白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫が三種の神器といわれてから70年ほど過ぎましたが、今も昔も「家電」は快適な生活を作る必需品であり、近年ではAIやIT技術も加わって、さらなる進化を遂げています。
しかし、買い換えのタイミングがわからない、技術の進歩についていけないなど、「気になるけれどよくわからない」という方も少なくありません。
そこで今回ご登場いただくのが、テレビ朝日系「アメトーーク!」で「家電芸人」として出演するほかYouTubeでも情報発信するなど、広く活躍するかじがや卓哉さん。家電量販店に10年以上勤め、「1,500万円を家電にかけた」と家電好きを自負されています。
最新家電の便利さを、誰にでもわかりやすく伝えるかじがやさんに、おなじみの家電がどれほど進化したのか、どう買えばいいかまでをうかがいました。
《インタビュー》

かじがや卓哉
1982年10月8日生まれ。吉本興業所属の「家電芸人」。YouTubeチャンネル『かじがや電器店』登録者数は70万人を突破した。もともと家電好きで、家電量販店で10年間以上働いた経験から家電やPCにくわしく、家電製品総合アドバイザー資格を所有する。テレビ朝日系「アメトーーク!」の「家電芸人」などに出演。とくに知識が豊富なのは「iPhone」で、iPhone 6購入のためにApple Store銀座に10日間並んだ筋金入りのマニアであり、業界内外を問わず年間1000件以上の相談に乗る。「iPhone芸人かじがや卓哉のスゴいiPhone」シリーズなど著書多数。日本税理士会連合会所属の税理士でもある。
毎日使うものにはお金をかける
かじがやさんは「家電に総額1,500万円かけた」と聞いて驚きました。とくに多くお金をかけた家電は何ですか?
iPhoneなどのガジェット系を除けば「テレビ」ですね。7年くらい前に65インチの画質のいい有機ELテレビを50万円くらいで購入しました。大きな画面で好きなスポーツを見られることでとても満足でき、私生活が充実しています。
大画面テレビは大きなリビング向けのイメージがあるかもしれませんが、テレビの最適視聴距離は「画面の縦の高さ×3」といわれています。65インチテレビでも「縦80.9cm×3=約243cm」ほど離れればいいので、6畳の部屋でも置けるくらいです。
狭い部屋でもそんなに圧迫感はなく、キレイな映像に没入して楽しめます。液晶テレビなら、今55インチで10万円を切っているものもありますし、サブスクで動画を見るのが好きな方は、テレビを大きくするのがオススメです。
今、テレビが軽視されがちですが、動画コンテンツを何でも映せますからね。
テレビ番組だけではなく、今やテレビにはYouTubeやNetflixなども入っているので、何も外付けしなくてもサブスクの動画が楽しめるようになりました。
55~65インチほどになると、映画館の一番後ろの席で見るくらいの画面サイズになります。

「セゾンのくらし大研究」はミドル・シニア世代に向けたメディアですが、かじがやさんがシニアの方に「10万円分の家電を買ってあげる」なら、何を買いますか?
私も実際に実家へプレゼントした「炊飯器」です。「いつもと同じお米なのにおいしい」とすごく喜ばれ、今も使ってくれています。
「ごはんは何で炊いても同じ」というイメージの方も多いと思います。しかし10万円クラスの炊飯器になると、同じお米を炊いているのに「こんなにお米の甘みや食感が変わるんだ」と驚かれるはずです。毎日のごはんが本当においしく変わりますよ。
炊飯器は比較的壊れにくく、10年使えることも多いです。毎日使うものなので高額な炊飯器であっても1回当たりの金額にすれば安いものです。
定価13万ほどの最上位モデルは、市価だと10万円くらいで売っています。「外食よりも家のごはんがおいしくなる」ような機種も多くありますので、象印マホービンやタイガー魔法瓶などの定評あるメーカーの最上位機種を狙うのはおすすめです。

たしかに食の喜びは日々の幸福感を底上げしてくれますね。他にも、実家にプレゼントして喜ばれた家電はありますか。
「掃除機」ですね。スティック型のコードレスタイプをプレゼントしました。
長い間、家庭で一般的だった「キャニスター型」の掃除機はスペースも取りますし、サッと掃除しづらいです。置けば充電できるタイプは「いつでもサッと掃除できるのがありがたい」と言っていましたね。
キャニスター型の方がスティック型より吸引力は高いですが、必ずしも吸引力を重視しなくてもいいケースもあります。最近主流のフローリングの床や畳ならスティック型でも問題ないことが多いですよ。
「ドラム式洗濯機」「食洗機」で自分の時間を作ろう
暮らしの達人たちが、皆さんオススメするのが「ドラム式洗濯機」ですね。
はい、「ドラム式洗濯機」は全世代におすすめです。
- 洗剤を測る
- 洗濯物を入れてボタンを押す
- 取り出して干す
という手間がかかっていたのが、
- 洗濯物を入れてボタンを押す
だけになります。最近は洗剤と柔軟剤を自動投入できるモデルがあって、洗濯物の重さに応じて適量を入れてくれます。自分の時間を作る投資と思えばいいですよ。
20万円以上するものも多いですが、メリットは大きいです。基本的には5年以上使えますので自分の時間が増えます。
シニアの方があまり持っていないけど、持てばすごく便利な家電はありますか?
「食洗機」です。外付けタイプなら賃貸でも設置できますし、例えるなら「洗濯板を使っていた人が、洗濯機を買った」くらいに便利になります。洗剤で全部洗ってくれて乾かすことまでやってくれるので、その分、自分の時間ができますよ。
キッチンの空きスペースに置くコンパクトなタイプなら、一番安くて2~3万円ほどから買えますし、A4サイズくらいの一人暮らし用もありますので、おすすめです。
シニア世代に向けた健康家電も教えていただけますか?
私も日々愛用する「Wi-Fi体重計」がオススメです。体重計に乗ると、体重データがインターネット上に保存され、自分のスマートフォンにも蓄積される商品で、測るたびにメモしなくても良く、日々の体重管理がラクになります。
Bluetoothの体重計だとスマートフォンを毎回近くに用意しなくてはいけないのですが、Wi-Fi体重計ならその必要もありません。体重の増減を継続的に測ると、病気の兆候もキャッチできます。
AIを活用した家電が多く登場していますが、中でもAI機能のすごさを感じさせてくれるような家電は何ですか?
例えば、AIカメラを搭載したパナソニックの冷蔵庫です。冷蔵庫の上にカメラが付いていて、野菜室に野菜を入れるだけでAIカメラが野菜を自動認識してくれます。その精度は高く、「小松菜」と「ほうれん草」まで見分けられるそうです。
さらに野菜ごとの日持ちを計算して「入れた野菜、そろそろ使ったほうがいいよ」などをスマホで教えてくれて、その野菜を使った料理まで提案してくれますよ。
あとは遠隔地にいる両親に使ってもらえば、見守りにも活用できると思います。冷蔵庫を開けたときに撮影される庫内の画像をスマホアプリで確認できるので、「最近は冷蔵庫を開けていないな」などの異変も察知できます。


そんな家電も、今と昔で電気代がかなり違うと聞きますが、特におトクが実感できる家電は何ですか?
家の中で一番電気代がかかる家電は「エアコン」です。10年間で電気代が半分ほどになった例もありますし、リビングなどの長時間使うエアコンなら、買い替えにより浮いた電気代で本体が買えますよ。
シニア世代は物持ちがいいので、数十年前のエアコンを使っている方もいますが、10年過ぎたら、多くの場合もう買い換えた方がいいですね。20年経っていたら絶対変えた方がいいです。
ねらい目は「新商品登場時の型落ちモデル」
シニア世代にとって、家電を買い替えるいいタイミングはどこですか?
家電の買い替えどきは、家電芸人のチュートリアル・徳井(義実)さんが言うように「買いたいときが、買い替えどき」です。ただ安く買う方法は昔から決まっていて、新型商品が発売され、旧型商品と重なるタイミングで、旧型商品の値段が一番下がります。
さらに、ほとんど内容が変わらない新商品もよくあるので、そうなると一つ前のモデルがますますねらい目です。
あまり値下げをしない「iPhone」ですら、新商品が出たときの旧型のiPhoneは値段が下がります。iPhoneも変化が大きい年と小さい年がありますが、変化の小さい年なら一つ前のモデルもねらい目ですね。

かじがやさんの代名詞とも言えるiPhoneですが、最近は「シニアの方こそiPhoneを使った方がいい」という声も聞きますね。
iPhoneは機種を変えても基本的にずっと同じ表示なので慣れやすいですし、iPhoneには画面の表示や文字のサイズを拡大して見やすくする機能もあります。
あと、日本人の半分ほどが使っているそうなので、使い方がわからなければ周りの人に聞きやすいです。Androidは機種によって表示が違いますから、聞いてもわからない場合もありますね。
高齢者向けスマートフォンの操作を聞かれても、知っている若い人は少ないでしょうからね。
あと、iPhoneは安全なんです。iPhoneのアプリはApp Storeから入れるんですけど、アップルのチェックをパスしたものしかダウンロードできませんし。もし危険なアプリがあったら、アップル側がApp Storeから削除してくれます。
そんなiPhoneの中で、シニアにオススメの機種は何ですか?
今は「iPhone 16e」ですね。今のiPhoneでは最安なのに性能がよく、サポート期限もずっと先で、7~8年後くらいまでは問題なく使えると思います。長い目で見れば大きい出費ではないと思います。
怪しいクチコミは「レビュアーの他のクチコミ」をチェック
ここまでオススメの家電をうかがいましたが、あらためて商品の善し悪しを判断するコツを教えていただけますか。
有名なメーカーの方が歴史もありますし、責任を持ってちゃんとした商品を作っていることが多いですが、無名とされるメーカーでもいい商品は多いので、昔も今も「クチコミ」がすごく大事です。
ただし、参考になるクチコミだけでなく、中には「やらせのクチコミ」も混ざっています。例えば、以下のようなクチコミには気をつけてください。
- 日本語表記に誤りや変な言回しが使われている
- 本名があまり使われないサイトで本名を名乗るなど、不自然なハンドルネーム
- 同じジャンルの商品に1つだけ星5つを付けている
また、良いクチコミにも悪いクチコミにも、サクラのレビュアーがいる可能性があります。サクラレビュアーがライバル商品に悪いクチコミを書き、自社の商品に良いクチコミを書くこともあるようです。
そこで、サクラかそうではないかは、書いている人の他の口コミを見ると、ある程度わかります。普通は漫画本や化粧品など、個人で買った物全般にクチコミを書くはずなので、似たような商品ばかりのクチコミを書いているような場合は怪しいです。口コミを参考にしつつ、口コミにだまされないことが大事ですね。

最後に、ミドル・シニア世代が最新家電を買い換えるメリットは何ですか?
新商品を買うと、できることが増える場合もあるんですよ。家電には「ただ道具として使うもの」と「生活が豊かになるもの」があります。少し高くても生活を豊かにする家電を揃えられたら、日々の生活で「ちょっと幸せ」を感じられます。
先ほどの「10万円の炊飯器」もそうですし、2,000円のトースターより、2万円のトースターの方がコンビニで買った食パンでもカフェで食べているおいしさが味わえて、ちょっと幸せな朝ごはんで一日を始められます。
外食はお金がかかりますし、家で同じくらいおいしいものを食べられれば、実はトータルで節約にもなるはずです。ドライヤーも3万円ぐらいのラインを買うと髪がサラサラになって潤うなどの付加価値が付きますよ。
こだわって買った家電が生活を彩ってくれるわけですか。忙しくて時間がない人こそ、必ず使う「家電」にお金をかけるのがベストかもしれませんね。
はい。あと、説明書を読むのが苦手なシニアの方は、その製品の使い方はYouTubeを見ればイメージをつかめるのでおすすめです。「百聞は一見にしかず」です。
(取材・執筆協力=辰井裕紀 撮影=栃久保誠 編集=ノオト)