「形見分けのお返しはした方が良いのだろうか」「お礼の手紙を出さずに非常識な人だと思われたらどうしよう」といった悩みはありませんか。日本では頂き物に対して、お返しをする風習があります。形見分けを頂いたときに「お返しをしなければ」と頭に浮かぶ方がいるかもしれません。しかし、形見分けのお返しやお礼の手紙は不要です。
このコラムでは、形見分けを頂いたときの悩みを解決するために
- お返しやお礼がいらない3つの理由
- 形見分けをお断りするときに気を付けたいこと
- 形見が不要になってしまったときの対応
について解説します。マナー違反にならないように、正しい知識を身に付けておきましょう。
1.形見分けについて
形見分けは、亡くなった方の愛用の品を親しい方で分け合う日本の伝統です。人が亡くなったときに行われる儀式ですので、日常的に行われるものではありません。いざというとき、「形見分けにはどんな意味があるのだろうか」と悩む方が多いのではないでしょうか。
正しい知識がなければ、マナー違反になるかもしれません。失礼に当たらないように、形見分けの意味をしっかりと理解しておきましょう。
1-1.形見分けを行う理由
形見分けは、亡くなった方の日用品や愛用品を身近に置き、供養するために行います。形見を大切に使い、亡くなった方と思い出を共有することが供養につながります。頂いた品を簡単に処分したり、換金を目的に第三者に譲ったりすることは、失礼に当たるので注意しましょう。
形見分けは、亡くなった方との思い出を共有し、供養する目的があることをしっかりと理解したうえで受け取ることが大切です。
1-2.形見分けはいつ誰に対して行うのか
形見分けを誰に対して行うかについて、ルールはないといわれています。形見分けは、亡くなった方と親しくしていた方に対して行われるのが一般的です。遺言やエンディングノートなどに「形見分けを誰に行うか」が記載されている場合は、亡くなった方の意向に従って行います。
形見分けする時期に関しては、忌明けが良いとされています。忌明けの時期は、宗教や地域により異なりますので注意しましょう。近年、形見分けは思わぬトラブルを招いてしまう可能性が高いことから、行わない方が増えています。形見分けを行う際は、受け取る側もマナーやトラブル回避法について確認しておくことが大切です。
2.形見分けにお返しは必要なのか
形見分けを頂いたとき「お返しをした方が良いのか」「お礼の手紙は出すべきなのか」といった疑問を持つ方が多いのではないでしょうか。ここでは、形見分けにお返しやお礼の手紙が必要であるかを解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
2-1.お返しは不要
形見分けのお返しは、不要とされています。理由として「形見分けが喜ばしい出来事ではない」「お返しをしないことが慣習である」ということが挙げられます。例えば、形見分けでアクセサリーや洋服を頂いたとき「何かお返しをしないと非常識と思われてしまうのではないか」と不安を感じる方がいるかもしれません。特に日本には頂き物に対してお返しをする風習がありますので、悩まれる方が多いでしょう。
しかし、形見分けの目的はあくまで供養することです。お祝いを目的として頂いた品ではありませんので、お返しは不要とされています。
2-2.お礼の手紙も不要
形見分けは、お礼の手紙も不要とされています。お返しが不要であるのと同じ理由で、お礼の手紙を出さないことが慣習だからです。しかし、絶対にお礼をしてはいけないルールはありません。
例えば、形見分けを郵送で受け取った場合、受領した旨の連絡を入れない場合、申し訳なく感じてしまうかもしれません。遺族側からしても、電話やメールで、受け取った際の連絡を「失礼である」「非常識だ」と感じる方は少ないでしょう。一般的にお礼の手紙は不要とされていますが、必要に応じて連絡を入れることはマナー違反ではありません。
3.形見分けのお返しがいらない3つの理由
日本では頂き物に対し、お返しやお礼の手紙を出す風習があります。しかし、「なぜ形見分けは、お返しやお礼の手紙がいらないのか」と疑問を持つ方が多いのではないでしょうか。ここでは、形見分けにお返しやお礼の手紙がいらない理由を紹介します。
3-1.お祝いの品やプレゼントではない
1つ目の理由は、形見分けが「お祝いの品やプレゼントではない」ということです。お返しには、本来「一緒に喜びを分かち合う」という意味が込められています。しかし、亡くなった方の遺品を分け合う形見分けは、喜びを分かち合う出来事ではありません。
例えば、結婚祝いや出産祝い、快気祝いを頂いた際に「内祝い」を贈る風習があります。贈り物にはお祝いの気持ちが込められ、内祝いには喜びを分かち合う気持ちが込められているのです。そのため、贈り物と内祝いはセットで語られます。しかし形見分けは、亡くなった方の供養が目的です。そのため、お返しで喜びを分かち合う必要はありません。
お祝いの品やプレゼントではないことから、形見分けのお返しやお礼の手紙は不要であるといわれています。
3-2.遺族がお礼をもとめていない
2つ目の理由は、そもそも遺族がお礼をもとめていないからです。遺族は亡くなった方との思い出を共有し、供養することを目的として形見分けを行っています。そのため、遺族がお返しをもとめているケースは少ないでしょう。
形見分けでは、お礼をしない代わりに「お悔やみの言葉」や「亡くなった方との思い出話をすること」が良いとされています。「大切に品を使ってもらうことが最大の喜びである」と感じる遺族の方は多いのではないでしょうか。はじめから遺族がお礼をもとめていないため、形見分けのお返しやお礼の手紙は不要とされています。
3-3.お返しをしないことが慣習となっている
3つ目の理由は、形見分けに対してお返しやお礼の手紙を出さないことが慣習であるからです。例えば、結婚祝いや出産祝い、快気祝いなどの頂き物に対して「なぜお返しをするのか」を問われた場合、「お返しをすることが慣習であるから」「お返しをしないと非常識になってしまうから」などと答える方が多いのではないでしょうか。
形見分けのお返しやお礼の手紙が不要であるのも、「しないことが慣習となっているから」という理由が大きいといわれています。
4.形見分けはお断りしても良い
形見分けを受け取ることが負担であると感じた場合、お断りしても良いとされています。特別な理由がない限り、受け取るのが良いとされている形見分けですが、中には頂いて困る品があるかもしれません。また供養する目的のある形見分けの品は、簡単に処分できないため、負担に感じる方がいるのではないでしょうか。
「大きくて置き場所がない」「気持ちの負担が大きい」など受け取ることが難しい理由がある場合、丁寧にお断りしましょう。形見分けをお断りする際は、遺族の気持ちに配慮してお断りすることが大切です。
例えば、以下のような言葉を添えると丁寧な印象を与えられるでしょう。
- 「品を見ると〇〇さんを思い出してしまい大変つらいので、お気持ちだけいただきます」
- 「大切な形見ですので、使わないと供養になりません。ぜひお使い頂ける方にお譲りください」
などといった断り方がおすすすめです。「いらないです」や「なんで私が頂くことになったのですか」などといった言葉は、遺族を傷つけてしまうことになりかねません。遺族にとって大切な形見であることを忘れず、丁寧にお断りしましょう。
5.形見が不要になってしまったときの2つの対応
日本では亡くなった方の魂が、遺品に宿ると考えられてきました。そのため、形見をゴミとして処理することに抵抗を感じる方がいるかもしれません。「形見が古くて使えなくなってしまった」「引っ越しで置き場所がなくなってしまった」と悩んでいる方がいらっしゃるのではないでしょうか。
ここでは、形見が不要になってしまったときの対応について紹介します。手放す際も、大切な形見であることを忘れずに対応しましょう。
5-1.お焚き上げする
形見が不要になってしまったときは、お焚き上げして供養する方法があります。お焚き上げとは、大切にしていた品を炎により浄火することで、天に還っていくといわれている宗教儀式です。
お焚き上げができる場所は、以下のとおりです。
- 寺院
- 神社
- お焚き上げの専門会社
しかし、寺院や神社ではお焚き上げできない品もあるので注意しましょう。お焚き上げできない品には、以下のようなものがあります。
- ガラス製品
- プラスチック製品
- 貴金属類
- 家具などの大きな品
お焚き上げできない品は、寺院や神社によって異なりますので、持ち込みをする前に問い合わせると良いでしょう。寺院や神社でお焚き上げできない品や、近隣にお焚き上げできる場所がない場合、お焚き上げの専門会社の利用がおすすめです。不要になってしまった形見は、お焚き上げで供養してみてはいかがでしょうか。
5-2.寄贈する
形見が不要になってしまったときには、寄贈するという方法があります。寄贈とは、公共の場所に品を贈ることです。多くの方に使っていただける公共の場に寄贈することは、亡くなった方にとって喜ばしいことではないでしょうか。
寄贈できる場所には、以下のような場所があげられます。
- 学校
- 図書館
- 病院
- 博物館
- 美術館
寄贈できる品は、以下のとおりです。
- 書籍
- 衣類
- コレクションの品
寄贈以外に、フリーマーケットやインターネットオークションが頭に浮かぶ方がいるかもしれません。しかし、一般的に形見を換金目的で第三者に譲ることは「失礼に当たる行為」とされています。形見を手放す際は、供養することが目的であることを忘れないことが大切です。
おわりに
お返しやお礼の手紙は、本来喜ばしい出来事に対しての行為です。そのため、喜ばしい出来事ではない形見分けに、お返しやお礼の手紙は不要とされています。形見分けは、亡くなった方の供養を目的として行われています。遺族にとって「形見を大切に使うこと」「亡くなった方を忘れないでいただくこと」が、何より喜ばしいことではないでしょうか。
しかし、「せっかく頂いた形見にお礼をしないのは申し訳ない」と悩みを持つ方がいるかもしれません。その場合、お礼の代わりに、お供え物としてお線香やお花、果物などを持参すると良いでしょう。