生命保険文化センターの2022年度「生活保障に関する調査」によると、男性77.6%、女性81.5%と多くの人が生命保険に加入しています。ただ、定期的に見直しをしている人は少ないかもしれません。被保険者が亡くなり、保険証券を確認したら受取人がすでに亡くなっていたという事例もあります。そのままにしておくことで起こり得るトラブルや保険金の行方について解説します。
この記事を読むことで、後悔しない備えと安心が得られるはずです。
(本記事は2024年2月22日時点の情報です)
生命保険の受取人が死亡したら速やかに変更しましょう
生命保険(死亡保障)では、保険の対象となっている被保険者が亡くなると、支払事由に該当し、受取人に死亡保険金が支払われます。後々のトラブルを避けるためにも、生命保険の受取人が死亡した場合には、速やかに受取人変更の手続きを行うことが大切です。
ただし、保険金受取人になれるのは、誰でもよい訳ではありません。どのような人を指定すれば良いのでしょうか。
基本的には配偶者・1親等・2親等に該当する人
生命保険の受取人になれるのは、基本的には、被保険者の配偶者のほか2親等以内の親族といわれています。
親等とは、本人からみた親族関係の距離(世代)を表します。
- 1親等…親や子供
- 2親等…祖父母・兄弟姉妹・孫
内縁関係・婚約者・同性パートナーにできる場合もある
そうはいっても、最近では家族の在り方も多様化しています。保険会社によっては、内縁関係や婚約者、同性パートナーを保険金受取人に指定できる場合も多くあります。保険会社ごとの基準によるため、保険会社の承認が条件となるケースや関係性を証明できる書類の提出などを求められるケースなどさまざまです。ただし、基準は緩和の傾向にありますので、保険会社に直接問い合わせてみることをおすすめします。
遺言による受取人変更手続きもできる
契約者が保険会社に保険金受取人の変更を申し出ることで手続きを行うことが原則であり、推奨されますが、保険法という法律で、遺言書によって受取人を変更することも認められています。
この場合、遺言書を確認した被保険者の相続人が保険会社に通知する必要があります。亡くなられた方の遺志を尊重するのが遺言書であるものの、トラブルに発展することも散見されるため注意が必要です。
考えられるトラブルとしては、相続が発生した後、遺言書が発見されてから保険会社への通知に至るまでに時間がかかり、保険会社が保険契約上の受取人の請求に応じて保険金を支払ってしまうケースがあげられます。
ほかにも、遺言書そのものが無効となるケース、保険会社による審査で問題ありと判断されるケース、納得のいかない相続人が通知を拒否するケースなどが考えられます。話し合いで解決すればよいのですが、訴訟で争われることも珍しくありません。
生命保険金の受取人は被保険者と同じ人物にできない
まずは、保険契約における登場人物を整理しておきましょう。社会生活における契約では、当事者と相手方がいれば成立しますが、保険契約においては、「契約者」「被保険者」「保険金受取人」それぞれの欄に名前が記載されている必要があります。
- 契約者…保険契約の申込人、保険料を支払う人
- 被保険者…保険の対象となる人、被保険者の死亡により保険金の支払事由となる
- 保険金受取人…保険金を受け取る人、被保険者の死亡により保険会社に保険金支払いの請求を行う
被保険者の死亡を起因として、保険金の請求を行い、保険金が支払われるため、受取人を変更する場合、被保険者を受取人にすることはできません。目的や家族構成にもよりますが、契約形態として、契約者と受取人を同じ人物とすることは可能です。
なお、受取人は複数でも構いません。複数人指定の場合には、受取人ごとに割合も決める必要があります。
例)変更前の受取人:妻(100%)→ 変更後の受取人:長男(50%)、長女(50%)など
保険金の受取人によってかかる税金が変わる
保険契約において、「契約者」「被保険者」「保険金受取人」といった登場人物が存在することはお伝えしたとおりですが、誰がどのような役割をもつ契約形態であるかによって、対象となる税金の種類が異なることに注意が必要です。
契約形態としては、下図のパターンが考えられます。それぞれ税金の種類は、相続税・所得税(一時所得)・贈与税と異なります。ひとつずつ、詳しく解説しましょう。
所得税がかかるケース
夫が、妻を被保険者として保険契約を締結し、妻が亡くなったときには、夫自身が死亡保険金を受け取るケースです。
世帯主である夫の死亡保障に重点をおきがちですが、子育て世代とくにこどもが小さい世帯では、妻が亡くなった場合の経済的・精神的・体力的ダメージは大きいものです。育児サポートや家事代行などこれまでにない支出も想定しておく必要もあるでしょう。そのためにも、妻が「被保険者」となり、夫が「契約者」であるとともに、「受取人」となる保険契約は有効です。
ただし、保険料負担をした夫が保険金を受け取ることになるため、負担を上回る金額に対しては、収入とみなされ、所得税(一時所得)の対象となります。受け取った保険金額から支払った保険料の総額、さらに特別控除(50万円)を差し引いた金額が一時所得の金額となります。所得税を計算するためには、一時所得の2分の1に相当する金額を給与所得など他の所得と合算して、確定申告により申告する必要があります。
相続税がかかるケース
夫が、自分が亡き後の妻の生活を思い、妻に保険金を遺そうと考え、加入するケースはよくあるかと思います。
夫は「契約者」として保険料を負担すると同時に「被保険者」でもあり、夫が亡くなった時に、妻が「受取人」として死亡保険金を受け取ります。この場合には、夫の遺した財産(正確には「みなし相続財産」)として、相続税の対象となります。
ただし、遺された配偶者(家族)の今後の生活資金のための保険金という意味合いから、相続人が受け取る保険金には、「非課税枠(500万円×法定相続人の数)」があり、さらに相続税の算出にあたっての「基礎控除(3,000万円+500万円×法定相続人)」があるため、相続税の対象ではあるものの、よほど高額でない限り、相続税が発生する可能性は低いかもしれません。
贈与税がかかるケース
3つめのケースとして、現実的には少ないかもしれませんが、夫が「契約者」となり保険料を負担し、「被保険者」である妻が亡くなったときに、子が「受取人」として保険金を受け取るケースです。
ある程度成長した子に対して、父親として子の面倒を見るというよりも、子自身でお金の管理、生活を維持することを願う親の思いが感じられます。この場合には、妻(母親)の死亡に起因しているものの、お金の流れは夫(父親)から子への贈与とみなされ、贈与税の対象となります。死亡保険金を受け取った子は、翌年の2月15日から3月15日までに贈与税の申告と納税を行う必要があります。
生命保険金の受取人が死亡したまま変更しないでいるとどうなる?
保険の加入時には、情報収集や理解に努めるものの、時の経過とともに、どんな保険に入っているのか、どんな契約形態であったか、意外と忘れてしまいがちです。被保険者が亡くなられたことで、保険証券を見てみると、受取人がすでに死亡しているといった事例は多くあります。
こういったケースでは、何のための保険であったのか目的が失われ、想いが届かない残念な結果となってしまいます。また、トラブルに発展する可能性もあるため、可能な限り、受取人についても定期的に確認しておきたいものです。
希望する人に保険金を遺せない可能性がある
そもそも、死亡保障は、被保険者が亡くなった場合の備えであり、リスク対策であったはずです。負担する保険料も決して安いものではありません。受け取るはずだった受取人が死亡していた場合、その相続人が受け取ることになり、相続人がいない場合には国庫へ帰属されるため、遺すべき人、遺したい人に渡らない可能性があります。
また、指定された受取人が受け取る保険金は、その人固有の財産となり、遺産分割協議が調わなくても全額を受け取ることができます。思いがけず受け取った相続人に対して納得のいかない被保険者の相続人との間で親族トラブルに発展するリスクも高くなります。
生命保険金を受け取るための手続きに手間がかかる
保険契約において、「契約者」「被保険者」「受取人」のそれぞれが重要な役割を担っています。被保険者の死亡という支払事由に該当した時に、このうちの「受取人」が死亡していたことで、当初の契約が履行できないという状況に陥るため、保険会社としては、予定外の手続きを行わなければなりません。
そのため、法定相続人であることの証明書類や、法定相続人となる全員の押印が必要といった手間がかかり、当然手続きには時間がかかります。
受取人によっては相続税の負担が増す
受取人が死亡したまま、受取人の変更手続きをしていないと、その保険金を受け取る人が誰かによっては、相続税の負担が増すことになります。もともとの受取人の「配偶者」や「子・親」など1親等内の血族であればよいのですが、2親等である「孫」や「兄弟姉妹」、3親等である「おじ・おば」であったとすると、その保険金にかかる相続税は、2割加算されることになります。
思いがけず保険金を受け取ることになった親族にとっては、嬉しいと思う一方で、相続手続きに巻き込まれるという時間的・労力的負担に戸惑うことも推測できます。いずれにしても、あとで後悔しないためにも、受取人の死亡を知った際には、生命保険の契約者は、別の受取人への変更もしくは解約という行動をすべきでしょう。
被保険者が亡くなった際に受取人も死亡していた場合、誰が受け取るの?
被保険者が亡くなった際に、すでに受取人が死亡していた場合には、保険金は「誰が」受け取るのでしょうか。具体的事例とともに、誤解されやすいポイントについて解説します。
法定相続人が受け取る
通常であれば、被保険者が亡くなられた時には、受取人の請求により、受取人に死亡保険金が支払われます。その時点で、受取人がすでに亡くなられていた場合には、受け取るべき受取人の法定相続人が、生命保険の受取人となります。被保険者の法定相続人ではないことに注意が必要です。
【事例より】
夫と妻、子ども1人の世帯において、夫が亡くなり、悲しみのなか遺品を整理していたら、夫が独身時代に加入していたと思われる生命保険証券を発見しました。「契約者」および「被保険者」は夫、「生命保険の受取人」は夫の母でした。夫の母はすでに他界しています。保険料の支払いは終わっていたことから、夫自身も存在を忘れていたのかもしれません。保険会社に確認すると、生命保険の受取人の変更はされていませんでした。結果として、夫の死亡により支払われる保険金は、夫の母の法定相続人である夫の「父」「兄」「妹」そして「子」の4人で4分の1ずつ受け取ることになりました。代襲相続人として「子」も受け取ることができたものの、夫の母が亡くなった時に受取人の変更をしておいてくれたら、もう少し生活に余裕ができたのにと思うと悔しいです。
法定相続人が受け取る場合の金額は?
生命保険の受取人がすでに他界している場合には、受取人の法定相続人が死亡保険金を受け取ることになります。この場合の受け取る金額は、人数により均等に分割されます。1000万円の死亡保険金を配偶者と子3人の計4人で分割とすると、配偶者も子もそれぞれ250万円ずつ受け取ります。
相続財産における「法定相続割合」による分割では、法定相続人が配偶者と子3人という場合には、配偶者が2分の1で、残りの2分の1を子3人(6分の1ずつ)で相続します。被相続人(亡くなられた方)の相続分割と受取人が死亡していた場合の保険金の分配とでは、分け方が異なる点に注意が必要です。
法定相続人がいなければ国庫へ帰属される
相続人がいない場合には、一定の期間と手続きを経て、国庫へ帰属されることになります。
多様性の時代かつ超高齢社会でもあり、相続人のいない「おひとりさま」も増えています。保険に限らず、国のものになるくらいなら、生前お世話になった人や応援したい団体など自分の財産の行き先について、生前に決めておくことも大切です。
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この記事では、生命保険の保険金受取人が死亡していた場合についてお伝えしました。生命保険については、契約期間が長く、また、いつ起こるかわからないリスクへの備えであるため、とても大切なことですし、定期的に保険の見直しをしていきたいものです。とくに、とはいえ、日々の生活のなかで気に留めることは難しいかもしれません。
より充実した人生を送るためにも、保険もふくめて、お金にまつわる知識を積み上げていくことをおすすめします。疑問を解決できるサービスを2つご紹介しましょう。
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おわりに
生命保険の加入にあたっては、多くの場合、「誰のために」「何のために」を考えますが、時間の経過とともに、保険に加入していることに安心しつつ、目的を見失いがちです。保険の対象となる「被保険者」が亡くなった後に、受取人の変更をすることはできません。後になって後悔しないためにも、受取人が誰になっているのか、必要性についても、あらためて確認してみることをおすすめします。