近年の猛暑もあって、夏バテを心配している方も多いのではないでしょうか?夏バテは食欲不振や疲労感だけでなく、熱中症にも繋がるため注意が必要です。
本記事では、夏バテの症状や原因、そして夏バテ予防に効果的な食事法について詳しくご紹介します。
夏バテとはどのような症状?
夏バテとは、夏の気候を原因とする自律神経の乱れや脱水症状などにより、身体に起こるさまざまな不調の総称のことで、温暖化が進む最近の日本では、真夏だけの症状ではなくなっています。
放置すると熱中症や他の疾患を引き起こす危険性もあるため、身体からのSOSを見逃さないようにしましょう。
主な症状は、全身の倦怠感と疲労感、食欲不振、頭痛やめまいです。以下に詳しく見ていきましょう。
全身の倦怠感と疲労感
夏バテになると、何だか身体が怠く、寝ても疲れが解消せず、翌日に持ち越すようになります。また、暑さによって睡眠不足になることで、さらに疲労感が増すという悪循環に陥ることもあります。疲労感が重くならないうちに、対処が必要です。
食欲不振
夏の暑さで自律神経が乱れると食欲が低下します。冷たいものの取り過ぎによる胃腸の疲れが原因になることもあります。
体に必要なエネルギーが不足すると、夏バテをさらに悪化させてしまうので、食べ方や栄養素の見直しが必要です。
頭痛やめまい
夏バテが進むと頭痛、めまいや立ちくらみが起こることがあります。頭痛は脱水から、めまいや立ちくらみは大量の発汗によって脳への血流が一時的に減少することで起こります。
症状が進むと熱中症になってしまうため、喉の乾きを感じる前に、こまめに少しずつ水分補給をして予防することが重要です。
夏バテが起こる原因とは?
人間の身体は外気温に関わらず、体温を一定に保とうとする働きがあります。夏の暑さで上昇した体温を下げるために、汗を大量に排出するなどがその一例です。
しかし、湿度が高いと汗の蒸発が妨げられ、体温調節などの自律神経が乱れることから、身体の不調を引き起こします。これが 「夏バテ」の主な原因と言われています。
また、その他にも、冷房の効いた涼しい室内と暑い外気との温度差、大量の発汗による水分・ミネラル不足、冷たいものの摂取過剰による胃腸のトラブル、暑さによる睡眠不足なども原因に挙げられます。
現代人はさまざまな夏バテの原因に晒されているのです。
管理栄養士に聞く、夏バテを防ぐ食生活
夏バテを予防するには日頃から生活習慣を整えておくことが大切です。
急激な温度差や身体の冷やし過ぎに注意する、生活リズムを整えて質の良い睡眠をとる、こまめな水分補給などが一般に知られますが、もう一歩先、夏バテを寄せ付けない身体を作るためには食生活の見直しが有効です。
管理栄養士の篠原絵里佳さんに、夏バテを予防する食事法についてお話を伺いました。
一日3食を規則正しく
夏バテを引き起こす原因はさまざまですが、食習慣が原因ということもあり得るのでしょうか?
大いにあり得ます。食事には栄養素を補うだけでなく、生体リズムを整えるという役割があります。朝食を抜くという方もいますが、欠食すると生体リズムが乱れ、自律神経やホルモンバランスが乱れ、免疫力が低下する原因にもなります。一日3食は理に適った食事法なんです。
なるほど。でも年齢とともに代謝が下がると聞きます。そうなると、一日3食を維持しつつ、カロリー摂取量を調整する必要がありそうですね。
年齢や活動量に応じてカロリーを意識することは大切です。しかし、だからといって安易に食事を抜くのは要注意!特に朝食は、必ず食べるようにして欲しいです。朝食で朝一の身体にエンジンをかけられないと、代謝が低下し、体温は日中も低空飛行状態。夜の安眠に必要な体温低下もスムーズに行われず、睡眠不足により夏バテしてしまうという悪循環を招いてしまいます。
つまり、回数を減らすよりも、各食事の内容を工夫する方が良いということですね。
その通りです。夏バテを予防するためには欠食せず、毎日規則正しい時間に食事を摂ることから始めてください。
単品で済ませない
献立はどのように考えるのが良いのでしょうか?
避けて欲しいのが、単品で済ませてしまうこと。暑さで食欲が落ちると、喉越しのいい素麺や冷やしうどんだけにしてしまいがちですが、栄養素の大半が炭水化物となってしまい、どうしても栄養に偏りが出てきてしまいます。栄養素はそれぞれが連動し、補い合って働いています。足りないものがあると栄養素が持つ効果を引き出すことできません。
なるべく偏りなく栄養素を摂るには、どうすればいいのでしょうか?
毎日の献立を主食、主菜、副菜に分けて、それぞれの役割を考えることで無理なく補うことができます。
主食、主菜、副菜、それぞれの役割、選び方のポイントを教えてください。
主食はご飯、パン、麺類といった炭水化物(糖質)。体内に吸収されるとエネルギーを生み出します。特にご飯は、タンパク質、ビタミン、ミネラル、食物繊維なども含む良質な糖質なので、夏バテ予防を考えるなら、主食はお米中心の生活を心掛けてください。
主菜はやはりお肉やお魚がいいのでしょうか?
お肉やお魚はもちろん、卵や大豆製品を使ったメニューがおすすめです。主菜の目的はタンパク質や脂質を摂取すること。筋肉を作る材料となり、代謝のよい身体作りに役立ちます。
一人暮らしの方だと、主食と主菜で済ませてしまう方も多いと思いますが、副菜にはどのようなものをプラスしたら良いのでしょうか?
野菜、海藻、きのこ、芋、豆類などを用いたメニューがおすすめです。これらの食材からビタミン、ミネラル、食物繊維を摂取することが理想的です。具体的なメニュー例をいくつか挙げてみましょう。
1.野菜のおひたし:ほうれん草や小松菜を茹でて、かつお節と醤油で和えるだけで簡単です
2.きんぴらごぼう:食物繊維が豊富で、作り置きにも適しています
3.ひじきの煮物:カルシウムやカリウムが豊富な海藻を使った定番の副菜です
4.冷やしトマト:夏場は特におすすめ。ビタミンCが豊富です
5.なすの揚げ浸し:夏野菜を使った栄養満点の一品です
6.切り干し大根の煮物:乾物を使った常備菜として便利です
これらの副菜は、さまざまな栄養素を組み合わせることで、他の栄養素の働きをサポートします。例えば、ビタミンCは鉄分の吸収を助けるので、ほうれん草のおひたしとトマトを一緒に食べるのも良いでしょう。
また、最近ではフリーズドライのお味噌汁など便利なアイテムも増えているので、自炊と組み合わせて上手に取り入れてください。忙しい日は、スーパーの惣菜コーナーで2〜3種類ほど小鉢を選ぶのも良い方法です。
具体的な例を挙げていただき、とても参考になりました。これなら、一人暮らしの方でも簡単に取り入れられそうですね。
副菜を意識して取り入れることで、バランスの良い食事に一歩近づきます。最初は1品でも構いません。徐々に種類を増やしていけば、自然と栄養バランスの良い食生活が身につくはずです。
疲労回復にはビタミンB群
夏バテを防ぐためにおすすめの食材や、組み合わせについて教えてください。
疲労回復のために大切なのはビタミンB群。中でも特に摂って欲しいのは、糖質をエネルギーに変えることで疲労回復に役立つ栄養素ビタミンB1です。豚肉や鰻、レバー、豆類、モロヘイヤ、絹ごし豆腐に多く含まれています。
暑気払いの鰻だったり、夏に冷奴や枝豆が食べたくなるように、身体が必要なものを自然と欲しているのですね。
そうなんです。ただ、ビタミンB1は水に溶けやすく調理のときに栄養が失われやすい栄養素です。汗と共に流出しやすいという特徴もあるため意識して摂る必要があります。また、ビタミンB1の吸収をサポートするのがアリシンと呼ばれる栄養素。ネギやニンニクに含まれるので、豚の生姜焼きなどは夏バテ予防に最適なメニューです。そしてもう一つ、意識して摂って欲しいのが、糖質や脂質の代謝を促すビタミンB2です。
ビタミンB2はどのような食材に含まれるのでしょうか?
ビタミンB2は青魚や牛乳などの乳製品や納豆に多く含まれます。焼き魚もいいですが、手軽に取り入れるには、鯖缶などを活用するのもおすすめ。ストックも出来ますし、素麺のつけだれに混ぜても美味しいですよ。
水分はこまめに補充する
夏バテ対策には、水分不足も気を付けたいポイントです。大量に汗をかくと水分と共にミネラルも不足するので、胃腸を労わるために温かいお茶や味噌汁などで食事でも効率的に水分やミネラルを補いましょう。
やはり飲み物はスポーツドリンクが良いのでしょうか?
暑さで大量に汗をかいた場合には、塩分を含んだスポーツドリンクがおすすめですね。ただ、一口にスポーツドリンクと言っても「アイソトニック飲料」と「ハイポトニック飲料」があり、おすすめの摂取シーンに違いがあります。
「アイソトニック飲料」は、例えばポカリスエットやアクエリアスなどです。⽔分と電解質のバランスが⼈間の体液と近いため、消化管での吸収が早く、汗として排出された体液の補充となります。このタイプのスポーツドリンクは、運動中や運動直後に効果的です。
⼀⽅、「ハイポトニック飲料」はイオンウォーターやヴァームウォーターなどです。⽔分が多く電解質が少ないため、⽔分吸収が早いという特徴があります。こちらは⽇常⽣活の⽔分補給に効果的です。
外食では食卓に並ばないメニューを
外食の際のメニューの選び方にコツはありますか?
定番メニューで言えば、生姜焼き定食や焼き魚定食などは夏バテ予防には最適ですね。主菜や副菜の品数が多い定食だとなお理想的です。
また、もうひとつの目安として、普段家庭では食べないものを頼んでみるのもおすすめです。毎日気を使っていてもどうしても偏りは出てしまうものなので、食卓には並ばないメニューを見つけたらぜひ積極的に選んでみてください。
サプリメントや間食も上手に取り入れて
サプリメントも摂った方がいいのでしょうか?
日常的に不足しやすい栄養素はサプリメントで補うのも良いと思います。ただ、添加物や甘味料など無駄なものが入っていない良質なものを選ぶことが大切です。服用中の薬がある方は、主治医と相談してから取り入れるようにしてください。
間食は必要ですか?
少食の方や食欲が落ちている高齢者の方であれば、間食で足りないカロリーを補うようにしてください。ヨーグルトやカスタードプリン、アイスクリームなど、乳製品は消化も良く最適です。
夏バテになった時は何を食べる?
実際に夏バテになってしまった時は、どのような食事を心掛けたらいいのでしょうか?
少量でも栄養が摂れて、消化の良いものを選んでください。定番はお粥ですが、タンパク質が摂れる茹で卵や、白身魚、鶏のささみなども最適です。胃腸も疲れているので、納豆やオクラなどネバネバした食材と組み合わせると疲れた身体がホッとすると思います。
食事の時間を楽しむ工夫を
最近では食の情報が溢れていますが、夏バテ予防を意識するのであれば、一日3食をバランス良く取ることが大切です。
そして栄養素を意識するくらい、楽しい、美味しいと感じながら食べることが大切だと思っています。
そのためにはデパ地下のお惣菜をお気に入りのお皿に移し替えてみたり、誰かと一緒に食べるといった工夫も効果的。毎日の献立を考えるように、自分の気持ちがちょっと上がるような食環境も意識してみてください。
まとめ 食生活を見直して夏バテを寄せ付けない体を作ろう
夏バテは身体が発信するSOSシグナルです。症状が軽いうちに対処し、体調を整えることが大切です。そして何よりも夏バテを予防するために、早いうちから食生活を見直し、体力をベースアップさせておくことが効果的です。
この記事で紹介した夏バテ予防のポイントを、以下にまとめます。
- 規則正しい食事
- 一日3食を定時に摂ることで生体リズムを整える
- 朝食を抜かず、代謝を上げるきっかけを作る
- バランスの良い食事
- 主食、主菜、副菜をバランス良く組み合わせる
- 単品で済ませず、栄養バランスを意識する
- 夏バテ予防に効果的な栄養素
- ビタミンB1:豚肉、鰻、レバー、豆類などから摂取
- ビタミンB2:青魚や乳製品から摂取
- アリシン:ネギやニンニクと組み合わせてビタミンB1の吸収を促進
- 水分補給の工夫
- こまめに水分を摂取し、脱水を防ぐ
- スポーツドリンクを状況に応じて適切に選択
- 外食時の選び方
- 生姜焼き定食や焼き魚定食など、バランスの良いメニューを選ぶ
- 普段家庭では食べないメニューを選び、栄養の偏りを防ぐ
- 食事を楽しむ工夫
- 美味しく楽しく食べることで、食欲を維持する
- 食環境にも気を配り、食事の時間を大切にする
これらの夏バテ予防の知恵を毎日の食卓に取り入れることで、体調を整え、夏バテに強い身体づくりができます。一度にすべてを実践するのは難しいかもしれませんが、できることから少しずつ始めていきましょう。今年は賢く健やかに夏を乗り切り、元気に秋を迎えましょう。