不動産賃貸業を始めてみようかとお考えの方も多いのではないでしょうか。不動産賃貸業は不動産投資初心者や会社員の方の副業としてもおすすめですが、計画なしに進めてもうまくいきません。また、どのようなステップを踏んで開業すれば良いのかわからないという方も多いでしょう。この記事では、不動産賃貸業とはどのような事業なのか、不動産賃貸業が向いている方、踏むべきステップや各種届出などについて、注意点も交えながら解説します。
(本記事は2024年9月13日時点の情報です)
- 不動産賃貸業とは、不動産を貸し出し、その賃料によって利益を得る事業
- ローンを活用すれば小規模経営なら自己資本も少なくて済むので、副業などの形で参入しやすく初心者にもおすすめ
- 不動産賃貸業が向いているのは、本業のある会社員の方、行動力があり学びたい気持ちが強い方
- 開業の際には税務署へ開業届、青色申告承認申請書を提出、家族に手伝ってもらう場合は青色事業専従者給与に関する届出書も提出する
不動産賃貸業は初心者にもおすすめ
不動産に関する事業には、売買や仲介などもありますが、「不動産賃貸業」とは文字どおり不動産を貸し出し、その賃料によって利益を得る事業です。収益の向上や節税効果を狙うことも可能なので、事業として始めようと考える方も少なくありません。
ここでは、不動産賃貸業とはどのような事業なのか、初心者におすすめの理由も合わせて解説します。
不動産賃貸業とは?
不動産賃貸業とは、自分が所有する不動産を貸し出し、賃料収入を得る事業のことです。自分が購入して所有しているマンションやアパートなどの物件を入居希望者に貸し出すと考えるとわかりやすいかもしれません。
不動産賃貸業は大きく「貸家業」と「貸事務所(ビル)業」に分類できます。貸家業は上記のように戸建てや集合住宅、店舗兼住宅などの住宅を貸し出す業態です。小規模から始められるので副業として始める方の多くがこの業態を選んでいます。一方、貸事務所(ビル)業は、オフィスや店舗を貸し出す業態であり、比較的規模が大きく運営者の多くは法人です。
不動産賃貸業が初心者におすすめの理由
不動産賃貸業は、小規模であれば特に免許や資格は必要ありません。ローンを活用すれば小規模経営なら自己資本も少なくて済むので、副業などの形で参入しやすく初心者にもおすすめです。不動産投資の延長上で、業界知識があまりなくても比較的始めやすいでしょう。
例えば、所有する土地が休眠状態だったり空き家の活用を考えていたりする場合は検討してみると良いかもしれません。
ただし、短期間で簡単に賃料を上げられるわけではないので収益を増やすのは難しいこと、不動産の老朽化や災害への対策も必要になってくるなど、開業にあたっては念頭に置いておくべきデメリットもあります。
不動産賃貸業はどのような方に向いている?
不動産賃貸業は初心者にもおすすめですが、では不動産賃貸業を開業するのに向いているのはどんな方なのでしょうか。ここでは、不動産賃貸業が向いている方の特徴について解説します。
会社員の方
不動産賃貸業は、本業の傍ら副業を探している会社員の方に向いています。確実な本業があれば社会的信用度が高く、銀行のローン審査でも有利に働くからです。
また、会社員が副業として始める場合、経営が軌道に乗るまで本業の収入で生活することが可能です。不動産賃貸業はもともと長い期間をかけて収益を確保していく性質の事業なので、すぐに収益化が見込めなくても生活に影響が出ない本業がある方が向いています。
行動力があり学びたい気持ちが強い方
不動産賃貸業は初心者でも始めやすいですが、学びたい気持ちがなければなかなかうまく軌道に乗りません。初めて不動産賃貸業を開業するにあたってはわからないことも多く、そのままでは安定的な経営状態や収益を実現することは難しいのが実情です。
不動産賃貸業は、行動力があり学びたい気持ちが強い方に向いている事業だといえるでしょう。経営にあたって知らなかったことを学ぶ姿勢を維持できれば、ある程度時間がかかっても結果に結びつく可能性が高くなります。また、新しい知識や情報の収集のために、不動産賃貸業の先輩に会って話を聞くなど、行動力のある方は適性が高いです。
不動産賃貸業の始め方とそのステップ
次に、不動産賃貸業を始める際のステップを見ていきましょう。基本的に以下の手順を踏んで進めていきます。
- 事業計画を立てて開業届を提出する
- 物件探しと収支計画の作成
- 物件を購入し経営を開始する
事業計画を立てて開業届を提出する
まずは、事業計画を立てて、開業届を提出しましょう。
不動産賃貸業を始める際には、事業で目指す収入を設定し、それを基にローンの借入額、目標達成のために必要な物件の選定、想定されるランニングコストや長期にわたる利益の計算など、綿密な事業計画が欠かせません。
そして、これは不動産賃貸業に限りませんが、事業を始める際には税務署に開業届を提出しなければなりません。開業日から1ヵ月以内に提出する必要があるので、忘れないよう準備しましょう。
もうひとつ必要なのが、「青色申告承認申請書」の提出です。確定申告には青色申告と白色申告があり、不動産賃貸業を始めるなら青色申告を選びましょう。
開業届と青色申告について、詳しくは後述します。
物件探しと収支計画の作成
事業計画で立てた目標とする収入を実現するためにどんな物件が必要か決定し、その条件をもとに不動産会社やインターネットでマッチする不動産を探します。
融資を前提に物件を探す場合は、現状利用できそうな融資枠の範囲に収まる価格の物件に決める必要があるでしょう。また、利回りが良さそうな物件であっても、身の丈に合わない高額な物件では融資も受けられず、物件の管理・運営に必要な資金が残らないほど自己資金をつぎ込まなければいけないのでは本末転倒です。
条件に合う物件が見つかったら、収支のシミュレーションを行い、収支計画を作成しましょう。ローンの返済が無理なくできるか、安定的に収入が見込めるかなどを慎重に検討し、問題がなければ買付証明書を提出して物件購入の申し込みを行います。
物件を購入し経営を開始する
金融機関の融資の事前審査をクリアしたら、物件の売買契約を締結し、購入手続きに進みましょう。契約後、融資の本審査を申し込み、承認を得たら物件購入取引を完了させます。
本申込の際、融資特約(通称ローン特約)も検討しておくことをおすすめします。買主が不動産投資ローンなどの融資を申し込んだ際に、融資審査に落ちた場合のための特約です。審査に通らなかったときは、売買契約を白紙撤回できるという内容です。
契約自体がなかったものとなるため、契約締結時に支払った手付金や仲介手数料なども返還されます。「ローンが組めなかったのは買主のせい、契約をしたのだから代金を支払え」といわれることを防ぎ、買主を保護するために生まれました。
売主にしてみれば、売却を進めていた物件の契約が白紙に戻ることは面白くありません。そのため、実際に解除された場合は金融機関に融資審査に落ちた事実があるか、契約書通りの内容であるかといった点が細かく確認されます。
物件を購入したら、その物件を使って不動産賃貸業を開始します。管理を不動産会社などに任せる場合は、管理会社と委託契約を締結してください。
不動産賃貸業を開業する際に税務署へ提出が必要な書類
不動産賃貸業を開業する際には、税務署へ以下の書類を提出する必要があります。
- 開業届
- 青色申告承認申請書
アパート経営の場合、一般的に「賃貸する部屋数が10室以上」であれば、事業的規模の経営とみなされ、個人事業主として開業届の提出が必要です。事業的規模でない場合は開業届を提出する必要はありませんが、開業後税制上のさまざまなメリットを受けられます。
それぞれの提出書類について詳しく見ていきましょう。
開業届
開業届は、正式には「個人事業の開業届で・廃業届出等手続き」といい、管轄の税務署に提出します。開業日から1ヵ月以内に提出する必要があるので、忘れないよう準備しましょう。開業届の書類は国税庁のホームページからダウンロード、または税務署の窓口で入手できます。
個人事業主の場合、国税である所得税、消費税を税務署に、地方税である個人事業主税は都道府県税事務所に納めます。そのため、個人事業主として開業を報告する必要があるのです。
開業届を提出しなくてもペナルティはありませんが、後述する青色申告を行うためには、開業届と青色申告承認申請書の提出が必要です。青色申告ができないと税制面での優遇が受けられません。また、屋号で口座開設する際や融資申し込みの際にも開業届の提出が求められる場合があるので、注意してください。
届出の方法には、窓口提出と郵送提出があります。
青色申告承認申請書
青色申告承認申請書は、確定申告において青色申告を行うために必要な書類です。確定申告には青色申告と白色申告がありますが、青色申告のほうが白色申告より基礎控除額が高いため、所得税(住民税)を節税したい場合は必ず提出してください。
青色申告では、一定以上の事業規模であれば最大650,000円の特別控除が受けられ、小規模であっても100,000円の控除を受けることが可能です。また、3年間の赤字繰越や年間300万円までの少額減価償却資産の一括計上の特例など、さまざまなメリットがあります。
また、事業を家族に手伝ってもらう場合は、「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出しましょう。これは、青色事業専従者に対して支払う給与を経費として計上するために必要な書類です。
青色事業専従者とは、給与の支払い元である青色事業者と生計を共にする配偶者・親族など、特定の基準を満たす人です。届出書を提出することで給与を経費計上できれば節税効果が得られるため、提出をおすすめします。
不動産賃貸業を始める際に資格は必要か?
不動産賃貸業を始める際に、自己所有の物件を管理するために必要な書類はあるのでしょうか。ここでは、以下の2点について解説します。
- 必須資格は特にない
- 持っておくと役立つ資格はある?
必須資格は特にない
不動産賃貸業を始めるにあたって、必須の資格は特にありません。そのため、不動産賃貸業未経験の方でも営むことができます。
管理する物件の数が増え、規模が拡大した場合は宅建業法上の免許が必要になりますが、基本的に資格は必要ありません。
ただし、不動産オーナーの経験談の書籍を読む、セミナーやコミュニティに参加するなどして、不動産賃貸について学ぶ姿勢は非常に大切です。実際のオーナーの話を聞くことで、生じうる問題や注意点を把握できます。
加えて、目標を定めずに開業しても事業はうまくいきません。事業計画や収支計画を立てる際に、得たい収益や事業の目標を定めておくことが重要です。収益については、家賃収入額ではなく支出などを差し引いたキャッシュフロー額で考える必要があります。具体的に目標を定めることで事業へのモチベーションも上がり、結果的に事業の成功につながるでしょう。
持っておくと役立つ資格はある?
不動産賃貸業を始める際に必須の資格はありませんが、以下の資格を持っておくと役立ちます。
- 宅地建物取引士:宅地または建物の売買、交換または賃借の取引の事務手続きを行う専門家。仲介業務に手を広げる際に持っておくと有利
- マンション管理士:マンション管理組合のコンサルタントに必要とされる一定の専門知識を有することを証明する国家資格
- FP(ファイナンシャル・プランナー):個人資産の専門家。金融・保険・不動産・年金・税制・相続の6分野にわたる幅広い知識を有する
この他、ハードルはかなり上がりますが、不動産取得時の税金に関する知識を有する「税理士」や、建物の構造上の問題を確認できたり中古物件のリフォーム設計を行えたりする「建築士」などにチャレンジしても良いかもしれません。
不動産賃貸業を始める際の注意点
最後に、不動産賃貸業を始める際の注意点をご紹介します。
不動産賃貸や不動産投資に関する知識を得ておく
不動産賃貸業を始めるために必須の資格は特になく比較的始めやすい事業ですが、安定的に収益を出しながら事業を続けていくためには、不動産賃貸や不動産投資に関する知識が欠かせません。不動産賃貸業を取り巻く環境は刻一刻と変化するため、常に新しい情報にアップデートする必要もあります。
そこで、あらかじめ書籍やセミナーなどで不動産賃貸業について学んでおくこと、不動産投資会社に相談して収益を挙げるポイントを押さえておくことが大切です。不動産賃貸業に向いているのは学ぶ姿勢を忘れない方、行動力のある方であることは前述しましたが、事業で戦う武器を自ら身につける努力は怠らないようにしましょう。
資金を用意する
不動産賃貸業を始める際には、もちろん物件購入費用が必要ですが、その他にも税金や物件の管理費用など、さまざまな資金が必要です。現金一括で不動産を購入し、関連費用もまかなえれば良いですが、一般的には自己資金に加え、ローンを組むことになるでしょう。そこで、どの程度自己資金を用意し、どこまでローンを組むのかあらかじめ資金計画を立てておかなければなりません。
ここで重要なのが、「返済比率」を意識すること。返済比率とは、家賃収入のうちどのくらいローンの返済に回すことができるか、その比率です。返済比率は、「毎月(年間)の返済額÷毎月(年間)の家賃収入×100」で算出できます。
返済比率が高いほど自己資金が多く必要になると考えてください。税金や物件管理費用などの諸経費を考慮すると、なるべく低い返済比率に抑えることが大切です。家賃収入に対して返済比率が高くなり過ぎると諸経費すら支払っていけません。
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おわりに
不動産賃貸業は不動産投資初心者や本業がある会社員の方の副業としてもおすすめです。ただし、安定的に収益を挙げ、事業を経営していくためには最新の知識を得るなど学びの姿勢と行動力が欠かせません。また、事業計画や収支計画を立て、物件を探し、開業届を始めとした必要書類の用意などステップを踏んで進める必要があります。不動産賃貸業を始めるためには物件取得費用以外にも諸費用がかかるので、ローンをお考えの場合はセゾンファンデックス 不動産投資ローンをぜひご活用ください。