープなどで鼻づまりの症状を緩和できるのは、鼻甲介を外側から引っ張ることで空気の通り道を作っているからです。
鼻づまりがひどい時には鼻の代わりに口で呼吸をするようになるため、口内が乾いて喉がイガイガしたり、咳が出たりといった症状につながるケースもあります。また、嗅覚が鈍くなり、食べ物の味が分かりづらくなるのも鼻づまりによる症状の1つです。
止まらないくしゃみ
花粉症によるくしゃみは、鼻の粘膜に付着した花粉を取り除こうとして起きます。そのため、風邪の時のくしゃみと比べて回数が多く、立て続けに起きるのが特徴です。花粉が鼻のなかに入るとすぐに発症するため、家から外に出てすぐにくしゃみが出る、というケースも考えられます。
アレルギー性鼻炎は2種類ある!
アレルギー性鼻炎には、抗原によって分類され、2種類存在します。それぞれアレルギーの原因が違うものの、最近では両方のアレルギー性鼻炎に悩むケースや、複数の花粉に反応する方が増加しています。2種類あるアレルギー性鼻炎の特徴は以下のとおりです。
季節性アレルギー性鼻炎
季節性アレルギー性鼻炎は、花粉が原因で起きる免疫反応、いわゆる花粉症のことを指します。2019年の調査では、日本人の2人に1人はアレルギー性鼻炎を患っており、特に花粉症有病者が増加傾向にあることが分かっています。
アレルギーを引き起こす原因の花粉が飛んでいる季節だけ発症するのが特徴で、代表的な抗原はスギやヒノキ、カモガヤ、ブタクサなどです。花粉が原因である季節性アレルギー性鼻炎は、地域によって発症時期や有病率に差があるため、住んでいる地域の飛散時期をチェックすることが大切です。
通年性アレルギー性鼻炎
通年性アレルギー性鼻炎は、ダニやカビ、細菌のほか、人や動物のフケなどが原因で起こります。花粉が飛ぶ時期だけに発症する季節性アレルギー性鼻炎とは違い、アレルゲンがある限り1年を通じて症状が見られるのが特徴です。
通年性アレルギー性鼻炎は若年層に特に多く、気管支喘息やアレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎などの持病を併せて持つことが多いです。
花粉症による鼻づまりの解消方法
鼻のなかの粘膜には、実は無数の毛細血管が存在し、これらの毛細血管の拡張・収縮に伴って、鼻腔内の粘膜も腫れたり引いたりする、という仕組みになっています。花粉症による鼻づまりは、粘膜が腫れて鼻の通りが悪くなることに起因します。つまり、血管の拡張を抑えられれば鼻づまりは解消できるということです。ここでは、自宅で簡単にできる、花粉症による鼻づまり解消法を紹介します。
鼻を温める「鼻カイロ」
鼻づまりには、蒸しタオルで鼻を温める鼻カイロがおすすめです。タオルを40~50℃程度のお湯につけて絞るか、水に濡らしてから電子レンジで30~60秒ほど温めます。火傷に注意してタオルを取り出し、鼻に当ててから鼻呼吸をしましょう。しっかりと鼻筋が温まるように、鼻のつけ根から当てるのがポイントです。適度な蒸気と温かさで血行が良くなり、鼻づまりの改善が期待できます。鼻がつまってつらい時はもちろん、朝起きた時や夜寝る前などに行うのも良いでしょう。
鼻水を洗い流す「鼻洗浄(鼻うがい)」
自宅でできる鼻づまり解消法の1つとして挙げられるのが鼻洗浄(鼻うがい)です。鼻うがいは、鼻洗浄器と生理食塩水を使って鼻のなかの膿や鼻水を洗い流す方法です。生理食塩水は、沸騰した1Lのお湯に9gの塩(もしくは、生理食塩水を500mL作る場合は4.5gの塩)を溶かして作りましょう。
40℃程度に冷ました生理食塩水を鼻洗浄器に300ml程度入れたら準備完了です。顎を引いて下を向き、鼻の穴に鼻洗浄器を当てたら「あー」と声を出しながら生理食塩水を入れましょう。そうすると、どちらかの鼻の穴もしくは口から生理食塩水が出てきます。唾液や生理食塩水を飲まないよう注意しながら、反対側の鼻も同じように洗浄しましょう。1日3回程度行うのがおすすめです。
鼻の通りをよくする「わきの下ボールはさみ」
わきの下には鼻甲介とつながっている交感神経が通っており、交感神経へ刺激を与えることで鼻の粘膜が収縮し、一時的に鼻通りがよくなるといわれています。交感神経への刺激は、片側のわきの下にボールをはさんで圧迫する方法がおすすめです。
脇から指3本分ほど下の位置にボールをはさみ、はさんでいる腕をグッと体側に引き寄せて脇を閉め、20~30秒キープしましょう。鼻づまりが起きている鼻が右の鼻なら左脇を、左の鼻なら右脇を圧迫してください。やりすぎると手が痺れてしまう恐れがあるので注意が必要です。
花粉症による鼻水・鼻づまりの対策方法
花粉症の発症や症状の悪化を防ぐには、できるだけ花粉と接しないことが大切です。ここでは生活習慣・食生活・服装の3つの観点から花粉症の症状の対策方法をご紹介します。
生活習慣での対策
まずは、生活習慣に組み込める花粉対策をご紹介します。
帰宅したらうがい手洗いをする
帰宅後、すぐにうがいや手洗いをするのも花粉対策に効果的です。マスクやメガネを着用していてもすべての花粉を防ぐことは難しいので、顔や口のなかなど、身体に付着した花粉をきちんと洗い流しましょう。花粉を取り除くことで症状の緩和が期待できるうえ、室内に花粉を持ち込まずに済みます。
また、目に付着した花粉を取り除くために洗眼を行うのも良いでしょう。大量の水道水で目を洗うと、目の保護機能を持つ涙まで流してしまう恐れがあるため、洗眼薬を使うのがおすすめです。洗眼と同様に、専用の液剤を使った鼻うがいも花粉の侵入を防ぐ効果があります。
部屋をこまめに掃除する
手洗いやうがいなどさまざまな方法で完璧に防いでいるつもりでも、実は室内にもかなりの量の花粉が侵入しています。帰宅や換気の際に入り込んだ花粉を除去するためにも、こまめに掃除を行うことが大切です。
特に窓から侵入した花粉は、窓の下や床、エアコンのフィルターや網戸などに付着している傾向にあるので、掃除機を利用してこまめに吸い取りましょう。その際、排気量を少なくした排気循環式の掃除機を使うと、花粉が舞い散るのを極力抑えることができます。フローリングの床であれば、ふき掃除を行ってから掃除機をかけるのも効果的です。
湿度や室温を適度に保つ
花粉の時期は、湿度や室温を適切に保つことも大切です。空気の乾燥は喉や鼻、目などの粘膜を傷つけ、症状を悪化させる原因になります。また、急激な温度変化による自律神経の乱れもアレルギー症状につながります。
粘膜を守り、不快な症状を緩和するためにも、湿度は40~60%程度、室温は20~23℃くらいにキープするのがおすすめです。空気中をふわふわと飛ぶ花粉は、加湿により水分を含み重くなって床に落下するため、飛散を抑えられるといったメリットもあります。
窓を開けない
室内に花粉が侵入する原因は、およそ4割が衣服や洗濯物への付着、6割程度が換気だといわれています。花粉の飛散量が増える時期には、ドアやサッシをきちんと閉め、花粉が外から入るのを防ぎましょう。
朝に開花するスギやヒノキの花粉は、昼ごろ住宅街やオフィス街にやってきて、午後に一度落ち着き、落下した花粉が夕方ごろ舞い上がります。昼と夕方は花粉飛散量が多いタイミングなので、12時や17時といったピーク時を避け、早朝か20時以降の時間帯に短時間で換気を行うのもおすすめです。さらに、レースのカーテンをしたままで換気を行い、窓を開ける幅も狭くするなどといった工夫で侵入する花粉の量を抑制することが可能です。
天気予報以外に、「花粉情報サイト」など花粉の飛散状況がチェックできるサイトがあるため、活用するのもおすすめです。
食生活での対策
続いて、食生活を見直すことによる花粉対策を見ていきましょう。
バランスの良い食事をとる
高タンパク、高カロリー、高脂肪の食事を長期間続けることは、アレルギー体質の促進につながります。さまざまな食べ物から幅広い栄養素をバランス良く摂取できるよう、規則正しい食生活を心掛けましょう。
アルコールや香辛料は控える
花粉症の時期には、香辛料をたくさん使った刺激の強い食べ物やアルコールの摂取を控えるのがおすすめです。唐辛子といった香辛料は、粘膜の毛細血管を刺激し、症状悪化に結びつく可能性があるからです。
また、アルコールも血管を拡張させるため、粘膜の浮腫みや鼻づまりを起こす恐れがあります。さらに、アルコールを分解する時に生じるアセドアルデヒドという物質は、アレルギー症状を引き起こすヒスタミンの発生を促進するので注意が必要です。
服装での対策
次に、服装の工夫で行う花粉対策をご紹介します。
・スクや帽子を着用する
花粉の時期に外出する際は、マスクや帽子を着用して花粉から身を守ることも大切です。目や鼻の粘膜に花粉が付着するのを防げるため、症状の緩和が期待できます。マスクには立体型やプリーツ型などといった種類があります。自分の顔の大きさに合わせて選び、顔とマスクの間に隙間ができないよう正しく着用することが重要です。帽子はつばの広いものを選ぶとより効果的です。
・粉が付きにくい服装にする
花粉対策として、外出の際に花粉が付着しづらい服装を選ぶのも良いでしょう。一般的に、ウール素材は木綿や化学繊維などと比較して花粉が付きやすいので、花粉の時期には避けるのがおすすめです。特にコートなどの上着は表面が突起した素材ではなく、ツルツルした素材を選ぶと安心です。
朝と夜でも違う?鼻づまりの対策方法
実は、花粉症による症状や原因は朝と夜で違います。ここでは、朝と夜それぞれの花粉症に対する対策方法をご紹介します。
自律神経の影響も!朝の花粉症対策
朝起きたばかりのタイミングで、発作的にくしゃみや鼻水などのつらい症状が出ることを「モーニングアタック」と呼びます。モーニングアタックの原因は、布団を畳んだ際に舞い上がる花粉や、自律神経の乱れなどさまざまです。朝のつらいくしゃみや鼻水には、夜に鼻炎薬を服用したり、マスクをして寝たり、空気清浄機を使用したりといった対策をしましょう。
また、自律神経の乱れを増長させないよう、規則正しい生活リズムを心掛けるのも大切です。夜はゆっくりと入浴して質の良い睡眠をとり、起床後は朝日を浴びて体内時計をリセットさせましょう。目覚めた時、布団から出る前に少しずつ指先を動かして交感神経の働きを促進させるのもおすすめです。
夜間も花粉が飛んでいる!夜の花粉症対策
花粉は昼だけでなく日没前後にも多く飛散しているうえ、夜に帰宅した際の人の動きによって空中に舞い上がるというケースも考えられます。夜に花粉症の症状がつらい場合には、帰宅時や寝る前の対策が重要です。家に入る前にきちんと花粉を払い落とし、うがいと手洗いを徹底しましょう。寝具に花粉が付かないよう、布団を外に干さないことやこまめにシーツを洗濯することも大切です。
おわりに
花粉症は、日本人の2人に1人が罹患しているアレルギー性鼻炎の一種です。花粉症が原因で起きる鼻水や鼻づまりなどといった不快な症状は、生活習慣や食習慣に気を遣うことでも予防できます。また、つらい症状を一時的に緩和したい場合には、鼻カイロや鼻うがいなど、自宅で気軽にできる対策方法もおすすめです。
花粉症対策のポイントは、できるだけ花粉に触れる機会を減らすことです。つらい症状に悩んでいるという方は、自分に合った対策方法を見つけて取り組んでみてはいかがでしょうか。