資金繰りが難しいために不動産担保ローンに興味はあるものの、「審査は厳しくて落ちやすいのでは」と感じる方もいるのではないでしょうか。不動産担保ローンを活用することで、事業に必要な資金調達が可能になります。
この記事では、不動産担保ローンの審査に落ちる確率や審査に落ちやすい方の特徴について解説します。落ちた場合の対策についても解説するため、これから不動産担保ローンを検討している方の参考になるでしょう。
不動産担保ローンの本審査に落ちる確率
不動産担保ローンの審査に落ちる確率は、金融機関の企業秘密であることから公開されていません。金融機関ごとで審査基準も異なるため「落ちる可能性は〇〇%」と断定することはできないのです。
ただし、不動産担保ローンは他の無担保ローンよりも審査に通りやすいといわれています。価格変動リスクが比較的少ない不動産を担保に出すことで、金融機関は信用リスクを軽減できるためです。
万一、融資先が返済できなくなった場合でも、金融機関は担保物件を売却すれば損失を回避しやすくなります。そのため、不動産担保ローンを利用する際は、自分の返済能力に加えて、不動産の担保価値も重要になります。
不動産担保ローンの審査の流れ
不動産担保ローンの審査手順について詳しく見ていきましょう。審査は以下の順番で進められます。
- 仮審査
- 本審査
- 融資実行
ひとつずつ解説します。
仮審査
不動産担保ローンの申し込みをすると、まずは仮審査の実施です。仮審査は本人確認や信用情報、担保不動産の登記情報などが確認されます。金融機関によってはWebで仮審査を実施しているところも多く、審査結果は数日程度で通知されます。
本審査
仮審査を通過すると、次は本審査に進みます。金融機関から申込書類が届くので必要事項を記入し、金融機関から指定された必要書類を同封して提出します。本審査になると、金融機関の担当者が実際に現地まで担保物件を確認しにいくなど、慎重に進められます。そのため、審査が完了するまで数週間ほどかかる見込みです。
本審査で提出する必要書類を以下の表にまとめてみました。
申し込みに関連する書類 | 担保物件に関連する書類 |
---|---|
・収入証明書(源泉徴収票 ・確定申告書など) ・納税証明書 ・本人確認書類 ・住民票 | ・登記事項証明書 ・公図 ・地積測量図 ・建物図面 ・公課証明書(固定資産税額が記載されたもの) ・残高証明書 |
なお、必要書類は金融機関ごとで異なるため、申し込む際はあらかじめ金融機関に確認しておきましょう。必要書類に不備があると、審査結果の通知がさらに遅くなります。
融資実行
本審査に通過すると、正式な契約手続きに進んで金銭消費貸借契約を締結し、担保にする不動産に抵当権が設定されます。
これらの手続きが完了すると、融資実行日に指定した口座に融資金が振り込まれて融資が実行されます。その後はローン返済の開始です。
仮審査の申し込みから融資の実行まで、約3週間~1ヵ月程度の時間を要することになるため、余裕を持って申し込みを進めましょう。
不動産担保ローンの審査に通りにくい人の特徴
冒頭で不動産担保ローンの審査に落ちる確率は明言できないと述べました。しかし、反対に不動産担保ローンの審査に通りにくい方の特徴はあります。主に次のケースに該当する方は審査に通りにくくなるでしょう。
- 別の借り入れがある
- 収入が不安定
- 信用情報に問題がある
- 不動産の評価が低い
- 提出書類に不備がある
以下で、順に解説します。
別の借り入れがある
不動産担保ローンの審査では、住宅ローンやカードローンなどの借り入れが高額である場合、審査において不利に働きます。金融機関はすでに借り入れをしている方に追加融資をすると返済負担が重くなり、返済不能になる可能性が高まるためです。
また、金融期間は融資をした際の返済比率もひとつの判断基準にしています。返済負担率とは、年収に対する年間のローン返済額の割合を示したものです。以下のモデルケースで返済負担を求めてみます。
- 年収:700万円
- (既存)住宅ローンの返済額:年間120万円
- (新規) 不動産担保ローンの返済額:年間120万円
このケースにおける返済比率は、以下のとおりです。
【返済比率】
(120万円+120万円)÷700万円=約34%
一般的に返済比率は30~35%が目安と言われています。そのため、既存の借り入れと新たに借り入れたローンを合わせたときの返済比率が、35%を超える場合は注意が必要になるでしょう。
収入が不安定
収入が不安定な方も審査に不利となってしまいます。正社員や公務員といった比較的安定した職業に就いている方は審査に有利になる一方で、フリーランスや個人事業主の場合は、収入が不安定になりがちで審査に通りにくくなります。
事業内容によっては年度ごとに収入が大きく変動することもあるでしょう。このような収入の不安定性は、金融機関からすると返済能力を評価する際のリスク要因と判断されることも多いです。
そのため、個人事業主やフリーランスの方は、事業の安定性(黒字経営)を保つことも審査を通過するための重要なポイントになります。
信用情報に問題がある
信用情報に問題がある方も注意が必要です。信用情報とは、過去にどのような取引(借り入れや支払い)があったかを記録したものです。例えば、3年前にカードローンの支払いを2ヵ月滞納していたなどの記録が記載されています。
過去にこのような延滞歴や多重債務歴が記録されていると、審査に通りにくくなります。そのため、事前に自分の信用情報の状態を開示請求により確認することも可能です。
開示請求は、信用情報を管理している信用情報機関へオンラインもしくは郵送にて行います。信用情報機関によって加盟している金融機関が異なるため、漏れなく把握するために、以下の3機関へ請求しましょう。
- 全国銀行個人信用情報センター(KSC)
- 日本信用情報機構(JICC)
- シー・アイ・シー(CIC)
開示請求の結果、信用情報に傷があることが判明した場合は、申し込みを控えたほうがいい場合もあります。
不動産の評価が低い
担保になる不動産の評価が低い場合は、審査で不利になりやすいです。不動産担保ローンの審査は、担保物件の評価がどれだけ高いかが重要な要素となります。担保物件の評価は立地や築年数、物件の状態などを見られます。
とくに、以下に該当する物件は評価が下がる傾向にあるため、注意が必要です。
- 再建築不可物件
- 違法建築
- 囲繞地(いにょうち)通行権
物件は評価が下がると借入可能額や金利に影響を及ぼすため、不動産担保ローンに申し込む際は、事前に担保物件の評価額をよく確認しておきましょう。
提出書類に不備がある
提出書類に不備や相違点があると、審査に落ちる可能性が高まります。提出書類が揃っていないと収入が証明できず、再提出を求められたり、あるいは審査に通過できない可能性も出てくるでしょう。
また、提出した書類と相違点がある場合も注意が必要です。例えば、申告した年収が異なる場合、虚偽の申告を疑われる可能性があります。意図的でなくても、事実と異なる情報を提出しただけで、審査結果に悪影響を与えてしまいます。
不動産担保ローンの本審査に通過するポイント
不動産担保ローンに落ちやすい方の特徴を踏まえたうえで、不動産担保ローンの本審査に通過するためのポイントを3つ解説します。
- 必要書類は不足がないよう提出する
- 他社の返済を済ませておく
- きちんとした事業計画書を提出する
審査をスムーズに進めるために、ひとつずつ押さえておきましょう。
必要書類は不足がないよう提出する
提出した書類に不備があると書類の修正や再提出が必要になり、審査や融資の実行が遅れることがあります。最悪の場合、金融機関からの信頼を失い、審査落ちにつながる可能性もあるでしょう。
必要書類をきちんと揃えることは基本ですが、実際には多くの方が不備があり、審査に落ちてしまったというケースも少なくありません。そのため、書類を提出する前に再確認し、不足や誤りがないか慎重にチェックすることが重要です。
他社の返済を済ませておく
上述のとおり、金融機関は返済比率を返済能力の有無を判断するひとつの材料としています。あらかじめ他社の返済を完済させておくことで返済比率が改善され、融資に通りやすくなるでしょう。
その際は、金利が高い借り入れから返済していくことが重要です。金利が高い借り入れから返済することで返済負担を軽減でき、返済能力を高められます。
きちんとした事業計画書を提出する
個人事業主の場合は事業計画書の提出を求められることがあり、内容も審査に大きく影響を受けます。事業計画書に記載されている内容が、わかりやすく根拠のあるものであれば金融機関からの信頼も得られ、審査に通りやすくなるでしょう。
そのためには、データや具体的な数字を用いて、実現性の高い事業計画書を作成することです。もし、事業計画書の作成に自信がない場合は、税理士や中小企業診断士などに確認してもらうことも選択肢のひとつでしょう。
審査に落ちた場合の対策
不動産担保ローンを試みてはみたものの、審査に落ちてしまうこともあるでしょう。しかし、再度対策を練って申し込めば、審査に通ることもあります。
審査に落ちた場合は、以下の対策を取ってみてください。
- 融資希望額を減額する
- 担保になる不動産を見直す
- 不動産担保ローン以外の資金調達方法を検討する
ひとつずつ解説します。
融資希望額を減額する
融資希望額を減額すると融資に通りやすくなります。融資希望額を下げることで返済比率が低下し、金融機関の審査基準をクリアしやすくなるからです。
例えば、返済負担率が35%を超えていた場合、30%以下になるように融資希望額を調整してみてください。返済負担率が下がれば金融機関は貸し倒れリスクが低減したと判断するため、審査に通りやすくなります。
ただし、融資額を下げることで実際に必要な資金が不足する場合があるため、その場合は別の融資策を検討しましょう。
担保になる不動産を見直す
複数の不動産を保有している場合、担保に出す不動産を見直すことも有効な手段です。評価額の高い不動産を担保に出したほうが、審査にとおる可能性も高まります。
ただし、担保物件の評価は金融機関独自の基準を設けていることも多く、変更した不動産が必ずしも高い評価を得られるわけではありません。
なお、金融機関によっては親族の不動産を担保にすることも可能です。親族が保有している不動産のほうが評価額が期待できる場合は、「親族の不動産を担保として扱える」な金融機関に変更するのもよいでしょう。
不動産担保ローン以外の資金調達方法を検討する
不動産担保ローン以外にもいくつかの資金調達方法はあります。代表的な調達方法は、次のとおりです。
- 公的融資制度
- ファクタリング
- リースバック
- 無担保ローン
それぞれ特徴やメリット・デメリットが異なるため、以下で比較してみてください。
資金調達方法 | 概要 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
公的融資制度 | 政府や地方自治体が実施している融資制度 | ・低金利で長期返済に対応している ・補助金なども含まれる | 審査が厳しく、手続きが煩雑 |
ファクタリング | 未回収の売掛金を金融機関に売却して現金を調達 | ・即時資金調達が可能 ・信用情報に影響しない | ・手数料が高い ・売掛金額より低い金額での調達になる |
リースバック | 保有する不動産を販売し、その後リースして使用を続ける | ・大きな資金を調達可能 ・自宅に住み続けられる | ・長期的にコストが増加する可能性がある ・所有権がなくなる |
無担保ローン | 担保なしで借り入れるローン | ・資産を担保にする必要がない ・手続きが比較的簡単 | ・金利が高め ・融資限度額が低め |
ノンバンクの金融機関を検討する
銀行以外の金融機関であるノンバンクのサービスを検討するのも有効です。審査基準が異なるため、銀行で落ちた人でもノンバンクであれば通過できる可能性があります。
メリット | デメリット |
---|---|
・融資可能額が大きめ ・審査時間が短い ・申込対象の条件が幅広い | ・金利が高い ・不動産を失う可能性がある |
ノンバンクは銀行と比べると金利は高くなりがちですが、融資可能額も大きく、対象となる申込者の範囲も広いため利用しやすいです。とくに、個人事業主やスタートアップ企業など銀行融資では条件を満たすことが難しい場合に、ノンバンクの利用は有効な選択肢となるでしょう。
セゾンファンデックスの「事業者向け不動産担保ローン」は、赤字決算や創業して間もない事業主にも融資実績が多数あります。また、親族(三親等以内)の不動産も担保の対象となります。銀行融資の審査に通りにくい状況の方や、急な運転資金が必要になった場合はお気軽にご相談ください。
不動産担保ローンの審査基準を押さえれば通過する確率を高められる
不動産担保ローンの審査に落ちる確率は、金融機関の企業秘密であることから公開されていません。ただし、不動産担保ローンは他の無担保ローンよりも審査に通りやすいといわれています。
不動産担保ローンの審査に落ちやすい方の特徴は、以下5つのケースです。
- 別の借り入れがある
- 収入が不安定
- 信用情報に問題がある
- 不動産の評価が低い
- 提出書類に不備がある
「必要書類をきちんと揃える」ことや「他社の返済を済ませておく」といった対策だけでも、審査に通る可能性は十分に高められます。事業の資金繰りができるように、申し込み前の段階でしっかり対策しておきましょう。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。