不景気が続いていることもあり、将来のために資産形成を考える方が増えています。そのようななかで人気の資産形成の手段の1つが「つみたてNISA」です。非課税で長期運用できる制度として注目を集めています。
ただ、つみたてNISAという名称は知っていても、具体的にどのような制度なのか把握できていない方も多いと思います。また、つみたてNISAは投資であるため、損失を出すリスクについても不安を感じる方もいるでしょう。
- 「つみたてNISAとはどんなサービス?」
- 「つみたてNISAにリスクはないの?」
そのような疑問に対し、このコラムでは、つみたてNISAの仕組みからメリット・デメリット、よくある失敗とそれに対する対策など網羅的に解説しています。つみたてNISAを始めるかどうか、制度の詳細を理解したうえで検討していただきたいと思います。ぜひご一読ください。
※本記事は、2023年以前のNISA制度について記載しています。新NISA制度については以下の記事をご確認ください。
つみたてNISAとは?仕組みを解説
つみたてNISAは、少額からの長期積立・分散投資による資産形成を目的とした、少額投資非課税制度(NISA)です。「積立NISA」と記載されることもありますが、正式名称は「つみたてNISA」です。
株式投資で得た配当金や譲渡益には、通常20.315%の税金がかかります。それに対しNISAは「NISA口座(非課税口座)」内で購入した金融商品から得られる利益が非課税になる制度です。そのため、本来発生するはずの20.315%の税金を支払うことなく、配当金や譲渡益を非課税で受け取ることができます。
NISAには3つの種類がありますが、その中でもつみたてNISAは最長20年と最も非課税期間が長いです。年間40万円までの投資が非課税となるため、毎年満額積み立てると、20年間で最大800万円の非課税投資が可能となります。なお、つみたてNISAの投資対象は以下の金融商品のみです。
- 金融庁の基準をクリアした長期の積立・分散投資に適した商品
開設済みの課税口座で保有している金融商品は、NISA口座には移せないため注意しましょう。
つみたてNISA、一般NISA、ジュニアNISAの違い
NISAは、つみたてNISAのほかに「一般NISA」と「ジュニアNISA(未成年者少額投資非課税制度)」の3種類があります。
投資時に使うNISA口座は、1人につき1つしか開設できません。NISAの併用はできないため、投資にあたっては3種類のいずれか1つを選ぶ必要があります。3種類の違いは、以下の表のとおりです。
つみたてNISA | 一般NISA | ジュニアNISA | |
非課税投資期間 | 最長20年 | 最長5年 | 最長5年 |
積立可能額 | 年40万円まで(20年で最大800万円) | 年120万円まで(5年で最大600万円) | 年80万円まで(5年で400万円) |
拠出ルール | 定期拠出が前提 | 随時入金、定期拠出に対応 | 両親や祖父母にだけでなく、第三者も資金を拠出できる |
ロールオーバー(新たな非課税投資枠への移動)の可否 | 不可 | 最大10年に延長可能 | 申し込み手続きの受付終了 |
投資対象商品 | 投資信託 | 株式、投資信託 | 株式、投資信託 |
最大投資額で比較すると、期間が長い分、つみたてNISAの方が高額になります。
つみたてNISAは途中解約も可能ですが、長期運用しないと最大限の効果を得られません。一般NISAは、5年という短期で積み立てていきます。長期運用ならつみたてNISA、中短期で利益を得たいなら一般NISAを選ぶのがおすすめです。
なお、ジュニアNISAは、2023年12月31日で新規の口座開設終了が決まっています。ただ、2023年の制度終了時点で18歳未満の方は、2024年以降非課税期間の終了した金融商品を「継続管理勘定」へロールオーバーできます。継続管理勘定であれば、18歳になるまで金融商品を非課税で保有可能です。ジュニアNISA自体は2023年で終了するものの、非課税投資の利点は残っています。
また2024年以降、新しいNISA制度が始まり、仕組みが大幅に変更されます。新しいNISAでは、さらに多くの方が長期・積立・分散投資に触れられるよう、非課税投資期間の期間制限がなくなり、恒久制度となります。
現行NISAの非課税枠は、2024年から始まる新しいNISAと別枠なので、新しいNISAのスタートを待たずに、早めに現行NISAを始める方がメリットは大きいでしょう。
新しいNISA制度に関しては金融庁の以下サイトを確認するようにしてください。
金融庁「新しいNISA」
つみたてNISAを運用する3つのメリット
つみたてNISAには、ほかの投資方法にはないメリットがあります。どのようなものがあるのか、一緒に見ていきましょう
「ドル・コスト平均法」で平均買付単価の抑制が期待できる
「ドル・コスト平均法」とは、価格が変動する金融商品を一定額ずつに分けて購入する方法です。価格が高い時は少なく、安い時には多く購入することで投資金額を一定にし、平均買付単価を抑えられます。
相場の変動に関わらず購入価格を標準化することには、損失を避ける効果もあります。自動的に購入してくれるので、つみたてNISAは投資初心者にもおすすめです。
投資タイミングを考えなくて良い
投資を成功させるには、買いと売りの適したタイミングを見極めることが重要となります。しかし、投資タイミングを正確に見極めることは、経験者やプロでも困難です。
つみたてNISAは、設定した金額・間隔で自動的に買い付ける積立型の投資方法ですから、投資のタイミングを考える必要がありません。また、投資のタイミングを分散することで、損失を出すリスクを抑える効果もあります。
コストを抑えて長期運用できる
通常投資信託では、購入時に以下の手数料がかかります。長期運用するとその分手数料が発生し、投資の利益が少なくなります。
- 販売手数料
- 信託財産留保額
- 信託報酬(運用管理費用)
しかし、つみたてNISAでは、手数料が0円で、信託報酬(投資信託を保有・管理に必要な費用)が低い商品が多いのが特徴です。そのため、手数料を抑えて長期的な運用を行うことができます。価格変動損失を出す恐れが低いうえ、低コストで長期運用できるのは、大きなメリットでしょう。
つみたてNISAを運用する2つのデメリット
つみたてNISAにはデメリットもありますので、損失を避けるために理解を深めることが大切です。以下、つみたてNISAのデメリットを3つ解説します。
損失が出る恐れもある
つみたてNISAも、市場の変動次第では元本割れを起こすリスクがあります。NISA口座ではない、通常、投資信託を売買する際に、利用する特定口座で運用する場合は、他の運用益と相殺(損益通算)したり、残った利益を翌年に繰り越ししたりといったことが可能です。
しかし、つみたてNISAでは損益通算や利益の繰越はできません。つみたてNISAで運用しても損失を被るかもしれないというリスクは認識しておきましょう。
非課税上限が少ない・非課税枠を翌年に繰り越せない
つみたてNISAの上限は年40万円であるのに対し、一般NISAの上限は年120万円と、3倍もの差があります。つみたてNISAは長期運用で利益を得やすいものの、短期的な資産形成には向かない制度です。さらにつみたてNISAでは、非課税額40万円を使い切れないこともあるでしょう。
NIISAは3種類とも、毎年一定の非課税枠が設定される仕組みです。非課税枠を翌年に繰り越すことはできません。そのため、仮に10万円の非課税枠が余っても、翌年に繰り越して上限50万円で運用するということはできません。非課税枠を無駄なく使い切りたいなら、毎月33,333円の積み立てを行いましょう。
つみたてNISAの投資に失敗する3つの原因と対策
つみたてNISAでの投資の失敗は、主に以下の3つが原因であることが多いです。失敗の原因を知ることで損失を出すリスクを抑え、安全に積立投資を行えるでしょう。順に見ていきましょう。
株価が暴落した際に売ってしまった
株価は変動するものなので、暴落してしまうこともあります。直近ですと、2020年3月13日、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、日経平均株価は、1,128円58銭安下落し、歴代13位の下落幅を記録しました。この下落幅は、バブル経済が崩れ始めた1990年の動きに匹敵します。
ここまでの暴落は頻繁に起きるものではないですが、長期運用のなかでは株価が落ちることもあるでしょう。ただ、株価の暴落はずっと続くわけではなく、回復する可能性も十分にあります。実際に株価が下落した2020年3月13日の約2週間後の2020年3月25日は、1,454円28銭高と歴代5位の上昇率を記録しました。
また、株価の暴落は、裏を返すと安値で買えるチャンスでもあります。暴落が起きても過度に反応せず、コツコツとつみたてNISAでの運用を続けていくのが望ましいでしょう。
負担の大きい金額で積み立てていた
長期運用を続けるなかでは、ケガや病気による予期せぬ支出が発生する恐れもあります。毎月の積立額が大きすぎると、想定外の支出が出た際に対応できません。もしも生活費が足りなくなってしまえば、これまでに積み立てた投資信託の一部を売却する必要も出てきます。
相場が悪いタイミングで売却すると、損失が出る恐れもあります。将来の資産を増やしたいからといって、貯蓄がほとんどない状態で積み立てることには大きなリスクが伴います。つみたてNISAを始める前に、最低でも生活費の6ヵ月分を貯めておきましょう。
少しでも早く、つみたてNISAを早く始めたい場合には、2〜3カ月分の生活費が貯まった頃から、数千円から始めてみるのも良いでしょう。
短期期間で売ってしまった
株価が上がったことで大きな利益が出ても、短期でつみたてNISAの利益を確定してしまうことは避けましょう。つみたてNISAは長期的な成長が見込まれる商品を対象としています。そのため、今後株価がさらに上昇し利益も大きくなる可能性があるのです。
短期間での売却は、長期保有によって得られたはずの利益を自ら手放すことになりかねません。さらにつみたてNISAは、複利効果で運用益を得られるという特徴があります。
複利とは、投資で得た利益が元本に組み入れられ、再投資になる仕組みのことです。つみたてNISAを長期運用することでその分、複利によって利益が元本として再投資されるので、資産の増加が期待できます。
短期間で売ってしまえば、複利による利益も減少します。つみたてNISAで多くの資産を作りたいなら、株価が上がったからといってすぐに売ることは避けた方が良いでしょう。
つみたてNISAの始め方を分かりやすく解説
ここからは、つみたてNISAの始め方について解説していきます。具体的な手順を知り、何をすべきかを把握できますので、参考にしてみてください。
口座を開設する金融機関を決める
つみたてNISAを始めるために必要な「NISA口座」は、証券会社や銀行などで作れます。開設できるのは、1人につき1つの口座のみです。金融機関によって、つみたてNISAで取り扱っている商品、最低積立額等の条件が異なりますので、どこで開設するかよく比較して選びましょう。
口座を開設
利用する金融機関に証券口座を持っていない場合は、NISA口座と合わせて「総合口座」に申し込みましょう。NISA口座は、総合口座のなかに別枠で作るイメージです。総合口座は、以下の3種類に分けられます。
- 一般口座
- 特定口座(源泉徴収あり)
- 特定口座(源泉徴収なし)
特定口座は、投資で得た利益の税金を証券会社が計算してくれる口座です。一般口座で開設すると、自身で確定申告を行う必要があります。なお、特定口座を源泉徴収「あり」で開設すると、証券会社が税金を納めてくれるため確定申告を行う必要はありません。
入金手続きを行う
口座を無事に開設できたあとは、積立準備のために入金手続きを行いましょう。入金方法は「即時入金」「銀行振込」など、金融機関ごとに異なるため確認が必要です。
毎月一定額を積み立てるなら、いつも利用している金融機関から自動で引き落とし、つみたてNISAの口座に連携してくれるサービスを使うのも良いでしょう。なお、つみたてNISAの非課税枠は年40万円であるため、積立額は月々33,333円までです。年間で上限40万円まで積み立てる予定であれば、最初にまとめて入金するのも1つの方法です。
積立商品を決める
投資商品は、以下のポイントの観点で比較すると良いでしょう。取り扱っている商品は金融機関によって異なりますので、よく比較して決めましょう。
- 投資対象:国内を対象としたファンド、海外を対象としたファンドが選べる
- 運用手法:「インデックス型」か「アクティブ型」かを選べる
- 運用コスト:買付手数料、信託報酬、信託財産留保額はファンドにより異なる
- 実績:過去の運用実績、純資産総額、運用目論見書でファンドの状況を確認できる
おわりに
つみたてNISAであれば、非課税で最長20年運用できます。年間上限額が40万円ですので、最大800万円までの非課税投資が可能です。ドル・コスト平均法によって平均買付単価と損失のリスクも抑えられ、投資初心者にも最適の投資手法です。
とはいえ、元本割れするリスクもゼロではないため、仕組みを理解したうえで始めることが大切です。当コラムの内容を参考に、ぜひつみたてNISAを検討していただければと思います。
※本ページは2023年2月時点での情報であり、その正確性、完全性、最新性等内容を保証するものではありません。最新情報については、随時金融庁の以下サイトを確認するようにしてください。
金融庁「新しいNISA」