パソコンやスマートフォンが普及した今、終活の一環として、デジタル機器やインターネット上に保管されている大切な情報を生前のうちから整理する方法をご存知ですか?この「デジタル終活」は、パソコンやスマートフォンに溜まった情報を適切に整理し、トラブルを避けるために重要です。
この記事では、デジタル終活の必要性から、具体的な進め方、そして注意すべきトラブル事例まで紹介します。後悔のないデジタルライフを送るために、ぜひこの機会にデジタル終活を始めてみましょう。
(本記事は2024年3月28日時点の情報です)
- デジタル終活は、パソコンやスマートフォンなどに蓄積された情報を整理し、後悔のないデジタルライフを送るために重要
- 普通の終活とは異なり、デジタル終活はオンラインアカウントの管理や写真データなどの整理に焦点を当てる
- デジタル終活を行わないと、秘密にしておきたかったことが知れ渡るなどのトラブルが生じる可能性がある
- デジタル終活の始め方として、デジタル遺品を把握する、分類する、記録・処分するという手順がある
パソコン・スマホの終活とは
デジタル終活は、パソコンやスマートフォンなどのデバイスに蓄積された大切な情報を整理し、遺族にスムーズに引き継ぐことです。
これらのデジタルデータは「デジタル遺品」とも呼ばれ、自分の死後に遺族の知らないデジタル遺品が出てきたときに、そのパスワードやIDがわからずトラブルになることもあります。
そのような事態を避けるためにパスワードを共有したり、デジタル遺品を整理してエンディングノートに残したりするのです。
日本でのデジタル終活の認知率は高まっており、また、海外でもデジタル遺品に関する法律が整備されるなど、デジタル終活の重要性が広まっています。
普通の終活とデジタル終活の違い
普通の終活は、遺言書の作成や葬儀の事前準備など、物理的な財産や身の回りの整理に焦点を当てています。
一方、デジタル終活は、パソコンやスマートフォンに保存されたデジタル資産や情報の整理に重点を置いています。
これには、オンラインアカウントの管理や写真などのファイル整理、パスワードの共有などが含まれ、デジタル時代における新たな終活の形として注目されています。
デジタル終活しないとトラブルにつながることも
60歳以上のシニア世代のスマートフォン普及率が80%を超えるこの時代、デジタル終活をしないでトラブルになった事例は跡を絶ちません。
下記のようなトラブルが実際に起こっています。
- 友人や知人の連絡先や資産状況がわからない
- 遺影に使える写真がない
- ハッキング被害に遭う
- 死後も秘密にしておきたかったことが知れ渡る
下記でそれぞれの事例を説明します。
トラブル1 友人や知人の連絡先や資産状況がわからない
パソコンやスマートフォンのデータ整理を怠ると、遺された家族や知人が故人のスマートフォンのパスワードがわからず困るケースが増えています。
特に、スマートフォンのパスワードが不明な場合、友人や知人の連絡先やインターネットバンキングの情報などが手に入らないことがあります。さらに、パスワードを複数回間違って入力するとデータが初期化され、必要な情報が消えてしまうこともあります。
これらのトラブルを防ぐためにも、生前にデジタル資産の整理とパスワードの共有、エンディングノートへの記録が推奨されています。
トラブル2 遺影に使える写真がない
故人が生前に撮影した最新の写真やビデオなどは、遺族にとって重要なデジタル資産となります。これらの情報は、遺影選びや思い出の共有に欠かせません。
しかし、デジタル終活をせずスマートフォンのパスワードがわからないと、これらのデータにアクセスできず、結果として家族が持っている古い写真を遺影に使わざるをえないことがあります。
遺族が故人の思い出を大切にし、遺影にふさわしい写真を選ぶためにも、故人のデジタルデータへのアクセス権限やパスワード管理は、重要なデジタル終活となります。
トラブル3 ハッキング被害に遭う
デジタル終活をせず、SNSアカウントに長期間アクセスせず放置しておくと、不正アクセスされ、犯罪などに使われる可能性があります。
SNSアカウントは、私たちの個人情報、写真、連絡先など、多くの重要な情報を含んでいることがあります。これらの情報が悪意のある第三者に利用されると、個人情報の漏洩や詐欺などのリスクが高まります。
また、放置されたアカウントは、ハッカーにとって絶好のターゲットとなり、不正アクセスされる可能性が高まります。
デジタル終活の一環として、定期的にパスワードを変更したり、二段階認証を設定したりすることで、アカウントのセキュリティを強化しておきましょう。また、使用していないアカウントは削除することで、不必要なリスクを避けることができます。
しかし、パスワード管理は煩雑な作業であり、多くの人々が困難に感じています。そのため、パスワード管理アプリの使用や、パスワードのリストを作成し、エンディングノートに記しておくなど、適切な場所に保管するのも有効な手段となります。
遺族が余計なトラブルに巻き込まれないためにも、しっかりとデジタル終活を行いましょう。
トラブル4 死後も秘密にしておきたかったことが知れ渡る
終活に関する情報を発信するメディア「終活瓦版」を展開する株式会社林商会が実施した、デジタル遺品やデジタル終活に対する意識についてアンケートでは、90%以上の人が「自分が亡くなったらパソコンやスマートフォン・ネット上のデータは何かしら削除したい」と回答しています。
SNSでの親しい人とのやりとり、趣味に関するネットの閲覧・検索履歴など、個人情報も含む情報が露呈してしまうのは避けたいものです。
ところが、残したくない写真やSNSでのやりとり等が、死後に流出、または家族や他人の目に触れてしまうトラブルも多発しています。
これはハッキングによるものや、デジタル終活において家族にパスワードを共有したものの、秘密にしておきたかったデータの削除を忘れてしまい、家族や知人がその秘密を知ってしまうというトラブルです。
デジタル終活の始め方
遺族がさまざまなトラブルに巻き込まれないためにも、しっかりと進めておきたいデジタル終活。では、デジタル終活はどのように始めたらよいのでしょうか?そのやり方と手順をご紹介します。
- デジタル遺品になるものを把握する
- 分類する
- 記録・処分する
手順1 デジタル遺品になるものを把握する
デジタル遺品になるものを把握する第一歩として、オンラインデータとオフラインデータに分けて洗い出すことが重要です。
オンラインデータには、SNSのアカウントやクラウド上のファイル、電子メール、オンラインバンキングの情報などが含まれます。
オフラインデータには、パソコンやスマートフォン本体、外付けハードドライブなどに保存されているファイルや写真、ビデオが該当します。
金銭に関わるデータやアカウントから優先して洗い出し、漏れがないようにすることが重要です。具体的には、インターネットバンキングのアカウント情報や有料のサブスクリプションサービス、電子マネーなどが該当します。
オンラインデータ
オンラインデータとは、インターネットに接続しなければアクセスできないデータのことを指します。SNSのアカウント情報、電子メール、インターネットバンキングの取引記録、ネットショッピングの購入履歴、クラウドサービスに保存されたファイルや文書などが含まれます。特に現代では、オンライン上に情報を置くことも多く、これらのデジタルデータは重要な個人情報となっています。
例えば、FacebookやInstagram、X(旧:Twitter)といったSNSは、個人の趣味、活動、交友関係など、生活の様々な断片が記録されています。
一方で、Amazonや楽天といったネットショッピングサイトでは、過去の購入履歴や支払情報が蓄積されており、これらはデジタル遺品になる可能性があります。
また、Google DriveやDropboxといったクラウドストレージサービスに保存された文書や写真は、仕事や個人的な記録の保存に欠かせないものです。
オフラインデータ
オフラインデータとは、具体的にはパソコンやスマートフォンなどのデジタル機器に保存されたデータを指します。これらはインターネットに接続しなくてもアクセスできるデータで、例えばパソコンに保存されている画像や文書、音声ファイル、動画ファイルなどが該当します。
これらのデータは、故人が生前に作成したものやダウンロードしたもので、個人的な情報や思い出が詰まっていることも多いです。
手順2 分類する
デジタル遺品になるものを把握したら、その次は残すものと処分するものを分類しましょう。
「残すもの」には、重要なファイルやアカウント情報、価値あるデジタルデータなどが含まれます。これらは遺族にとって有用な情報や、故人の思い出となるものであることが多いです。
一方、「処分するもの」には、見られたくないデータや、後世に残す必要のない情報などが含まれます。これらは、適切なタイミングで削除することが求められます。
手順3 記録・処分する
デジタル終活では、「分類したデータの記録・処分」が重要なステップになります。「残すもの」については、エンディングノートやアプリなどで管理し、遺族がアクセスできるようにします。これには、重要なファイルやアカウント情報、価値あるデジタルデータなどが含まれます。
一方、「処分するもの」については、適切なタイミングで削除する必要があります。その際はセキュリティを考慮して慎重に取り扱いましょう。不要になったアカウントは正式に削除し、個人情報を含むファイルは復元不可能な方法で消去しましょう。
それぞれ、下記で説明します。
記録方法
エンディングノートへ記録するにあたって、まず「どこにあるデータなのか」を明確に記載しましょう。
これは、データが保存されているデバイスの種類(パソコン、スマートフォン、クラウドサービス等)と、具体的なファイルの場所(フォルダ名やクラウドのアカウント情報)を含みます。
次に、「どう扱ってほしいのか」を詳細に書き記します。例えば、特定のフォトアルバムは家族に共有してほしい、特定の文書は公開せずに削除してほしい、といった具体的な指示を残すことで、遺族が迷うことなく行動できるようにします。
加えて、デジタル資産へのアクセス方法も記載します。デバイスやクラウドサービスへのログインに必要なユーザー名・パスワード、必要に応じて二段階認証の回避方法など、遺族がスムーズにアクセスするための情報が必要です。
処分方法
自分で処分できるものは生前に整理し、不要なアカウントの削除や個人情報が含まれるデータの安全な消去を実施することが望ましいです。
その際には、特別なソフトウェアを使用するか、専門のデータ消去サービスを利用することで、データが第三者によって不正に復元されるリスクを最小限に抑えられます。
しかし、すべてを生前に処理することが難しい場合や、特定のデータを特定のタイミングで処分してほしいという希望がある場合は、信頼できる家族や友人、または専門家にその旨を伝え、エンディングノートに具体的な指示を残しておくことが重要です。
デジタル終活のポイント
ここでは、デジタル終活のポイントをご紹介します。
- デジタル終活していることを周囲に知らせておく
- 情報は定期的に更新する
- 重要な情報はわかる人だけが把握できるように
それぞれ説明します。
デジタル終活していることを周囲に知らせておく
デジタル終活を行ったことを周囲が知らないと適切な対応ができず、トラブルになる可能性があります。
例えば、遺族がパスワードを把握していないと、重要なアカウントへのアクセスが制限され、適切な手続きが行えない場合があります。
そのため、デジタル終活の進行状況や結果を適切な人々に伝え、理解してもらいましょう。
情報は定期的に更新する
デジタルデータは日々増え続け、パスワードも更新されることがあります。そのため、デジタル終活の内容も定期的に見直し、情報を更新することが重要です。
例えば、新しく登録したサービスやアプリ、変更したパスワードなどは、その都度エンディングノートを更新しましょう。また、不要になったアカウントやサービスは削除し、エンディングノートからも削除します。
重要な情報はわかる人だけが把握できるように
デジタル終活では、重要なログインパスワードなどの情報を直接ノートに記すのではなく、例えば家族だけにわかるヒントを残すなどの工夫が必要です。
これは、エンディングノートを紛失したり、盗まれたりした場合に、情報が悪用されてしまうことを防ぐためです。
具体的には、パスワードの代わりに、そのパスワードを思い出すためのヒントや、パスワードを保存している安全な場所への指示をエンディングノートに記載します。
重要なアカウント情報は、信頼できる家族や友人だけに伝え、他の人には知られないようにしておきましょう。
デジタル終活を助けるサービスも
デジタル終活への関心が高まっている今、デジタル終活を手助けするサービスも存在します。
- デジタル終活アプリ
- デジタル終活のサポートサービス
- 終活を支援する「ひとりのミカタ」
それぞれに見ていきましょう。
デジタル終活アプリ
デジタル終活を行うにあたって、資産管理を行ったりエンディングノートを作成できるアプリが役に立ちます。
このアプリは、デジタル資産の整理や大切な情報の記録を簡単にし、情報を安全に保管できるよう設計されています。
ユーザーはアプリを通じて、パスワードやアカウント情報、大切な思い出を含む写真などを一元管理でき、遺族が必要な情報にアクセスしやすくなるのです。
デジタル終活のサポートサービス
デジタル終活は、自己管理が難しい場合は専門家に依頼することも可能ですが、中のデータを抜かれたり、処理に法外な金額を要求されたりトラブルが生じるケースもあります。
最近はデジタル終活に特化したサービスも存在し、デジタル遺品の整理や情報の更新などをサポートしてくれますが、これらのサービスを利用する際には、一般的な家財処分の依頼時よりも慎重に業者選びをする必要があります。
終活を支援する「ひとりのミカタ」
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おわりに
デジタル終活は、パソコンやスマートフォンに蓄積された大切な情報を整理し、遺族にスムーズに引き継ぐために重要です。この記事では、デジタル資産の管理、トラブル事例、デジタル終活の進め方、およびサポートサービスについて詳しく説明しました。デジタル時代において、遺族が困らないよう、パスワードの共有やデジタル遺品の整理をしておきましょう。