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健康保険の任意継続はお得?利用するメリット・デメリットや国保との保険料を比較解説

任意継続はお得?退職後に健康保険任意継続制度を利用するメリット・デメリットと注意点を解説
セゾンのくらし大研究 編集部

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退職後の健康保険は、任意継続のほかにも家族の健康保険に被保険者として加入する方法や、国民健康保険に加入する方法があります。

  • 「健康保険の任意継続って良いの?」
  • 「任意継続の手続きが知りたい!」

退職後の健康保険を任意継続するかどうかでお悩みも多いのではないでしょうか。

健康保険を任意継続するには、資格喪失日(退職日の翌日)から20日以内に手続きを行わなければなりません。退職時の給与や扶養家族の人数などによっては保険料が割安になることがあり、よく利用されている制度です。

しかし、場合によっては国民健康保険に加入したほうが保険料が安くなる場合や、家族の健康保険に被扶養者として加入できる場合もあるため、加入前にきちんと比較検討することが大切です。

このコラムでは、健康保険の任意継続を利用するための条件や、利用するときのメリット・デメリット、知っておきたい注意点などを詳しく解説します。ぜひ最後までお読みください。

健康保険の任意継続制度とは

健康保険の任意継続は、退職などによって被保険者の資格を失ったとき、一定条件のもとにそれまで加入していた健康保険を個人で継続して加入できる制度です。加入者の希望(任意)によって継続するため「任意継続」や「任意継続健康保険」と呼ばれています。

退職後の健康保険には、以下の3つの選択肢があります。

  • 在職時に加入していた健康保険を任意継続する
  • 国民健康保険に加入する
  • 家族の健康保険に被保険者として加入する

任意継続の条件やメリット、デメリットを詳しく見ていきましょう。

健康保険任意継続の条件

健康保険の任意継続制度を利用する場合、以下の2つの条件の両方を満たしている必要があります

  • 健康保険の加入期間が資格喪失日(退職日の翌日)の前日まで継続して2ヵ月以上ある
  • 資格喪失日(退職日の翌日)から20日以内に加入手続きを行う

資格喪失日から20日以内に手続きをすることで、退職日の翌日から任意継続被保険者の資格が有効になります。保険証が届くまでの期間も健康保険給付の対象となりますので、健康保険の未加入期間は生じません。ただし、ご家族がいる場合は「被扶養者届」を忘れずに提出しましょう。

健康保険を任意継続するメリット

任意継続制度を利用するメリットは、主に3点あります。

  • 国民健康保険に比べて保険料が安くなる場合がある
  • 健康保険の空白期間をカバーできる
  • 健康保険の福利厚生を継続して利用できる

これまでと違い、企業の半額負担がなくなり全額自己負担となりますが、それでも国民健康保険料と比べると保険料が安くなる場合があります。なお任意継続の保険料については、加入している保険協会によって決定方法が異なるため、加入先の公式サイトにて詳細を確認してみてください。

また退職日の翌日に被保険者の資格を取得できるため、健康保険の未加入期間の発生を防げるのも大きなメリットです。退職後すぐに再就職しない場合などは、任意継続することで保険料を抑えながら健康保険に加入できます。

加えて、健康保険に継続して加入することで、国民健康保険にはない福利厚生の利用が可能です。内容は加入している健康保険によりますが、スポーツジムの費用補助や旅先の割引などが受けられる可能性があります。

健康保険を任意継続するデメリット

任意継続制度には、以下のようなデメリットも存在します。

  • 保険料が全額自己負担になる
  • 保険料を滞納すると資格を喪失する
  • 場合によっては国民健康保険より保険料が高くなる

任意継続は、保険料が全額自己負担です。上限額はあるものの、これまで企業が負担していた分も自己負担となるため、保険料が高いと感じるかもしれません。

扶養家族が多い場合はお得になることが多いのですが、独身や夫婦2人だけの世帯では割高になってしまう場合もあります。給与によって保険料が異なるため、家族全員分の国民健康保険料と比較してみましょう。

任意継続は、保険料を滞納すると資格を喪失するため、保険料の払い忘れがないように注意しなくてはなりません。保険料を支払い続けられるかどうかも合わせて確認しておきましょう。

任意継続の保険期間は2年間

健康保険を任意継続できる期間は、退職日の翌日から最大2年間です。任意継続健康保険の被保険者の資格を喪失する条件は、以下の5つです。

  • 再就職して新しい職場の健康保険に加入したとき
  • 保険料を納付期限までに納付しなかったとき
  • 75歳になり後期高齢者医療制度に切り替わったとき
  • 任意継続被保険者でなくなることを希望する旨を申し出たとき
  • 加入者が亡くなったとき

2年の加入期間を過ぎたあとは、任意継続健康保険被加入者の資格を失います。国民健康保険に切り替える、家族の健康保険に被扶養者として加入するなど、次の健康保険への加入手続きを忘れずに行いましょう。

参考:全国健康保険協会「資格の喪失について

健康保険を任意継続するときの保険料

任意継続健康保険の保険料や納付方法は、在職時とは異なるため注意しなければなりません。保険料の計算方法や納付方法について、詳しく見ていきましょう。

保険料は退職時の給与で決まる

任意継続健康保険の保険料は、退職時の標準報酬月額で決まります。標準報酬月額は、4月から6月の3ヵ月間の給与の平均支給額で、社会保険料を計算しやすいよう等級ごとに設定されている金額です。

例えば全国健康保険協会(以下、協会けんぽ)の場合、任意継続の保険料は「退職時の標準報酬月額 × 住まいがある都道府県の保険料率」で計算されます。金額は原則として、任意継続制度に加入している2年間は変わりません。

一方、国民健康保険料は前年の収入で決まるため、退職した年は高額になりやすいですが、翌年は下がる場合がほとんどです。国民保険料と任意継続の保険料を比較するときは、2年間の保険料を合計して比較しましょう。

保険料は全額自己負担

健康保険を任意継続した場合、保険料は全額自己負担しなければなりません。在職中の健康保険料は、企業とご自身が半分ずつ負担していましたが、退職後は企業の負担分がなくなります。よって、退職時の標準月額報酬が上限額を超過している場合を除き、保険料は約2倍になると考えておきましょう。

しかし、保険料として支払うのは、これまでどおり被保険者1人分のみです。被扶養者が何人いたとしても、被保険者(加入者)1人分の保険料で扶養家族全員の健康保険を継続できます

扶養家族が多い場合、1人あたりの保険料は安くなります。国民健康保険と比べて任意継続健康保険の保険料が安くなるのは、扶養家族が多い場合や退職時の給与が高額だった方になります。

保険料の納付方法

任意継続健康保険の保険料は、前納や口座振替、納付書を使って納付します。これまでのように給与からの天引きはできないので、注意しましょう。保険料を滞納すると資格を喪失するので、口座振替や前納制度を使って納付忘れを防ぎましょう。ただし口座振替を利用する場合は、残高不足にならないように注意が必要です。

任意継続と国民健康保険はどっちが安い?保険料をシミュレーション比較

任意継続と国民健康保険は、どちらが保険料が安いのか気になる方が多いのではないでしょうか。こちらでは、具体的な保険料のシミュレーションを行います。

今回のシミュレーションでは、退職前の月収を30万円と想定しています。また、任意継続する保険は、国内最大規模の健康保険事業者である協会けんぽであると仮定します。

なお、こちらで紹介している保険料はあくまでもシミュレーションです。国民健康保険料は、自治体や所得、家族構成によって大きく異なるケースがある点を頭に入れておきましょう。

任意継続の保険料のシミュレーション

退職前の保険料は、月額2万4,950円です。計算方法は、以下のとおりです。
30万円(標準報酬月額)×9.98%(東京都の保険料率)÷2=1万4,970円

一方、任意継続の保険料は月額2万9,940円となります。以下は計算式です。
30万円(標準報酬月額)×9.98%(東京都の保険料率)=2万9,940円

任意継続の保険料は全額自己負担であるため、上記のように、退職前の2倍程度まで上がるケースがあります。

参考:全国健康保険協会「令和6年度都道府県単位保険料率
   全国健康保険協会「令和5年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表

国民健康保険の保険料のシミュレーション

国民健康保険の保険料は、自治体や所得、家族構成によって異なります。今回は東京都大田区在住の30歳独身、年間給与所得360万円のケースでシミュレーションを行いましょう。

国民健康保険は、月額5万2,200円です。 計算式は以下のとおりです。

360万円(退職前の1年間の年収)-116万円(給与所得控除)=244万円(給与所得)
244万円-43万円(基礎控除額)=201万円(算定基礎額)
22万3,769円(医療分)+7万2,780円(後期支援分)+0円円(介護分)=36万485 円(年間保険料)
29万6,549 円÷12ヵ月=2万4,712円

※比較しやすいよう月収30万円×12ヶ月=360万円として年収を計算し、賞与はないものとしている
※算定基礎額から医療分・後期支援分の計算式は割愛

今回のシミュレーションでは、国民健康保険に加入したほうが、保険料は月額5,000円ほど安くなることがわかります。

参考:大田区「令和6年度 国民健康保険料の試算
   国税庁「No.1410 給与所得控除

健康保険を任意継続するときの手続き方法

任意継続制度の手続きは、書面で行います。退職時に人事部などの担当部署に相談して、必要な書類をもらいましょう。なお、任意継続制度については退職時に職場から説明があり、必要な手続きをしてくれるケースがほとんどです。

退職前に任意継続についての説明がない場合や、必要な書類がもらえなかった場合は、加入中の健康保険組合に問い合わせましょう。

任意継続被保険者資格取得申出書を提出する

任意継続制度を利用するには、任意継続被保険者資格取得申出書を提出しなければなりません。家族を被扶養者として引き続き任意継続健康保険に加入させたい場合は「被扶養者届」も同時に提出します。書類は職場や加入している健康保険組合でもらいましょう。

被扶養者として加入するには、続柄や収入要件といった条件があります。家族が加入要件を満たしているか確認してから手続きを行いましょう。

保険証が届くのは2~3週間後

任意継続健康保険の保険証が届くのは、加入手続きをしてから2〜3週間後ですが、資格取得日は退職日の翌日となります。任意継続の手続き中は、保険証が手元になくても保険給付を受けられます。継続して病院に通っている際は、手続き中であることを申し出れば対応してくれる場合がほとんどのようです。

もし任意手続き中に受診して医療費が全額自己負担となった場合は、保険証が届いてから所定の手続きを行います。支払った医療費のうち自己負担分以外は返金してもらえるので、忘れずに手続きしましょう。

健康保険を任意継続するときの3つの注意点

健康保険の任意継続制度を利用する場合、注意しておきたいことが3つあります。加入手続き後の変更はできないため、注意点を理解しておきましょう。

任意継続と国保のどちらの保険料が安いか確認する

任意継続の保険料は退職時の給与で決まるため、個々のケースで安いか高いかが異なります。ご自身の保険料は、実際の給与から計算してみないと分かりません。扶養家族として手続きする人数によっても、金額が大きく異なります。国民健康保険料との違いをしっかり調べてから手続きするようにしましょう。

加入手続きは20日以内に行う

任意継続制度を利用するには、退職後20日以内に手続きをしなければなりません。期間を過ぎてしまうと加入手続きすることはできないため、ゆっくり検討している時間はありません。

検討した結果、国民健康保険に加入する場合は、手続き期間が2週間以内のためさらに急ぐ必要があります。退職前から退職後の健康保険について比較検討し、退職後は早めに加入手続きを済ませるようにしましょう

保険料の払い忘れがないようにする

健康保険の任意継続制度は、保険料を滞納すると資格を喪失してしまいます。一度資格を喪失してしまうと再加入はできません。前納や口座振替を利用するなどして、払い忘れが発生しないよう注意しましょう。

健康保険の任意継続に関するよくある質問

ここでは、健康保険の任意継続に関する疑問とその答えを解説します。特に、申請期限を過ぎた後の対応には注意点があるので、ぜひ参考にしてみてください。

任意継続で通院・治療状況が会社にバレるのか?

任意継続で病院に行っても、通院履歴や治療状況が元の勤務先にバレません。会社員としてではなく、個人での加入となるためです。

通院先や治療内容などの情報が会社に知られることはないので安心です。

任意継続の申請期限(資格喪失日から20日以内)過ぎたらどうなる?

任意継続の申請期限は、退職日の翌日から20日です。期限を過ぎると、任意継続はできません。

なお、申請期限を過ぎた場合でも、国民健康保険へ加入が義務付けられています。迅速に加入の手続きを行いましょう。

おわりに

退職後は何らかの健康保険への加入が必須です。健康保険を任意継続する場合は、加入前によく検討してから手続きするようにしましょう。

特に保険料は扶養家族の有無や人数、退職前の給与など個々のケースで異なるため、どの健康保険が最適かは計算してみないと分かりません。期限までに手続きできるよう、早めに検討して、資格喪失日から20日以内に加入手続きを行いましょう。

また加入後は、納付忘れが起こらないよう注意することが大切です。前納や口座振替を利用して、資格を喪失することがないように気を付けましょう。

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

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