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マイナンバーカードの口座紐付けが怖いといわれる理由は?紐付けのメリット・デメリットを解説

マイナンバーカードの口座紐付けが怖いといわれる理由は?紐づけのメリット・デメリットを解説
辻本 剛士

執筆者

独立系ファイナンシャルプランナー・金融特化ライター

辻本 剛士

大学卒業後、医薬品・医療機器会社に就職。在職中にFP1級、CFP、宅地建物取引士に独学で合格。会社を退職後、未経験から神戸で数少ない独立型FPとして起業。現在は相談業務、執筆業務、セミナーを中心に活動中。

マイナンバーカードと銀行口座を紐付けするにあたって、セキュリティ面で不安を抱える方は多いでしょう。過去には人為的ミスによる誤登録の事例が報告されていることから、不安に感じるのは無理もありません。

マイナンバーカードのシステムは政府の管理課のもとセキュリティの強化に伴い、マイナンバーカードと銀行口座を紐付けすることでさまざまなメリットを受けられるので、積極的に利用したいところです。

この記事では、マイナンバー制度の概要から、口座紐付けに伴うメリット・デメリットについて解説します。紐付けの実態を正しく理解でき、安全に活用できる内容になっているため、ぜひ参考にしてみてください。

(本記事は2024年7月22日時点の情報です)

マイナンバー制度とマイナンバーカードの仕組み

マイナンバー制度とマイナンバーカードの仕組み

まずはマイナンバー制度の概要と、お住まいの自治体に申請することで発行されるマイナンバーカードについて見ていきましょう。

マイナンバー制度

マイナンバー制度により、すべての住民に異なる12桁のマイナンバーが付与されます。行政の効率化、国民の利便性向上および公平・公正な社会の実現を目的に導入された制度です。

マイナンバーを各種行政手続きの申請時に提出することで、これまで社会保障や税関連の手続きで必要だった課税証明書類などの提出が不要になります。また、国民一人ひとりの所得状況や社会保障の受給状況などがより正確に把握されるようになり、税金の不当な免除や社会保障の不正受給を防げることも期待されています。

マイナンバーカード

マイナンバーカードは、マイナンバーが記載された顔写真付きのICカードで、運転免許証などの身分証明として利用できます。マイナンバーカードに記載されている項目は、以下のとおりです。

  • 氏名
  • 住所
  • 生年月日
  • 性別
  • 電子証明書の有効期限の記載欄
  • セキュリティコード
  • 臓器提供意思表示欄

さまざまな手続きの効率化が図られ、利便性の高い行政サービスを受けられます。

例えば、住民票の発行が必要な場合、これまでは市役所の窓口で発行する必要がありました。しかし、マイナンバーカードがあれば近くのコンビニでも発行できるようになるため、市役所に行く必要がありません。

マイナンバーカードから個人情報が漏れることはほとんどない

マイナンバーカードから個人情報が漏れることはほとんどない

マイナンバーカードには、高度なセキュリティ対策が施されています。まず、カードに記録されている情報はICチップ内に暗号化された状態で保存されており、不正に読み取ることは極めて困難です。

また、マイナンバーカードを利用する際は、カードに搭載された顔認証システムにより本人確認が行われます。これにより、仮にカードを紛失したり盗難に遭ったりしても、第三者が不正に利用することを防げます。

さらに、マイナンバーカードのシステムは政府の管理下で運用されており、厳重なセキュリティ管理が行われています。システムへのアクセスは限定された人員のみに許可され、不正アクセスを防ぐための多層的なセキュリティ対策が講じられています。また、定期的なセキュリティ監査や脆弱性検査も実施され、常に高いセキュリティレベルが維持されています。

このように、マイナンバーカードには十分なセキュリティ対策が施されているため、個人情報が外部に漏れるリスクは非常に低いと言えます。ただし、カードの暗証番号を他人に知られないよう、利用者自身も十分な注意を払うようにしましょう。

マイナンバーと銀行口座の紐付けに関連する制度

マイナンバーと銀行口座の紐付けに関連する制度

マイナンバーと銀行口座の紐付けに関連する制度として、次の2つが挙げられます。

  • 預貯金口座付番制度
  • 公金受取口座登録制度

両制度とも、2024年6月時点では国民を対象とした預金口座との紐付けは義務化されていません。それぞれの制度について、詳しく見ていきましょう。

預貯金口座付番制度

預貯金口座付番制度は2018年1月に開始された制度です。預貯金者においては紐付けは任意となり、希望する場合は金融機関の窓口等で手続きを済ませる必要があります。また、金融機関側は預金者がマイナンバーを届け出た場合、預金口座と紐づけることが義務付けられています。

銀行口座と紐づけることによって、将来的に相続や災害時などに個人の預金口座をひとつの金融機関の窓口で簡単に確認できるようになります。これにより、被相続人の銀行口座を容易に把握でき、相続手続きをスムーズに進めやすくなるのです。

公金受取口座登録制度

公金受取口座登録制度は、国や地方自治体からの給付金受取をスムーズにすることを目的に導入されました。この制度を利用することで、給付金などの申請時に必要な書類の提出や、口座確認の手間を大幅に簡略化できます。

登録はマイナンバーカードを利用し、オンラインのマイナポータルから行うことができ、登録すると以下の情報がマイナポータルに保存されます。

  • 金融機関名
  • 金融機関の本支店名
  • 預貯金口座の種別(普通または当座)
  • 口座番号(ゆうちょ銀行の場合は記号番号)
  • 口座名義

さらに、口座情報と共に以下の個人情報が記録されます。

  • 氏名
  • 住所
  • 生年月日
  • マイナンバー(個人番号)
  • 連絡先電話番号やメールアドレス
  • 登録申請の受付機関名
  • 登録申請日
  • 処理年月日(公的給付支給等口座登録簿に記録した年月日)

口座を紐付けるメリット2つ

口座を紐付けるメリット2つ

マイナンバーを銀行口座と紐づけることで得られるメリットは、以下の2つです。

  • 給付金や還付金の手続きが簡単
  • 給付金を早く受け取れる

ひとつずつ見ていきましょう。

1. 給付金や還付金の手続きが簡単

給付金や還付金の申請は通常、複数の書類を提出する必要があり、手続きに多くの時間を要します。しかし、マイナンバーカードと口座を紐付けすることで、これらの手続きが大幅に縮小できます。

給付金・還付金の申請に必要な書類の例

  • 住民票の写し
  • 納税証明書
  • 振込先口座がわかる書類
  • その他給付金・還付金を申請するために指定された書類

※申請する給付金・還付金により、必要な書類は異なります

さらに、手続きで不備があると再申請が必要になりますが、事前に紐付けをしておけばそのような心配も不要です。

2. 給付金を早く受け取れる

公金受取口座を登録することによって、給付金の申請時に口座情報の確認が不要になるので、通常よりも早く受け取れます。公金受取口座では、以下の項目に関する給付金の受け取りが可能です。

  • 年金
  • 税金関連の還付
  • 子育て給付
  • 就学支援
  • 障害福祉
  • 生活保護
  • 労災保険・公務災害補償
  • 失業保険
  • 職業訓練給付
  • 健康保険
  • 介護保険
  • 災害被災者支援
  • その他の公的支援

給付金の受け取りまでの時間が大幅に短縮できれば、緊急の支援が必要な場面にも迅速な対応が可能になります。

とくに新型コロナウイルス(COVID-19)の流行以降、政府が実施したさまざまな給付金の申請において、マイナンバーカードと口座が紐付けられていることで給付金がスムーズに振り込まれています。

口座を紐付けるデメリット3つ

口座を紐付けるデメリット3つ

マイナンバーカードと銀行口座を紐づけることで、以下のようなデメリットもあります。

  • 国や自治体に預金口座の存在を知られてしまう
  • 紐付ける作業が面倒
  • 過去にデータ誤登録の事例があった

気になる方は、ぜひ参考にしてみてください。

1. 国や自治体に預金口座の存在を知られる

マイナンバーカードと口座を紐付けると、国や自治体に預金口座の存在が知られることになります。

そのため、国や自治体に貯金残高を把握されてしまうのではないかと不安に感じる方は少なくありません。

しかし、デジタル庁はこの懸念について公式ホームページで明確に否定しています。

参照元:デジタル庁|よくある質問:預貯金口座付番制度について

具体的には、国や自治体が把握するのは給付金などの支払いに必要な口座情報のみであり、個人の資産全体は調査できません。口座情報の登録時に共有する情報は、以下のとおりです。

【共有する情報】

  • 金融機関および店舗の名称
  • 預貯金の種別(普通預金・当座預金など)
  • 口座番号または記号番号
  • 口座名義(カタカナ表記)

ただし、税務調査の際には税務当局が銀行から預金情報を求めることがあります。具体的には、口座残高や取引記録などの預金口座の情報が明らかになる可能性があります。

2. 紐付ける作業が面倒

マイナンバーカードと口座を紐付けるためには手続きが必要であり、手続き時のみ手間がかかります。この手続きは預貯金口座付番制度、公金受取口座登録制度の両方で必要です。

預貯金口座付番制度の手続きは金融機関窓口でのみ対応しており、マイナポータルからの手続きはできません。一方の公金受取口座登録制度については、パソコンやスマホからマイナポータルにアクセスして手続きを行います。

公金受取口座登録制度の登録に必要な端末と書類は、以下のとおりです。

  • マイナンバーカード
  • 4桁のセキュリティーコード(暗証番号)
  • 登録する預貯金口座番号(通帳など)
  • マイナンバーカードを読み取る機器(スマホ、パソコン、ICカードリーダーなど)

3. 過去にデータ誤登録の事例があった

マイナンバー制度では、過去に本人以外のマイナンバーカードに預貯金口座が紐付けられるという誤登録がいくつかの自治体で発生しています。これにより、本人に無関係な取引や誤った支払いが行われる事例が報告されました。

実際の事例として、2023年6月に埼玉県所沢市で発生した問題が挙げられます。この事件では、2015年12月に市職員が同姓同名で、生年月日も同じ別人のマイナンバーカードを誤って紐付けてしまいました。その結果、誤って高額介護合算療養費が別の方に振り込まれるという問題が発生しました。

参照元:所沢市|後期高齢者医療における住所地特例対象者のマイナンバーの紐づけ誤りの発生について(7月14日発表)

このような事例もあり、各自治体は再発防止のために確認作業の徹底に努めています。

過去に誤登録があったことは事実です。しかし、日本の総人口1.2億人に対して数えられるほどの件数であることから、さほど気にしなくてもいい事案と言えるでしょう。

マイナンバーカードの紐付けに関するよくある質問

マイナンバーカードの紐付けに関するよくある質問

Q.マイナンバーと銀行口座の紐付けは今後義務化されるのでしょうか?

現時点では、マイナンバーカードと口座の紐付けが義務化されることはないでしょう。ただし、この制度の趣旨を考えた際に、将来的には義務化される可能性もあります。

仮に義務化に向けて進めていくにしても、一部の反対意見にも耳を傾ける必要があるため、実現されるまでにはある程度の時間を要するでしょう。

Q.子どもの口座がありません。子どものマイナンバーに親の口座を登録することはできますか?

子どものマイナンバーカードに親の口座を登録することはできません。口座を紐づける際には必ず本人名義の口座が必要です。子ども名義の口座を持っていない場合は、新たに口座を開設する必要があります。

Q.給付金の受け取り口座として登録できない銀行などはありますか?

デジタル庁の「公金受取口座登録が可能な金融機関一覧」に記載されている銀行や信用金庫、信用組合などの金融機関の口座であれば登録できます。

参照元:デジタル庁|公金受取口座登録が可能な金融機関(銀行)

Q.登録口座に給付金が振り込まれた際に、お知らせはきますか?

給付金が振り込まれた際に、デジタル庁から通知が来ることはありません。ただし、登録している金融機関によってはお知らせ通知を受け取れることもあります。

FPから見た「マイナンバーカードの口座紐付け」の結論!

マイナンバーカードの口座紐付けに対して不安を持たれる方は多いでしょうが、実際にはさまざまなメリットを受けられるため、正しく理解することが大切です。改めて、メリット・デメリットをそれぞれ紹介します。

メリットデメリット
・給付金や還付金の手続きが簡単
・給付金を早く受け取れる
・国や自治体に預金口座の存在を知られてしまう
・紐付ける作業が面倒
・過去にデータ誤登録の事例があった

口座を紐づける際に最初の手続きは手間がかかるものの、紐付けてしまえば給付金や還付金などを簡単に受け取れます。

まずは、預貯金口座付番制度から利用するなど、段階的に試してみてはいかがでしょうか。手続きの際は金融機関の窓口に相談し、手続きの流れや注意点を確認しながら進めてみてください。

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