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葬儀費用の控除はどこまでが対象?相続税の申告方法なども解説

葬儀費用の控除はどこまでが対象?相続税の申告方法なども解説
セゾンのくらし大研究 編集部

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故人の葬儀の費用の一部は「葬儀費用」として相続税の控除を受けることができます。控除を受けることができるものは、葬儀に必須であるものに限られています。一見必要そうであっても、控除を受けられないものがあるので注意が必要です。この記事では、控除が受けられるもの、控除を受けるために必要な書類と記入する情報、控除を受けることができる方についてまとめています。

(本記事は2024年4月15日時点の情報です)

この記事を読んでわかること
  • 故人の葬儀の費用の一部は「葬儀費用」として相続税の控除を受けることができる
  • 控除を受けることができるものには、葬儀に必須な内容に限られており、国税庁の定めるガイドラインに則っている
  • 控除を受けるために必要な書類とそこに記入する情報
  • 控除を受けることができる方にも規定があり、相続人や包括的な相続を受ける方以外には適用されないこと
相続税申告サポート
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遺産総額から差し引く葬儀費用の範囲

遺産総額から差し引く葬儀費用の範囲

葬儀では、故人を弔う一連の儀式の中で少なくない費用がかかります。これら葬儀費用は一般的には執り行う喪主が支払うことになりますが、この費用の一部は「葬式費用」として遺産総額から差し引くことができます。

相続税の計算をしやすくするために、この「葬式費用」として扱うことのできるものが相続税法基本通達によって国税庁に定められています。

参照元:国税庁|相続税法基本通達

葬儀会社へ支払った通夜や葬式・告別式の費用

葬儀会社へ支払った通夜や葬式・告別式の費用は控除の対象になります。

  • 自宅安置時の枕飾りや葬儀の祭壇設営費
  • 葬祭場の利用料
  • 棺・骨壺などの費用
  • 寝台車や霊柩車など出棺に必要な車両
  • 参列者を式場から火葬場まで連れて行くマイクロバスの利用料

火葬・埋葬・納骨した費用

火葬や埋葬・納骨にかかった費用も控除することができます。ただし、これは火葬・埋葬・納骨にかかった費用に限られ、墓石の彫刻料や法要の費用などは控除することができません。

石材店からの請求で、納骨費用と墓石の彫刻料がまとめられている場合にはその内訳を確認する必要があります。また、四十九日や一回忌などの法要にかかった費用も控除することができません。

なお、火葬の許可を得るために役所へ提出する死亡診断書の発行費用も控除の対象になります。

寺や教会などへ支払ったお布施代・お車代・御膳料など

寺や教会などへ支払ったお布施代も「葬式費用」として控除することができます。このお布施料には(仏教の場合)、戒名料、読経料が含まれます。加えて、宗教者へ交通費として渡す「お車代」や食事を辞退された時に渡す「御膳代」もこれに含まれます。

葬式以外では、納骨式のお布施も対象です。

通夜振る舞いなどの食事代や葬儀場までの交通費

通夜の後にももうけられる「通夜振る舞い」や火葬場から帰ってくる際にもうけられる食事「精進落とし」などこれらの食事代も「葬式費用」の対象となります。飲食店や弁当を利用した場合はもちろん、スーパーやコンビニエンスストアで購入しても含むことができます。必ず領収書やレシートを保管しておきましょう。

葬儀をサポートしてくれた方たちへのお礼代

通夜や葬式、告別式の受付や参列者の接待などを手伝ってくれた方たちへ渡す心づけ、霊柩車の運転手へ支払うお礼代も対象となります。

しかし、「葬式費用」の範囲は「被相続人の職業、財産その他の事情に照らして相当程度と認められるものに要した費用」に限られており、社会通念上相当と認められる金額内でなければなりません。

一般的には、役柄によって幅がありますが、お手伝いの方で2,000〜3,000円、世話役の代表の方でも1万〜3万円程度とされています。

参列者への会葬返礼品代

通夜や葬式、告別式に参列してくれた方たちへ渡す会葬返礼品代も含まれます。ただし、香典返しは含まれません。ですので、香典返しの代わりとして会葬返礼品を渡す場合は、香典返しとみなされ対象外となります。

遺体の捜索や運搬にかかった費用

遺体の捜索、遺体や遺骨の運搬は、葬儀に含まれるものではありませんが、葬儀を執り行うために必要な費用として扱われます。

葬儀に関わる費用の中で控除できないものは?

葬儀に関わる費用の中で控除できないものは?

ここまで、控除を受けることのできるものについて紹介しました。当然、控除の対象にならないものへの注意も必要です。続いて相続税の控除対象とならない項目についても解説します。

香典をいただいた方への香典返し

参列者からいただいた香典は、相続税の対象財産にはなりません。香典は、葬儀を執り行った喪主に対して参列された方からのお気持ちです。また、香典のお礼としての香典返しは、相続税の控除対象にはできません。葬儀に参列いただいた方に渡す会葬返礼品と混同しやすいので注意が必要です。

墓石・墓地・仏壇などの購入費

墓石や墓地の購入および墓地の借用にかかる費用、墓石への彫刻料などは葬式費用に含まれません。また、故人が生前に墓地・墓石を購入していた場合には、相続税における非課税財産にあたります。

故人を供養するための法要にかかった費用

故人を供養するために行われる初七日や四十九日および一周忌といった法要は葬式費用には含まれません。

ただし、告別式と初七日法要を同時に行う繰上げ初七日を行う場合には、葬儀会社からの領収書に内訳が区別して記載されていない場合において、これらの費用が葬式費用に含まれることがあります。

遺体の解剖などの特別処置にかかった費用

特殊な状況で亡くなってしまった方には、司法解剖などの解剖が行われることがあります。司法解剖や病理解剖などの医学上または裁判上の特別処置にかかった費用は、葬儀費用にはできません。

葬儀費用を控除するための相続税の申告方法

葬儀費用を控除するための相続税の申告方法

相続税の控除には相続税の申告書を作成する必要があります。相続税の申告書には、葬儀費用の控除分を明記する第13表「債務及び葬式費用の明細書」を作成する必要があります。

相続税の申告書第13表「債務及び葬式費用の明細書」への記入

申告書は税務署の窓口、あるいは国税庁のWEBサイトからダウンロードすることができます。葬儀費用は、第13表「債務及び葬式費用の明細書」に記入します。実際に記入に必要な要素を確認してみましょう。まずは「2 葬式費用の明細」です。葬式費用の明細に必要な要素は以下の通りです。

  • 支払先の名称・所在地(氏名・住所)
  • 支払い年月日   
  • 支払った金額
  • 支払いを負担した方
  • 支払いを負担する金額

続いて、その下の「3 債務及び葬式費用の合計額」を確認してみましょう。欄の葬式費用の合計を負担することが確定しているかを区別して、負担者別に表へと記入します。それぞれの金額の合計も最下部に記入してください。この合計金額が控除される金額となります。

領収書の添付

葬儀費用の控除の申請には、その証拠として明細書に領収書やレシートを添付する必要があります。そのため、葬儀会社や飲食店などで支払った場合は必ず領収書を発行してもらい、保存する必要があります。

領収書やレシートが発行されないお布施代やお礼代の場合

領収書やレシートは個人で用意したお布施やお礼代などに関して発行することができません。こういった支払いに対してはメモに次の事項を記載して領収書の代わりに保管しておいてください。

  • 支払いの名称・所在地(氏名・住所)
  • 支払年月日  
  • 支払った金額
  • 支払いの内容:お布施、心付けなど

このメモは自己申告となりますが、あくまでも正確な金額を記入してください。税務署には調査権限があり、税務署が不審に思った場合は調査が入ることもあります。不正が行われていた場合には追徴課税が発生し、加算税を課されます。

葬儀費用を相続財産から控除できる方とできない方

葬儀費用を相続財産から控除できる方とできない方

葬儀費用はすべての方が控除することができる訳ではありません。負担者によって相続財産から控除できない場合があります。控除を受けることができる方・できない方を下記に示します。自分が何に該当するのか確認してみましょう。

【控除できる方】

  • 相続人なくなった方の配偶者、子供、親、兄弟は法律に定められた相続人として相続を受けることができます。そのため、これらに該当する方は控除をうけることができます。
  • 包括受遺者財産を特定せず、資産も負債も区別なく包括的に財産を譲り受けた方のことです。相続人と同等の権利を持っているため、控除を受けることができます。

【控除できない方】

  • 相続人・包括受遺者以外の相続人・包括受遺者以外方は控除を受けることができません。例えば、遺言で特定の財産を相続された方などがこれに当たります。
  • 制限納税義務者国外に財産を所有しているなどの理由で、国内の財産のみに相続税が課税される方は控除を受けることができません。例えば、国外に住んでいる方は控除を受けることができません。
  • 相続放棄者相続破棄をした方は相続税の申告義務がありません。よって葬式費用を控除することはできません。ただし、死亡保険金を受け取った場合などで申告義務が発生した場合は控除を受けることもできます。

相続専門の税理士が相続税申告をサポート「セゾンの相続」

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この記事では葬儀にかかる費用がどのような内容なら、あるいはどのような方なら控除を受けることができるのかについて紹介しました。それぞれの項目に対してルールが細かく定められており、ご自身の状況がどのような内容に分類されるか判断が難しい場面もあるかもしれません。

「セゾンの相続 相続税申告サポート」では、相続税から葬儀費用のどこまでが控除対象となるのか、不安に感じた方、より詳しく知りたい方のためのサポートをおこなっています。専門の税理士が相続に関する不安や負担を解消いたします。下記サイトからご気軽にご相談ください。

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おわりに

この記事では以下について紹介しました。

  • 葬儀の費用には国税庁が定めた範囲の控除があること
  • 控除に必要な書類にはどのような情報・ものが必要なのか
  • 控除を受けることができる方には条件があること

葬儀費用の控除について細かく条件が定められており、煩雑な内容も多かったのではないでしょうか。トラブルなく控除の手続きを行えるように、実際に葬儀を経験する前に葬儀費用の控除について覚えておきましょう。

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