ご家族が亡くなりまだ気持ちに整理がつかないなかで、相続の手続きを正確に進めていくのは並大抵のことではありません。相続はそれ自体が大変な手続きですが、投資経験がない方にとっては、投資信託の相続はさらに困難なものになるでしょう。
- 「投資信託を相続することになったけれど、具体的なやり方が分からない」
- 「投資信託の相続に関する知識が全然なくて困っている」
このコラムでは、上記のような疑問やお悩みに役立つ、投資信託の相続の流れや注意すべきポイントを解説しています。投資信託の相続に興味のある方必見の内容になっていますので、ぜひ最後までご覧ください。
投資信託とは?
まず、突然投資信託を相続することになった方のために、投資信託とは何かについて簡単に説明します。投資信託とは、投資を業とするプロが投資家からお金を集め、そのお金を株式や債券などに投資・運用する投資商品のことです。「投信」や「ファンド」と呼ばれることもあります。投資信託は、以下の3つが主体となって運営されています。
- 販売会社(証券会社、銀行、郵便局など)
- 信託銀行
- 運用会社
以上の3社のうち、販売会社(証券会社、銀行、郵便局など)が窓口となり、投資家と投資信託をつなぐ役割を担います。そのため、投資家は販売会社である金融機関とやり取りを行います。
投資信託を相続する際に注意すべき3つのポイント
一連の流れを確認する前に、投資信託を相続する際に注意すべき3つのポイントを解説します。このポイントを理解することで、遺産の分配方法を決めやすくなります。
投資信託の価値は毎日変わる
投資信託の価値のことを「基準価額」と呼びますが、この基準価額は日々変動します。ある日の時点で100万円だった投資信託が、1週間後には90万円や110万円になっていることもあります。投資信託の価値は日々変動するという特徴があり、この点は現金を相続した場合と異なるため注意が必要です。
投資信託の基準価額を決めるタイミング
上記でも解説したように、投資信託の価値は日々変わります。遺産をどのように分割するかを話し合う「遺産分割協議」では、投資信託の価値である基準価額をどの時点にするかを明確にする必要があります。その後書類を作成し、決めた内容を明記しておくことで、あとで投資信託の基準価額が変わった場合でもトラブルを避けられます。
相続税以外に生じる3つの費用
遺産を相続する際には相続税が発生しますが、相続税以外にも3つの費用が生じる可能性があります。相続の分配を考える際は、この3つの費用がかかる可能性も考慮に入れておきましょう。
所得税及び住民税
相続する投資信託に利益が発生していた場合、利益の部分は所得税(復興特別所得税)及び住民税(地方税)の課税対象となります。課税額は利益の20.315%で、税率の内訳は所得税15.315%と住民税5%です。
例えば、相続する投資信託の基準価額が100万円、故人の購入金額が50万円だったとします。この場合、利益は50万円となるため、その20.315%である約10万円を所得税および住民税として支払う必要があります。
参照元: 投資信託の税金 – 投資信託協会 (toushin.or.jp)
贈与税
相続の方法によっては、贈与税も追加の費用になり得ます。例えば、投資信託を解約して得た現金を複数の相続人で分配した場合、贈与税が発生する可能性があります。これは、投資信託の相続人が、他の相続人にお金を贈与したとみなされるためです。
贈与額が1人当たり110万円以下であれば基礎控除内に収まるため贈与税はかかりません。しかし、110万円を超える場合は贈与税の対象になります。この贈与税は、遺産の分配方法次第では避けられる追加費用ですので、覚えておくと良いでしょう。
違約金
相続する投資信託の種類によっては、違約金が発生する場合もあります。購入してから一定期間の間、解約できない期間を設けているケースなどがあるためです。この期間のことをクローズド期間と呼び、相続する投資信託がクローズド期間中であった場合、違約金が発生する可能性があります。
ただし、投資信託の受益者(投資家)本人が死亡した場合などの特殊なケースでは、違約金がかからない場合もあります。違約金の支払いを避けるため、相続する投資信託の内容をよく確認しておきましょう。
投資信託の相続の流れ
紹介した投資信託の注意すべきポイントを考慮に入れながら、次に投資信託を相続する流れを確認していきましょう。具体的な流れは、以下のとおりです。
- 相続する投資信託の金融機関を確認
- 金融機関に相続発生の旨を連絡
- 相続人や分配方法の決定
- 相続する投資信託の移管
- 投資信託の相続手続きが完了
相続する投資信託の金融機関を確認
投資信託の相続手続きを行うためには、故人の投資信託を管理している金融機関に連絡する必要があります。相続人が該当の金融機関を把握しているかによって、対応方法が変わります。
投資信託の金融機関が分かっている場合
相続する投資信託の金融機関が分かっている場合は、大きな問題はありません。該当する金融機関に連絡をします。
投資信託の金融機関が分からない場合
相続する投資信託の金融機関が分からない場合は、まずは金融機関を見つけることから始めます。探し方は以下のとおりです。
- 投資信託の口座開設に関連した書類を探す
- 金融機関からの郵送物を探す
- 通帳を確認する
- パソコンを確認する
- メールを確認する
金融機関に相続発生の旨を連絡
相続する投資信託の金融機関が判明したら、該当の金融機関に連絡を行い、以下の2点を依頼します。
- 故人の投資信託の口座を凍結
- 残高証明書の発行
故人の投資信託の口座を凍結
故人が投資信託の取引を行っていた金融機関に、口座名義人が死亡し相続が発生したことを伝えます。金融機関に連絡をすることで、故人の投資信託の口座が凍結されます。その後、相続のための移管手続きに移ります。
残高証明書の発行
投資信託の口座凍結に加えて、残高証明書の発行依頼をしておきましょう。残高証明書は、金融機関が発行した時点における投資信託の口座残高が確認できる書類です。この残高証明書は、相続分配の話し合いをする際の参考資料になるでしょう。
なお、残高証明書の発行に必要な書類は以下のとおりです。金融機関により異なる場合がありますので、よく確認しましょう。
- 名義人である故人が死亡したことを確認できる戸籍謄本等
- 相続人や遺言執行者、相続財産管理人等を証明する戸籍謄本・審判書等
- 実印および印鑑証明書
相続人や分配方法の決定
次は投資信託を相続する相続人や遺産の分配方法を決定します。その際に残高証明書があるとスムーズです。
相続人の決定
投資信託の相続では、相続人を1人決め、故人の投資信託の残高を相続人の口座に移管する方法が一般的です。金融機関が投資信託をすべて売却し、売却資金を相続する方が簡単だと思われるかもしれませんが、基本的にはそうすることはできません。投資信託の相続人が決まっている場合は問題ありませんが、決まっていない場合は必ず相続人を1人決めましょう。
分配方法の決定
遺産をどのように分配するか決める際は、以下の2つを考慮に入れる必要があります。
- 投資信託の基準価額をいつにするか
- 相続税以外にかかる費用
投資信託の価値である基準価額は毎日変動します。遺産の分配方法を決める際に、どの時点の基準価額にするかを明確にする必要があります。そのあと、決めた内容に関する書類を作成し明記することで、後々のトラブルを避けられるでしょう。
次に、相続税以外にも所得税および住民税、贈与税、違約金が発生する可能性があります。残高証明書に記載されている口座残高だけでなく、差し引かれる費用にも気を付けましょう。
相続する投資信託の移管
ここまで解説したように、投資信託の相続人を1人決め、故人の投資信託の残高を相続人の口座に移管するしか方法はありません。
相続人の口座に故人の残高を移管するためには、相続人も同じ金融機関に口座を保有する必要があります。故人の残高を移管するにあたり、相続人が口座を保有しているかどうかによって、手続きの方法が変わります。
なお、投資信託の移管の手続きに必要なものは、以下のとおりです。状況に応じて必要書類が異なりますので、金融機関に確認をすると良いでしょう。
- 故人(被相続人)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑登録証明書
- 相続人の実印
- 遺言書
- 遺産分割協議書
金融機関の口座開設が不要な場合
相続人がすでに金融機関の口座を保有している場合、口座開設の手続きは不要です。故人の投資信託の残高を相続人名義の口座へ移管するだけで問題ありません。
金融機関の口座開設が必要な場合
相続人が金融機関の口座を保有していない場合、新規に口座開設の手続きが必要になります。口座開設の手続き完了後に、相続人名義の口座へ故人の投資信託の残高が移管されます。
投資信託の相続手続きが完了
以上の手続きがすべて終わると、投資信託の相続が完了となります。相続の完了に伴い、故人の口座は閉鎖されます。
現金化したい場合は、投資信託を売却することで現金化できます。贈与税がかからない範囲の金額であれば、現金化した方が遺産を分配しやすいかもしれません。もし、分配後すぐに現金を使用する予定がなければ、投資信託などに投資するという方法もあります。
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関連記事:元本保証の投資信託はある?元本割れのリスクに応じた金融商品とインフレリスクについて解説
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おわりに
このコラムでは、投資信託の相続に関する一連の流れや、投資信託の相続で注意すべきポイントを解説しました。投資信託の相続は難しく感じるかもしれませんが、正しいやり方で適切に進めば心配ありません。それでも手続きが難しい場合は、弁護士や税理士等の専門家に相談するという手段もあります。
投資信託の相続が完了後、すぐに現金などの資産を使う予定がなければ、改めて投資信託に投資しても良いでしょう。近頃は物価高が顕著になっており、現金だけでは目減りしてしまう可能性があるためです。インフレに強い株式や不動産に投資する投資信託を購入するのも、インフレ対策の1つです。いずれにしても、相続の手続きはいずれ必要になりますので、先延ばしにせず早めに取りかかることをおすすめします。