睡眠の質を向上させるだけでなく、腰痛や肩こりの改善にも効果的な枕の選び方は非常に重要です。しかし、枕には厚さ、硬さ、素材などさまざまな種類があり、自分に最適なものを見つけるのは難しいですよね。
本記事では、快眠セラピスト・睡眠環境プランナーの三橋さん監修のもと、腰痛改善に特化した自分に合った枕の選び方と、メンテナンス方法・タイプ別におすすめの枕をご紹介します。
快適な睡眠環境を整えるためのヒントをお届けしますので、ぜひ参考にしてください。
腰痛と枕の関係性って?枕の役割
私たちの睡眠に欠かせない「枕」。その歴史は数百万年前にまで遡り、最古の証拠は1924年に南アフリカで発見されたアウストラロピテクスの化石に見られます。この化石の頭蓋骨の下には石が置かれており、初期の人類が頭を支えるための道具を使用していたことが示されています。
日本でも、古墳時代から枕が使われており、素材や形は時代とともに変化してきました。奈良時代には木製や草で編んだ枕が主流となり、平安時代には髪型を崩さないための箱枕が登場。江戸時代には旅行に便利な折りたたみ式枕も普及しました。明治時代以降は、そば殻や綿を使用した平らな枕が一般的となり、現代では、体圧分散や頚椎のサポートなど、機能性を重視したさまざまな枕が登場しています。
枕の役割は、単に頭を支えるだけではありません。体のバランスを整え、快適な睡眠を促す重要な役割を担っています。特に、現代人は長時間のパソコン作業やスマートフォンの使用など、同じ姿勢を長時間続けることが多く、肩こりや腰痛に悩まされる人が増えています。腰痛に悩む人々にとって、適切な枕選びは睡眠の質を向上させるための重要な要素です。
実は厳密に言うと、枕だけでは腰痛は改善できません。腰痛には、枕とマットレスとのバランスが大きな影響を与えています。枕とマットレス、それぞれの役割について詳しく説明していきます。
正しい寝姿勢のサポート
私たちの身体は、起きている時と同様に、睡眠中も背骨が自然なS字カーブを保つことが理想といわれています。しかし、合わない枕やマットレスを使うと、このカーブが崩れてしまい、腰に負担がかかってしまいます。たとえば、高すぎる枕では、首が前傾し、腰への負担が増します。
一方、低すぎる枕も、首が反り、腰への負担が増します。また、柔らかすぎるマットレスは、体が沈み込みすぎ、骨盤が傾いて腰に負担がかかり、反対に、硬すぎるマットレスは、腰の隙間を支えられず、腰に負担がかかります。
理想的な寝姿勢である、仰向けで自然なS字カーブを保てる枕とマットレスを使うことが重要です。
マットレスを変えることが難しい場合でも横向きで寝るときに膝を少し曲げると腰の緊張が抜けます。仰向けで寝るときには、膝の下にクッションを置くと腰が伸びてマットレスに密着し、腰への負担が軽減できます。
マットレスは適度な硬さで、身体が沈み込みすぎず、かつ、しっかりと支えてくれるものが理想です。枕の高さは、寝たときに首が自然なS字カーブを保てる高さがベストです。
脊椎のアライメント維持
「なぜ、枕が腰痛に関係するの?」と疑問に思う方も多いかもしれません。実は、枕は私たちの身体、特に背骨(脊椎)の健康に大きな影響を与えているのです。私たちの身体は、複雑な構造をしたパズルのようなものです。
その中でも、背骨は身体の軸となる非常に重要な部分。この背骨が、首から腰まで、自然なS字カーブを描いている状態を「脊椎のアライメント」と呼びます。枕は、この脊椎のアライメントを保つ上で、首と頭を支える重要な役割を担っています。適切な高さの枕は、首の自然なカーブを維持し、背骨全体への負担を軽減します。
高すぎる枕や低すぎる枕は、首の筋肉に余計な負担をかけ、結果として脊椎のバランスを崩してしまう可能性があります。特に、仰向けで寝るときは、この影響が出やすいといいます。
柔らかすぎるベッドでは、圧力が均等になりにくく、骨盤が不自然に傾いてしまいます。また、枕が高すぎると首が押し上げられてしまい、首や肩に負担がかかります。そして、その影響は腰にも及びます。
腰への負担軽減
首の傾きが、なぜ腰痛に繋がるのでしょうか?それは、私たちの身体は、頭から足まで、すべてが連動しているからです。首の傾きは、背骨全体のバランスを崩し、腰椎への負担を増大させます。不自然な姿勢は、筋肉の緊張を引き起こし、慢性的な痛みへとつながります。長期的な姿勢の悪化は、骨格の歪みを引き起こし、腰痛を悪化させる可能性があるのです。
寝ているときに重力の影響で少し伸びますが、首は若干カーブした状態が望ましいです。真っ直ぐな姿勢は腰に負担が大きくなります。
腰痛対策に!枕の選び方
腰痛を改善するためには自分に合った枕選びが大切です。腰痛対策にもつながる、快適な睡眠のための枕選びについて解説します。
高さ
枕の高さと硬さは、睡眠の質を大きく左右する要素です。高すぎる枕は、首が前方に傾き、背骨の自然なS字カーブを崩してしまいます。逆に、低すぎる枕は、首に負担をかけ、肩こりや頭痛の原因となることも。
理想は、寝たときに首が自然なカーブを保ち、頭と体が一直線になるような高さです。寝ているところを写真に撮り、90度回転させて立ち姿勢にして、頭の傾きを確認してみてください。三橋さんによると、枕の高さは姿勢や体型によって変わるといいます。
人それぞれ体格や寝姿勢が異なるため、一概に「この高さが正解」とはいえません。標準体型の方と猫背の方では、隙間のでき方が異なるため、猫背の方は枕に高さが必要になります。一方で、高すぎる枕を使っていると、猫背になりやすいということもあります。うつむく姿勢になるため、首すじが突っ張られ喉元が詰まってしまいます。その結果として、首や肩が痛くなったり、気道が狭くなり、いびきをかきやすくなるなど、デメリットが多いです。横からの写真を撮ってもらうと、姿勢の確認がしやすくなります。
硬さ
硬すぎる枕は、首や肩に圧力がかかり、寝返りがしにくくなります。柔らかすぎる枕は、頭が沈み込み、首が不安定な状態になりがちです。適度な硬さで、頭と首をやさしく支えてくれるものがおすすめです。適度な硬さで、へたりにくい素材を選びましょう。
大切なのは沈み込まず、しっかりと頭を支えること。ただし、あまりにも硬い枕は寝返りがしづらくなります。心地よく眠ることを意識して、ちょうどいい硬さを選びましょう。
形状
S字カーブを保つためには、中央部が低く両端が高い形状の枕がおすすめです。中央部が低くなっていることで、首の自然なカーブをサポートしてくれ、背骨のS字カーブを維持できます。また、両端が高いため、肩や首への負担を軽減し、リラックスした状態を保てます。
たとえば、首のカーブが浅いストレートネックの方は、首のカーブに沿った形状の枕がおすすめです。横向きで寝る方は、肩の高さを考慮した形状の枕を選ぶと、肩への負担を軽減できます。
素材
素材選びで重要視したいのが、「通気性」と「耐久性」です。枕は毎日使うもの。寝ている間にかいた汗を発散し、蒸れを防ぐ素材が理想です。また、長く快適に使用するためには、耐久性も重要なポイントです。
素材は好みで選んで大丈夫です。大切なのは、やはり寝心地の良さです。硬すぎると寝返りが痛く感じることがありますし、横向きの時に不快に感じることもあります。逆に、柔らかすぎると横向きになりづらいこともあります。枕の存在を感じさせないくらいのものが理想です。頭を乗せたときに違和感を感じるのは合っていない証拠です。
腰痛改善には腰枕も有効な選択肢
私たちが日常的に使用している枕は頭と首をサポートしますが、腰枕はお尻から腰にかけての部分を支える専用クッションです。寝ているときの腰とお尻の曲線によってできる布団との隙間を、程よく埋めることで腰への負荷を和らげ、快適な睡眠姿勢を保つ効果が期待できます。
腰枕の選び方
腰枕は、腰の負担を軽減し、快適な睡眠を促す効果が期待できますが、選び方一つで効果が大きく変わってきます。基本的には、頭用の枕を選ぶ時と同様に、体が沈み込みやすい柔らかい寝具を使っている場合は、硬めの腰枕がおすすめです。腰をしっかりと支え、姿勢を安定させます。
反対に、硬めの寝具を使っている場合は、柔らかめの腰枕がおすすめです。体が反りすぎないように、優しくサポートします。一般的には3~4cm程度の厚みが一般的ですが、体型や腰の曲がり具合によって最適な高さが異なります。高すぎる腰枕は腰を反らせてしまい、かえって負担になったり、自分に合わない腰枕を使うと、腰痛が悪化する場合があります。
腰が反ってしまう腰枕は高すぎます。想像以上に薄いものが合う人が多いです。まずはフェイスタオルを細長く三つ折りにして、腰に当たるようにマットレスの上に置いてみてください。フェイスタオルの厚みを変えて、自分に合った高さをみつけましょう。
まとめ:自分にぴったりの枕をみつけ、腰痛を改善しよう
腰痛に悩んでいる方にとって、適切な枕選びは快適な睡眠と健康な体を取り戻すための第一歩です。体型や寝姿勢に合った形状、通気性や耐久性、肌触りを考慮した素材、首の自然なカーブをサポートする高さ、体重や体格に合わせた硬さを考慮して、自分に合った枕を選びましょう。
枕は長期間使用するうちにへたりや形崩れが生じることがあります。定期的に状態をチェックし、必要に応じて調整や買い替えを行うことが大切です。自分に合わない枕を使い続けると、腰痛が悪化する恐れがあります。腰痛でお悩みの方は、ぜひこの記事を参考に、自分にぴったりの枕を見つけてみてください。
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