物があふれて片付けられない、捨てられない…そんな悩みを抱える方は少なくありません。本記事では、物を捨てられない人の心理や特徴、生じる問題点を解説します。また、ためこみ症などの可能性にも触れながら、効果的な片付けのコツと対処法もご紹介します。思い出の品との向き合い方や、トランクルームの活用法まで、快適な生活空間を取り戻すためのヒントが満載です。
- 物を捨てられない人には、物に対する強い思い入れや、捨てることへの罪悪感、もったいないという心理的要因が影響している
- 物が溜まりすぎると、生活空間が狭くなり、掃除や整理が難しくなり、心理的な負担やストレスが増える可能性がある
- ためこみ症やADHD、認知症などの精神的・発達的な問題が、物が捨てられない原因として関係している場合がある
- 使用頻度や明らかなゴミを基準にして少しずつ物を捨てたり、写真を撮って保管する、譲る、トランクルームを活用するなどの対策をすることで物が溢れないように整理できる

物が捨てられない人の心理とは?

家の中が物であふれていると、掃除や片付けが大変でストレスを感じることも少なくありません。「物を減らしたいけどなかなか捨てられない」「思い出の物だから捨てていいものなのか迷ってしまう」といった悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。
実は、物が捨てられない人には特有の心理があります。
物に強い思い入れがある
物への思い入れが強い人は、なかなか物を手放せない傾向にあります。長い間使っていた愛用品、メダルやトロフィーなど頑張った成果として手に入れた記念品、家族写真や卒業アルバムといった思い出の品には特別な感情が宿ります。
これらの物を捨てることは、大切な記憶や過去の自分を否定するような感覚になり、強い不安や抵抗感を覚えるのです。物そのものではなく、そこに込められた思い出や感情に執着しているケースが多いといえるでしょう。
捨てるのがもったいないと感じている
「もったいない」という気持ちは、物が捨てられない人が抱く典型的な心理です。「いつか使うかもしれない」「壊れているけど直せば使える」「高価だったから捨てたくない」といった理由から、ついつい保管してしまいます。
日本人の伝統的な価値観ともいわれる「もったいない精神」は大切ですが、意識しすぎると物が増えてしまい、生活空間を圧迫する原因になることもあるのです。
捨てることに罪悪感がある
物を捨てる行為に対して罪悪感を抱く方も少なくありません。特に人からもらったプレゼントなどの場合、捨てることが失礼になるのではと考えてしまいます。
「高いお金を出して買ったのに捨てるのは悪いこと」「プレゼントをくれた人の気持ちを考えると捨てられない」という気持ちが強く働くのです。しかし、物よりもその時の気持ちの方が大事であり、感謝の気持ちを忘れなければ、罪悪感を必要以上に持つ必要はないでしょう。
物があると安心する
ストックが豊富にあることで安心感を得る人も多いです。トイレットペーパーやティッシュペーパー、洗剤などの日用品は、「いざというときのために」と多めに確保しておきたくなります。
また、使用頻度が低い物でも身近に置いておくことで心が満たされる方もいます。このような方の場合、物を捨てると精神的に不安定になりやすく、安心感を得る目的で物を溜め込んでしまう傾向があるのです。
物が捨てられない人に見られる特徴

物を捨てられない人には、心理的な要因だけでなく、行動や性格の面でもいくつかの共通する特徴があります。これらの特徴を認識することで、なぜ物が増えていくのか、そのメカニズムを理解しやすくなるでしょう。
自分自身や家族に当てはまるものがないか確認しながら読み進めてみてください。
優柔不断
物が捨てられない人は、優柔不断な性格の持ち主であることが多いです。片付けや整理整頓を始めるたびに「本当に捨ててもいいものなのか」「思い出の物だから捨ててしまったら後で後悔しそう」などと迷ってしまい、なかなか決断ができません。捨てるか捨てないかを決断していくこと自体が億劫になり、結果として物が溜まり続けてしまいます。
このように、物を捨てることに対する決断力の弱さが、片付けられない原因となっていることが少なくないのです。
衝動買いしやすい
物を買うときに「質より価格」にこだわりを持つ方は注意が必要です。低価格の物は手軽に買いやすいというメリットがある反面、他の余計な物まで購入する「ついで買い」に陥りやすくなります。
また、「買い物自体」がストレス発散になっている方は、必要性よりも購入する満足感を優先して衝動買いをしてしまうことがあります。こうした買い物パターンが長期に渡って続くと、使用頻度の低い不要な物が家の中に増え続ける結果となるでしょう。
おまけや限定品好き
無料でもらえるノベルティグッズや街中で配られるチラシ、季節限定の商品など、特別感のあるアイテムに目がない方も物が捨てられない傾向にあります。周囲にご近所さんが処分したい物や無料の物をよく貰ってくるという方も要注意です。
しかし、こういったアイテムの多くは実用性に乏しく、持ち帰っても活用されないまま収納スペースを占領することになります。もらうことや集めること自体に喜びを感じるため、実際の必要性を冷静に判断できなくなっているケースが多いのです。
収集癖がある
収集癖のある方も、物が捨てられない傾向にあります。コレクター気質で「集めた物は捨てたくない」という方は、シリーズものをコンプリートすることに達成感を覚え、手放すことで達成感が失われるような感覚になります。
一方で、単に「集めること」自体に夢中になり、集めた後の管理や整理ができないタイプの方もいます。たとえば、漫画や雑誌、フィギュアなどを必要以上に買い集めては、家の中に放置してしまうという状況になりやすいでしょう。
物が捨てられないことで起こりうる問題

物が増えてしまうと、日常生活にさまざまな影響が出てきます。単に部屋が散らかるだけでなく、生活全般に悪影響を及ぼすことも少なくありません。居住スペースが狭くなり、生活空間が圧迫されます。収納家具を増やしても、その家具自体がさらに空間を占めるという悪循環に陥ってしまいます。
物が増えると掃除の負担も大きくなります。物を片付けたり動かしたりする手間が増え、結果として掃除が行き届かなくなるでしょう。清掃が不十分な環境では、埃やカビが発生しやすくなりハウスダストアレルギーや感染症のリスクも高まります。
経済面でも影響があります。物が多いと必要なものの所在がわからず、同じものを再購入するといった無駄な出費につながることも。さらに、散らかった環境はストレスの原因となり、精神的な健康にも悪影響を与えかねません。
物を捨てられない人は病気や発達障害の可能性がある?

物を捨てられない状態が極端で、日常生活に深刻な支障をきたしている場合は、単なる性格や習慣の問題ではなく、医学的な問題が潜んでいる可能性も考慮する必要があります。
もちろん、少し部屋が散らかっているだけで病気と決めつけるのは適切ではありませんが、長期間にわたって物が溢れた状態が続き、自力での改善が難しい場合は、専門家に相談することも選択肢のひとつです。
ここでは、物を捨てられないことと関連がある可能性のある病気や障害について見ていきましょう。
ためこみ症
ためこみ症は、実際の価値とは無関係に所有物を捨てることや手放すことが持続的に困難になってしまう精神障害のひとつです。
人からもらった物や思い出の品だけでなく、新聞や雑誌、空き箱など価値の低いものまで大量に蓄積し、生活空間が物で埋め尽くされる状態になります。患者自身は収集物に強い愛着を持ち、捨てる際に強い苦痛を感じるだけでなく、譲渡や売却などの処分も困難です。
10代で発症し徐々に悪化する傾向があり、放置すると生活環境の悪化や社会的孤立を招くことがあります。
注意欠陥多動性障害(ADHD)
注意欠陥多動性障害(ADHD)の方は、特性上、片付けが特に苦手なことがあります。片付けたい気持ちはあっても、他の音や光などの刺激に注意が向いてしまい(不注意)、片付けに集中できないことがあります。
また、片付け途中でアルバムなど懐かしいものを見つけると「読みたい!」という衝動を抑えられず(衝動性)、本来の作業から脱線してしまうことも。物事を計画的に行うのが苦手なため、何から手をつければいいかわからず、片付け始めたのに部屋がかえって散らかってしまう事態に陥りがちです。
認知症
認知症の方も物が捨てられなくなる症状が見られることがあります。認知症というと物忘れが主な症状というイメージですが、実は判断力の低下も大きな特徴です。物を片付ける際には「捨てるか残すか」の判断力が必要ですが、認知症によりこの能力が低下すると片付けができなくなります。
また「物盗られ妄想」という症状もあり、「大切なものを盗まれないように」と物を隠し、その場所を忘れて探し回るうちに部屋中が散らかるというケースも。若い頃はきれい好きだった人でも、認知症により片付けられなくなることは珍しくありません。
物が捨てられない人の片付けのコツ

物が捨てられない人にとって、片付けは大きな挑戦です。しかし、適切な方法と心構えがあれば、少しずつ改善していくことは可能です。
ここでは、物を捨てるのが苦手な方でも実践しやすい、具体的な片付けのコツをご紹介します。一度にすべてを変えようとするのではなく、小さな一歩から始めて、徐々に片付けの習慣を身につけていきましょう。
明らかなゴミは捨てる
物が捨てられない人は、まず明らかなゴミから処分することから始めるとよいでしょう。空のペットボトル、空き缶、空きビン、コンビニなどの空のお弁当箱など、明らかに不要だと判断できる物から捨てていきましょう。使用期限切れの食品や破損した物なども対象です。
これらは客観的に見て不要と判断しやすく、捨てることに慣れていない方でも比較的取り組みやすいでしょう。このような「捨てる経験」を積んでいくと、そのうち頭も体も捨てることに慣れていき、少しずつ物を手放せるようになっていきます。
ストックの多い物は最低限まで減らす
同じ種類の物が複数ある場合は、必要最低限残して思い切って捨ててみましょう。たとえば、ボールペン、鉛筆、消しゴム、ハサミなどの文房具類は同じ種類の物を複数所有していることが多いです。
「ボールペンは2本残す」「ハサミは1本あれば十分」など、自分でルールを設定して上限を超えたら捨てるという行動を繰り返すと効果的です。サイズの小さな物でも、新しく買い足すといつか収納できるスペースがなくなりますので、最初は比較的安価でいつでも購入できる文房具類から始めるとよいでしょう。
使用頻度を基準に捨てる
物を捨てるか残すかの判断基準として「使用頻度」を考えるのも有効な方法です。実際に使っているかどうかを基準にすると、必要な物とそうでない物の区別がつきやすくなります。たとえば、「1年間使用していない物」「今シーズン一度も着ていない洋服」などは今後も使わない可能性が高いです。
プレミア品や高価なものでなければ、必要になったらまた買えばいいと割り切って一度手放してみることも選択肢のひとつです。使用頻度の低いものは、次の片付けのときに必要ないものとして減らしていけるでしょう。
時間と場所を決めて少しずつ取り組む
片付けが苦手な人が家の中の物を一気に片付けよう、一気に物を減らそうと考えると心理的にハードルが上がってしまいます。「1日15分だけ」「寝る前に30分だけ」など時間を区切ると取り組みやすくなります。時間を限定することで片付けが苦手な人でも「少しだけなら頑張れる」と負担を軽減できるでしょう。
また、まずは無理のない範囲から片付け始めることもポイントです。「子供部屋のクローゼットだけ」「引き出し一段だけ」など小さいエリアから少しずつ物を減らしていくのがおすすめです。
捨てられない物への対処法は?

物を捨てられないと悩んでいても、中には思い出の品や本当に大切なものなど、どうしても手放せない物もあるでしょう。そんなときは無理に捨てる必要はありません。
ここでは、捨てられない物と上手に付き合うための対処法をご紹介します。これらの方法を活用すれば、物を大切にしながらも、すっきりとした生活空間を維持することができるでしょう。
残したい物を厳選し、残りは写真に撮っておく
思い出の品は、特に捨てられない物の代表格です。年を重ねるほど思い出の品は増えていくため、すべてを保管しようとすると収納スペースが足りなくなります。そこでおすすめなのが、本当に大切な物だけを厳選して残し、他は写真に撮って記録する方法です。
たとえば、子どもの赤ちゃん時代の服は2、3着だけ選んで保管し、残りは写真に残すといった工夫ができます。写真はデジタルデータとして保存すれば場所を取らず、いつでも思い出を振り返ることができるでしょう。心配な方は、写真をクラウドサービスに保存すれば紛失のリスクも減らせます。
知人や親戚に譲る
親戚や友人・知人に譲ることも、物を有効活用する良い方法です。「捨てるにはもったいないけれど、売るのも面倒」というときに、家族や友人に譲れば、物も活用され、捨てる側も捨てずに済んで気持ちが楽になります。
周りに必要な人が見当たらないときは、SNSや地域のコミュニティを活用して、必要としている人を探すのも一つの手段です。ただし、不要な物を押し付ける形にならないよう、相手の気持ちを慮ることは忘れないようにしましょう。物を譲る際は、相手が本当に必要としているかを確認することが大切です。
トランクルームを利用する
どうしても捨てられない物が多い場合は、トランクルームの利用も検討してみましょう。トランクルームとは自宅の収納の延長として利用できる収納サービスで、捨てたくない物や思い出の品、季節家電など使用時期が限定される物を自宅の外に保管することができます。多くのトランクルームは24時間自分で出し入れができるため、預けたものが急に必要になった場合でも、必要なタイミングでいつでも取り出すことが可能です。
自宅で収納する物が減れば収納スペースを圧迫することなく、快適な生活空間を保つことができるでしょう。料金や条件はサービスによって異なるため、複数の業者を比較検討するのがおすすめです。
物が捨てられず、老後に不安を感じたら「家財整理・生前整理」で備えよう

物がなかなか捨てられず、老後の暮らしに不安を感じる方は、プロのサービスを活用するという選択肢もあります。くらしのセゾンが提供する「遺品整理・生前整理」サービスでは、家財整理でもご利用いただけます。有資格のスタッフが心を込めて大切な家財を整理します。物が多すぎて手が付けられない、大きな荷物の移動が難しい、遠方に住んでいて片付けに行けないといった悩みを持つ方に最適なサービスです。
同サービスの特徴は、経験豊富なスタッフが現地に訪問し、無料調査・無料お見積りを行い、お客様のご予算や状況、ご希望に応じた提案を行う点です。内容にご納得いただいてから作業が開始されるため、安心して任せることができます。
また、家財整理・生前整理だけでなく、空家整理やリフォームにも対応しています。将来の相続問題や実家が空き家になってしまう場合の不動産活用についても相談が可能です。財産整理・家財整理のアドバイスを含めた総合的なサポートが受けられるため、物が捨てられずに悩む方の心強い味方となるでしょう。

おわりに
物を捨てられないことで生活が圧迫される状況は多くの人が抱える悩みです。その背景には、物への強い思い入れや「もったいない」という感情、安心を求める心理など、さまざまな要因が関わっています。時に病気や障害が関係していることもあるため、自分の状況を理解することが大切です。物を減らすコツは、明らかなゴミから始め、使用頻度を基準に判断し、少しずつ取り組むこと。どうしても捨てられない物は写真に撮ったり、トランクルームを活用したりする方法も効果的です。物と上手に付き合うことで、心も空間もすっきりとした快適な生活を取り戻せるでしょう。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。