天涯孤独や「おひとりさま」という生き方が増加している現代社会。しかし、一人で生きることは決して寂しいものではありません。むしろ、自由で充実した人生を送るチャンスとも言えるでしょう。本記事では、天涯孤独な状況での生き方のポイントや、必要な備えについて詳しく解説します。一人暮らしの方や将来に不安を感じている方に、安心して豊かな生活を送るためのヒントをお届けします。
- 日本では未婚率の上昇や高齢化により、「おひとりさま」が増加している。2024年には孤独・孤立対策推進法が施行され、社会全体で取り組む姿勢が示された。
- 「おひとりさま」の生活を充実させるには、孤独に対する偏見を捨て、人とのつながりを大切にし、生きがいを見つけ、健康的な生活を送ることが重要。
- 天涯孤独になった場合の備えとして、老後の財務計画、健康管理、見守りサービスの利用、任意後見契約や死後事務委任契約の締結、エンディングノートや遺言書の作成が必要。
天涯孤独とは?「おひとりさま」の現状を知る
「天涯孤独」という言葉は、遠く離れた異郷の地で身寄りがない状態を指します。これは物理的な孤独を表現することが多く、一生涯孤独を意味する「生涯孤独」とは微妙に異なります。しかし、現代社会において「おひとりさま」の問題は、単に物理的な孤独だけでなく、社会的なつながりの希薄化や未婚化、高齢化などの複合的な要因によって生じています。
日本では未婚率が上昇している
日本の未婚率は年々上昇しており、これは「おひとりさま」の増加に大きく関係しています。国立社会保障・人口問題研究所の統計によると、2020年時点で50歳時の未婚率(生涯未婚率)は、男性で約28%、女性で約18%に達しています。これは過去最高の数値であり、直近20年間で急激に増加しています。
さらに、このトレンドは今後も続くと予測されている点が重要です。国立社会保障・人口問題研究所などの研究者の間では、2030年には男性の3人に1人、女性の4人に1人が生涯未婚者になるという予測も出ています。これは、私たちの社会構造や家族観が大きく変化していることを示唆しています。
離婚や死別でおひとりさまになるケースもある
「おひとりさま」は必ずしも未婚者だけを指すわけではありません。結婚経験がある人でも、離婚や配偶者との死別によって「おひとりさま」になるケースが増えています。特に注目すべきは、女性のほうが「おひとりさま」になる傾向が強いという点です。
これには複数の要因があります。まず、一般的に女性のほうが平均寿命が長いため、配偶者と死別する可能性が高くなります。また、近年では「熟年離婚」と呼ばれる高齢者の離婚も増加傾向にあります。さらに、離婚や死別後に再婚せず、ひとり暮らしを続ける女性も多いのが現状です。
孤独死も増加傾向にある
「おひとりさま」の増加に伴い、孤独死の問題も深刻化しています。国土交通省の「死因統計別データ」によると、2018年に東京都区部で孤独死した人は5,513人に上り、これは15年前の2003年と比較して約1.9倍に増加しています。
孤独死は、単に一人暮らしをしている人が突発的な疾病などで亡くなるケースだけでなく、社会的なつながりの希薄化や支援体制の不足など、複合的な要因によって引き起こされています。また、孤独死は発見が遅れることで、様々な社会的問題を引き起こす可能性があります。
2024年に孤独・孤立対策推進法が施行
このような状況を受けて、2024年4月1日から孤独・孤立対策推進法が施行されました。この法律は、「孤独・孤立に悩む人を誰ひとり取り残さない社会」、「相互に支え合い、人と人の「つながり」が生まれる社会」を目指すものです。
法律の基本理念には、社会のあらゆる分野での対策推進、当事者や家族の立場に立った継続的な支援、当事者の意向に沿った社会や他者との関わりの支援などが含まれています。これは、孤独・孤立の問題が個人の問題ではなく、社会全体で取り組むべき課題であることを示しています。
この法律の施行により、国や地方自治体、そして私たち一人ひとりが、孤独・孤立の問題に対してより積極的に取り組むことが期待されています。例えば、24時間対応の相談窓口の設置や、支援制度に関する情報提供の充実などが計画されています。
「おひとりさま」の増加は、私たちの社会に新たな課題をもたらす一方で、多様な生き方を認める社会への変化も促しています。しかし、孤独や孤立が深刻な問題となっていることも事実です。今後は、個人の選択を尊重しつつ、誰もが安心して暮らせる社会づくりが求められています。
天涯孤独をどう生きる?生き方を充実させる4つのポイント
天涯孤独や「おひとりさま」という生き方を選択する人が増えている現代社会において、その生活を充実させるためのポイントを以下に4つ紹介します。これらのポイントを意識することで、一人で過ごす時間をより豊かなものにすることができるでしょう。
「天涯孤独は寂しく不幸」という偏見を捨てる
まず重要なのは、「一人で生きることは寂しく不幸である」という社会的偏見から自由になることです。この偏見は多くの場合、根拠のないものです。実際、孤立と孤独は異なる概念であり、物理的に一人でいることと感情的に孤独を感じることは必ずしも一致しません。
孤立とは他者と物理的に離れている状態を指し、必ずしもネガティブな感情を伴うものではありません。一方、孤独は他者との間に感情的なつながりが欠如していると感じる主観的な経験です。つまり、群衆の中にいても孤独を感じることがある一方で、一人でいても充実感を得られることがあるのです。
この違いを理解し、自分の感情に向き合うことで、「おひとりさま」の生活をより客観的に捉えることができます。一人の時間は自己理解を深め、自分の望むものを明確にする貴重な機会となり得るのです。
人とのつながりを大事にする
「おひとりさま」の生活を選択したとしても、それは他者とのつながりを完全に断つわけではありません。むしろ、質の高い人間関係を築くことが重要です。
特に、地域社会とのつながりは「おひとりさま」にとって大切です。ご近所さんとの良好な関係は、日常生活の中で小さな助け合いを生み出し、安心感をもたらします。例えば、町内会のイベントに参加したり、地域の趣味のサークルに加入したりすることで、新たな出会いや交流の機会を得ることができます。
また、こうした地域とのつながりは防犯面でも効果があります。何か異変があった際にすぐに気づいてもらえる関係性を築くことで、一人暮らしの不安を軽減することができるでしょう。
生きがいを見つける
「おひとりさま」の生活の大きな利点は、自分の時間を自由に使えることです。特に退職後は自由な時間が増えるため、この時間を有効に活用することが充実した生活につながります。
新しい趣味を見つけたり、長年やりたかったことに挑戦したりすることで、生活に彩りを添えることができます。例えば、旅行や美術鑑賞、ガーデニングなど、自分の興味に合わせて活動を選択できます。また、ボランティア活動に参加することで、社会貢献しながら新たな人間関係を築くこともできるでしょう。
生きがいを見つけることは、日々の生活に目標や楽しみをもたらし、精神的な健康にも良い影響を与えます。自分にとって意味のある活動に取り組むことで、「おひとりさま」の生活をより豊かなものにすることができるのです。
健康を意識した生活を送る
50代以降は、健康に配慮した生活を心がけることが特に重要になります。「おひとりさま」の場合、自己管理の重要性がより高まります。
まず、食事面では栄養バランスに気を付けることが大切です。一人暮らしだと、つい簡単な食事で済ませがちですが、「主食・主菜・副菜」を意識した食事を心がけましょう。まとめ調理や冷凍保存を活用すると、効率的に栄養バランスの取れた食事を準備できます。
運動面では、無理のない範囲で体を動かす習慣をつけることが重要です。ウォーキングや軽い体操など、自分に合った運動を見つけ、継続することで健康維持につながります。
また、定期的な健康診断を受けることも忘れずにしましょう。体の異常の早期発見・早期治療は、健康寿命を延ばす鍵となります。
さらに、心の健康にも注意を払いましょう。ストレス解消法を見つけたり、必要に応じて専門家に相談したりすることで、メンタルヘルスを保つことができます。
天涯孤独になったら必要な5つの備え
天涯孤独になると、様々な不安や困難に直面する可能性があります。「自分が死んだらどうなるのだろう」「誰も助けてくれる人がいない」といった不安を抱える方も多いでしょう。しかし、これらの問題に対してあらかじめ備えておくことで、より安心して生活を送ることができます。ここでは、天涯孤独になったときに必要となる5つの重要な備えについて詳しく解説します。
老後を見据えてお金の計画を立てる
天涯孤独な状況で迎える老後に備えて、適切な財務計画を立てることは極めて重要です。独身で長年働いてきた方の場合、自身の収入や退職金をもとにある程度のマネープランを立てていることも多いでしょう。しかし、専業主婦だった方が離婚や配偶者との死別でおひとりさまになった場合は、状況が大きく異なります。
このような場合、まず婚姻期間中の年金分割制度や遺族年金などの制度を十分に理解し、活用することが重要です。これらの制度を踏まえたうえで、新たな生活設計に基づいた財務計画を立てる必要があります。必要に応じて、ファイナンシャルプランナーや社会保険労務士などの専門家に相談するのも良いでしょう。
また、老後の生活を支えるためだけでなく、人生をより豊かにするために働き続けるという選択肢も考慮に入れるべきです。例えば、公的年金の受給開始年齢まで働き続けるなど、健康で働ける間は社会とのつながりを持ち続けることで、経済面だけでなく精神面でも充実した生活を送ることができます。
65歳以上の高齢者の就業率は年々上昇しており、2022年時点で25.2%、65~69歳は50.8%、70~74歳は33.5%が働いているというデータもあります。これは、経済的な理由だけでなく、社会参加や生きがいを求めて働く高齢者が増えていることを示しています。
健康面のリスクや不安に備える
天涯孤独な状況では、健康面での不安も大きな課題となります。日頃から健康的な生活を心がけていても、予期せぬ病気や怪我のリスクは常に存在します。
まず、基本的な健康管理として、定期的な健康診断の受診や、バランスの取れた食事、適度な運動を心がけることが重要です。また、突発的な体調不良や怪我に備えて、かかりつけ医を持つことも大切です。
経済的な面では、健康保険の3割負担や高額療養費制度などの公的制度を理解しておくことが必要です。しかし、長期の入院や高額な治療が必要になった場合に備えて、民間の医療保険への加入も検討すべきでしょう。医療保険は、若くて健康なうちに加入すると保険料が抑えられるため、早めの準備が賢明です。
さらに、将来的に介護が必要になる可能性も考慮に入れておく必要があります。介護付き有料老人ホームの月額費用は15万円から30万円ほどかかるとされており、これらの費用に備えた貯蓄や介護保険への加入も検討すべきです。また、自分に合った介護施設の情報を事前に収集し、いくつか候補を挙げておくことも重要です。
定期的な訪問・見守りサービスの利用を検討する
天涯孤独な状況では、突然の体調不良や事故が発生しても発見が遅れる可能性があります。最悪の場合、孤独死に至るリスクもあります。このような事態を防ぐために、定期的な訪問や見守りサービスの利用を検討することが重要です。
まず、近隣住民との関係性を構築することが大切です。挨拶を交わしたり、地域の行事に参加したりすることで、緩やかな見守りのネットワークを作ることができます。また、新聞や牛乳の定期購読を利用することで、配達員による間接的な見守りも期待できます。
さらに、民間企業や自治体が提供する見守りサービスの利用も検討すべきです。これらのサービスには、定期的な電話や訪問による安否確認、緊急通報システムの設置、センサーによる活動モニタリングなど、様々な形態があります。自分の生活スタイルや希望に合わせて、適切なサービスを選択することが重要です。
任意後見契約や死後事務委任契約を結んでおく
認知症などにより判断能力が低下した場合や、自身の死後の手続きに備えて、任意後見契約や死後事務委任契約を結んでおくことが重要です。
任意後見契約は、判断能力が低下した際に備えて、あらかじめ信頼できる人を後見人に指定しておく契約です。これにより、銀行取引や年金・保険の手続き、医療や介護に関する意思決定など、重要な事項を代行してもらうことができます。また、施設や病院への入所・入院時の身元引受人としての役割も期待できます。
一方、死後事務委任契約は、自身の死後に必要となる様々な手続きを第三者に委託する契約です。具体的には、葬儀や埋葬の手配、賃貸契約や公共料金の解約、遺品の整理などが含まれます。この契約を結んでおくことで、自分の希望に沿った形で死後の事務処理を行ってもらうことができます。
これらの契約は、弁護士や司法書士などの専門家と相談しながら進めるのが望ましいでしょう。専門家のアドバイスを受けることで、より確実で適切な契約を結ぶことができます。
エンディングノートを作成して遺言書も検討する
エンディングノートの作成は、自分の人生を振り返り、残りの人生をどのように過ごしたいかを整理する良い機会となります。また、もしもの時に備えて必要な情報を記録しておくことで、周囲の人々の負担を軽減することができます。
エンディングノートには、以下のような情報を記載しておくとよいでしょう:
- 個人情報(氏名、生年月日、住所など)
- 医療・介護に関する希望(延命治療の是非、介護の希望など)
- 財産情報(預貯金、不動産、保険など)
- 各種契約情報(公共料金、賃貸契約など)
- 葬儀・埋葬に関する希望
- 大切な人への伝言
ただし、エンディングノートには法的な効力がないため、財産の承継など法的な効力を持たせたい事項については、遺言書の作成を検討する必要があります。遺言書を作成することで、自分の意思を確実に反映させ、財産を希望する相手に確実に引き継ぐことができます。
特に、法定相続人がいない場合や、特定の人や団体に財産を遺したい場合は、遺言書の作成が不可欠です。遺言書の作成に当たっては、公正証書遺言を選択することで、遺言の有効性を高め、相続時のトラブルを防ぐことができます。
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おわりに
天涯孤独や「おひとりさま」の生活は、決して寂しいものではなく、自分らしい人生を送る機会です。重要なのは、社会的偏見から自由になり、人とのつながりを大切にしながら、自分なりの生きがいを見つけることです。同時に、健康管理や財務計画、見守りサービスの利用、任意後見契約や死後事務委任契約の締結など、将来に向けた備えも欠かせません。これらの準備を整えることで、より安心して充実した「おひとりさま」生活を送ることができるでしょう。不安を感じた際は、専門サービスの活用も検討してみてください。
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