天候の変化に伴う体調不良、なんとなく「気のせいかな」と見過ごしていませんか?実は、気象病や天気痛と呼ばれるこの症状に、多くの人が悩まされています。本記事では、理学療法士の木村佳晶さんに気象病のメカニズムや対策について解説していただきます。気象病の対策術を身につけ、気象に左右されない健やかな日々を目指しましょう。
こんな症状が出たら要注意!低気圧や悪天候時に起こる体調変化
「天気が悪くなると体調を崩してしまう」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
低気圧や悪天候時は、頭痛、めまい、だるさなど、さまざまな体調の変化が現れることがあります。これらの症状は、気象病や天気痛と呼ばれるもので、気圧の変化や湿度の変化などが原因で起こると考えられています。気象病の初期サインを見逃さないために、どのような症状に注意すれば良いのか、詳しく見ていきましょう。
気象病は「病」という文字がついていますが、実際には医学的には「病気」ではなく、「症状」であると考えられています。病気ではないため、明確な治療法がなく、予防したり、症状を改善させることが大切です。
気象病の代表的な症状とは
気象病を実感している人は、頭痛や関節痛、だるさといった身体的な症状だけでなく、イライラ感や集中力の低下といった精神的な症状も訴えることがあります。特に、雨が降る前や低気圧が近づくと、これらの症状が悪化するケースが目立ちます。症状の程度や頻度は個人差が大きく、頭がズキズキと脈打つように感じたり、関節が痛むために日常生活に支障が出てしまうほど症状の重い方もいます。
頭痛 | 脈打つような痛みや、締め付けられるような痛みなど |
めまい | ふわふわするような感覚や、回転するような感覚など、平衡感覚が乱れることがあります。 |
だるさ | 全身がだるく、やる気が起きない、体が重く感じるなどの症状が現れます。 |
関節痛 | 関節が痛む、特に手足の先端が痛むなどの症状が現れます。 |
筋肉痛 | 筋肉がこわばり、痛みを感じる場合があります。 |
消化器症状 | 食欲不振、吐き気、下痢などの症状が現れることがあります。 |
精神的な症状 | イライラ感、不安感、集中力の低下などの症状が現れることがあります。 |
このように、気象病は、わたしたちの日常生活に大きな影響を与えることがあります。気象の変化によって体調が悪くなる場合は早めに対策が必要です。
気象病は、関節リウマチ、頭痛持ちなど、既存の病気を悪化させる要因となる場合もあります。特にこれらの症状は女性や、高齢者に多いという特徴があり、ホルモンバランスの影響が大きいという研究もあります。
気象病が起こる理由とは?原因とメカニズムを徹底解説
気圧の変化や湿度の変化などが原因で起こると考えられている気象病ですが、なぜ気象や気圧がさまざまな症状を引き起こすのでしょうか?気象や気圧が私たちの身体に与える影響と、そのメカニズムについて専門的な視点から詳しく解説します。
主な原因は、自律神経の乱れ
私たちの体は、自律神経と呼ばれる神経系によってさまざまな機能がコントロールされています。自律神経は、活動・緊張時に優位になる「交感神経」と休息・リラックス時に優位になる「副交感神経」の2つからなり、このバランスが崩れることで、さまざまな不調が起こります。
低気圧になると、体内の圧力バランスが崩れ、血管が拡張します。この血管拡張によって血流が悪くなり、頭痛やだるさといった症状が出やすくなります。また、低気圧によって脳の血流が変化し、神経伝達物質のバランスが乱れることも、症状の一因と考えられています。
体がうまく順応できず不調が生じる
気温の急激な変化も、体に大きなストレスを与えます。寒暖差が激しいと、血管が収縮したり拡張したりを繰り返すため、血行不良や筋肉の緊張を引き起こしやすくなります。また、自律神経のバランスが崩れ、体温調節機能がうまく働かなくなることで、寒気や発汗といった症状が現れることがあります。
自立神経を乱す大きな要因は「気圧」と「気温」です。この2つが血流に大きな影響を及ぼし、自律神経も乱れていきます。自律神経は、24時間365日、私たちの意思とは無関係に働き、体温調整や免疫、血流など生命維持に不可欠な機能を調整してくれています。このバランスが崩れることで、体のさまざまな個所に不調が生じてしまうのです。
気象病・天気痛が発生しやすい時期とは?
気象病は、一年を通して起こりうるものの、特に特定の時期に症状が出やすい傾向があります。それは、気圧や温度、湿度などの気象条件が大きく変動する時期と深く関係しています。
季節の変わり目
春から夏、夏から秋、秋から冬への移行期は、気象条件が不安定になりやすく、気象病が起こりやすい時期です。特に3月から5月、9月から11月にかけては、気温の変化が激しく、体調を崩しやすい方が多いです。
梅雨
気象病を実感する方が増える6月から7月にかけての梅雨の時期は、長雨が続き、湿度が上昇し、気圧の変動も大きくなります。これらの要因が複合的に作用することで、頭痛、だるさ、関節痛などの症状を引き起こしやすくなります。
台風接近時
台風が接近する際には、急激な気圧の低下が起こります。この気圧の変化によって、自律神経のバランスを乱し、頭痛やめまい、吐き気などの症状を引き起こすことがあります。特に、夏から秋にかけて台風が多い時期は、注意が必要です。
自立神経を乱す大きな要因は「気圧」と「気温」です。この2つが血流に大きな影響を及ぼこれ以外にも、たとえば猛暑の屋外から、冷房の効いた室内へなど、1日の中で「寒暖差」が大きくなると「気温」が要因となり気象病が発生しやすくなることがあります。気象病は病気ではないため、完治するものではありません。事前に対策を行い、予防や緩和を心掛けることが大切です。
事前が肝心!気象病・天気痛の予防対策
気象病は、完全に予防することは難しいですが、日頃からできる対策を行うことで、症状を軽減させることができます。ここからは、気象病の予防法や対策についてご紹介します。
軽い運動を行う
気象病は、天気や気温が要因となり血行や自律神経に大きな影響を与えます。そこで、気象病の予防に有効とされているのが「運動」です。日々の生活に軽い運動を取り入れることで、血行が促進され、筋肉の緊張がほぐれます。ウォーキングやヨガ、ストレッチなど、自分のペースで続けられる運動を選びましょう。血液循環を改善するだけでなく、筋肉の柔軟性を高め、心身のストレス軽減にも効果的です。
私たちの体は、上半身が3割、下半身が7割という割合で筋肉が構成されています。つまり、下半身、特に足の筋肉量が圧倒的に多いということになります。足の筋肉、特に太ももの前側や後ろ側、ふくらはぎを鍛えることはとても大切です。特に、アキレス腱を伸ばすストレッチは、全身の血行を良くする効果が期待できます。
規則正しい生活リズムを整える
睡眠不足や不規則な生活は、自律神経のバランスを崩し、気象病を悪化させる原因となります。質の良い睡眠を7~8時間取るように心がけましょう。暖かいお風呂に入って、血行を促進することも効果的です。シャワーだけで済ますのではなく、湯船に入って体を温める習慣を身につけましょう。
特に冷えやすい手首、足首、後首と呼ばれる『3つの首』を意識して温めてあげると、気象病の予防にもつながります。冷え性の方は、血行改善にもつながりますので、規則正しい生活を行い、体を温めることを意識しましょう。
バランスの良い食事を心がける
栄養バランスの偏りは、体の抵抗力を低下させ、気象病を悪化させる可能性があります。三食バランスの取れた食事を規則的に摂り、特に朝食はしっかりと食べましょう。また、こまめに水分を補給し、脱水を防ぐことも大切です。
特に女性の場合、貧血が原因で頭痛が起きることもあります。鉄分は、血液を作る上でとても大切な栄養素です。赤身肉など、鉄分が豊富な食品を積極的に摂ると良いでしょう。また、ビタミン類も大切です。フルーツや野菜をバランスよく摂るようにしましょう。さらに、脱水も頭痛の原因のひとつになり得ます。朝目覚めの一杯や、夜寝る前など、こまめに水分を補給を心がけましょう。
今すぐ実践できる!気象病・天気痛への対処法
だるくて何もできないというような辛い症状に、今すぐできる対処法があれば嬉しいですよね。ここからは、気象の変化による不調を感じやすい方のために、今日から実践できる簡単な対処法をいくつかご紹介します。
マッサージやストレッチをする
頭痛に悩んでいる方は、頭のマッサージに気を取られがちですが、実は足の指をケアすることも大切です。足は体の末端にあたる部分で、ここをケアすることで全身の血流が改善され、頭痛の緩和に繋がることがあります。座ってできる肩回しや肩甲骨周りのストレッチも効果的です。マッサージやストレッチを取り入れ、全身の血行を改善することが大切です。
足の指は、動脈と静脈が入れ替わる重要な部分です。足の指をマッサージしたり、指の間に手を挟んで広げる運動をすることで、血行が良くなります。また、寝る前に10分程度、足を高く上げて指をバックアップしたり、足首をぐるぐる回したりするストレッチがおすすめです。これにより、足のむくみを解消し、翌朝スッキリ起きることができます。
静かなところで休む
気圧の変化や湿度の増加など、気象条件の変化は自律神経を乱し、頭痛やだるさといった不調を引き起こします。静かで暗い部屋で横になり、十分な休息をとることで、体の負担を軽減することができます。外界の音や光を遮断し、リラックスできる環境を作り出すことが大切です。
不調を感じたら無理をせず、休息をとりましょう。リウマチなど、症状の悪化にお悩みの方は、まずはかかりつけ医に相談してみることをおすすめします。
鎮痛剤を服用する
どうしても痛みがつらいという方は、鎮痛剤を服用するのもおすすめです。鎮痛剤には頭痛や筋肉痛といった痛みを緩和する効果があり、イブプロフェンやアセトアミノフェンといった成分が含まれたものは、気象病による頭痛や体の痛みをやわらげてくれます。ただし、説明書をよく読んで、用法用量を守って服用するようにしましょう。
痛み止めはあくまで対症療法です。頻繁に服用するのではなく、症状がひどいときにのみ服用するようにしましょう。
まとめ:気象病の原因と対策を知り、季節の変わり目を健やかに乗り越えよう
季節の変わり目は、特に気象の変化が激しく、体調を崩しやすい時期です。 しかし、適切な対策を行うことで、この季節も元気に過ごすことができます。ご自身の体調の変化に敏感になり、今回ご紹介した内容を参考に、ご自分に合った対策を見つけていくことが大切です。
規則正しい生活、バランスの取れた食事、適度な運動、そしてストレスを溜めないように心がけることで、気象病の影響を最小限に抑え、快適な毎日を送ることができます。ぜひ、ご自身の身体と向き合い、健やかな日々を過ごしましょう。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。