運動は得意ではないけれど、楽しく体を動かしたい。世代を超えて一緒に遊びたい。日頃からそう思っている方も多いのではないでしょうか?本記事では、ここ数年日本で盛り上がりをみせている「モルック」と呼ばれるフィンランド生まれのスポーツをご紹介します。子どもから高齢者まで幅広い年代が気軽にできる新感覚のスポーツ「モルック」の遊び方や上達のコツなどを、日本モルック協会広報部の鈴木健悟さんに教えていただきました。
モルックとはどんなスポーツ?
モルックとは、フィンランドのカレリア地方の伝統的なゲーム、キイッカ(kyykkä)という木の的当てゲームを元に開発されたスポーツです。番号の書かれた木製のピンを倒していき、相手チームより早く50点ぴったりを目指すものです。
現地では、サウナの合間やビール片手に家族や友人と気軽に楽しむスポーツとして普及しています。木のピンを倒して点数を競いますが、たくさん倒せばいいというわけではなく、狙ったものだけを倒したり、相手に点数を取られないように邪魔したりするのも戦略のひとつです。頭を使いながらゲームを進めていく楽しさがあります。
日本で広まったのはいつ頃から?
日本にモルックが紹介されたのは2011年のこと。現在の日本モルック協会代表理事、八ツ賀秀一氏がフィンランド在住時にモルックの楽しさに魅了され、「日本にも伝えたい」と30セットを持ち帰り、普及活動をスタートしました。
2024年8月には日本で初めての世界大会が北海道で開催され、15か国から3,200人もの選手が集結し大きな盛り上がりを見せました。また、モルック愛好家である人気お笑いコンビ「さらば青春の光」の森田哲矢さんがテレビで紹介したことで知名度がグッと上がり、ここ数年で注目度が高まっています。
モルックに必要な道具を揃えよう
画像提供:一般社団法人日本モルック協会
モルックを始めるのに必要なのは、木製の「モルック」「モルッカ―リ」「スキットル」と呼ばれる3点です。この3つがあればすぐに始めることができます。
モルック
画像提供:一般社団法人日本モルック協会
投げる棒のことを「モルック」といいます。22cmほどのサイズで、下手投げが基本です。重さ350g程度とペットボトルよりも軽く、握力に自信がない方でも無理なく投げることができます。
スキットル
画像提供:一般社団法人日本モルック協会
モルックを投げて倒すピンを「スキットル」といいます。同じサイズのものが12本あり、1から12までの数字が1本1本の断面に書かれています。
モルッカーリ
画像提供:一般社団法人日本モルック協会
モルックを投げる位置を示すのに置く、柵のようなものを「モルッカ―リ」といいます。
どこで購入できる?
「モルック」「スキットル」「モルッカーリ」の3つがセットになっているものがECサイトで販売されていて、9,000円程度で購入できます。また、最近ではモルックの知名度が上がってきたこともあり、大型のスポーツ用品店や大手の生活雑貨店などでも取り扱いが徐々に増えてきました。
ただ、最近安価な模倣品が多く出回っており注意が必要です。日本モルック協会では正規品であるTactic社製の商品を推奨しています。購入の際にはよくチェックしてみてください。
モルックの基本ルールとは?
モルックを順番に投げてスキットルを倒していく、というのが基本の進め方です。しかし、たくさん倒せばいいというわけではありません。倒したスキットルの本数により、得点の数え方が異なります。そのルールがモルックを面白くさせる最大の特徴です。
50点を目指すためにピンポイントで狙ったスキットルを倒したり、相手チームの意のままに点数が取られないよう頭を使いながらチームで戦略を立てていくのが魅力のひとつです。
日本モルック協会が主催する公式大会では2チーム(1チーム4〜6人)以上で競います。先攻が有利とされているため、じゃんけんで勝った方を先攻とするのが良いでしょう。
スキットルの並べ方
ゲーム開始時のスキットルには決まった並べ方があります。まず、数字の1と2が書かれたスキットルを中央に置き、左斜めに奇数を、右斜めには偶数、真ん中のラインに大きい数字(9~12)を置いていけば完成です。
ゲームの流れ
◆準備
モルックを投げる場所にモルッカーリを置き、そこから3~4m離れたところにスキットルを置きます。これがスタートの配置となります。日本モルック協会の公式大会では3.5mの位置としていますが、個人で楽しむ時はおおよそで大丈夫です。大人の大股1歩が1m程とされているので、3歩を基準にしてみましょう。
◆投げる
順番にモルックを投げ、スキットルを倒します。1本しか倒れなかった場合は、倒れたスキットルに書かれている数字が点数となります。複数のスキットルが倒れた場合は、倒れた本数が点数となります。例えば、7と書かれたスキットルだけが倒れたら7点、一度に5本倒れた時はスキットルに書かれた数字には関係なく5点、となります。投げた時に勢いでモルッカ―リに足が触れてしまったり、踏み越してしまったりするとフォルトとなり0点になってしまうので要注意です。
【POINT】
最初に高い点数を取ると有利にゲームを進められますが、たくさん並んだ状態で真ん中にある大きい数字のスキットルのみを倒すのは不可能なので、まず高得点を狙うために全部のスキットルを倒すことを目標にするのがベストです。
◆ゲームの進め方
相手が倒したスキットルはその場所に再び立てられます。そのため、ゲームが進むにつれてスキットルの場所がどんどん広範囲になっていき、投げる距離が伸びるので倒すのが難しくなっていきます。
◆ゲームの終了
順番に投げていき、どちらかのチームが50点ちょうどになった時点でゲーム終了となります。
モルックはルールがシンプルで動きも派手ではありませんが、自分たちが考えた作戦をいかに試合中に実行できるかが重要です。自分たちが狙いたいスキットルを倒して50点を目指す一方、相手チームが50点を取ることを阻止しなければならないという複雑さがあります。作戦を練りながら、相手の狙うスキットルを簡単に取らせないためにどうするべきかの駆け引きも醍醐味です。得点の取り方のバリエーションが豊富なので、試合ごとに新しい発見ができるはずです。また、一見運動量があまりないようにも思えますが、モルックを投げるモルッカーリの位置と、スキットルを起こしたり、モルックを拾うためコート内を行ったり来たりするため、運動不足の解消にも効果的です。
スキットルが完全に倒れていない場合
スキットルが完全に倒れていない状態(複数本重なっていて地面についていない)がある場合、得点としてカウントされません。
得点が50点を超えてしまった場合
50点を超えてしまった時は25点に減点となり、そのままゲームが続行されます。
3回ミスが続いてしまった場合
投げる時にフォルトが続いてしまったり、1本も倒れないというミスが3回連続で続いてしまったりすると0点となり、失格となってしまいます。
モルックの持ち方と投げ方をマスターしよう
多くのスキットルを倒したい時、飛距離を伸ばしたい時、狙いを定めてピンポイントで倒したい時など、モルックには基本となる形に加え、状況に応じて持ち方と投げ方に変化をつけます。まずは基本の形からスタートし、徐々に上級者向けの投げ方にチャレンジするのが良いかもしれません。
基本フォーム
モルックの投げ方はすべて「下手投げ」です。モルックを安定するように下から握り、何回か素振りをしたあとに投げると放物線を描きながらモルックが飛んでいきます。多くの方がこの投げ方をしているので、狙いが定めやすい投げ方といえるでしょう。狙ったスキットルの周りに障害物がない時には最適です。
ちなみに、下手投げであれば持ち方は自由です。両手で持って投げたり、モルックを転がしてもバウンドさせてもOKです。
ラハティ投げ
フィンランドのラハティという場所で考案されたことから名付けられた投げ方です。フォームは基本と同じですが、重心を落として構え、スキットルの手前から転がすイメージで狙います。腕の力を使って強めに投げると一直線にモルックが飛ぶため、相手の邪魔が必要な時など、スキットルを遠くに飛ばしたい時に有効です。
裏投げ
基本のフォームと逆手の状態でモルックを握り、軽くバックスピンをかけて投げるスタイルです。縦に並んだ複数のスキットルのうちの1本のみを倒したい時に効果的です。ただ、相当なスキルが求められるので上級者向けとなります。
縦投げ
その名の通り、モルックを縦に持って投げる手法です。こちらは横に複数並んだスキットルのうち1本だけを倒したい時に有効です。こちらも裏投げと同じく、相当な精度を求められる投げ方です。
モルック上達のコツは?
画像提供:一般社団法人日本モルック協会
もちろんスキルアップのために練習することはとても大切ですが無理は禁物です。本来は家族や友人と気軽に楽しむスポーツなので、家族や友人たちと楽しみながら、無理なく長い目で続けていくことが何より上達への近道です。また、全国各地で体験会や練習会が行われているので、そういった場所に参加して、上手な方のプレイやスキルを間近で見て参考にするのも勉強のひとつと言えます。
もっと知りたい!モルックのあれこれ
画像提供:一般社団法人日本モルック協会
さっそくモルックを始めてみたい!そんな方からのさらなる疑問にお答えします。
もちろん問題ありません。日本モルック協会は、「年齢や障がいの有無を問わず楽しめるスポーツ」として普及に取り組んでいます。協会が主催する大会では80代の方が出場したこともあります。また、立ったままやるのが難しいという方は椅子に座ったまま投げても良いかもしれません。無理のない範囲で楽しんで参加することが大切です。
平らな場所が基本です。公園などの砂地や芝生の上だとスキットルが置きやすく安定するのでおすすめです。一方で、アスファルトやコンクリートの上だと道具が傷ついたり割れたりしてしまうので向いていません。室内で行う場合は床を傷つけてしまう可能性があるので、人工芝や厚みのある布を敷くと良いでしょう。また、プレイする場所の広さは幅5m、長さ10mほどを確保すれば十分かと思います。
日本モルック協会には、北海道から沖縄まで、全国各地に公認団体と友好団体が数多くあります。ホームページに一覧が記載されているので、本格的なチーム戦をやってみたいという方は、お近くの団体に一度お問い合わせをしてみてください。
まとめ:家族や友人と気軽に始めてみよう
シンプルで覚えやすいルールや、世代問わずに楽しめるというところがモルックの最大の魅力です。それでいて、決して簡単という訳ではなく、得点の狙い方や相手をどう阻止するかといった戦略性で頭も使います。適度に体を使うため、運動神経や体力に自信のない方、運動不足を実感している方にもおすすめです。
一般的に性別や年齢で分けられてしまうスポーツが多い中、モルックは若い方からシニアの方まで、どなたでも同じフィールドで一緒にプレイできるユニバーサルな側面を持っています。ぜひ、家族や友人を誘って、楽しい時間を共有できるモルックを始めてみてください。
データの参考・ソース https://molkky.jp/
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。