2025年には、全人口の約18%が75歳以上になるといわれている日本において、介護に関する問題は山積みです。そして「老老介護」もそのひとつ。老老介護は決して他人事ではなく、誰しもが遭遇する可能性のある問題といえます。このコラムでは老老介護の問題点や、リスクを回避するための方法を解説します。老老介護に不安を抱いている方はぜひ参考にしてみてください。
- 老老介護が増加しているのは、核家族化や平均寿命の上昇が原因である
- 老老介護は心身の疲労が増え、場合によっては家族共倒れになる危険性がある
- 老老介護を回避するには、支援機関やほかの家族に相談することが大切といえる
- 健康的な生活を送ることや地域との交流が老老介護を予防する
老老介護に関する基礎知識
最初に以下の、老老介護に関する基礎を確認していきましょう。
- 日本の社会問題にもなっている老老介護とは?
- なぜ老老介護が起きるのか?
日本の社会問題にもなっている老老介護とは?
老老介護とは、65歳以上の高齢者が、65歳以上の高齢者を介護する状態をさします。75歳以上同士では「超老老介護」といわれ、生活面でさまざまな困難に直面する可能性も。
また、老老介護と同様に問題視されているのが「認認介護」です。認認介護は、高齢の認知症者の介護を、同じく認知症である高齢の家族が行う状態をさします。
日本では、老老介護、認認介護共に増会傾向にあり、社会問題として取り扱われています。
老老介護の割合は半数以上!老老介護の実態を知る
老老介護の現状を、数値を見ながら解説します。厚生労働省が発表した老老介護の割合は以下のとおりです。
引用:厚生労働省「2022年(令和4)年 国民生活基礎調査の概況P25」
2013年以降、老老介護の割合は半数以上にのぼり、その数は現在も増加しています。老老介護が決して他人事ではないことが、このグラフから見てとれます。
なぜ老老介護が起きるのか?
そもそもなぜ老老介護は起きるのでしょうか。以下の理由が考えられます。
- 核家族化による家族構成の変化
- 平均寿命が延びている
- 現行の介護制度では現実に沿っていない
- 経済的な理由
それぞれについて、詳しく説明しましょう
核家族化による家族構成の変化
日本は核家族化が進んでいます。仕事や結婚を機に遠方に旧居をかまえる子どもが増え、親の介護のためにすぐには帰ってこられない場所に住んでいることも、珍しくありません。
また高齢者夫婦だけで生活している世帯では、子どもに気を使って助けを求められないケースもあります。核家族化による家族構成の変化は、老老介護に拍車をかける要因です。
平均寿命が延びている
2019年現在の日本の平均寿命は男性81.41歳、女性87.45歳と年々平均寿命が延びてきています。そのため、親の介護が始まる時には、子どもが高齢期を迎えるケースが増えているのです。
また、少子高齢化により介護をする子どもの数が少ないため、ひとり当たりの介護負担が大きいことも問題視されています。
現行の介護制度では現実に沿っていない
現行の介護制度は、どちらかというと健康で体力のある家族を主な介護者と想定して作られています。そのため、老老介護が一般化した現在のニーズに見合っていない場合があります。
望まない老老介護を増やさないためにも、配食サービスや見守りサービスなどの生活支援事業を拡充させ、地域で支えていく姿勢が重要です。現在の介護状況に沿っていない介護制度は、老老介護を引き起こす原因のひとつといえるでしょう。
経済的な理由
介護サービスは、介護等級により利用限度額が決められています。さらに利用料の1〜3割は自己負担。利用限度額を超過した分は全額自己負担となるため、サービス内容を調整する必要があります。
そのためサービスを利用したくても、経済的に余裕がないと利用できないのです。
例えば、施設に入居したいが居室料が高額で入居できず、やむなく自宅で老老介護をしているケースもあります。経済的な理由によって、老老介護を余儀なくされている世帯も一定数いると想定されます。
老老介護がもたらす問題点をピックアップ
老老介護にはさまざまな問題点があります。以下の4つの問題点をピックアップして、解説します。
- 介護に割く時間が増える
- 精神的・肉体的疲労が増える
- 社会や近所とのコミュニケーションが断たれやすい
- 家族共倒れになる可能性がある
介護に割く時間が増える
介護される側の介護度によっても異なるものの、介護する側が高齢である場合、介護に割く時間が増える傾向にあります。高齢になると基礎体力が衰えるため、一つひとつの動作に時間がかかるからです。
つまり介護に割く時間が増えるほど、介護する側とされる側のお互いが疲弊するという悪循環に陥ってしまうのです。
精神的・肉体的疲労が増える
介護に割く時間が増えると、精神的・肉体的な疲れが増え、以下のような問題が生じる可能性があります。
【肉体的な問題】
- 足腰への疲労が溜まり、神経痛や腰痛を発症する
- 手を酷使することで肩関節周囲炎を発症する
- 移乗介護で失敗して腰の骨を折る
【精神的な問題】
- ストレスが溜まり、介護うつになる
- 夜間介護により慢性的な不眠症になる
- 慢性的な疲れから、正しい判断ができなくなる
このような問題が生じる可能性があることを、把握しておきましょう。
社会や近所とのコミュニケーションが断たれやすい
老老介護世帯は、社会や近所とのコミュニケーションが断たれやすい傾向にあります。毎日が介護に追われる生活で、外界との接点が少なくなるからです。社会や近所とのコミュニケーションが希薄になると、気分が塞ぎがちになり、場合によっては認知機能面が低下する恐れもあります。
家族共倒れになる可能性がある
上記で説明した3つの問題点から、老老介護では共倒れする可能性が高くなります。介護する側に何らかのトラブルがあり介護できなくなると、たちまち生活が成り立たなくなります。
自分で解決できる問題であればいいのですが、そうでない場合は最悪の事態も想定しなければなりません。老老介護は、あらゆる面で問題を引き起こす要因になるのです。
老老介護のリスクを回避するための解決策には何がある?
老老介護には問題点があるとはいえ、現実には老老介護を余儀なくされる場合もあります。そこで、それらの問題を回避するための4つの解決策を解説します。
地域包括支援センターへ相談する
地域包括支援センターとは、高齢者の介護に関することや権利擁護に関することなどが相談できる公的機関です。何か困り事があった場合に相談すると、利用可能な制度やサービスを検討・紹介してくれます。
「誰に何を相談したら良いかわからない」場合には、地域包括支援センターに相談するのをおすすめします。
介護サービスの利用を検討する
介護サービスは、要介護認定などの条件を満たせば利用可能。デイサービスや訪問介護などの在宅型サービスでは、介護のプロが家族に代わって介護をしてくれます。事業所によっては、正しい介護方法を教えてくれる場合もあるため、積極的に利用を検討すると良いでしょう。
介護施設への入居を検討する
入居型の介護施設、例えば特別養護老人ホームや介護老人保健施設は、介護認定などの条件を満たせば入居できます。
ただし地域によっては空きがなかったり、空きがあっても入居料が高額だったりする場合があります。
入居を検討する場合には、介護支援専門員に相談し手続きのサポートを受けると、比較的スムースに入居できるでしょう。
ほかの家族に助けを求める
支援を期待できる家族がいる場合には、助けを求めるのも大切です。住まいが遠方であったり、過去にトラブルがあったりした場合もあるかもしれません。しかし家族である以上、助けを求めるのは自然なことです。
また、自分自身が親の介護をしている場合には、兄弟姉妹に金銭的な支援を求めるのも良いでしょう。老老介護で生じる問題を回避するためには、あらゆる方法を模索していく必要があります。
老老介護になる前にできる予防策を知っておこう
老老介護の問題を改善するには、以下を意識して予防するのが最も効果的です。
- 健康寿命を延ばすことを意識した生活を送る
- 普段から家族や地域の方とコミュニケーションをとっておく
- 体調に変化を感じたらすぐに受診する
- 介護に関する知識を増やす
老老介護になる前にできる、これらの予防策を解説します。
健康寿命を延ばすことを意識した生活を送る
健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」をさします。喫煙や飲酒、運動不足などの生活習慣を見直すことで健康寿命は延ばすことが可能。
例え、要介護認定を受けたとしても、程度が軽いうちは食生活や運動などに気をつけることで重症化を防げます。今からでも遅くはありません。健康寿命を延ばすことを意識した生活を送りましょう。
普段から家族や地域の方とコミュニケーションをとっておく
老老介護を予防するには、普段から配偶者や子どもと介護について話し合っておくことが大切。
介護が必要になった際に、スムーズに介護サービスへの以降が可能となり、初期段階での介護負担が大幅に減るからです。
また、日頃から地域とのコミュニケーションをとっておくのも重要です。地域の方と交流をもっておくと、何か困ったときに助けてくれる可能性があるからです。介護が必要になる前から、家族や地域の方と積極的にコミュニケーションを図るようにしましょう。
体調に変化を感じたらすぐに受診する
体調にいつもと違う変化を感じたら、すぐに受診するようにしましょう。ケガや病気の予防は、要介護状態を回避でき、老老介護の予防につながるからです。高齢者に介護が必要となる原因で多いのは以下のとおりです。
- 認知症
- 脳血管障害(脳出血や脳梗塞)
- 高齢による衰弱
このような疾患や状態を早期に見つけ、予防や治療していくために、体調に変化を感じたら迷わず受診するようにしましょう。また、信頼のできる「かかりつけ医」を見つけておくと、健康管理を任せられて安心です。
介護に関する知識を増やす
いざというときに備えて、介護に関する知識を増やしておくのが重要です。介護が必要になった際の相談先や、介護の方法などについてあらかじめ知っておくと、落ち着いて対応できます。
また、知識を増やす際に、家族みんなで共有するようにしましょう。そうすることでより、介護への興味や関心が高まり、老老介護を予防できるでしょう。
おわりに
老老介護は今や、日本における社会問題です。老老介護により心身の健康が失われ、場合によっては共倒れになる可能性もある深刻な問題です。介護が必要となった場合には、ひとりでやろうとせず、支援機関への相談や介護保険サービスの利用を検討しましょう。
家族みんなで介護に関する知識を増やすのも老老介護の予防につながります。当サイト「セゾンのくらし大研究」でも、健康や介護について情報を発信しています。気になる方はぜひ参考にしてみてください。
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