最近のマンションなど住宅価格の高騰に多くの方が驚いています。その背景にあるのが、建築資材の急激な値上がりです。コロナ禍やロシア・ウクライナ戦争の影響で資材価格が高騰し、住宅建築費を押し上げています。この記事では、建築資材高騰の原因とその行方、さらに住宅取得費用を抑える方法を解説します。今、住宅を買うべきか悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
(本記事は2024年8月14日時点の情報です)
- 建築資材価格は2021年以降高騰し、値下がりの気配はない
- 建築資材の値上がりはロシア・ウクライナ戦争や円安など複数の原因によるもの
- 住宅購入を先送りしてもほとんどメリットはない
- 補助金の活用などで住宅取得費の軽減をすると良い
建築資材高騰の推移をチェック
最初に、建築資材の価格の推移と品目別の価格上昇を確認しておきましょう。
建築資材物価指数の動向
建設資材物価指数は、建設工事で使用される資材の総合的な価格動向を2015年の平均を100として指数化したものです。燃料やサービス等の料金は除外されており、建設工事における直接資材のコスト変動を分析するのに役立ちます。
2024年2月の東京の建設資材物価指数の動向を見ると、建設総合は135.9で前月比0.0%上昇、前年同月比3.1%上昇しました。建築部門は135.9で前月比0.0%上昇、前年同月比1.8%上昇、建築補修は132.0で前月比0.0%下落、前年同月比4.1%上昇、土木部門は137.7で前月比0.0%上昇、前年同月比5.3%上昇といった状況です。
これらの数字から建設資材の価格は2015年と比べて全体的に上昇傾向にあり、特に土木部門の上昇率が高いことがわかります。一方で直近1ヵ月の変動はあまり大きくないといえます。
建築資材の価格は2021年に入ってから上昇し始めました。直近では高止まりの兆しがあるものの、先行きは不透明な状況といえるでしょう。
品目別の価格上昇率
2024年1月現在、建設工事の資材価格は軒並み高騰しています。以下の表は、資材別の価格上昇率をまとめたものです。
品目 | 価格上昇率 |
---|---|
異形棒鋼 | 70% |
H形鋼 | 62% |
鋼板 中厚板 | 80% |
フラットデッキ | 41% |
鋼矢板 | 42% |
生コンクリート | 40% |
コンクリート型枠用合板 | 51% |
管柱 杉KD | 29% |
ステンレス鋼板 | 65% |
アルミ地金 | 39% |
板ガラス | 74% |
ストレートアスファルト | 64% |
600Vビニル絶縁電線 | 49% |
配管用炭素鋼鋼管 | 57% |
硬質ポリ塩化ビニル管 | 23% |
軽油 | 38% |
出典:一般社団法人日本建設業連合会「建設工事を発注する民間事業者・施主の皆様に対するお願い」
上記の表からわかるように、建設工事に使用される資材の価格は軒並み高騰しています。異形棒鋼やH形鋼、鋼板 中厚板などは60%以上の上昇率を示しており、フラットデッキや鋼矢板なども40%以上の上昇となっています。
その他にも、管柱 杉KDやアルミ地金、硬質ポリ塩化ビニル管、生コンクリートなど、幅広い資材で20%以上の価格上昇が見られます。
建築資材が高騰している6つの主な原因
建築資材が高騰したのは、複数の原因があるためです。主な原因は以下の6つです。
新型コロナウイルス感染拡大の影響によるウッドショック
ウッドショックとは、新型コロナウイルス感染拡大の影響による木材価格の高騰現象を指します。
コロナ禍により木材の伐採や加工に携わる人手が不足したことで、木材の供給量が減少しました。一方で、アメリカではリモートワークの普及に伴い郊外の住宅需要が増加、中国でも経済回復に伴う建築ラッシュが起こり、両国で木材需要が急増しました。
木材の需要と供給のバランスが崩れ、価格が高騰する事態となったのです。
建築資材の多くを輸入に頼る日本にとって、ウッドショックは住宅価格へ直接的な影響を及ぼしました。木材価格の上昇分が建築コストの増加につながり、新築住宅の価格上昇を招く要因のひとつとなっています。
急速な鉄需要量増加によるアイアンショック
木材価格の高騰だけでなく鋼材の価格も上昇し、アイアンショックとなっています。アイアンショックとは、鉄鉱石や鉄筋、鉄骨といった鉄関連製品の価格が急激に上昇する現象です。
コロナ禍が落ち着きを見せ始めると経済活動が再開し、世界的に大規模なインフラ投資や不動産開発が活発化しました。
これにより鉄の需要が急激に増加しました。鉄鋼メーカーは増産に努めましたが、需要の伸びに供給が追い付かず、需給バランスが崩れて価格高騰を招く結果となったのです。
鉄は日本にとって非常に重要な資源である一方、国内でほとんど生産されていません。輸入に頼らざるをえない状況での世界的な需給バランスの変化は、日本の建設業界に大きな影響を及ぼすのです。
ロシア・ウクライナ戦争による経済制裁
ロシアのウクライナ侵攻を受け、欧米諸国を中心に多くの国がロシアへの経済制裁を発動しました。この経済制裁により、日本を含む各国でロシアから輸入されていた建築資材の供給が滞る事態となっています。
ロシアからの輸入が滞ったため、各国が代替となる資源の確保に奔走しました。需要が集中したことで、建築資材の原料価格が世界的に上昇しています。
建築資材の供給の正常化のためにも、ロシア・ウクライナ戦争の早期終結が望まれます。
ガソリン代高騰による運搬コストの上昇
ロシア・ウクライナ戦争の影響で原油価格が上昇し、ガソリン代も高騰しています。そのため、建築資材の運搬コストが上昇し、建築資材自体の価格にも影響を及ぼしているのです。
日本国内においても、港から建設現場までの長距離輸送には大型トラックが使用されます。輸入された建築資材を現場まで運ぶためにもガソリンが必要不可欠です。ガソリン代の高騰は、国内輸送コストの上昇にもつながっており、建設現場までの運搬コストを押し上げています。
ガソリン代の上昇は建築資材の輸入コストと国内輸送コストの両方に影響を与えており、建設全体のコスト増加を招いています。
物流活性化によるコンテナ料金の上昇
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界的にステイホームが広がりました。自宅で過ごす時間が増えたことでインターネット通販の利用が急増し、物流が活性化しました。
物流の活性化により国際物流の主要な手段のひとつであるコンテナ不足が深刻化し、コンテナ料金も高騰したのです。
建築資材の多くは海外から輸入されており、その輸送にもコンテナが使用されています。コンテナ料金の上昇は、建築資材の輸入コストを押し上げる要因となりました。
輸入コストが上昇すれば、建築資材の価格に転嫁されるのは避けられません。各メーカーや販売店は、コンテナ料金の上昇分を建築資材の価格に上乗せして販売せざるを得ない状況になりました。
低金利政策などによる円安
日本では長期間にわたり低金利政策が続けられてきました。一方、2022年に入るとアメリカが利上げに転じ、日米の金利差が拡大します。この金利差を背景に、急速な円安が進行しました。
円安の原因は日米の金利差以外に、貿易収支の悪化が挙げられます。エネルギー資源の多くを輸入に頼る日本はロシア・ウクライナ情勢を背景に輸入額が増加します。一方で、世界経済の減速により輸出が伸び悩み、貿易赤字が拡大しました。
急速な円安は、建築資材を含む輸入品の価格を押し上げました。多くの建築資材を輸入に頼っている日本にとって、円安は建築コストの上昇につながっているのです。
建築資材の価格高騰はいつまで続く?住宅購入のタイミングとは
建築資材の高騰が続く中、住宅購入のタイミングについて検討するのは難しい問題です。しかし、現状を分析すると、早めに購入するのが賢明と考えられます。
まず、建築資材の価格高騰は原油価格の上昇、ウクライナ情勢、円安、コンテナ不足といった、さまざまな要因が複合的に絡み合っています。これらの問題は簡単には解決しないため、価格高騰はこのまま続く可能性が高いといえるでしょう。
加えて、コロナ禍で変化したライフスタイルを背景に、郊外の戸建て住宅への需要が高まっています。この不動産需要の高まりも価格上昇を後押ししており、高騰は長期化すると予想されます。
また、建設業界では人手不足が深刻化しており、人件費も上昇傾向にあります。金利も今後上昇していく可能性が高いでしょう。こうした状況を考えるとマイホームの購入の先送りにはあまりメリットがなく、むしろ早めに決断すると安くすむ可能性が高いといえます。
住宅の取得費用を抑えるには
建築資材の高騰で新築住宅の価格が値上がりし、マイホーム購入を考える方には厳しい状況が続いています。ここからは、少しでも住宅の取得費用を抑える方法を紹介します。
土地価格の安いエリアを検討する
住宅取得費用を抑える方法のひとつとして、土地価格の安いエリアの選択が考えられます。都心部や人気のある駅周辺は土地価格が高騰しているため、郊外や地方都市の土地を探してみると、予算の範囲で住宅を取得できる可能性があります。ただし、通勤時間や交通の便、周辺の生活環境などへの考慮も必要です。
また、土地価格が安いエリアを検討する際は、災害などの危険性についての確認も重要です。ハザードマップを参照し、洪水、土砂災害、津波のようなリスクがあるかどうかを事前に把握しておきましょう。
中古物件を購入する
質の高い中古物件を購入すると、満足度を落とさずに住宅取得費用を抑えられる可能性があります。同じ予算でも新築より広い面積や立地の良い物件を手に入れられる場合もあるでしょう。
ただし、中古住宅の場合、物件選びには注意が必要です。立地や築年数、物件の状態、周辺環境を十分に確認し、将来的な修繕の必要性や管理費用も考慮しましょう。
また、不動産投資の観点からも、中古物件には魅力があります。リフォームによって物件のデザイン性を高められれば、家賃を上げやすくなるためです。さらに、一定の条件を満たす修繕費は経費として処理できるため、税金面でのメリットも期待できます。
居宅のリフォームを検討するのも一案
住み替えを検討している方であれば、現在住んでいる自宅のリフォームも選択肢となるでしょう。新築物件を購入するよりも既存の居宅を改修するほうが必要な建築資材は少なくすみ、費用を大幅に節約できます。
リフォームにより老朽化した設備の更新や間取りの変更、断熱性の向上などが可能であり、快適性と資産価値を高められます。
また、不動産投資の観点からも、中古物件を購入してリフォームするのは有効な手段です。物件取得価格が新築に比べて低く抑えられるうえ、一定の条件を満たす修繕費を経費として計上できるため、負担の軽減につながります。
さらに、リフォームによってデザイン性や機能性を向上させれば、家賃収入の増加につながる可能性もあります。
補助金を活用する
住宅取得費用を抑える方法のひとつとして、各種補助金の活用が挙げられます。国や自治体が提供する補助金を利用することで、住宅購入やリフォームにかかる費用負担を軽減できます。
2024年度から開始される「子育てエコホーム支援事業」は、その一例です。この事業は子育て世帯や若者夫婦世帯による省エネ性能の高い新築住宅の取得や、住宅の省エネ改修などに対して支援を行うものです。
子育てエコホーム支援事業の補助額は、以下のとおりです。
【新築住宅】
要件 | 補助額上限 |
---|---|
長期優良住宅 | 100万円(条件により50万円) |
ZEH住宅 | 80万円(条件により40万円) |
【リフォーム】
要件 | 補助額 |
---|---|
子育て世帯または若者夫婦世帯 | 30万円(条件により45万円・60万円) |
その他の世帯 | 20万円(条件により30万円) |
また、自治体独自の補助金制度もあります。例えば、大阪市では「新婚・子育て世帯向け分譲住宅購入融資利子補給制度」を実施しています。
これは、初めて住宅を取得する新婚世帯や子育て世帯を対象に、住宅ローンに対して年0.5%以内、最長5年間の利子補給をする制度です。利子補給金は最大50万円となっています。
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この機会に検討してみてはいかがでしょうか。
おわりに
建築資材の高騰は住宅価格の値上がりにつながり、これからマイホームを購入しようとする方にも大きな影響を及ぼします。建築資材は今後も値下がりする見込みは薄く、住宅価格も高止まりすると見られています。
このような状況でマイホームを取得する場合、物件選びや資金計画を今まで以上に慎重にする必要があります。教育費や老後資金準備とのバランスで住宅費が過大にならないように注意しましょう。