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国債の関心高まる|マイナス金利解除で資産を増やすチャンス

国債の関心高まる|マイナス金利解除で資産を増やすチャンス
藤田 春菜

執筆者

金融ライター

藤田 春菜

2級ファイナンシャル・プランニング技能士。金融機関に約7年間勤務したのち、金融専門Webライターとして執筆を開始。カードローンやクレジットカード、資産運用全般に関する記事を執筆。投資歴は約7年で、投資信託をはじめ個別株や暗号資産などに投資をしている。

2024年3月のマイナス金利解除は、私たちの生活にさまざまな影響を及ぼします。本記事では、この政策変更が「国債」にもたらす影響に焦点を当て、安全資産としての国債の可能性と、資産運用における利点を検証します。

本記事は2024年8月時点の情報をもとに執筆しています。国債を購入する際は、ご自身で最新の金利状況をご確認ください。

2024年3月にマイナス金利が解除されたことで起こりうる影響

2024年3月にマイナス金利が解除されたことで起こりうる影響

日本銀行は2024年3月にマイナス金利政策の解除を決定しました。この政策変更は、私たちの日常生活や経済活動に広範な影響を及ぼします。マイナス金利解除による主な影響は、以下の6つです。

  • 預金金利の上昇
  • 住宅ローン金利の上昇
  • 個人向け国債の金利上昇
  • 円高傾向
  • 株安傾向
  • 銀行の収益改善 など

これらの変化は、個人の資産運用や家計に直接的な影響を与える可能性があります。とくに、国債の金利上昇は資産形成の新たな選択肢となりうるでしょう。

マイナス金利解除はメリットもデメリットもある政策転換です。このうち、マイナス金利解除の恩恵を受けるとされる個人向け国債について「マイナス金利による国債への影響」の項で解説しています。

国債とは

国債とは

国債には主に「個人向け国債」と「新窓販国債」があります。以下に両者の主な特徴をまとめてみました。

【個人向け国債と新窓販国債】

個人向け国債新窓販国債
商品・固定3年
・固定5年
・変動10年
・固定2年
・固定5年
・固定10年
発行頻度毎月毎月
購入単位最低1万円から1万円単位最低5万円から5万円単位
購入限度額上限なし1申し込みあたりの上限は3億円
販売価格額面金額100円につき100円入札結果に応じて、発行ごとに財務省で決定
購入対象者個人に限定制限なし
(法人やマンションの管理組合なども購入可能)
金利の下限0.05%なし
中途換金発行後1年経過すればいつでも可能。市場でいつでも売却が可能。ただし、その時々の市場価格となるため、売却損、売却益が発生する。
元本割れリスクなしあり

参照元:個人向け国債と新窓販国債の商品性の比較|財務省

個人向け国債は金利の下限が0.05%と決まっており、元本割れすることがありません。

一方、新窓販国債はいつでも売却が可能で、市場環境に応じて売却損益が発生します。同じ国債でも商品性は異なるため、国債の詳細を知りたい方は以下の記事をご参考ください。

2024年8月時点の国債金利

2024年8月時点の国債金利

2024年8月時点の国債金利は以下のとおりです。

【2024年8月募集分の国債の金利】

国債の種類2024年8月募集分の税引前利率
個人向け国債固定3年0.28%
固定5年0.39%
変動10年0.61%
新窓販国債固定2年0.4%
固定5年0.4%
固定10年1.1%

参照元:現在募集中の個人向け国債・新窓販国債|財務省

上記の表からわかるように個人向け国債は最低保証の0.05%より金利が高く、国債を購入するのに良いタイミングだといえます。しかし、2016年1月に導入された「マイナス金利」により、国債の金利は下落しました。

マイナス金利による国債への影響

マイナス金利による国債への影響

マイナス金利政策の国債への影響を、2024年6月に満期を迎えた個人向け国債変動10年(第50回)の金利推移で確認します。

【個人向け国債変動10年(第50回)の金利推移】

利子計算期間適用利率(税引前)
2014年6月16日~2014年12月15日
(マイナス金利導入前)
0.40%
2016年6月16日~2016年12月15日
※マイナス金利導入
0.05%
2023年12月16日~2024年6月15日
※マイナス金利解除
0.60%

参照元:変動10年「第50回債」|財務省

この推移から、マイナス金利政策が国債金利を大きく左右したことがわかります。マイナス金利解除後の金利上昇は、国債投資の魅力を高めています。

国債を資産形成に活用するメリット

国債を資産形成に活用するメリット

マイナス金利が解除されたことで、国債を資産形成に活用する有用性が高まりました。そこで、国債を一定期間運用した場合のシミュレーションをして、資産形成としてどのように活用できるか確認してみましょう。

実際に、普通預金と国債で受け取れる利子がどれだけ異なるのか、運用結果を比較してみました。なお、国債は2024年9月17日発行「第173回債」の金利に基づいています。

【預金金利0.02%・国債0.61%で10年間預け入れた際に受け取れる利子】

普通預金国債
100万円2,000円61,000円
200万円4,000円12.2万円
300万円6,000円18.3万円
400万円8,000円24.4万円
500万円10,000円30.5万円

このシミュレーションから、国債が普通預金と比べて大きな利子を生み出す可能性があることがわかります。ただし、新窓販国債は市場状況によっては元本割れのリスクがあるため注意が必要です。

資産形成に国債を活用するときのポイント

資産形成に国債を活用するときのポイント

国債を資産形成に活用すると、普通預金よりも多額の利子を受け取れる可能性があります。続いて、安全資産である国債を資産形成に活用するときのポイントを解説します。

安全かつ効率よくお金を増やすために、ぜひ参考にしてみてください。

中途換金しない

個人向け国債は発行後1年経過すれば、いつでも中途換金が可能です。ただし、中途換金の際は直前2回分の利子に一定数を乗じた金額が差し引かれるなど、ペナルティが存在します。

さらに、国債は元本割れしないといっても、発行体である日本の信用状況が悪化すれば損失を被る可能性もあります。

元本割れする可能性は限りなく低いとしても、確実に安全性が保証される投資商品はないと考えておきましょう。基本的には、満期まで国債を保有しておくのが安心です。満期まで持っていれば、ペナルティで余計な金額を差し引かれることもありません。

また、新窓販国債は売却するときの市場状況によって、売却損が発生することが考えられます。さらに、個人向け国債と異なり国が買い取る中途換金制度はないため、買い手がつかなければ売却できず、現金化に時間がかかるケースもあります。

もし満期までの保有が難しそうな場合は、満期の短い国債を購入するか、中途換金制度があり元本割れしない個人向け国債を購入すると良いでしょう。

なお、個人向け国債の中途換金シミュレーションは、財務省の「中途換金シミュレーション」でできます。

資金の目的に応じて預金や株式と使い分ける

使う予定のあるお金は、使い道や使うタイミングによって預金や株式、国債などと振り分けて管理しましょう。お金を預ける選択肢は複数あり、各商品の特徴やメリットは異なるからです。

また、一般的に普段の生活費は普通預金で管理し、国債や株式で運用することはありません。資産を増やしたい方は、余剰資金を株式に回す選択を取るでしょう。

このように、資金の目的や使うタイミングに応じてお金を預ける場所を変えることは、ライフプランに即した資金を準備するうえで非常に重要です。

また、投資でリスク資産を保有している方にとって、国債はポートフォリオのバランスを整えてくれる選択肢になります。リスク資産の株式だけでは世界的に株価が落ちたときに、すべての資産が影響を受けてしまいます。しかし、国債をはじめ比較的安定した値動きをする商品や、株式と反対の値動きをする商品を保有していれば、すべての資産がダメージを受けることを防げるでしょう。

利益を期待しすぎない

上述した「国債で運用したケース」におけるシミュレーションからわかるように、国債だけを運用していても資産が大きく増えることは期待できません。

時には2倍以上の利益が発生する可能性がある株式と比べると、国債は資産運用としての面白味は感じられないでしょう。

とはいえ、大きな損失を被る危険性もある株式と違って、国債は元本割れする可能性がかなり低いため、安定した運用ができるでしょう。

したがって、国債は株式のように攻める投資ではなく、元本を確保しながら少しずつ利子を受け取る守りの投資方法であると理解しておきましょう。

国債は元本割れしないだけでなく利回りも期待できる

マイナス金利が2024年3月に解除されたことで、国債の金利は上昇傾向にあり、資産形成におけるポートフォリオのひとつになりえるでしょう。

預金や国債といった安全資産は資金の目的で使い分けると、家計管理が上手くいきます。現金を預入する普通預金は、日常の生活費を管理するのに最適です。

一方の国債は満期償還であれば償還日に入金されますが、中途換金であれば入金まで3営業日程度かかります。このように、国債は必要なときにすぐに現金が手元に入るわけではないため、教育費や住宅費など中長期的に必要となる資金の置き場所として選択すると良いでしょう。

ぜひ国債を活用して、資産形成に役立ててみてください。

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