掃除、洗濯、料理、片付け。毎日繰り返される家事に、気づけば時間も体力も奪われている。そんなふうに感じたことはありませんか?家事は、生活を整えるために必要なもの。でも、完璧を目指しすぎたり、無理にこなそうとすると心の余裕まで失ってしまいます。
そこで、これから紹介するのは「時短家事術」。単に作業を早く終わらせるだけではなく、「家事をもっと楽に、そして楽しくするための工夫や考え方」です。家事の負担を減らし、心にも身体にもゆとりを生み出すヒントをお伝えします。
家事が「しんどい」と感じるのはなぜ?

「家事がしんどい」と感じる瞬間は、誰しも一度は経験があるのではないでしょうか。特に共働き世帯や子育て世代にとっては、日常の中で避けられない負担になっていることも多いはずです。では、なぜ家事はこんなにも私たちを疲れさせるのでしょうか。
家事が辛いと感じる主な5つの理由を時短家事コーディネーターの野間さんに伺いました。
終わりがない「無限家事」
家事には「終わり」がありません。洗濯が終わったと思えば次の洗濯物が出てくる。掃除が終わってもすぐにまた汚れる。そんな「無限ループ」に陥るのが、家事の特徴です。
特にストレスなのは、家事の発生源が自分だけでなく、夫や子どもなど「他者」によっても次々と増えていく点です。自分が片付けても誰かがまた散らかす——この繰り返しが心を削ります。
自由時間の消失
家事に追われていると、自分の可処分時間(自由に使える時間)はどんどん削られます。表面的には休んでいても、頭の中では「次は夕飯の支度」「明日の準備は?」と常に段取りを考えている状態。
独身時代のように「自分のことだけを考えていればいい時間」は極端に少なくなり、精神的にも休まらないのです。
感情労働としての家事
家事には「感情労働」の側面もあります。自分の体調や気分に関係なく、家族の機嫌や体調に合わせて動かなければなりません。例えば仕事で疲れて帰ってきても、子どもが不機嫌なら優しく接し、家族の食事を用意しなければならない。まさに“自分を置き去りにして他人を優先する”仕事であり、それが毎日続くのです。
他人との比較による自己肯定感の低下
SNSなどを通して、他人の「理想的な家庭像」を目にする機会が増えました。「あの人は毎日手作りの夕食を作って、子どもにも丁寧に向き合っていてすごいな……それに比べて私は……」そうして他人と比べて自分を責めてしまい、自己肯定感が下がってしまうケースは少なくありません。しかしSNSに映るのは“その人のベストな一瞬”であることが多く、自分の「普通」と比べて落ち込む必要はないのです。
家事のしんどさは多面的で、ひとりで抱え込むと心も身体もすり減ってしまいます。だからこそ、夫婦間で「私たちなりの家事の最適解」を共有することが大切です。「他の家庭と比べなくても、私たちが納得していればそれでいいよね」という共通認識があるだけで、SNSや外部の情報に振り回されにくくなります。忙しい中でも、ときには立ち止まって、お互いをねぎらい合える関係を築いていきたいですね。
家事の時短を進めるために、最初に意識すべきこと

家事を時短したいと思っても、「どこから始めればいいのかわからない」と感じる方は多いものです。そこで、まずは取りかかりやすいポイントから順を追って進めていくことをおすすめします。
特に重要なのが、「仕組みづくり」です。家事をスムーズに回すには、夫婦や家族でのすり合わせを経て、お互いが無理なく続けられる仕組みを作ることが不可欠です。その仕組みをつくる際のステップは大きく分けて以下の3つです。
家事の可視化(洗い出し)
まずは、自分たちが現在どのような家事をしていて、それがどれくらい負担になっているのかを具体的に見える化します。「家事一覧表」などを使って一度棚卸しをしてみると、どこに時間がかかっているのか、誰がどのくらい担っているのかがわかってきます。
たとえば「洗濯」という家事ひとつをとっても、実はさまざまな工程が含まれています。
- 洗濯物を仕分ける
- ネットに入れる
- 洗濯機を回す
- 干す or 乾燥機にかける
- 畳む
- 仕舞う
これらすべてをひとりが担うのではなく、「ネットに入れる」「ポケットを確認する」「靴下を裏返しておく」などの工程は子どもや夫も十分に担当可能です。そのためにも工程の洗い出しはとても重要です。
野間さん:家事の仕組みづくりにおいて「自分だけが頑張る」という形になってしまうと、いつまで経っても楽にはなりません。だからこそ、「いかに周りを巻き込むか」が重要です。家族みんなで担う意識を持つことで、負担は確実に軽減されます。
取捨選択と効率化
家事を洗い出すと、「これ、実はやらなくてもいいのでは?」という作業が見えてくることもあります。必要のない作業は思い切って減らしたり、まとめて行うなど効率化を進めましょう。
最初から100点満点の仕組みを目指す必要はありません。むしろ、最初からうまくいくことの方が少ないと思った方がいいでしょう。きっと、うまく家事を回している方たちも、何度も試行錯誤を重ねて今の形にたどり着いています。自分たちに合った最適解を見つけるまでには時間がかかるものです。まずは挑戦してみることが大切です。
属人化の解消
「その人じゃないとできない家事」が多いと、家の中の家事が回らなくなります。たとえば、「お母さんしかわからない家事」が多すぎると、お母さんの負担がどんどん増していきます。だからこそ、家事を“見える化”し、誰がやっても回るように“標準化”することが必要です。「食器はどこに片付けるか」「掃除道具はどこにあるか」といったことを共有するだけで、家事に参加しやすくなります。
家族の誰かが「これは自分の仕事じゃない」と思い込んでいると、その仕事は他の誰かが担うことになります。しかし本来、自分が使ったもの・出した汚れは自分で片付けるのが基本。時間の都合で誰かがまとめてやっているだけで、それが“標準”ではないという意識を共有することが大切です。
小さなことからでもOK。「コップを使ったら自分で洗う」「靴下を裏返さず洗濯ネットに入れる」など、自分の分は自分で…という小さな分担から始めることで、日々の負担は大きく減ります。
日々の家事を楽にする“予防”の考え方
毎日の家事を少しでも楽にするためには、「予防」の視点がとても大切です。例えば、整理整頓・片付けを日頃から意識しておくと、物が溢れて家事がしにくい…といった事態を防げます。これもひとつの“仕組み”です。
忙しい平日には、なるべくルーティンで家事が済むようにしておき、時間があるときにリセットをするサイクルを作っていきましょう。
例)「最低限だけをこなす平日」→「週末にたまった家事を一気に片付けてリセット」
このサイクルを整えておくと、家事が大きく乱れることを防げます。
こうした家事の仕組み作りや分担は、子どもたちへの教育にもつながります。「次の人がやりやすいようにしておく」「困らないように事前に準備しておく」という姿勢は、社会に出たときの仕事にも活かせる大事な力です。
忙しくても大丈夫。家事を「自然に回る仕組み」に変える4つのポイント

毎日やっても終わりがない家事。特に仕事や育児、予定が立て込んでいる日々の中では、「少しでも時短できたら…」と感じる方も多いのではないでしょうか。
しかし、ただ単にスピードを上げることだけが“時短”ではありません。
大切なのは、「頑張らなくても自然に回る仕組み」をつくること。
動線の工夫や“ながら家事”、1日の中に余白を持たせる時間の使い方、そして家族と分担しやすくする“見える化”など、いくつかの視点を取り入れるだけで、家事はぐっとラクに、前向きなものに変わっていきます。
動線を意識して効率的に
家事を効率的に進めるために、「動線を意識する」ことはとても重要です。例えば、リビングとキッチンの間に掃除用具が置いてあると、わざわざ取りに行く手間が省けてそのままスムーズに作業に入れます。どの家事も「動きやすい配置」「行き来しやすい動線」を意識することで、時間も労力もぐっと軽減できます。
「ながら家事」で好きなことをしながら手が動いている時間へ
「ながら家事」は、単に効率化だけでなく、家事に対するストレスを減らすという意味でも効果的です。気が進まない家事でも、好きな音楽や学びのコンテンツを組み合わせることで、その時間がむしろ前向きに感じられるようになります。
たとえば、朝に掃除機をかけながら、その日の仕事の段取りを頭の中で整理するなど、身体はルーティンの動作をしていても、頭の中はすでに仕事モードになっているので、家事をしながら自然と1日の準備も整うのです。家事の時間を「ただの作業」として過ごすのではなく、何か他の目的と結びつけて意味ある時間に変えていくことが大切です。
1日のスケジュールに「家事のための余白」を作る
家事がつらく感じるのは、作業量の多さだけが原因ではありません。実は「スケジュールが詰まりすぎていること」も、大きなストレスにつながっています。 仕事や子どもの予定、自分の用事で一日が埋まっていると、その合間に家事をこなすのは本当に大変。予定に追われて、家事が“割り込み作業”になってしまいがちです。だからこそ、意識的に“余白の時間”を確保することが大切なのです。
たとえば、スケジュール帳やスマホのカレンダーに「家事30分」や「自分時間」といったバッファをあらかじめ記入しておくことで、家事が予定の一部として組み込まれ、“後回し”や“突発的な負担”になるのを防げます。
ほんの少しの余裕が、家事のストレスを和らげ、心にゆとりをもたらしてくれるはずです。
仕組みを作ったら「見える化」しておく
せっかく工夫して作った家事の仕組みも、頭の中だけに留めておくと、忙しさの中で忘れてしまったり、続かなくなることもあります。そこでおすすめなのが、「見える化」。習慣化するまでの間は、冷蔵庫に付箋を貼ったり、家事のToDoリストを紙やスマホで見えるところに置いたりと、視覚的に意識できる仕掛けを取り入れてみましょう。
特に家族と家事を分担する場合は、「誰が・いつ・何をするか」を共有できる仕組みが効果的です。共有カレンダーや家族用のタスク管理アプリを使えば、役割が明確になり、無用なストレスや「言わなきゃ伝わらない」を減らすことができます。
このように、家事を“感覚”に頼らず“仕組み”として動かせるようになると、「やらなきゃ」ではなく「自然と身体が動く」状態に。
時間や気持ちに余裕のある毎日をつくるためには、やり方を変える前に、まず“やる環境”を整えることから始めてみてはいかがでしょうか。
週末の仕込みは「未来の自分への優しさ」

平日の家事をラクにするためには、週末など少し時間に余裕があるタイミングで“仕込み”をしておくのがおすすめです。とはいえ、よくいわれる「作り置き」は人によって向き不向きがあります。週末をゆっくり過ごしたい方にとって、作り置きがかえって負担になってしまうこともあるでしょう。
そこで大切なのは「仕込み」の中身よりも、自分と家族の1週間の流れを見通しておくこと。「この日は仕事が忙しそう」「子どもの行事がある」など、あらかじめ予定が立て込みそうな日を把握しておくだけでも、その日の献立や家事のハードルを下げる工夫ができます。
また、「食事・洗濯・掃除」の中でも、もっとも“ごまかしが効かない”のが食事です。洗濯や掃除は少し放置できても、食事だけは毎日必ず必要になります。だからこそ、週末に冷凍食品やレトルトをストックしておくだけでも、いざというときにとても助かるのです。
たとえば、「今日はどうしてもごはんを作れなかった…」というときに、家族が好きなレトルトカレーや冷凍パスタがあるだけで、気持ちに余裕が生まれます。無理して料理をするよりも、「今日はこれでいいや」と割り切れる選択肢を用意しておくことが、長い目で見ても家事のストレスを減らすポイントです。
家族とシェアしておけば罪悪感はなくなる
「手を抜くこと=悪いこと」と感じてしまう方も多いですが、大事なのは“様々な選択肢を共有しておくこと”。「忙しいときはこういう方法でやるね」と家族に伝えておけば、必要以上に気を使うことも、罪悪感を抱くこともありません。
「今日は忙しいからこうするね」「今夜はこれを使うね」とあらかじめ伝えておくだけで、心のゆとりはまったく違ってきます。家事も完璧を目指すのではなく、「できる時に」「できることを」「できる方法で」をベースに考えると、もっとラクに、自然と回るようになります。
外部サービスの活用も正解
家事の中には、どうしても時間がかかり面倒に感じる作業があります。そんなとき、自分や家族だけで抱え込まずに外部サービスを活用することも、効率的で賢い選択です。
例えば、定期的な水回りのリセット掃除をプロの清掃サービスに依頼することで、家族の負担が減り、日常の掃除にかける時間やストレスを大幅に軽減できます。
また、共働きや子育てなどで忙しい家庭には、宅配食材やミールキットを取り入れて、調理時間の短縮や買い物の回数削減にもつなげるのも賢い選択のひとつです。外部の力を借りることは「手抜き」ではなく、「時間と心の余裕を生むための合理的な手段」と捉えることが大切です。
何もかもすべて自分でやろうとせず、できることは任せたり、プロに頼ったりすることで、家事の負担は軽くなり、家族みんなが笑顔で過ごせる時間が増えていきます。多様なサービスを上手に活用して、自分らしい家事スタイルを築いていきましょう。
まとめ

家事は毎日の生活に欠かせないものですが、すべてを無理に完璧にこなす必要はありません。やり方を工夫したり、あえて「やらないこと」を決めることで、家事は「苦手で負担に感じるもの」から「自分らしく無理なく続けられるもの」へと変わっていきます。
“時短家事”とは、単に手を抜くことではなく、時間にも心にもゆとりを持って暮らすための工夫です。完璧を求めすぎず、自分に合った“ラクで心地よい”スタイルを見つけることが、毎日を楽しく過ごす鍵になります。あなたの暮らしにぴったりのやり方をぜひ見つけてください。
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