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冬になると気分が落ち込むウィンターブルーとは?

一般的なうつとの共通点、違いは?
長谷川 由季

監修者

管理栄養士/リジェネレーションクリニック所属

長谷川 由季

リジェネレーションクリニック、アルゴメディカルサロンで、バイオメディカル領域に取り組む管理栄養士。再生医療、遺伝子検査などの先端技術を活用し、個々のライフスタイルや体質に合わせたパーソナライズド食事指導とサプリメンテーションを提供。パフォーマンスアップを目的としスポーツ栄養にも携わる。さらに、健康増進や美容効果を追求したサプリメント開発にも携わり、科学的根拠に基づいたアプローチで多くの人々の健康をサポートしている。

寒い冬はやる気が起きない、些細なことでイライラしたり憂鬱な気分になるなどといったことはありませんか?このような気持ちの落ち込みは、冬ならではの季節性うつ、「ウインター・ブルー」と呼ばれています。症状や度合いは様々ですが、実はちょっとした対策で予防できることもあるのです。誰でも起こり得る「ウインター・ブルー」、その原因とそのメカニズム、そして対処法をご紹介します。

 ウィンターブルーとは?

ウインター・ブルーとは?

晩秋から冬にかけて悲しく憂鬱な気分になり、以前は楽しみだった活動に興味がわかず、疲労感が募り、無力感や罪悪感にかられるといった抑うつ気分が、「ウインター・ブルー」です。過食傾向、過眠傾向になるのも特徴的で、春になると症状が回復するため季節型の反復性うつ病とも言われています。

ウィンターブルーの原因・メカニズム

ウインター・ブルーの原因・メカニズム

ウィンターブルーの原因は、幸せのホルモンといわれるセロトニンの分泌量の減少が大きく関係しています。太陽の光を浴びる量が減ると脳内伝達物質のセロトニン分泌が減少するため、一年の中でも最も日照時間が少ない12〜1月は、安心感や幸福感が感じづらくなり、気分の落ち込みに繋がってしまうのです。

セロトニンは体内時計を司り、眠りを呼ぶメラトンというホルモンの材料でもあります。セロトニンが減ることでメラトニンも減り、質の良い睡眠が得られなくなることも心身の健康に影響を与えます。実際ウィンターブルーは、北欧など冬に日照時間が極端に短くなる高緯度地域に多いとされ、日本でも北国に多く発症します。

一般的なうつとの共通点、違いは?

ウィンターブルーと一般的なうつは、気分の落ち込み、気力の減退、焦燥感や倦怠感などといった症状が共通していますが、ウィンターブルーの場合は春になって日照時間が長くなると、自然と回復するという大きな違いがあります。

また、一般的なうつの場合、多くが食欲不振・体重減少・不眠となるのに対し、ウインターブルーは過食・過眠傾向になることも大きな違いです。ウインター・ブルーになると、とくに炭水化物や甘いものを欲するため、太りやすくなり、また、たくさん寝ていても常に眠気があり、過眠傾向になるという特徴があります。

日照時間の低下により体内のセロトニンが減少すると、なんとか健康な状態を維持しようと、脳が指令を出します。その結果、甘いものを食べてセロトニン不足を補おうとしたり、睡眠でエネルギーを蓄えておこうと体に変化が生じるのです。

ウィンターブルーをセルフチェック

ウインター・ブルーをセルフチェック

ウインター・ブルーは、誰の身にも起こること。症状や度合いは人それぞれですが、決して気のせいではなく、その人自身のせいでもありません。慢性化させないためにも、早く気づくことが大切です。まずは以下のチェックリストに当てはまるものがないか、確認してみましょう。

□気持ちが不安定になる
□無気力になる
□倦怠感がある
□何をやっても楽しくない
□甘いものが無性に食べたくなる
□眠くて朝起きられない
□たくさん寝ても日中も眠気に襲われる
□やる気や意欲が湧かない

上記が一つでも当てはまる人は、「ウインター・ブルー」の可能性があります。重症化する前に対策が立てられるよう、「自分にも起こり得ること」として意識してみてください。

管理栄養士に聞く、ウィンターブルーの予防法・解消法

管理栄養士に聞く、ウインター・ブルーの予防法・解消法

日照時間が短い今の季節に不意に訪れる、ウィンターブルー。いざというときに備えることがおすすめです。今すぐできる予防法と解消法を、管理栄養士の長谷川由季さんに伺いました。

意識して自然光を浴びる

まず意識して欲しいのが、自然光により多く当たることです。ウィンターブルーのそもそもの原因が日照時間の短さにあるため、根本的な解決にも繋がると言います

自然光を意識的に浴びることで、幸せホルモンのセロトニンが分泌されやすくなります。暗い部屋で過ごすと気分が沈みやすくなるため、室内の照明の光も上手にコントロールするようにしましょう。

トリプトファンを多く含む食事をとる

心と体のバランスを整える伝達物質であるセロトニンの材料となるのが、必須アミノ酸のトリプトファンです。体内での生成ができないので、食事で摂るしかありません。食材では、鶏肉、豆腐、納豆に多く含まれます。

トリプトファンを含む食事のほかにも、ビタミンB群、ビタミンD、マグネシウムも一緒に摂ると良いでしょう。特に日光を浴びることで生成されるビタミンDは、不可欠な栄養素です。秋までに血中のビタミンDの濃度を高めておくこともウインター・ブルー予防策として効果的です。

適度に体を動かす

セロトニンは、運動をすることで増加します。中でも効果が期待できるのがリズム運動といわれ、歩行運動、意識的な呼吸が挙げられます。 一定のリズムを刻む運動を反復して行うと、セロトニン神経を刺激するのです。

冬の紫外線の強さでは、日焼けなどの心配がないため、毎日30分程度の散歩もおすすめです。仕事や家事の合間に、一日に何回か深呼吸をすることも心がけましょう。

規則正しい生活サイクルを心がける

ここ数年、世界的な感染症の流行による生活様式の変化や物価高など不安を感じるニュースが多くなっています。さまざまな不安やストレスが原因で自律神経が乱れると、頭痛や倦怠感、便秘、不眠やうつなどの不調が発生しやすくなってしまいます。

心身の健康のためには1日3食しっかり食べて、規則正しくストレスをため込まない生活が大切です。

近年注目されている積極的休養も有効な手段のひとつです。疲れている時こそ、あえて体を動かすことで血流がスムーズになり、疲労物質も排出されやすくなります。

まとめ:日差しを味方に心身の健康を保ちましょう

まとめ:日差しを味方に心身の健康を保ちましょう

ウィンターブルーを発症せずとも、冬は誰もがセロトニン不足傾向になるため、どうしても気持ちが不安定になりやすい時期です。また、症状への理解が進んでいないため、周りから怠けているなどと誤解され、負のスパイラルに陥ってしまうことも。ウィンターブルーは、気のせいではなく、体内で起こっている不具合が露見したものです。無闇に自分を責めず、まずは生活のリズムを整えて、意識的に自然光を浴びるなど、できることから始めてみましょう。

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

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