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夏のお風呂はメリットがたくさん!不調解消にも

夏のお風呂はメリットがたくさん!不調解消にも
石川泰弘

監修者

日本薬科大学 スポーツ薬学コース特任教授 博士(スポーツ健康科学)

石川 泰弘

日本薬科大学 スポーツ薬学コース特任教授 博士(スポーツ健康科学)、温泉入浴指導員(厚生労働省規定資格)、睡眠改善インストラクター(日本睡眠改善協議会認定資格)。2006年よりバスクリンの商品及び企業PR・IR活動を行ない「きき湯シリーズ」を大ヒット商品に導き、 お風呂教授として TV・雑誌・Web・ラジオなど多くのメディア活躍。著書に「バスクリン社員が教える究極の入浴術お風呂の達人(草思社)」「バスクリン社員がそっと教える肌も腸も健康美人になる入浴術26(スタンダードマガジン)」「たった一晩で疲れをリセットする睡眠術(日本文芸社)」「たった一晩で疲れが取れる睡眠法(ゴマブックス)」がある。

夏になると「お⾵呂は暑い」「疲れていて面倒臭い」などを理由にシャワーで済ませてしまうことはないでしょうか?しかし、夏に多い「だるい」「エアコンで冷えた」「寝つきが悪い」などといった体調不良は、実はお風呂に入ることで解消することができます。本記事では、夏にお風呂に入るメリットから、お風呂と睡眠の関係について徹底追及し、良質な睡眠へと導く入浴法をご紹介します。

お風呂の3大作用

お風呂の3大作用

お風呂は、なぜ身体に良いとされているのでしょうか?身体が温まるからでしょうか?日常の緊張感から解き離れ、リラックスできるからでしょうか?お風呂の効果を紐解くためには、まず最初にお風呂が人間の身体にもたらす作用について考える必要があります。

お風呂に浸かることにより、身体が影響を受ける作用には主に「浮力・温熱・水圧」があり、3つの相乗効果によって、お風呂は身体に良い影響をもたらしています。

浮力

1つめの作用は、「浮力」です。お風呂に浸かると、体重が約9分の1程度まで軽くなります。その結果、人間の体重を支えている筋肉や関節の負担が減るので、肘や膝、腰が楽になって全身がリラックスできます。

温熱

2つ目の作用は、「温熱」です。温かいお風呂に浸かり、温まると、血管の内壁から一酸化窒素が出て血管を柔らかくしなやかにします。その結果、血液が通る道が広くなり、血流が良くなるのです。人間の体温は血液の影響を多分に受けます。血液の流れが促進されることにより、身体が温まります。

水圧

3つめの作用は、「水圧」です。人が水中に潜ると、水深30センチメートルでは1平方センチメートルあたり約1.06kgの圧力がかかります。入浴中も水圧で腹部が押され、横隔膜が上がります。人間の身体には元の状態に戻そうとする恒常性と呼ばれる働きがあるので、元に戻そうと酸素を取り入れて肺を大きくしようとします。

その結果、自然と呼吸数が増え、心肺機能が高まってさらに血流が良くなります。また、足や下半身も圧力で押され、ポンプのように下から上へと血液が押し戻され、心臓の動きが活発になることも、血流が良くなる要因になります。

お風呂は夏特有の悩みを解消する

お風呂は夏特有の悩みを解消する

暑さ厳しい夏、お風呂の三大作用は、心と身体にどのような効果をもたらすのでしょうか?夏にお風呂に浸かることで得られるメリットを見ていきましょう。

自律神経のバランスを整える

外気の猛烈な暑さと、エアコンの効いた室内の温度差で、健康な方でも夏は自律神経のバランスが乱れがちです。お風呂に浸かり、身体の深部を温めることで、自律神経のバランスを整える効果が期待できます。

清浄効果

いつも以上に汗をかく夏は、においや汚れが気になるもの。シャワーで汗を流すのもいいですが、お風呂に5分浸かれば、ゴシゴシと身体を擦らずとも、身体に付着した皮脂汚れなどの約半分が取り除かれます。身体が温まることで、全身の毛穴が開き、余分な皮脂が流れ出るので、肌に負担をかけることなく、清浄効果を得ることができるのです。背中など、洗いづらい部分も清浄してくれるので、お風呂に浸かる習慣を持つだけで全身を清潔に保つことができます。

むくみの改善

夏に多いむくみの悩みにもお風呂は効果的です。お風呂に浸かると身体に水圧がかかり、身体の表面はもちろん、皮膚の下の血管にまで圧力が加わります。その圧力によって手や足などの末端に溜まった血液が心臓へと押し戻され、血流やリンパの流れの改善が期待できます。

夏冷えの解消

夏はエアコンなどで冷気にさらされる時間が意外と長く、室内で過ごす時間の多い人は冬以上に身体が冷えているなんてことも。お風呂に浸かる習慣を身につけることで、身体の深部を温めることができるので、夏冷えの改善が期待できます。

睡眠の質向上

人間は体温が下がる過程で眠くなります。お風呂に入ると体温は上がりますが、血管は拡張し熱放散しやすくなっています。つまり、お風呂で上がった体温が、すっと下がって深い眠りに入りやすくなるのです。良質な睡眠を得るためにも、寝苦しい夏の夜こそ、お風呂習慣が効果的です。

お風呂教授に聞く、夏におすすめの入浴方法

夏にお風呂に入るメリットを、さらに高めるためにはどうすれば良いのでしょうか?お風呂教授として知られる日本薬科大学 スポーツ薬学コース特任教授 博士 石川泰弘さんに、夏におすすめの入浴法について伺いました。

入浴時間と温度設定

一般的に『お風呂=疲労回復』と思われがちですが、お風呂にはさまざまな効果はあるものの、直接的に疲労回復させるというよりは、その後に続く睡眠の質を向上させるこことで、身体の持つパフォーマンスを引き出すための大切な準備といえます。だから「暑さで疲れたから」などといった理由でお風呂に浸からずシャワーだけで済ませてしまうのは本末転倒な話。長引く暑さで体力が消耗している夏の時期こそ、お風呂習慣が有効です。

お風呂の効果を高めるために、何に注意すればいいのでしょうか?

効果的な入浴のためには、お風呂の「温度」と「浸かっている時間」が大切です。お風呂の効果を高めるためには、いわゆるカラスの行水ではなく、心地良いぬるめのお風呂にゆっくり入るのがおすすめです。湯温に関しては、足を入れたときに気持ちいいと感じられる程度が最適と言われていますが、目安としては夏場であれば36〜39℃、冬場であれば39〜40℃のお風呂に10〜15分浸かるのが良いでしょう。

5分程度でも温まったような気がしますが、10〜15分浸かった方が良いのはなぜでしょうか?

身体の表面が温まるには5分で十分なのですが、筋肉まで温めるには10分以上が必要だからです。また、心臓から送り出された血液が体内を一巡するには約1分かかると言われていますが、10分入れば10周、15分入れば15周と温かいお風呂で血管が開いた状態で血液を巡らせることができ、毛細血管のすみずみまで血液を送り届けることができます。

半身浴と全身浴どっちがいい?

半身浴と全身浴、どちらの方がより入浴効果が得られるのでしょうか?

それはやはり全身浴です。全身浴の方が身体に水圧がかかるので血流が増え、血液循環も活発になり栄養や酸素など、健康に必要なものを全身に届けてくれます。また入浴中は一時的に体温が上がり、心拍数も増加します。しかし、その後は体温がスムーズに下がり、心拍数も減少してメリハリがつき、良い眠りが得られます。

半身浴はどのような方におすすめなのでしょうか?

そもそも半身浴は、心臓が弱かったり、疾病を持っている方におすすめの入り方です。水圧で心臓に負担がかからないものの、その分、血流も全身浴に比べると増えません。もし健康な方が半身浴をやるのだったら、全身浴と半身浴を交互に行うのが良いでしょう。たとえば、全身浴をして額にうっすらと汗をかいたら、半身浴に切り替えるなども、夏場のお風呂の入り方としておすすめです。

入浴剤の選び方、使い方

入浴剤は入れた方がいいのでしょうか?

お風呂の効果を高めるものが入浴剤の役割なので、選択肢があるのであれば入れた方が良いです。しかし、使用感に好みがあったり、効果の違いもあるので、製品の特徴を知って使い分けるのがおすすめです。

どのような違いがあるのでしょうか?

入浴剤は大きく2種類あって、「医薬部外品」と「浴用化粧品」に分けられます。
医薬部外品」は有効成分が配合され、温浴効果を高め、肩こり、腰痛、打ち身など身体への効能があると厚生労働省に承認されたものです。最初に書かれている効能が、メーカーが一番力を注いでいる効果です。
浴用化粧品」は化粧品の仲間で、肌にうるおいを与えたり、清潔に美しくする効果が期待できます。

剤形によっても特徴があるのでしょうか?

もちろんです。粉の温浴タイプは多くのメーカーが硫酸ナトリウムを主成分にしています。一番の効果は保温です。いわゆる湯上がりにポカポカと温かい状態が続くのが特徴。色と香りがつけやすいので、バリエーションも豊富で選ぶ楽しみもあり広く人気です。

固形や粒状のものがある炭酸ガスタイプはいかがでしょうか?

炭酸ガスタイプといえば「バブ」や「きき湯」などが有名ですが、主な効果は血行促進。肩こりや腰痛といった末端冷え症には、血を循環させる炭酸ガスタイプがおすすめです。ただし、炭酸ガス系の入浴剤の効果は、お風呂に入れてから約2時間半くらいが目安。その時間内に入るようにしてください。

液体タイプはいかがでしょうか?

保温効果は決して高くありませんが、保湿効果があるので、肌の乾燥が気になる方におすすめです。そのときの気分や体調にあわせて使い分けるといいでしょう。

入浴剤を入れると、肌あたりもやさしくなるのも魅力です。入浴剤が無い場合、代わりになるものはありますか?

入浴剤が無い場合は、「だしつゆ」などのうまみ調味料を少々入れてみてください。うまみ調味料に含まれるグルタミン酸ナトリウムは入浴剤にも入っている成分で、塩素を取り除いてくれる効果があります。まるで入浴剤を入れたかのようにお湯がまろやかになりますよ。

お風呂に入れないときの代案は?

体調や環境により、お風呂に入れないときは、何か代案はありますか?

お風呂が持つ主な3つの作用のうち、温浴作用を味わうのであれば、おすすめは気軽にできる「手浴」です。手は心臓に近いため、温まった血液が早く心臓に届き、体中を巡って効率的に体を温めてくれます。手首までしっかりお湯に浸けるのがポイントです。

足浴よりも良いのでしょうか?

身体を早く温めるという意味では、手浴の方がおすすめです。実際に、ちょっと熱めの42℃のお湯に20分間手足を浸けた実験では、足浴よりも手浴の方が早く体温が上がっているという結果が得られています。手浴の間は手を使えないのでスマホ断ちにもなりますし、ぜひデスクワークの合間などのリフレッシュに活用してみてください。

夏のお風呂に浸かるときの注意点

夏のお風呂に浸かるときの注意点

冬場のお風呂は、家の中の寒暖差が大きくなって血圧が乱高下し「ヒートショック」が起きやすくなるため、事前に脱衣所やお風呂場を温めておく重要性が広く知られていますが、夏場のお風呂はどのような注意点があるのでしょうか?

身体に熱がこもった状態のままでお風呂に入るのは危険ですし、すぐにのぼぜてしまうため、お風呂が気持ちいいと感じられません。頭を水で冷やすなど、ちょっとクールダウンさせてからお風呂に浸かるようにしましょう。

入浴前にはしっかり水分補給を

特に夏の入浴前に、水やお茶など糖分の少ないものを飲んで水分補給しておくことを欠かさないようにしてください。夏は、知らず知らずのうちに脱水状態になっている方もいます。水分不足の状態でお風呂に浸かって汗をかいていくと、脱水症状になるリスクがとても高くなります。

どれくらいの量の水分を飲めばいいのでしょうか?

心掛けたいのが、入浴前のコップ1杯の水分補給です。たとえば41℃で15分間お風呂に浸かると、体内の水分が失われることで血漿は約10%減少、いわゆるドロドロの状態になってしまいます。喉の渇きを感じた入浴後はもちろん、入浴前に水分を摂ることは脱水症状のリスク回避にはとても重要です。ぜひ、習慣にしてください。

お風呂から出たら10分以内に保湿を

水分補給のように命にかかわる問題ではありませんが、お風呂から出た後はまず第一に保湿を習慣にしてください。

お風呂上がりは肌が十分うるおっているように感じるのですが、早い方がいいのはなぜでしょうか?

確かに角質層が水分で満たされ、肌表面がうるおっている感じはしますが、湯温の違いに関わらず、入浴後は急激に角質層の水分量が失われていき、10分後には入浴前より乾燥します。お風呂から出た後10分以内に保湿をしっかりして、うるおいを閉じ込めることが大切です。夏の肌は紫外線のダメージを受けているので、お風呂上がりの保湿習慣を忘れないようにしてください。

まとめ お風呂は身体のポテンシャルを引き出す大切な儀式

まとめ お風呂は身体のポテンシャルを引き出す大切な儀式

パリオリンピックの記憶がまだ新しいかと思いますが、オリンピック開催地にはトレーニングルームを始め、温水と冷水の交代浴が行えるリカバリープールも備えたハイパフォーマンススポーツセンターが現地に設置されているのをご存知でしょうか?肉体と精神を極限まで追い込んだアスリートにとって、お風呂は身体に秘めるポテンシャルを最大限に引き出すために最適な手段なのです。

アスリートのみならず一般の方も、お風呂に浸かるという日常の行為を意識的に行うことで、効率良くコンディションを整えられます。厳しい夏を乗り切るためにも、健康を管理するためにもお風呂を味方につけましょう。

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