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 暗号資産(仮想通貨)の税金未納はバレないは本当?無申告がバレたときのペナルティについて解説

暗号資産(仮想通貨)の税金未納はバレないは本当?無申告がバレたときのペナルティについて解説
藤田 春菜

執筆者

金融ライター

藤田 春菜

2級ファイナンシャル・プランニング技能士。金融機関に約7年間勤務したのち、金融専門Webライターとして執筆を開始。カードローンやクレジットカード、資産運用全般に関する記事を執筆。投資歴は約7年で、投資信託をはじめ個別株や暗号資産などに投資をしている。

「暗号資産の税金未納はバレない」と聞いたことはありませんか?鵜呑みにして無申告にしている方もいるのではないでしょうか。せっかく得た利益なのに税金で利益を減らしたくないと考えるのは当然のことです。

しかし、「暗号資産の税金未納はバレない」というのは間違いです。利益を申告しないで納税を回避している場合、ペナルティが課され、通常の納税額より負担が大きくなるおそれがあります。

本記事では暗号資産の税金未納が発覚する理由や、暗号資産で申告が必要になるタイミングを解説します。無申告が発覚したときのペナルティや、申告期限後の確定申告についても解説するので、暗号資産で利益が出た際の参考にしてください。

なお、当記事で紹介している情報は一般的な指針であり、個別の状況に応じて専門家に相談することをおすすめします。
(本記事は2024年8月9日時点の情報です)

「暗号資産(仮想通貨)の税金未納はバレない」はウソ

「暗号資産(仮想通貨)の税金未納はバレない」はウソ

結論を言うと、暗号資産の税金未納は税務署に知られてしまいます。暗号資産取引をしている個人に対する国税庁の調査状況は、2021年度の444件から2022年度は615件に増加しています。1件当たりの申告漏れ所得金額は3,077万円で、1件当たりの追徴税額は1,036万円と高額です。

このように、暗号資産の税金未納が発覚したときのペナルティは大きく、場合によっては取り返しがつかないほど多額の罰金が課されます。

参照元:令和4事務年度 所得税及び消費税調査等の状況|国税庁

暗号資産(仮想通貨)で税金未納がバレる理由

暗号資産(仮想通貨)で税金未納がバレる理由

では、なぜ暗号資産の税金未納は知られてしまうのでしょうか。その理由は、以下の3つです。

  • 国税庁や税務署には所得税の調査権限がある
  • 電子商取引専門調査チームが税務調査や情報収集をしている
  • 各国と租税条約を結んでいる
  • ブロックチェーンで過去の取引がわかる

ひとつずつ見ていきましょう。

国税庁や税務署には所得税の調査権限がある

国税通則法第74条の2によると、国税庁や税務署は所得税に関する調査に必要な場合は、対象者への質問や書類の提示、提出を求める権限があります。

暗号資産の利益は所得税に該当するため、税務調査の対象となることがあるわけです。もし税務調査の対象となったら、きちんと対応しないといけません。

参照元:国税通則法|e-Gov法令検索

電子商取引専門調査チームが税務調査や情報収集をしている

国税庁には電子商取引専門調査チームが設置されています。電子商取引とは、インターネットを利用して、商品やサービスの売買・受発注や決済といった商取引を行うことです。電子商取引には暗号資産取引も含まれていて、専門チームの調査対象となります。

また、2023年11月に国税庁は以下を発表しました。

暗号資産(仮想通貨)等の取引を行っている個人に対しては、資料情報の収集・分析に努め、積極的に調査を実施しています。

参照元:令和4事務年度 所得税及び消費税調査等の状況|国税庁

上述したように、暗号資産取引をしている方に対する調査件数は、2021年度から2022年度にかけて約200件増加しています。国税庁が積極的な調査をすると公言していることもあり、今後も調査件数は増えていくと予想できるでしょう。

参照元:インターネットの普及を背景とした電子商取引の急速な進展|国税庁

各国と租税条約を結んでいる

日本は脱税防止のため各国と租税条約を結んでいます。そのため、海外取引所を使って暗号資産を取引していても脱税できないようになっています。

日本は2024年6月時点で155の国と地域を相手に租税条約を結んでいるため、海外取引所を使っても税金から逃れるのは難しいでしょう。

参照元:租税条約に関する資料|財務省

ブロックチェーンで過去の取引がわかる

暗号資産取引は、きちんと記録に残るようになっています。取引を記録する技術として採用されているのは「ブロックチェーン」という技術です。

ブロックチェーンデータの改ざんや削除は困難なため、取引データに関して間違いはないとされていて、正しく申告しないと無申告が発覚することになります。ブロックチェーンを活用すれば、取引履歴から利益が出ていることがすぐにわかります。

参照元:ブロックチェーンって何?|一般社団法人全国銀行協会

暗号資産(仮想通貨)で納税義務が発生するタイミング

暗号資産(仮想通貨)で納税義務が発生するタイミング

暗号資産の税金を正しく申告するために、暗号資産で納税義務が発生するタイミングを確認しましょう。暗号資産で納税義務が生じる主なタイミングは以下のとおりです。

  • 暗号資産を売却したとき
  • 暗号資産で他の暗号資産を購入したとき
  • 暗号資産で決済したとき
  • マイニング報酬や利息を受け取ったとき
  • 無償で暗号資産を譲受したとき

利益が確定したタイミングでしか納税義務は発生しないと考える方がいるかもしれません。しかし、暗号資産の場合、利益確定以外のタイミングでも納税の必要があり、無申告となる原因となってしまいます。

暗号資産を取引する方は、どのタイミングで納税義務が生じるのか、よく把握しておきましょう。

暗号資産(仮想通貨)取引の記録管理の重要性

暗号資産(仮想通貨)取引の記録管理の重要性

暗号資産取引を行う上で、適切な記録管理は非常に重要です。正確な記録を保持することは、確定申告を正しく行うためだけでなく、税務調査に備える上でも不可欠です。以下に、記録管理の重要性と具体的な方法を説明します。

記録管理が重要な理由

まずは暗号資産の記録管理が重要な理由を確認しましょう。

【暗号資産取引の記録が重要な理由】

正確な確定申告取引履歴を正確に把握することで、適切な所得計算と申告が可能になる。
税務調査への対応国税庁から調査を受けた際、取引の証拠として記録を提示できる。
損益の把握自分の投資パフォーマンスを正確に評価し、投資戦略の改善に役立てられる。
複数取引所の利用複数の取引所を利用している場合、全体の損益を正確に把握するために必要。

上記のように、暗号資産の取引を記録していると、正確に確定申告できるだけでなく、もし税務調査をされても適切に対応できます。

記録すべき情報

暗号資産の取引を記録するときは、以下の情報を残しておくことをおすすめします。

  • 取引日時
  • 取引の種類(購入・売却・交換など)
  • 暗号資産の種類と数量
  • 取引価格(日本円換算)
  • 取引手数料
  • 取引所や取引相手の情報
  • 取引の目的や背景

上記の内容をもとに記録を残すと、以下のようになります。

○年○月○日 ○時○分
0.1ビットコインを売却
100万円の利益(1ビットコイン1,000万円のとき成立)
売却手数料はなし。出金時に○円の手数料
コインチェックで取引

取引の目的や背景は必要に応じて、記録しておくと良いでしょう。これらの記録を残しておけば、正しく確定申告したり損益の把握がしやすくなったりします。

暗号資産の取引を記録する際は、以下のツールを用いるとよいでしょう。

【主な記録管理の方法】

スプレッドシートやExcelGoogleスプレッドシートやExcel を使用して、取引記録を管理する。
専用のポートフォリオ管理ツール暗号資産取引専用の記録管理ツールを利用する。
取引所の履歴をダウンロード多くの取引所では、取引履歴をCSV形式でダウンロードできる。定期的にダウンロードし、バックアップして保存する。
紙に書くデジタル記録に加えて、重要な取引については紙でも記録を残す。ただし、紙の記録だけでは紛失のリスクやわかりにくさがあるため、デジタル記録の補助として活用すると良い。
クラウドストレージの活用記録のバックアップをクラウドストレージに保存すると、データ損失のリスクを軽減できる。

それぞれのツールは使いやすさや保存のしやすさが異なるため、自分に合った管理方法を選びましょう。管理方法がはっきりと決まるまでは複数の方法を利用してみると良いかもしれません。

記録管理のコツ

取引記録の管理のコツもお伝えします。以下の点に注意して管理すると、必要なときにすぐに取引記録を振り返られるでしょう。

【記録を管理するときのポイント】

定期的な更新取引後すぐに記録を更新する習慣をつける。
一貫性の維持常に同じフォーマットで記録を取り、後で混乱しないようにする。
記録の長期保存税務調査の対象となる期間に対応して、少なくとも7年間は記録を保管する。
セキュリティの確保個人情報や財務情報を含む記録のため、適切なセキュリティ対策をとる。

適切な記録管理は、確定申告の正確性を高め、税務調査への対応を容易にするだけでなく、自分の投資戦略の改善にも役立ちます。面倒に感じるかもしれませんが、長期的には大きなメリットをもたらす重要な作業だといえるでしょう。

暗号資産(仮想通貨)の所得税

暗号資産(仮想通貨)の所得税

ここから、納税義務が発生したときの暗号資産の税務関係について解説します。まず、暗号資産の所得は雑所得の対象です。雑所得とは以下の所得に分類されない所得をいい、具体例としては公的年金や副業で得た所得が挙げられます。

  • 利子所得
  • 配当所得 
  • 不動産所得
  • 事業所得
  • 給与所得
  • 退職所得
  • 山林所得
  • 譲渡所得
  • 一時所得

また、暗号資産の利益は総合課税に該当します。総合課税とは、各種所得の金額を合算して所得税額を計算する制度です。そのため、暗号資産の利益だけで納税額が決まるわけではありません。

参照元:No.1500 雑所得|国税庁

    No.2220 総合課税制度|国税庁

雑所得に分類されるため利益が増えると税負担が大きくなる

暗号資産は利益が大きくなるほど、税負担も大きくなる仕組みとなっています。以下の速算表からわかるように、所得税は所得が大きければ大きいほど税率が高くなるからです。

【所得税の速算表】

課税される所得金額税率控除額
1,000円から1,949,000円まで5%0円
1,950,000円から3,299,000円まで10%97,500円
3,300,000円から6,949,000円まで20%427,500円
6,950,000円から8,999,000円まで23%636,000円
9,000,000円から17,999,000円まで33%1,536,000円
18,000,000円から39,999,000円まで40%2,796,000円
40,000,000円以上45%4,796,000円

参照元:No.2260 所得税の税率|国税庁

また、暗号資産以外の所得もある場合は、その所得も合算して計算する必要があります。そのため、暗号資産の利益はそこまで大きくなくとも、他の所得金額によっては税負担が大きくなる可能性があります。

利益額ごとの納税額シミュレーション

暗号資産の税務状況がわかったところで、利益が出た場合に税金をどのくらい支払うことになるかシミュレーションします。

暗号資産取引の所得税は以下の手順で計算します。

  1. 年間の総利益(売却額 – 取得費 – 諸経費)を算出
  2. 適用される税率を確認
  3. 所得税額を計算(利益額 × 税率 – 控除額)

※本記事では、課税される所得金額の各税率の最高額を利益として所得税額を計算します。

【利益額ごとの納税額シミュレーション】

暗号資産で発生した利益計算式所得税額
194万円194万円×5%97,000円
329万円329万円×10% – 97,500円231,500円
694万円694万円×20% – 427,500円960,500円
899万円899万円×23% – 63.6万円1,431,700円
1,799万円1,799万円×33% – 153.6万円4,400,700円
3,999万円3,999万円×40% – 279.6万円13,200,000円
4,000万円4,000万円×45% – 479.6万円13,204,000円

具体例を通じて、実際の計算方法をより詳しく見ていきましょう。

具体例1:利益300万円の場合

暗号資産の取引で300万円の利益が出たと仮定します。300万円は「195万円から329.9万円まで」の区分に該当するため、税率と控除額は以下のようになります。

  • 税率10%
  • 控除額97,500円

【計算式の適用】

所得税額 = 300万円 × 10% – 97,500円

= 300,000円 – 97,500円

= 202,500円

したがって、利益300万円の場合の所得税額は202,500円です。

具体例2:利益1,000万円の場合

次に、暗号資産取引で1,000万円の利益が出たと仮定します。1,000万円は「900万円から1,799.9万円まで」の区分に該当するため、税率と控除額は以下のようになります。

  • 税率33%
  • 控除額1,536,000円

【計算式の適用】

所得税額 = 1,000万円 × 33% – 1,536,000円

= 3,300,000円 – 1,536,000円

= 1,764,000円

したがって、利益1,000万円の場合の所得税額は1,764,000円です。

これらの例から、利益が増えるにつれて適用される税率が上がり、結果として納税額が大きく増加することがわかります。また、控除額の存在により、単純に利益に税率をかけただけでは正確な納税額が算出されないことも理解できます。

暗号資産(仮想通貨)の無申告がバレたときのペナルティ

暗号資産(仮想通貨)の無申告がバレたときのペナルティ

暗号資産で利益が出ても申告しなかった場合、以下のような罰則が課されます。

【無申告の罰則】

内容税率
延滞税法定納期限の翌日から納付日までの日数に応じて課される。2021年1月1日以後の期間に対する延滞税は以下の①+②で計算する。

【①納期限までの期間及び納期限の翌日から2ヵ月を経過する日まで】 年「7.3%」と「延滞税特例基準割合+1%」のいずれか低い割合。

【②納期限の翌日から2ヵ月を経過する日の翌日以後】 年「14.6%」と「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合。
過少申告加算税期限内申告をしたあとに過少に納税額を申告していた際に支払う必要のある加算税のひとつ。
(税務署の調査を受ける前に自主的に修正申告をすれば、過少申告加算税はかからない。)
新たに納めることになった税金の10%相当額。
(新たに納める税金が当初の申告納税額と50万円とのいずれか多い金額を超えている場合、超えている部分については15%となる。)
無申告加算税期限までに確定申告をしなかった場合に課せられる加算税のひとつ。納付すべき税額に対して50万円までの部分は15%、50万円を超える部分は20%。 (税務署の調査を受ける前に自主的に期限後申告をした場合には5%に減額される。調査の事前通知後に期限後申告をした場合を除く。)
重加算税仮装隠蔽があった場合・過少申告加算税・不納付加算税に代えて35%。
・無申告加算税に代えて40%。

参照元:No.9205 延滞税について|国税庁

    延滞税の計算方法|国税庁
    No.2026 確定申告を間違えたとき|国税庁
    No.2024 確定申告を忘れたとき|国税庁
    加算税の概要|財務省

これらのペナルティがどのように適用されるか、具体例を通じて見てみましょう。

【具体例:暗号資産取引で500万円の利益があった場合】

仮に、あなたが2023年中に暗号資産取引で500万円の利益を得たにもかかわらず、確定申告を行わなかったとします。その後、2年後に税務調査で発覚した場合を考えてみましょう。

本来納付すべき税額572,500円
(=500万円 × 20% – 427,500円)
※簡略化のため、所得税のみで計算し、住民税は考慮していません
無申告加算税85,875円
(=572,500円 × 15%)
※50万円を超える部分については20%ですが、簡略化のため15%で計算
延滞税83,585円
(=572,500円 × 7.3% × 2年)
※利率は簡略化のため7.3%で固定
支払総額741,960円
(=572,500円 + 85,875円 + 83,585円)

この例では、本来572,500円だった納税額が、無申告により741,960円まで膨らんでしまいます。約30%も多く支払うことになるのです。

さらに、故意に所得を隠蔽したと判断された場合、重加算税(本税の40%)が課される可能性もあります。その場合、ペナルティはさらに大きくなります。

このように、無申告のリスクは非常に大きく、適切に申告を行うことが重要です。たとえ申告期限を過ぎてしまった場合でも、できるだけ早く自主的に申告することで、ペナルティを軽減できる可能性があります。

申告期限後に暗号資産(仮想通貨)の利益を確定申告する方法

申告期限後に暗号資産(仮想通貨)の利益を確定申告する方法

暗号資産取引の利益を申告期限内に確定申告できなかった場合でも、できるだけ早く申告することが重要です。確定申告の手順は、以下のとおりです。

  1. 確定申告書を入手し、暗号資産取引を含むすべての所得を記入する

⇒「期限後申告」である旨を明記すること。必要書類として、暗号資産取引の明細書や収支計算書も準備すること

  1. 申告書は税務署に直接持参するか郵送で提出し、税金は納付書を使用して金融機関や税務署で納付する

⇒電子納税システムを利用してオンラインでの納付も可能

期限後申告の際は、延滞税と無申告加算税に注意が必要です。延滞税は本来の納期限の翌日から納付日までの期間に応じて課され、無申告加算税は原則として納付すべき税額の15%(50万円を超える部分は20%)が課されます。

ただし、期限内に申告しなかったことについて正当な理由がある場合は、加算税が課されないこともあります。

自主的に期限後申告をすることには、いくつかのメリットがあります。税務署の調査前に自主的に申告した場合、無申告加算税が5%に軽減されます。また、誠実な納税者としての姿勢を示すことができ、将来的なリスクも軽減できます。

例えば、暗号資産取引で100万円の利益があり、申告期限から3ヶ月後に申告する場合の合計納付額は、以下のとおりです。

税金の種類金額
所得税50,000円
延滞税911円
無申告加算税2,500円
合計53,411円

期限後申告は複雑な場合があるため、大口の取引がある場合や複数年にわたって申告していない場合、海外の取引所を利用している場合など、状況によっては税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

参照元: 申告と納税|国税庁

加算税の概要|財務省

暗号資産(仮想通貨)で納税義務が生じたときの対策4つ

暗号資産(仮想通貨)で納税義務が生じたときの対策4つ

暗号資産で利益が出たとき、可能な限り利益を手元に残したいと考えるでしょう。暗号資産で利益が出る場合、以下のような対策をとれます。

  • 他の雑所得と損益通算をする
  • こまめに利益を確定する
  • 納税資金を確保しておく
  • 法人化する

節税対策はもちろん、納税できないという事態を避けるためにあらかじめできることを検討しておきましょう。

他の雑所得と損益通算をする

暗号資産で利益が出た場合、他の雑所得と損益通算をすると節税できます。損益通算とは、所得額を計算する際に他の各種所得で生じた損失を控除できることです。

ただし、暗号資産は雑所得以外の所得とは損益通算できません。そのため、損失が出ている他の雑所得と損益通算するか、含み損になっている暗号資産を損切りして損益通算するかの選択となります。

例えば、ビットコインとイーサリアムを以下のように売却した場合、納税額に違いが生じます。

【暗号資産同士で損益通算する場合】

ビットコインイーサリアム計算式納税額
50万円の利益50万円 × 5%25,000円
50万円の利益30万円の損失(50万 – 30万) × 5%10,000円

このように、損益通算できれば利益が出ていても節税することが可能です。

参照元:No.2250 損益通算|国税庁

こまめに利益を確定する

所得税は所得が多ければ多いほど税率も上がる仕組みのため、所得額を調整すれば税率も調整できます。以下のような条件で暗号資産を売却したときは、納税額に大きな差が発生します。

【利益確定のタイミングで生じる納税額の差】

計算式毎年の所得税額所得税総額
4,000万円の利益を1年で確定する4,000万円 × 45% – 4,796,000円13,204,000円
20年かけて毎年200万円ずつ利益確定していく200万円 × 10% – 97,500円102,500円2,050,000円

上記からわかるように、理論的にはこまめに利益を確定したほうが税額は抑えられるのです。ただし、こまめに利益を確定することには、売り時を逃して利益が小さくなったり損をしたりする可能性があるというデメリットもあります。

以下でこの対策のメリット・デメリットを詳しく見ていきましょう。

メリット・デメリット

この対策には、以下のようなメリットとデメリットがあります。

【メリット】

税負担の平準化 大きな利益を一度に確定させるのではなく、小さな利益を複数年に分散させることで、各年の所得税率を低く抑えられる可能性がある。
キャッシュフローの改善利益を少しずつ確定させることで、税金の支払いも分散され、一度に大きな金額を用意する必要がなくなる。
リスク分散市場の急激な変動に対するリスクを軽減できる。一部の利益を確定させることで、最悪の場合でも一定の利益を確保できる。
心理的負担の軽減大きな含み益を抱え続けることによる心理的プレッシャーを軽減できる。

 【デメリット】

取引コストの増加頻繁に取引を行うことで、取引手数料が増加する可能性がある。
税務申告の複雑化取引回数が増えることで、確定申告の際の計算や書類作成が複雑になる可能性がある。
大きな利益機会の逸失 早めに利益確定してしまうことで、その後の大幅な価格上昇による利益を逃す可能性がある。
短期的な視点への偏りこまめに利益を確定しようとすることで、長期的な投資戦略を立てにくくなる可能性がある。
課税タイミングの制御困難市場状況に関わらず利益を確定させる必要が生じ、必ずしも最適なタイミングで売却できない場合がある。

こまめに利益を確定することは、メリットもある一方で、上記のようなデメリットもあります。特に本来得られるべきだった大きな利益を得るチャンスを逃してしまえば、精神的なダメージが大きくなるでしょう。

この対策を活用する際は、メリット・デメリットを考慮して実践する必要があります。

具体例

例えば、100万円で購入した暗号資産が1年で1,000万円まで値上がりした場合を考えてみましょう。

  1. 一括で売却した場合
    ⇒ 900万円の利益に対して、高い税率(最大45%)が適用される可能性があります。
  2. 5年かけて分割売却した場合
    ⇒ 毎年180万円ずつ利益を確定させると、各年の所得税率を抑えられる可能性があります。ただし、5年目までに価格が下落するリスクもあります。

この戦略を採用する際は、自分の財務状況、市場見通し、リスク許容度などを総合的に考慮し、慎重に判断することが重要です。また、税務や投資に関する専門家のアドバイスを受けることも検討すべきでしょう。

納税資金を確保しておく

暗号資産で利益が出たときは、納税資金を確保しておきましょう。利益が出てすぐに納税するわけではなく、確定申告をして納税額が決定します。そのため、利益を使い切って納税資金がなくなり、税金を納められなくなるおそれがあるのです。

また、多額の利益が発生する場合は予想以上に税負担が大きくなる可能性があります。もし利益を確定して現金化しても、納税資金は確保しておかないといけないことを覚えておきましょう。さらに、所得税だけでなく10%の住民税もかかる点に注意が必要です。

法人化する

もし暗号資産で巨額の利益を得ても、法人化すれば納税額を抑えられます。以下は法人税の表です。

【法人税】

区分2022.4.1以後事業開始の場合
資本金1億円以下の法人年800万円以下の部分下記以外の法人15%
適用除外事業者19%
年800万円超の部分23.2%
上記以外の普通法人23.2%

参照元:No.5759 法人税の税率|国税庁

資本金1億円以上の法人で4,000万円の利益が出ても、法人税は4,000万円 × 23.2% = 928万円に収まります。しかし、個人であれば約1,300万円の所得税額です。このように、法人化することで節税できるケースがあります。

FPの目から見た「暗号資産(仮想通貨)の税金がバレない」ことに対する結論!

本記事では、暗号資産の税金未納について解説してきました。暗号資産の税金未納は税務署に知られないと考えている方がいるかもしれません。さらに、少額の利益だからと申告しない方もいるでしょう。

結論を言うと、暗号資産の税金未納は発覚してしまうものです。そのうえ、無申告だと追徴課税が課され、本来の納税額より多い税金を納めることになりかねません。利益額によっては、取り返しがつかないほど巨額の納税額となるおそれがあります。

もし申告期限を過ぎていたとしても、自主的に申告すればペナルティを軽減できる可能性があります。本記事で紹介した記録管理の方法を参考に、自分や家族のために暗号資産の申告は確実にしておきましょう。

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