近年、日本では高齢出産が増えています。一般的に高齢出産は35歳以上で妊娠・出産することをいいますが、50歳以上で妊娠・出産する女性もいます。そもそも、50歳以上の女性は自然妊娠ができるのでしょうか。
50歳以上で妊娠を希望する場合、20〜30代のときとは異なりリスクが高いため、本当に妊娠できるのかと不安になる方もいます。では、具体的に50代で妊娠・出産するリスクはどんなことがあるのでしょうか。
このコラムでは、50歳以上で妊娠・出産するリスクやメリット、そして50歳以上で妊娠をするために知っておきたいことなどを解説します。50歳以上で妊娠を考えている方は参考にしてみてください。
近年、高齢出産が増えているのはなぜか
近年、日本では高齢出産が増えています。高齢出産が増えている原因として、晩婚化やキャリア志向の強い女性が増えてきていることが挙げられます。まずは、高齢出産が増えている理由をみていきましょう。
高齢出産の定義
高齢出産とは「35歳以上の女性が初めて行う出産」と日本産婦人科学会で提唱されています。高齢出産の定義は日本と世界とで異なり、世界的には出産経験のある女性が40歳以上で出産することも高齢出産に含まれます。 日本では、かつて30歳以上の初めての出産のことを高齢出産としていましたが、1996年以降は35歳に引き上げられました。
晩婚化が進んでいる
日本では晩婚化が進み、高齢出産が増えています。晩婚化の原因はいくつかあります。
- 女性の社会進出が進んだ
- 結婚や子育てをすることに経済的な不安がある
- 独身生活が魅力的で結婚の必要性を感じていない
国際的に女性の社会進出が進み、日本でも1999年に施行された男女共同参画社会基本法をきっかけに女性の大学進学率や労働参加率が上昇しました。社会進出し、結婚よりも仕事を優先する女性が増えたことで晩婚化が進んでいます。
また。男女ともに収入が少なく結婚生活や子育てに対して経済的な不安を抱えていることや、独身生活が快適で結婚の必要性を感じていないことも晩婚化の理由です。
キャリア志向の強い女性が増えてきている
女性の社会進出が進んだことで晩婚化が進んでいますが、キャリア志向の強い女性は結婚だけではなく妊娠・出産の優先度も高くありません。そのため、結婚をしても仕事を優先して妊娠・出産を後回しにする女性が増えています。
それ以外に、たとえ仕事より妊娠・出産を優先したいと考えていても、産休で長期間仕事を休むことで職場に戻りにくくなることを懸念し、妊娠・出産に踏み切れないという女性も多いです。
50歳以上の妊娠・出産割合
50歳以上で妊娠・出産する女性もいます。50歳以上で出産する方の割合や妊娠確率について説明します。
50歳以上で出産をしている方の割合は0.007%
2019年に厚生労働省から出された人口動態統計によると、2018年に50歳以上で出産した方は全国で68人です。この数は2018年に生まれた子どものうちの0.007%と、かなり少ない数字です。 全体に占める割合はかなり少ないですが、50歳以上で出産する数は2000年以降増えているのも事実です。
20代前半の女性と比べると自然妊娠の確率は20分の1
女性は年齢を重ねるごとに妊娠する力が低下します。20代前半の女性が自然妊娠する確率を100%とした場合、40代後半の女性は5%程度という海外のデータが発表されています。 このように50代に近づくと自然妊娠する確率は低くなり、50代女性の妊娠・出産は難しいことが分かります。
50歳以上の妊娠におけるリスク
50歳以上の妊娠にはリスクがいくつかあります。それは自然妊娠の確率の低下や婦人疾患になる可能性が高くなるといった身体的なリスクだけではなく、教育費などの経済的なリスクも含まれます。
教育費などの支出
50歳以上の妊娠におけるリスクは妊娠・出産だけではありません。50歳以上で妊娠・出産ができたとしても、その後の教育費など経済的なリスクを抱えることになります。
子どもが大学まで進むことを考えると、出産をしてから20年間は教育費がかかります。しかし50歳以上で出産をすると、まだ子どもが小さいうちに定年をむかえることになるため、定年後の教育費の支払いが大きな負担となる可能性が高いです。
例えば、教育費について、大学まですべて公立で進学したとしても、約1,000万円は必要です。あくまでも教育費であって、その他の生活費は別途かかってきます。そのため、将来的な教育費などの支払いに備えて貯金をしたり、コツコツと積み立て投資で資産形成しておきましょう。
例えば、月々3万円を20年間積み立て、年利3%で複利で資産運用した場合は、約985万円(投資元本720万円)となり、子育てをしながら教育費にも備えることもできるでしょう。月々3万円の積み立て、20年間という投資期間であれば、つみたてNISA(特に少額からの長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度)をフル活用するのが良いでしょう。
NISAを始めるなら大和コネクト証券がおすすめです。大和コネクト証券は大和証券グループがつくるアプリ証券です。口座開設もお取引もスマホでできるのが特徴です。毎日100円から積み立てられるから、簡単に始めることができて買うタイミングに悩む必要がありません。お好きな銘柄を選び、1日当たりの積立金額を入力すれば毎日自動的に買付されますので、手軽に続けられるのが嬉しいポイントです。大和コネクト証券の詳細は下記から確認できます。
卵子の老化によって自然妊娠の確率が低くなる
年齢を重ねるごとに卵子は老化し、自然妊娠できる確率が低くなります。アメリカの疾病予防管理センターが行った研究でも、年齢を重ねるごとに出産・妊娠が難しくなるのは身体的な老化ではなく卵子の老化が原因であることが分かっています。
一般的に自然妊娠ができるのは、閉経をむかえる数年前の45歳くらいまでといわれています。45歳を越えると自然妊娠が難しくなり、不妊治療を選択する夫婦も多いです。
しかし、不妊治療の高額な医療費を支援するための「不妊治療助成制度」は、不妊治療開始時点の妻の年齢が43歳未満の場合しか対象となりません。50歳以上で不妊治療をしようとしても不妊治療助成制度を利用できないため、不妊治療にかかる費用も大きなリスクとなります。
婦人疾患になる可能性が高くなる
年齢が上がるにつれて子宮内膜症や子宮筋腫などの婦人疾患になる可能性が高くなります。妊娠率を低下させる原因のひとつとして、このような婦人疾患が挙げられます。
子宮内膜症は内膜の組織がくっついてしまうため、卵巣からの卵子の放出や卵管の移動などが妨げられ妊娠しにくくなります。また、子宮内膜症は骨盤の中が炎症を起こしている状態のため、卵子の質が低下し妊娠率低下につながります。
子宮筋腫は筋腫ができた場所や大きさによっては大きな心配はありません。しかし筋腫が大きくなると受精卵の着床や卵管の移動を妨げて妊娠率が低くなったり、さらに妊娠後も赤ちゃんの成長を妨げたりする原因となります。
その他にも、婦人疾患は女性ホルモンのバランスを乱す原因となるため、ホルモンバランスの乱れによる妊娠率の低下も引き起こすことが分かっています。
50歳以上の出産におけるメリット
ここまで50歳以上の女性の妊娠・出産は難しい、リスクが大きいというマイナスな内容を主に紹介してきましたが、50歳以上の妊娠・出産には若い年齢での妊娠・出産とは異なるメリットもあります。どのようなメリットがあるのか紹介しましょう。
精神面に余裕がある
50代になると人生経験が豊富で精神的に余裕があるため、若年齢の女性と比べると落ち着いて出産・育児を迎えられます。50代での出産は、その前に人生設計を立て実践することができるため、子育てを始めることもスムーズに始められるでしょう。 若年齢での出産・育児は、児童虐待のリスクや支援を必要とする割合が高いことが分かっています。
若年齢での妊娠・出産はご自身のしたかったことがなかなかできていないため、子育てをするときに不満を抱きやすくメンタルヘルスケアの必要性が高まっています。 しかし、50代で出産した場合には、20〜30代の間にご自身の趣味や旅行、やりたかったことをひととおり堪能し満足しているので、精神的に余裕があり児童虐待などのリスクは低いです。
経済的に安定している
50代の女性は出産まで働き続けているため、若い年齢の女性と比べて年収が高いです。さらに旦那さんの収入もそれなりになっているため、経済的に安定しているメリットがあります。 経済的に安定していると子育ての選択肢が増え、より自由な出産や子育てができるでしょう。また、経済的な余裕は精神的な余裕にもつながるため、児童虐待や支援が必要となるリスクも低くなります。
20・30代を自分自身のために使える
若い年齢で妊娠・出産を経験すると20〜30代を子育てに費やすことになるため、なかなかご自身の趣味ややりたいことができません。しかし50代で妊娠・出産をすると、20〜30代の間はご自身の趣味ややりたいことにお金が使えます。 若いときに趣味ややりたいことができて充実していると、出産や子育てをする時の精神的な余裕にもつながるでしょう。
50歳で妊娠をするために知っておきたいこと
ここまでは50歳以上で妊娠をした時のリスクやメリットについて書いてきましたが、50歳以上で妊娠をするために知っておいてほしいことがいくつかあります。 50歳以上で妊娠を希望する場合、そして、今後50歳以上になった時に妊娠をする可能性がある場合は、しっかりと頭に入れておきましょう。
妊娠の専門家に相談する
50歳以上で妊娠を希望する時には、早めに妊娠の専門家に相談しましょう。50歳以上になると自然妊娠する確率はとても低く、不妊治療を選択する夫婦が多いです。
不妊治療をする場合も、年齢が高いと妊娠する確率が低くなってしまいますので、妊娠を希望するのであれば、早めに妊娠の専門家に相談して話を聞くことをおすすめします。
また、50歳以上になると、妊娠できても妊娠中に妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などの合併症を引き起こすリスクが高いです。妊娠中は体調が急変する可能性もありますので、妊娠したあともすぐに異常が発見・治療できるように、妊婦検診は必ず受けるようにしましょう。
不妊治療を行う
先程も説明したとおり、45歳を越えると卵子の老化により自然妊娠をする確率は低いです。女性側だけではなく男性側も精子の数が減少し、より自然妊娠が難しい原因となります。 そのため不妊治療を選択する夫婦が多く、実際に不妊治療によって産まれる子どもの数も増えています。不妊治療にはいくつかの治療法があります。
- タイミング法
- 排卵誘発法
- 人工授精
- 体外受精
年齢が高いと人工授精や体外受精をしても受精しない、胎児まで育たないこともあり、妊娠・出産をする確率は若年齢と比べて低いです。そのため、早めに不妊治療の相談をして、それぞれに合った治療を行うことをおすすめします。
妊娠したあとのことを配偶者と話し合う
50歳以上で妊娠する場合は、妊娠だけではなく出産をしたあとも大変です。若年齢での妊娠・出産とは異なり定年が近いため、子育てにかかる費用やその後の教育費をどうするか配偶者と話し合っておきましょう。
妊娠したあとのことだけではなく、不妊治療をしても1回で妊娠・出産できる可能性は低く、何度も不妊治療が必要な場合があります。当然不妊治療をするごとに年齢が上がっていくため、不妊治療が上手くいく確率も低くなっていきます。 万が一不妊治療が上手くいかなかった場合はどうするのか、いつまで不妊治療を頑張るのかといったことも、夫婦間で前もって話し合っておくようにしましょう。
おわりに
日本では晩婚化やキャリア志向の強い女性が増えてきたことにより高齢出産が増えています。一般的に35歳以上で妊娠・出産することを高齢出産といいますが、50歳以上で妊娠・出産する女性もいます。 しかし、50歳以上の女性の妊娠・出産は全体の0.007%と少なく、自然妊娠する確率も20代女性の20分の1と低くなっています。
50代を越えての妊娠・出産は卵子の老化や婦人疾患により自然妊娠しにくい点や、定年が近いため教育費の支出の心配があるといった点がデメリットです。一方で、若いときにやりたいことができるため精神的に余裕があるなどのメリットもあります。 50代での妊娠を希望する時には、まず早めに妊娠の専門家に不妊治療をするのかも含めて相談することをおすすめします。また、妊娠・出産そしてその後について配偶者としっかりと話し合っておきましょう。
合わせてこちらも読まれています。
関連記事:産休・育休の申請方法とは?期間や受け取れるお金についても解説