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コーヒーの健康効果とは?効果的な飲み方と、美味しく続けるためのポイントを紹介

コーヒーの健康効果とは?効果的な飲み方と、美味しく続けるためのポイントを紹介
大山 誠一郎 (全日本コーヒー協会 専務理事)

監修者

全日本コーヒー協会 専務理事

大山 誠一郎

日本におけるコーヒー文化の消費拡大とコーヒー産業の発展を目的として発足。コーヒーに関する正しい知識の啓発や品質向上への取り組みを行い、業界関係者や消費者への情報提供を通じて、豊かなコーヒーライフの推進に努めている。イベントやセミナーの開催、各種統計の発信なども行う。

朝の一杯、仕事中の気分転換、食後のリラックスタイム。私たちの生活に欠かせないコーヒー。近年、その健康効果が注目されていることをご存じでしょうか?「コーヒーは体に良くない」と思われがちですが、実は適量を守って正しく飲むことで、健康や美容に嬉しい効果が期待できるのです。

この記事では、最新の研究結果を基に、コーヒーがもたらす健康効果と、その効果を最大限に引き出すための正しい飲み方を徹底解説します。コーヒー好きの方はもちろん、健康に関心がある方も、ぜひ最後までチェックしてみてください。

コーヒーに含まれる主な健康成分とは

コーヒーに含まれる主な健康成分とは

コーヒーがもたらす心地よさは、香りや味わいだけではありません。実はその一杯には、私たちの身体にうれしい成分がいくつも含まれています。なかでもよく知られているのが「カフェイン」と「ポリフェノール」。集中力を高めたり、血液循環を良くしたりと、日々のコンディションをそっと支えてくれる存在です。この章では、そんなコーヒーの成分が持つはたらきに注目してみましょう。

カフェイン

カフェインは、コーヒーに含まれる最もよく知られた成分の一つで、中枢神経を適度に刺激することで、疲労感の軽減や気分のリフレッシュに効果があるとされています。

近年の研究では、認知機能の維持やパーキンソン病、アルツハイマー型認知症の発症リスクを低下させる可能性も指摘されています。また、代謝を促進し、脂肪の分解を助ける働きもあるため、体重管理や生活習慣病予防への寄与が期待されています。適量であれば、日々の健康維持に役立つ成分です。

ポリフェノール

ポリフェノールは、コーヒーに豊富に含まれる抗酸化成分のひとつで、体内の活性酸素を除去し、細胞の老化や炎症を抑える働きがあります

とくにコーヒーに多く含まれる「クロロゲン酸」は、食後の血糖値の上昇を緩やかにし、糖尿病予防への効果が期待されている成分です。また、動脈硬化や心疾患など生活習慣病のリスクを低下させる可能性もあり、毎日のコーヒー習慣が健康維持に役立つことが注目されています。抗酸化作用により、美容やアンチエイジングの面でも注目されている成分です。

コーヒーがもらたすさまざまな健康効果

コーヒーがもらたすさまざまな健康効果

コーヒーは眠気覚ましやリラックスのためだけの飲み物ではなく、近年の研究では、心臓や脳の健康、肥満予防など、幅広い健康効果が期待できることが明らかになっています。この章では、コーヒーがもたらす多彩な健康メリットを、科学的な知見をもとにわかりやすく解説します。毎日の一杯が、身体にも心にも嬉しい理由を見つけましょう。

がんの予防

コーヒーには、がん細胞の活動を抑える可能性のある成分が含まれていることが、研究によって示唆されています。特に注目されているのは、コーヒーに含まれるポリフェノールに代表される「非栄養素」と呼ばれる成分で、これらは細胞レベルでの酸化や炎症を抑える働きを持っています。

東京農工大学大学院の矢ヶ崎一三(やがさきかずみ)教授の研究によれば、食べ物に含まれる成分には、がんの「一次予防(発症そのものを防ぐ)」だけでなく、「二次予防(進行を抑える)」として働く可能性があることが明らかになりつつあります。特に、コーヒーの香りや苦味に含まれる成分は、肝臓がんの抑制に寄与する可能性があるとされています。

薬とは異なり、食べ物は日常的に摂取されるもの。したがって、コーヒーのように身近な食品ががんの進行を穏やかにする働きを持つならば、日々の食生活の中に意識的に取り入れることで、健康維持に大きく貢献する可能性があるといえます。

参照元:コーヒーの中の成分ががん細胞を抑制する? | COFFEE BREAK

死亡リスクの低下

コーヒーの摂取が全死亡リスクの低下と関連していることは、国立がん研究センターによる大規模な疫学調査「多目的コホート研究(JPHC研究)」において明らかにされています。

この研究では、40~69歳の男女約9万人を対象に、1990年から2011年まで追跡調査が行われました。​その結果、コーヒーを1日3~4杯飲む人は、ほとんど飲まない人に比べて全死亡リスクが24%低いことが示されました。​特に、心疾患、脳血管疾患、呼吸器疾患による死亡リスクが有意に低下しており、心疾患死亡リスクは36%、脳血管疾患死亡リスクは43%、呼吸器疾患死亡リスクは40%それぞれ低下していました。​

このリスク低下の要因として、コーヒーに含まれるポリフェノールの一種であるクロロゲン酸が血糖値や血圧の改善、抗炎症作用を持つことや、カフェインが血管内皮機能の改善や気管支拡張作用を持つことが挙げられています。​これらの成分が相乗的に作用し、循環器系や呼吸器系の健康を支えていると考えられているのです。​

参照元:コーヒーを飲むと、死亡リスクが減る。 | COFFEE BREAK | 全日本コーヒー協会

肥満の抑制

毎日のコーヒー習慣が“脂肪対策”になるかもしれません。近年の研究では、コーヒーの継続的な摂取が肥満の抑制に関与し、特に肝臓に脂肪がたまる「脂肪肝」のリスクを下げる可能性があることが注目されています。

「公益財団法人三越厚生事業団」の船津和夫医師による研究では、健康な男性1,612人を対象に、コーヒーの摂取量と脂肪肝の発症との関連を調査しました。​その結果、肥満傾向にありコーヒーの摂取量が少ない人は、痩せていてコーヒーをよく飲む人に比べて脂肪肝の発症率が高いことが明らかになりました。​

さらに、5年間にわたる追跡調査では、脂肪肝を発症した人は、発症しなかった人に比べてコーヒーの摂取量が減少していたことが確認されました。​これらの結果から、コーヒーの継続的な摂取が脂肪肝の予防に寄与する可能性が示唆されています。​

参照元:毎日飲むコーヒーが、脂肪肝を抑制する。 | COFFEE BREAK

認知機能や学習能力を高める

近年の研究では、コーヒーに含まれる成分が、認知機能や学習能力の向上に効果をもたらす可能性があることが示されています。ポリフェノールの一種「クロロゲン酸」には脳内の酸化ストレスを抑える働きがあり、神経細胞の柔軟性を保つことで記憶力や学習能力の低下を防ぐ可能性があるとされています。

また、慶應義塾大学の田村悦臣名誉教授の研究では、焙煎によって生じる「ピロカテコール」がアルツハイマー病の原因とされるアミロイドβの分解を促すことが確認されました。さらに、筑波大学の繁森英幸教授の研究では「カフェオイルキナ酸」がタンパク質の異常な凝集を抑える効果を持ち、認知症や糖尿病のリスク軽減に役立つ可能性があると報告されています。

これらの成果から、適量のコーヒー摂取は脳の健康維持にも有益と考えられています。

参照元:認知症の予防にはコーヒーがよい? | COFFEE BREAKコーヒーを飲めば認知機能はOK!? | COFFEE BREAK

リラックス効果

コーヒーの香りには、心と体をリラックスさせる作用があり、実際に脳波の測定からもその効果が確認されています。

杏林大学の古賀良彦教授によると、グァテマラやブルーマウンテンなど一部のコーヒー豆の香りを嗅いだ際、脳内にリラックス状態を示す「α波」が増加することが確認されました。これは、香りの成分が嗅覚を通じて大脳辺縁系に作用し、自律神経や感情のバランスを整えるためと考えられています。また、コーヒーの香りは種類によって脳への影響が異なり、グァテマラやブルーマウンテンは落ち着きや癒やしを与えるのに対し、ブラジルやマンデリンは集中力や意欲を高める効果があるとされています。

参照元:香りから生まれる、 「癒し」と「集中力」。| 全日本コーヒー協会

アンチエイジング

​「​東京都健康長寿医療センター研究所」の石神昭人氏の研究では、高齢マウスにコーヒーを与えたところ、老化に関与する「mTOR」という遺伝子の活性が抑制され、エネルギー代謝が改善されることが確認されました。

​この効果はカフェインに限らず、デカフェ(カフェインレス)でも見られたことから、コーヒーに含まれるカフェイン以外の成分が関与していると考えられます。​さらに、コーヒーに含まれるポリフェノールの一種「クロロゲン酸」には抗酸化作用があり、活性酸素の発生を抑えることで、シミやしわなどの肌老化の予防にも寄与するとされています。​また、コーヒーの香りにはリラックス効果があり、ストレス軽減にも役立ちます。​日常的に適量のコーヒーを楽しむことが、心身の若々しさを保つ一助となるかもしれません。

参照元:コーヒーを飲んでアンチエイジング? | COFFEE BREAK

コーヒーの健康効果を引き出す!知っておきたい正しい飲み方

コーヒーの健康効果を引き出す!知っておきたい正しい飲み方

せっかく毎日飲むなら、コーヒーのいいところをしっかり活かしたいもの。カフェインやポリフェノールといった成分が体にうれしい働きをしてくれる一方で、飲み方によってはその効果が十分に得られなかったり、かえって体に負担をかけてしまうことも。ここでは、コーヒーの健康効果を引き出すために意識したいタイミングや量、飲み方の工夫について紹介します。

・飲むタイミングに決まりはある?

基本的にはいつでもOK。ただし、カフェインの覚醒作用があるため、就寝前は避けたほうが無難です。朝の目覚めや、昼のリフレッシュ時に取り入れるとよいでしょう。

・1日に飲んでよい量は?

カップのサイズにもよりますが、一般的なコーヒーカップで1日3〜4杯程度が目安。一度に大量に飲むのではなく、朝・昼・夕と分けて楽しむのが理想的です。

・ブラックのほうが効果が高い?

砂糖やミルクを入れてもコーヒーの健康成分に大きな影響はありませんが、過剰な糖分や脂質摂取にならないよう注意を。子どもにはミルクを加えることで飲みやすくなり、カルシウムなどの栄養面でもプラスになるのでおすすめです。

・ドリップ、インスタントコーヒー、アイスコーヒーなど、コーヒーの種類で効果に差はある?

一般的に、抽出方法や加工の違いによって、含まれるカフェインやポリフェノールの量に多少の差はあります。たとえばドリップはポリフェノールを多く含む傾向があり、インスタントは加工過程で成分がやや減少することもあります。ただし、これらの差は飲み方や量によって調整できる範囲であり、健康効果に明確な優劣があるとはいい切れません。日常的に楽しむ範囲であれば、神経質になる必要はなく、自分にとって無理なく続けられる方法で、コーヒーを取り入れることが何より大切です。

コーヒーを飲む際の注意点

コーヒーを飲む際の注意点

コーヒーは身近で手軽な飲み物ですが、飲み方によっては体に負担をかけてしまうこともあります。健康効果を期待するからこそ、いくつかのポイントを知っておくことが大切です。

・ 過剰摂取に注意を

近年、エナジードリンクの過剰摂取によるカフェイン中毒が問題視されています。コーヒーについても過剰摂取によるリスクはあり、体質によっては不眠や動悸、胃の不快感などを引き起こすこともあるため、1日3〜4杯程度を目安に、飲み過ぎには注意しましょう。

・ 妊娠中・授乳中の方

妊娠中や授乳中は、カフェインが赤ちゃんに影響を及ぼす可能性があるため、摂取量には注意が必要です。コーヒーの風味を楽しみたい方には「デカフェ」がおすすめ。カフェインをほとんど含まないため、安心して飲めるうえ、最近では味も香りも本格的なものが増えてきています。無理に我慢せず、上手に取り入れることでリラックスの時間を楽しめます。

・ 体質や健康状態によって注意を

カフェインに敏感な方は、動悸や不眠、胃の不快感を感じやすいため、自分の体調に合わせて量を調整することが大切です。胃腸が弱い人や不眠気味の方、高血圧の方などは特に注意が必要です。

・ 薬との相互作用にも注意

一部の薬(鉄剤、睡眠導入剤、心疾患系の薬など)は、カフェインと相互作用を起こすことがあります。薬の効果を弱めたり、副作用を強める場合などもあるため、服用中の方は医師や薬剤師に相談のうえ、コーヒーの摂取を調整してください。

楽しく美味しくコーヒーを楽しむためのコツとは?

楽しく美味しくコーヒーを楽しむためのコツとは?

コーヒーの楽しみ方は人それぞれ。豆の種類や焙煎の度合い、抽出方法などを好みに合わせて選ぶことで、自分だけの“お気に入りの一杯”に出合えるかもしれません。そんな一杯があるだけで、朝の始まりや休憩の時間がぐっと心地よく感じられるもの。コーヒーを楽しく習慣づけるためには、無理なく続けられるスタイルを見つけることが大切です。

・お気に入りの豆を見つける

コーヒー豆の種類によって、香りや酸味、コクが大きく異なります。フルーティーな風味が好きな方にはエチオピア、深みのある苦味が好きならインドネシアなど、産地ごとに個性があります。まずはいくつか試してみて、自分の「好き」を探してみましょう。

・好みの挽き具合を見つける

コーヒーの味わいは、豆の挽き方でも変わります粗く挽けばすっきり軽やかに、細かく挽けば濃厚でしっかりした味わいに。ドリップ、フレンチプレス、エスプレッソなど抽出方法に応じて、ベストな挽き方を見つけるのも楽しみのひとつです。

・好みの焙煎具合を見つける

浅煎りは酸味が際立ち、軽やかな風味。深煎りになるほど苦味やコクが強くなります。色や香りの変化を意識しながら、自分の味覚にぴったり合う焙煎具合を見つけてみましょう。

・好みの抽出方法を見つける

ペーパードリップ、フレンチプレス、エスプレッソ、エアロプレスなど、抽出の仕方ひとつで同じ豆でも風味は大きく変わります。器具や時間、手間のかけ方など、自分に合ったスタイルで淹れることが、長く楽しむ秘訣です。

・いつものコーヒーにちょっとアレンジ

ミルクやスパイス、はちみつ、オーツミルクなどを加えて、自分だけのアレンジを楽しむのもおすすめ。季節や気分に合わせてアレンジすることで、飽きずにコーヒー時間を続けられます。

まとめ:コーヒーの健康効果を知って、日々のコーヒーを楽しもう

コーヒーの健康効果を知って、日々のコーヒーを楽しもう

コーヒーの健康効果については、長年の研究でさまざまなことが明らかになってきました。かつては「体に悪い」というイメージを持たれることもありましたが、今では適量を守れば、身体にうれしい働きをしてくれる飲み物として注目されています。豊かな香りにはリラックス効果もあり、毎日の生活にほっとするひとときをもたらしてくれる存在です。

楽しみながら飲むことで、自然と心と身体の調子を整えてくれる。そんなコーヒーの魅力を、ぜひ暮らしの中で感じてみてください。飲みすぎには気をつけながら、自分に合ったペースで取り入れていきましょう。

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

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