「純金積立はやめとけ」と聞いたことがあっても、理由まではわからないという方がいるのではないでしょうか。投資未経験者にとって「やめとけ」と言われると不安になるかもしれません。
実際には、純金積立はリスクの高い投資ではありません。少額から始められ、長期的に資産を形成できる可能性があるため、投資初心者でも続けやすい方法と言えます。
ただし、他の投資方法と同様に、取り組む際はメリットとデメリットを十分に理解することが重要です。
本記事では、「純金積立はやめとけ」といわれる理由や、純金積立で失敗しないためのポイントについて解説します。純金積立がおすすめできる人の特徴も紹介するため、純金積立が適切な選択かどうか判断するための参考にしてみてください。
(本記事は2024年8月15日時点の情報です)
純金積立はやめとけといわれる理由
「純金積立はやめとけ」といわれるのには、さまざまな理由があります。本記事では、純金積立はやめとけといわれる主な理由を5つ紹介します。
- 手数料が高い
- 利息や配当金がない
- メインの投資先には向かない
- 非課税制度が使えない
- 短期で大きな利益を期待できない
以下でひとつずつ「やめとけ」といわれる理由を確認しましょう。
手数料が高い
純金積立は他の投資方法に比べると、手数料が高くなる傾向にあります。純金積立ができる主な運営会社の手数料は以下のとおりです。
【純金積立運営会社の積立手数料】
純金積立運営会社 | 積立手数料 |
---|---|
楽天証券 | 買付代金の1.65% |
SBI証券 | 買付代金の1.65% |
田中貴金属工業 | 積立金額に応じて1.5%~2.5% |
参照元:手数料|純金積立(金・プラチナ・銀)|楽天証券
金・プラチナ|SBI証券
毎月の積立購入には手数料がかかりますか?|田中貴金属
手数料が高い場合、利益を得るためには金の価格がその手数料分以上に上昇する必要があります。したがって、純金積立をする際は手数料が低い運営会社を選ぶことが重要です。
参考までに、手数料によって純金積立の収益にどれほどの影響を及ぼすか、2つのパターンで比較してみましょう。
毎月の積立金額 | 10,000円 | 10,000円 |
積立期間 | 10年間 | 10年間 |
年間平均成長率 | 5% | 5% |
手数料 | 購入時:1% 売却時:1% 管理手数料:0.5% | 購入時:2% 売却時:2% 管理手数料:1% |
運用益 | 308,160円 | 235,004円 |
上記のシミュレートの場合、手数料が1%違うだけで10年間の運用益が2割ほど減少しました。
また、純金積立と他の投資方法の手数料を比較すると以下の表のようになります。
【純金積立・株式投資・投資信託の手数料】
投資方法 | 手数料の相場(10,000円分購入した場合) |
純金積立 | 165~250円程度 |
株式投資 | 0~数十円程度 |
投資信託 | 50~250円程度 |
参照元:手数料|楽天証券
国内株式の手数料について教えてください|SBI証券
株なら各種手数料がお得|DMM株
純金積立の手数料相場は1.65%~2.5%程度である一方、株式投資は購入する株価次第では1%以内で済むことが一般的です。したがって、10,000円の株を購入したときの手数料は数十円で済むことになり、証券会社によっては無料で売買することも可能です。
また、投資信託は購入時と売却時の手数料がかからないファンドがあり、その場合は運用中にかかる信託報酬だけ考えると良いです。信託報酬はおおむね0.5%~2.5%で設定されていて、0%台の手数料で済む場合も多くあります。このように、他の投資方法と比べると純金積立は手数料が高いといえます。
利息や配当金がない
金を保有しているからといって、利息や配当金は発生しません。株式や投資信託はファンドによって利息や配当金があり、売却益以外の利益も得られます。しかし、金にそのようなメリットはありません。
もし年会費や口座管理手数料などがかかる場合は、金を保有しているだけで損をする可能性があります。
メインの投資先には向かない
金の価格は、経済情勢や世界の動向によって大きく変動します。例えば、インフレの傾向が強くなったり有事が起きたりして株価が暴落すると、金の価値が上昇するといわれています。
金は必ずしも右肩上がりで価値が上がるというわけではなく、情勢に左右されやすいため、資産形成のメインにはなりにくいのです。ただし、「有事の金」といわれるとおり、株価や通貨が暴落するといった有事が起きた際の備えとなりえます。
非課税制度が使えない
純金積立には非課税制度であるNISAが使えません。NISAとは、利益に対して税金がかからない制度をいいます。非課税制度が使えないと純金積立で積み立てた金を売却したとき、売却益に対して課税されるため、利益がすべて手元に残らないのです。
節税制度があるのにその制度が使えないのはもったいないと感じるでしょう。特に投資初心者であれば、まずはNISAから始めたほうが良いです。なぜかというと、NISAが使えるファンドは、金融庁が認めたものもあり、安全性が高いラインナップとなっているからです。
そのうえ非課税となれば、使わない手はないでしょう。もし非課税制度を使って金を購入したいのであれば、金に投資する投資信託を購入する方法があります。
短期で大きな利益を期待できない
純金積立は短期間で大きな利益を狙える投資方法ではありません。金はインフレ時や世界的な有事の際も安定している安全資産とされています。そのため、金が考えられないほど値上がりする可能性はほとんどありません。
したがって、短期で大きな利益を出すことは難しく、短期で利益を得たいなら値動きの激しい資産を買う必要があります。逆にいえば、純金積立は長期でコツコツと資産を増やせるため、長期間の運用で少しずつ資産を増やしたい方にはおすすめの投資方法です。
純金積立の仕組み
純金積立は「定額積立」と「定量積立」の2つの方法があります。毎月1,000円、5,000円などと金額を決めて購入するのが定額積立です。定額積立は毎月決まった金額を積み立てれば良いため、負担感が変わらないのがメリットとなります。
一方、定量積立は1g、10gなどと金の数量を決めて購入する積立方法です。金の価格は変動するため、先月は1gを10,000円で買えたのに、今月は15,000円かかったということがあります。そのため、定量積立は確実に金の数量を増やせる一方で、金銭的な負担が積立のたびに変わります。
純金積立は購入した価格より高い価格で売却できれば利益が出る仕組みです。売却のしかたは、運営会社によってさまざまです。金を現金化するのではなく、貴金属や金の延べ棒といった現物として引き出すこともできます。
また、金の価格が下がったときにまとめて購入するスポット購入も可能です。純金積立は一つの金投資の方法ですが、他にも選択肢があります。もし純金積立以外の金投資に興味があれば、現物・ETF・投資信託・先物取引などの方法でも金を保有できます。
純金積立のメリット
純金積立には主に以下の5つのメリットがあります。
- 少額から始められる
- 資産価値がなくならない
- リスクを分散できる
- 現物保有しなくていい
- 換金しやすい
ひとつずつ確認しましょう。
少額から始められる
純金積立は少額から始められます。例えば、純金積立の運営会社である楽天証券とSBI証券は1,000円から、田中貴金属は3,000円から金を購入できます。定額購入で純金積立をする場合、金の価格が安いときは多く、価格が高いときは少なく買う「ドルコスト平均法」で購入単価を抑えられるのもメリットです。
純金積立は少額でコツコツと積み立てられる投資方法のため、長期的な運用にも適しています。ただし、定量積立の場合は金価格と購入数量によっては想定以上に積立金額が高くなることがある点には、注意が必要です。
資産価値がなくならない
金は価値がなくならないといわれています。例えば、株式であれば発行元の企業が倒産すると株式の価値はなくなり大きな損失となります。金は金そのものの価値は一定のため、資産価値がなくなることはありません。
また、インフレや経済危機の影響を受けにくく、金以外の資産が下落すると金の価値が上がる傾向にあります。そのため、他の資産がダメージを受けている状況でも、金は安定した運用を行えます。
リスクを分散できる
金を保有していると、リスクの分散が可能です。リスク資産を多く持っている方にとっては、金投資はリスク分散できる選択肢のひとつとなります。安全資産とされる金に投資していれば、リスク資産である株式で損失を出したとしても資産全体で見るとゼロにはなりません。
実際に、2020年にコロナショックで株価が下落したときは金の価格も遅れて下落したものの、すぐに持ち直しました。したがって、経済危機のような状況になっても比較的安心して持っていられる金融商品といえます。
現物保有しなくていい
金の延べ棒や金貨などの現物を購入すると、保管状態に注意しなければいけません。盗難に遭うと金資産はゼロになり、大きな損失となってしまうからです。しかし、純金積立は金そのものを自宅に保管する必要はなく、盗難のリスクを考えずに済みます。
また、現物を保管するには貸金庫や倉庫を借りて安全に保管する必要があります。純金積立は保管するコストがかからず、盗難の心配もありません。
換金しやすい
金を売却するとき、換金のしやすさは非常に重要です。換金が難しい金融商品の場合、売りたくても売れない状態になり、自分の都合に合わせて現金化できないことがあります。
金市場は一定の規模があり流動性が高いため、いつでも現金化できるのがメリットです。例えば株式の場合、株を発行している企業に問題が起きると買い手がいないために売りにくくなり現金化が難しくなります。
金は安全資産とされており、買い手がいなくなる可能性は低いため、現金化が容易です。もし、現金にしない場合は現物で受け取ることも可能です。
純金積立がおすすめな人
純金積立がおすすめな人の特徴は、以下の3つです。
- 長期で運用したい
- リスクを分散したい
- 少額から投資を始めたい
ひとつずつ解説します。
長期で運用したい
純金積立は長期で資産運用したい方におすすめの投資方法で、短期で大きな利益を得られる手法ではありません。逆にいうと、長期でコツコツ運用したい方は純金積立をして、地道に金の保有量を増やすのがおすすめです。
また、課税の面からも純金積立の長期保有にはメリットがあります。保有期間が5年を超えるかどうかで、以下の表のように納税額が算出されます。
【保有期間に応じた納税額】
計算式 | 200万円で購入した金を300万円で売却した場合 ※譲渡費用はかかっていない。特別控除は50万円。 | |
保有期間が5年以内 | 譲渡価額 – (取得費 + 譲渡費用) – 特別控除 | 300万円 – (200万円 + 0円) – 50万円 = 50万円 |
保有期間が5年超 | {譲渡価額 – (取得費 + 譲渡費用)- 特別控除} × 1/2 | {300万円 – (200万円 + 0円) – 50万円} × 1/2 = 25万円 |
参照元:No.3152 譲渡所得の計算のしかた(総合課税)|国税庁
上記の計算式のように、長期保有は短期保有の場合の2分の1の納税額です。したがって、5年以上金を保有していれば税負担が軽減するのです。
リスクを分散したい
すでに株式といったリスクの高い資産に投資している方は、ポートフォリオのバランスを整えるために安全資産である金を買うのは良い選択肢といえます。資産運用をするうえで、ポートフォリオのバランスを整えるのは重要です。
例えば、全資産を株式に投資していると、大きな暴落があれば株式資産が大きく減少するリスクがあります。そうなったときに、いざというときの生活費の確保が難しくなり、日常生活に影響を及ぼすことも考えられます。
したがって、リスク分散のために安全資産である金を保有することが重要です。もし株式で損失が出ても、逆の値動きをしやすい金を買っていれば損失をカバーできる場合があります。
少額から投資を始めたい
純金積立は1,000円程度といった少額から始められます。少額であれば生活費を圧迫しにくく、長期で積み立てることが可能です。
含み損が発生したとしても、少額であればダメージは少なくて済みます。もし金価格が10%下落したとき、100万円保有していると含み損は100,000円です。一方、100,000円の保有であれば含み損は10,000円で済みます。
このように、少額でコツコツ積み立てることで、精神的な負担を軽減しながら資産を増やせます。また、価格が下落したタイミングでスポット購入をするのも資産を増やす効果的な手法です。
純金積立をおすすめしない人
純金積立が合わない人には特徴があります。純金積立をおすすめしない人の特徴を3つ確認しましょう。
手数料を払いたくない
純金積立をするには1.65%~2.5%程度の手数料がかかります。株式は1%程度といわれているため、株式のように大きな利益を狙えないのに高い手数料を支払うことになる可能性があります。
そのため、コストパフォーマンスの悪い投資方法と受け取る方もいるでしょう。割安な手数料で金を買いたいのであれば、投資信託をおすすめします。NISAが使えるファンドもあるため、手数料が純金積立よりも安い可能性があるうえに利益に課税されません。
経済情勢の勉強をしたくない
経済情勢の勉強が苦手な方にも、純金積立は向いていないでしょう。とくに金の価格は米ドルに影響されやすいため、米国の経済状況を把握しないといけません。
純金積立の場合は自動で積立ができるものの、投資をするなら多少の勉強は必要です。効率的に資産運用をするためにも純金積立も含め、さまざまな投資方法を併用するとよいでしょう。
すぐに利益がほしい
純金積立はすぐに利益が出るような金融商品ではありません。そのため、短期間で大きな利益がほしい方には、純金積立は合わないでしょう。純金積立は長期運用が前提で、少しずつ金を買い増していく仕組みです。
売買を繰り返して大きな利益を狙える株式やFXなどとは異なる金融商品といえます。特に投資初心者であれば、すぐに利益がほしいという目的で投資を始めるのはそもそも危険です。
短期での利益を狙うと、適切な投資判断ができなくなり資産を減らすことになりかねません。純金積立をする場合は、長期で気長に資産形成するという意識を持つとよいでしょう。
純金積立で失敗しないためのポイント
「純金積立はやめとけ」と聞くのは、実際に失敗した人たちがいるからです。それならば、失敗したポイントを把握し、それをしないようにすれば純金積立で失敗する可能性を抑えられます。
純金積立に失敗しないためのポイントを3つ紹介します。
- 信用できる運営会社を選ぶ
- 万が一に備えた返金保証がある
- 純金積立の特徴を把握する
ひとつずつ見ていきましょう。
信用できる運営会社を選ぶ
純金積立をする際は、信用できる運営会社を選ぶことが重要です。運営会社が倒産した場合、返金されない可能性があるためです。運営年数や知名度、純金積立の資産額を調べて、運営会社の安全性や信頼性を確認しましょう。
また、運営会社によって年会費や購入時・売却時の手数料、保管料は異なります。サービスが充実した会社を選ぶことはもちろん、業績や倒産リスクなども考慮して積立先を選びましょう。
万が一に備えた返金保証がある
倒産するリスクはどの企業にもあります。そのため、運営会社が倒産したとしても返金保証がある会社を選ぶと良いでしょう。なお、金の保管方法には「消費寄託」と「混蔵寄託」の2つがあり、違いは以下の表のとおりです。
【消費寄託と混蔵寄託】
消費寄託 | 混蔵寄託 | |
---|---|---|
保管方法 | 運営会社を介して運用される | 運営会社が専用金庫に保管 |
所有者 | 運営会社 | 購入者 |
保管のコスト | 不要 | 要 |
返金保証 | 返金されない可能性あり | 返金される |
消費寄託はコストがかからない代わりに返金保証がないことが多いです。そのため、消費寄託の運営会社を選ぶなら、倒産する可能性が低く、安全性の高い会社を選ぶ必要があります。返金保証を重視するなら混蔵寄託の会社を選ぶと良いでしょう。
純金積立の特徴を把握する
純金積立のメリットやデメリットを十分に理解し、純金積立の商品性や将来性が自分に合っているか確認しましょう。繰り返しになりますが、純金積立で一攫千金を狙うのは難しいと考えてください。
純金積立はあくまで長期的な資産形成のひとつの方法として、もしくはポートフォリオの安全性を高める方法として活用できる投資方法です。
もし純金積立で大きな利益を狙って思惑が外れたら、含み損を抱えているのに途中で積立をやめて損失を確定せざるをえなくます。このような失敗をした人が「純金積立はやめとけ」と言っている可能性があります。
純金積立に取り組む際は特徴を理解し、自分に合った方法で継続して積立することが大切です。
FPが見た「純金積立はやめとけ」といわれる理由の結論!
本記事では「純金積立はやめとけ」といわれる理由や、純金積立に失敗しない方法を解説しました。「純金積立はやめとけ」と言っているのは、おそらく実際に失敗した人たちであり、そのような方々は純金積立の特徴や商品性を把握しないで金投資を始めた可能性があります。
そのため、短期で利益を狙って売買を繰り返したり、一時的な含み損に動揺してすぐに売却して損失を確定したりと、純金積立に合わない対応をして失敗したのでしょう。しかし、純金積立は失敗しないポイントを把握していれば資産形成の一助になってくれる金融商品です。
リスク資産を多く保有している方にとっては、安全資産である金はポートフォリオのバランスを整える役目を果たしてくれます。このように、純金積立にはさまざまなメリットがあり、経済危機やインフレなどといった情勢に対しても強い金融商品とされています。
有事への備えにしたり資産のバランスを整えたりできる純金積立を有効に活用して、資産形成を効率的に行ないましょう。