お墓を生前購入することは、相続税の節税対策につながります。家族や自分自身のためにも、相続税対策について確認しておきましょう。しかし、お墓の生前購入にはメリット・デメリットや注意点があるため、詳しく紹介していきます。
(本記事は2024年4月16日時点の情報です)
- お墓は非課税財産のため相続税がかからない
- お墓を生前購入することで相続税の対策になる
- お墓を生前購入することのメリット・デメリット
- 生前購入についての注意点
お墓は非課税財産として相続税がかからない
お墓や墓地は、非課税財産であり相続税の課税対象にはなりません。相続税法第12条において、祭祀財産は非課税財産と定められています。祭祀財産とは、墓地や墓石、仏壇や仏具などの先祖を祀るための財産のことをいいます。
また国税庁のホームページでも「相続税がかからない財産」として、墓地や墓石、仏壇や仏具、神を祀る道具など日常礼拝をしているものであると明記されています。
墓地・墓石以外で非課税となるものとならないものを確認しておきましょう。
【非課税になるもの】
- 庭内神し(屋敷内にある神の社や祠など)
- 神棚
- 神体
- 神具
- 仏壇
- 位はい
- 仏像
- 仏具
- 古墳
ただし、骨董的価値があるなど投資の対象となるものや商品として所有しているものは相続税がかかります。
参照元:国税庁|相続税がかからない財産
生前にお墓やお仏壇を買うことで相続税対策に!
生前にお墓やお仏壇などの祭祀財産を購入しておくことで、相続税の節税対策になります。相続した後に相続人がお墓や墓地を購入した場合、その費用は相続財産から控除できません。しかし、生前に祭祀財産を購入しておけば、相続財産自体を減らすことができ、相続税の節税につながります。
お墓を生前購入する場合と亡くなった後に購入する場合を具体的にシミュレーションして比べてみましょう。このシミュレーションでは、被相続人となる父親が「預貯金1,000万円」と「自宅2,800万円」を所有しており、相続人は長男ひとりであると仮定します。
被相続人の生前にお墓を購入した場合
被相続人の父親が生前に300万円でお墓を購入した場合、その分の現金資産が減るため「預貯金700万円」と「自宅2,800万円」計3500万円が遺産総額となります。
被相続人の財産が基礎控除額以下であれば相続税はかかりません。相続税の基礎控除額は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算されるため、3,500万円の相続であれば、相続税はかかりません。
被相続人の死後お墓を購入した場合
被相続人の死後に長男が300万円のお墓を購入した場合、相続発生時の遺産相続は変わらず「預貯金1,000万円」と「自宅2,800万円」計3,800万円となります。法定相続人がひとりの場合、基礎控除額は3,600万円となるため、今回のケースでは相続税が課税されることとなります。
相続税を計算するとき、葬儀費用を遺産総額から差し引くことができますが、お墓は葬儀に直接必要がないため、お墓の購入費用を葬儀費用として控除することはできません。
相続税対策にも利点が?お墓の生前購入のメリットデメリット
お墓を生前購入し節税することのメリット・デメリットを比べてみましょう。
お墓を生前購入するメリット
まず、メリットとしては以下が挙げられます。
自分の思い描くお墓にできる
生前に自分の希望するデザインや場所などのこだわりを家族に伝えていたとしても、自分の思い描くお墓になるとは限りません。
一方、お墓を生前購入する場合、自分の希望に合ったお墓を選ぶことができます。
老後のお金の見通しが立てやすい
お墓の購入は、ある程度まとまったお金が必要になります。
どのくらい費用がかかるか把握しておくことによって、老後の生活費などの見通しが立てやすくなります。
遺族への負担が減らせる
納骨するお墓が決まっていないと遺族に負担をかけてしまう可能性があります。家族が亡くなった悲しみの中、葬儀の準備やお墓探しなどを行うのは精神的な負担にもなります。生前にお墓を購入しておいた場合、精神的にも経済的にも遺族の負担を減らすことができます。
名義変更する場合も税金の負担がない
生前に購入したお墓を、特定のひとりが相続した場合、名義変更が必要となります。一般的に名義変更には手数料がかかりますが、土地や建物の相続とは異なるため税金の負担はありません。
相続と関係なくお墓を継承できる
相続放棄をしても、それとは関係なくお墓を継承することができます。お墓は祭祀財産で、相続財産ではないため、相続放棄をした相続人であってもお墓などの祭祀財産は継承することが可能です。
お墓を生前購入するデメリット
反対に、以下をデメリットとして考えておく必要があります。
希望する墓地によっては生前購入できない
場所によってはお墓を生前購入できない墓地もあります。人気の高い公営霊園などでは、遺骨の埋葬場所に困っている方が優先されるため、いつ納骨するかわからないお墓の購入は認められていないところが多くあります。
生前から維持費や管理が必要になる
管理費がかかるお墓を購入した場合、納骨されていない場合でも管理費はかかってしまうため、生前から管理費を払い続けなければなりません。また、金銭面だけでなく、墓石の清掃などのお墓の管理も必要になります。
家族とトラブルになる可能性も
お墓選びは家族と相談しながら決めましょう。場所や墓石などを勝手に決めて購入した場合、家族とトラブルになる可能性もあります。自分の好きなようにお墓を選べるのは生前購入のメリットですが、一緒にお墓に入る家族の意見も取り入れ、全員が納得のいくお墓を選びましょう。
相続税対策としてお墓を購入する場合の注意点
相続税対策としてお墓を購入する場合の注意点を紹介していきます。
お墓を立てるまでに充分な時間が必要
お墓を祭祀財産とするなら、相続発生前までにお墓が完成していなければなりません。通常のお墓だと、お墓探しから完成まではおよそ半年かかるため、お墓を建てるまでに充分な時間が必要となります。
ローンを残して亡くなると債務控除の対象外
お墓のローンを残して亡くなると、そのローンは債務控除の対象外となります。債務控除とは、相続税を計算する際、相続財産から被相続人の債務(借金や未払金など)を差し引いて課税価格を計算することです。しかし、お墓などの祭祀財産は非課税財産のため、そのローン残額は債務控除の対象にはなりません。
かならず家族や親族に相談する
自分の死後、お墓を管理することになるのは家族や親族です。いずれ同じお墓に入ることになる可能性もあるため、家族や親族も納得できるお墓になるよう、かならず相談して決めるようにしましょう。
高額過ぎるお墓は非課税財産とみなされない
高額な祭祀財産は、相続税の課税対象となる場合があります。例えば、骨董品価値がある墓石や彫刻があるものや、金製の仏壇や仏具など、投資対象となってしまうものです。相場よりも著しく高額な場合は、課税対象となる可能性があるため、注意が必要です。
墓地でも空き地なら相続税がかかるケースも
墓地が非課税財産とみなされるのは、祭祀や日常礼拝を目的としたものであることが前提です。そのため、販売可能な状態である空き地や、墓地用地を貸し出しているなど収益性のある土地は課税対象となります。
ペットのお墓は例外
ペットのお墓は、相続税の非課税財産とはみなされず、課税対象となります。法律においてペットは「物」として扱うため、ペット用のお墓の購入は課税対象となってしまいます。
相続税対策に不安がある方はプロへの相談がおすすめ!
お墓などの祭祀財産は、相続税が課税されない非課税財産です。生前にお墓を購入しておくことは、相続税の節税対策につながります。お墓の生前購入だけでは相続税対策に不安がある方は、専門家への相談がおすすめです。
セゾンの相続対策サポートなら、生前の相続対策はもちろん、相続後の手続きまで幅広く対応してくれます。プロへ直接相談するのはハードルが高いと感じるのであれば、終活や相続に関する無料のセミナーもおすすめです。
おわりに
お墓を生前購入するメリット・デメリットや注意点などについて紹介していきました。家族や自分自身のためにも、相続について生前から考えておくことは重要なことのひとつです。相続税の対策に不安を抱えている方や、何から始めていいかわからない方は、まずは専門家へ相談してみてはいかがでしょうか。