毎年、梅の季節になると耳にする「梅仕事」。興味はあるけれど、「難しそう」「何から始めればいいかわからない」と二の足を踏んでいる方も多いのではないでしょうか?
本記事では、そんな初心者の方に向けて、梅仕事の基本をわかりやすく解説します。梅シロップ、梅酒、梅干しなど、基本のレシピはもちろん、梅の選び方や失敗しないためのコツまで、梅仕事に必要な情報をギュッとまとめました。手作りの梅で、季節の恵みを暮らしに取り入れてみませんか?
梅仕事とはどんなもの?

梅仕事とは、梅の収穫時期に行う保存食作りのことを指します。主に5月下旬から7月頃に出回る青梅や完熟梅を使い、梅干し、梅酒、梅シロップ、梅ジュース、梅ジャムなどを仕込みます。これらは日本の伝統的な保存食であり、手作業で仕込むことで四季を感じ、梅の香りや味わいを楽しむことができます。
梅仕事では、梅の選別や洗う作業などは共通したもので欠かせません。梅干し作りでは、塩漬け後に天日干しすることで風味豊かに仕上げます。梅酒やシロップは、氷砂糖や酒と漬け込み、時間をかけて熟成させます。
手間はかかりますが、自家製の梅製品は格別の味わいがあります。毎年の梅仕事を楽しみにしている方も多く、日本の風物詩のひとつです。
若者の“梅離れ”が進んでいる
梅仕事は、梅を使って様々な保存食を作る昔からの伝統的な作業で、特に年配の方々には馴染み深いものです。しかし最近では、若い世代で梅離れが進んでいます。忙しい現代生活の中で、梅干しを食べる機会は減り、また自分で作るという文化も少なくなっています。
こうした変化は、核家族化やライフスタイルの変化と関連しており、昔のように家庭で梅仕事をする機会が減っているためです。
その一方で、梅シロップや梅酒など、梅干し以外の形で梅を楽しむ若者が増えており、特に女性の間では人気が高まっています。若い世代にも梅の魅力や梅仕事の楽しさを知ってもらうための取り組みが、梅の産地などを中心に広がっています。
梅の種類と選び方

梅仕事を始めるには、まず適した梅を選ぶことが大切です。梅にはさまざまな品種があり、それぞれ風味や用途が異なります。ここでは、梅の主な種類と、それぞれの特徴に合わせた選び方を紹介します。適した梅を選ぶことで、梅干しや梅酒、シロップ作りがより美味しく仕上がるはずです。
完熟梅と青梅を使い分ける
梅の旬は6月を中心に、5月下旬から7月頃までの限られた期間です。使用する梅の熟度によって、何が作れるのかを知っておくことが重要です。
完熟梅に適したもの
完熟梅は黄色く色づき、香りが豊かで柔らかいのが特徴です。酸味がまろやかで甘みもあるため、以下の用途に向いています。
梅干し:完熟梅を使うことで、皮が柔らかく、ふっくらとした梅干しができます。
梅ジャム:果肉がやわらかいため、煮詰めることで滑らかなジャムになります。
梅シロップ:青梅よりも甘みが出やすく、フルーティーな風味が楽しめます。
梅酒:青梅よりもまろやかで甘みのある梅酒になります。
青梅に適したもの
青梅は硬くて酸味が強く、爽やかな香りが特徴です。爽快な風味を生かす用途に適しています。
梅シロップ:酸味が強く、さっぱりとした味わいのシロップになります。
梅酒:長期熟成向きで、キリッとした風味の梅酒ができます。
用途に応じて、完熟梅と青梅を使い分けることで、より美味しく梅仕事を楽しむことができます。
品種による違いも
梅には多種多様な品種が存在し、それぞれが独特の持ち味を持っています。ここでは、代表的な梅の種類をいくつかピックアップしてご紹介しましょう。
南高梅(なんこううめ)
和歌山県で生産される高品質な品種で、日本一の生産量を誇ります。果肉が厚いうえに柔らかく、大粒でジューシー。皮が薄いため、梅干しにするととろけるような食感になります。
白加賀(しろかが)
日本で広く栽培されている梅の品種のひとつで、主に梅酒や梅シロップ作りに適した品種です。果肉がしっかりしていて繊維が少ない。酸味と甘みのバランスが良く、香りが豊かです。
古城(ごじろ)
主に梅酒や梅シロップ用として人気のある梅の品種で、和歌山県を中心に栽培されています。青梅の代表格で、果肉が固め。果汁が多く、梅酒はスッキリとした仕上がりに。
鶯宿(おうしゅく)
寒さに強く、関東や東北でも育ちやすい梅の品種。酸味が強く、実が小ぶりで硬めです。しっかりした酸味があり、昔ながらの梅干し向き。
小梅(こうめ)
カリカリ梅で使われ、名前の通り実が小さく、直径2~3cmほどの可愛らしいサイズ。一般的な梅よりも果肉が少なく、種が大きめなのが特徴です。大粒の梅に比べて短期間で漬けられるため、手軽に梅仕事を楽しみたい方にもおすすめです。
梅の品種によって風味や仕上がりが変わるので、ご自身の好みや用途に合ったものを選んで楽しんでみてください。
梅がもたらす健康効果とは?

梅は古くから健康に良い食材として親しまれ、その豊富な栄養と効能が注目されています。クエン酸やポリフェノールを多く含み、疲労回復や消化促進、抗酸化作用などさまざまな健康効果が期待できます。
唾液の分泌を促してくれる
梅の酸味成分が唾液腺を刺激し、唾液の分泌を促進します。これにより、口の中が潤い、消化を助けたり、虫歯や口臭の予防にも役立ちます。
運動の後に
運動後は乳酸が溜まり、疲れやすくなりますが、梅に含まれるクエン酸が乳酸の分解を助け、疲労回復をサポートしてくれます。スポーツ後の水分補給と一緒に摂るのがおすすめです。
食欲がない時にも
梅に含まれるクエン酸や有機酸が消化を助け、胃腸を活発にし、食べ物がスムーズに通過するのをサポートします。梅干しや梅シロップは消化不良を予防し、食欲がない時でも自然に食べる気を引き起こしてくれる効果も。また、クエン酸は乳酸を分解し、疲れを和らげ、エネルギー補充や体調改善にも役立ちます。
夏の熱中症予防に
汗をかくと、体内のミネラルが失われがちですが、梅にはカリウムやナトリウムが含まれており、ミネラル補給に最適です。また、梅シロップを炭酸水で割ると爽やかで飲みやすく、熱中症予防にも最適です。
冬の体調管理にも
梅は冬の体調管理にも効果的で、梅に含まれるクエン酸や有機酸は、免疫力を高める働きがあり、体の新陳代謝を活発にすることで、病気に対する抵抗力を強化します。さらに、梅の酸味が喉の粘膜を保護し、乾燥による風邪やインフルエンザの予防にもつながるという報告も。梅干しや梅ジュースを日常的に取り入れることで、風邪のひき始めや体調不良を予防する効果も期待できます。
初心者でも簡単。梅仕事の定番を作ってみよう

梅仕事は手間がかかるイメージがありますが、初心者でも簡単に挑戦できるレシピがたくさんあります。基本の梅干しや梅酒、冷凍梅を使ったシロップなど、少ない材料とシンプルな手順で美味しく仕上がる定番の梅仕事を紹介します。初めての方でも失敗しにくく、梅の風味を存分に楽しめるレシピばかりなので、ぜひ気軽にチャレンジしてみましょう!
ストックバッグで作る梅干し
<まずは梅を漬ける前の下準備を>
- 梅干しには黄色く熟した梅を使用します。熟度にばらつきがある場合は、熟度が進んでいるものから漬け、熟度が足らないものは2~3日おいて追い漬けしてください。その時は追加した梅の分の塩も一緒に入れましょう。
- 梅を水洗いし、ザルなどで軽く水気を切ります。この時、ふきんやキッチンペーパーで完全に水気を拭き取ってしまうと雑菌がついたり傷がつく可能性があり、カビが発生しやすくなるのでNGです。水気が程よく残っている方が、梅酢が上がりやすくなるメリットもあります。
<材料>
- 完熟した梅・・・1kg
- 塩(粗塩)・・・200g
- ※小梅の場合は梅1kg、塩180g
- 厚手のストックバッグ・・・2枚(重ねる) ※丈夫で新しいもの
- 受け皿(バットなど)・・・1枚 ※ホーローまたはプラスチック製
- おもし・・・1kg
<作り方>
- 「梅を漬ける前の下準備」をした後、ストックバッグに梅と塩を入れ、梅にまんべんなく塩がつくように軽くもみます。
- バッグに入れたまま、梅が重ならないように受け皿に並べ、空気を抜きながらジッパーを閉めます。
- 均等に圧力がかかるようにおもしを乗せて、約1ヶ月保存する。この際、ストックバッグ内に空気が入ったら、こまめに抜くようにし、2~3日で梅酢が上がってきたらおもしはを取る。
- その後天日干しする。
天日干しのやり方
- 天気がいい日が続く時を選ぶ。
- 梅を取り出し軽く水洗いし、浅めのザルに並べる。ザルは地面におかず、ブロックなどを台にてその上のに置くと、下からも風が通るようになる。
- 1日に1回程度梅を裏返し、2~4日ほど太陽にあてる。(3Lサイズなら3~4日、2L~Lサイズなら3日、小梅なら2日が目安)夜間は室内に取り込んで、布や新聞紙をかけておく。
- 干し上がったら梅を冷まし、密閉できる瓶などに移して保存する。
梅酒
<材料>
- 梅・・・1kg
- 氷砂糖・・・600~1kg
- ホワイトリカー・・・1.8リットル
- (焼酎、ウイスキー、ブランデーでも代用可。アルコール度数が20%以上ものも)
- 果実酒ビン(4リットル程度のもの)・・・1個
<作り方>
- 梅を水洗いして軽く水気を切る(穴あけは不要)。
- ビンに梅と氷砂糖を交互に入れ、ホワイトリカーなどの酒を注ぐ。
- 暗く涼しい場所に置き、時々ビンを動かして氷砂糖を溶かしていく。
- 約3ヵ月経てば出来上がり。
冷凍梅で作る簡単梅シロップ
冷凍梅を使うことで、梅の細胞が壊れ、エキスが出やすくなるため短期間で美味しいシロップが作れます。また、梅は冷凍しておくと長期保存が可能なので、少量ずつ作るのもおすすめです。
<材料>
- 梅・・・1kg
- 氷砂糖・・・1kg
- 果実酒用の瓶(3リットル程度のもの)・・・1個
<作り方>
- 梅を水洗いして軽く水気を切り、ポリ袋に入れ、冷凍庫で24時間以上冷凍する。この際、ヘタは無理に取らなくてもよい。
- 煮沸消毒したビンに凍った梅と氷砂糖を交互に入れ密封する。
- 梅の解凍が始まったら時々ビンを動かし、砂糖を溶かしていく。
- 約1週間ほどでできあがり。梅の実を取り出し別の容器に濾しながら移し替え、冷蔵庫で保存する。
冷凍梅を使った梅ジャム
こちらも冷凍梅を使ったレシピです。冷凍した梅を使うことによって、きめ細かい仕上がりになり、1年中好きなタイミングで作れます。
<材料>
- 梅(黄色く熟したもの)・・・1kg
- 砂糖・・・800~1kg(好みで調整)
<作り方>
- 梅を洗い、ヘタを取ってビニール袋に入れ、冷凍庫で24時間以上完全に冷凍する。
- ビンを煮沸消毒しておく。
- 梅と分量の半分程度の砂糖を鍋に入れる。(鍋はホーローや土鍋など、酸に強いものを使用)中火にかけ、水分が出てくるまで煮詰める。
- 果肉が溶け始めたらヘラなどでほぐし、更に溶かしていく。
- 果肉が完全に溶けたら、種を取り除き、残りの砂糖を入れる。弱火でアクを取りながら少しシャバシャバな状態になるまで煮詰める。そこから少しとろみが付くまで15~20分程度煮ていく。
- 果肉のかたまりがなくなったら火を消し、粗熱を取る。
- 温かいままビンに入れ、冷ましてから冷蔵庫で保存。冷蔵庫にいれておけば1~2週間ほど保存可能。
梅仕事の注意点と成功させるコツ

梅仕事をやってみたい!と思っている初心者でも失敗しにくいよう、注意点や成功のコツをQ&A形式で紹介します。
青いままの梅を使用すると、皮と実が固く、美味しい梅干しは出来上がりません。梅酢が上がりにくいため、失敗の原因にもなります。青梅はシロップや梅酒に使用するとスッキリとした風味を感じられるので、そういったものに使用しましょう。
また、黄色くなりかけている梅なら、追熟すれば梅干しとして漬けることができます。新聞紙にくるんで日陰においておくと、おおよそ2~3日で黄色くなります。
塩はミネラルと水分が豊富な「粗塩」がおすすめです。「精製塩」は沈殿しやすく梅酢が上がりにくいというデメリットがあります。
使用する梅に対して20%の濃度で漬けるのが基本です。最初から塩を減らしてしまうとカビが発生する原因になってしまいます。減塩の梅干しを食べたい場合は、出来上がった梅干しを水に浸ける「塩抜き」を行ってください。梅干し200gに対し、水1リットルを大きくて浅めの容器に入れ、好みに応じて30分~1時間程度漬けたら取り出し、ザルにあけて水切りをします。水は30~40度くらいのぬるま湯を使うと塩抜きしやすくなります。
表面に傷や斑点がないか確認しましょう。傷や斑点があると、そこから傷んでしまったり、実が固くなってしまうことがあります。ただ、スーパーなどに出回っているものは基本的にはきれいな状態のものが並んでいるため、そこまでの心配は必要ありません。
しっかり拭き取る必要はありません。特に梅干しの場合、水分が若干残るほうが塩を梅全体にまぶせるので、梅酢があがりやすくなり、時短にもなります。
まとめ:梅仕事を楽しんで、季節の恵みを味わおう

梅干しをはじめとする梅の加工品は、日本人なら一度は口にしたことがあるはず。梅仕事は、旬の梅を使って手作りの味を楽しむ日本の伝統的な食文化です。手間をかけることで、より美味しく仕上がるのが梅仕事の魅力。自家製ならではの安心感や、作る過程の楽しさを味わいながら、季節の恵みを存分に堪能しましょう。基本のレシピとコツさえ押さえれば、初心者でも簡単に梅シロップや梅酒、梅干し作りに挑戦できます。
昔から伝わるこの文化を次世代に残したいという思いを込めて、若い方向けにジュースやジャムなど、甘くて食べやすい加工方法もご紹介しました。梅の魅力を存分に活かしたさまざまなレシピに挑戦して、梅仕事をもっと楽しんでみませんか?
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。