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【精神科医が監修】心と体の変化を見逃さない!簡易ストレスチェックを知ろう

【精神科医が監修】心と体の変化を見逃さない!簡易ストレスチェックを知ろう
片上 徹也 (心療内科・精神科医)

監修者

心療内科・精神科医

片上 徹也

大阪市北区梅田にある「アウルクリニック」院長。多忙で日中に通院できない方のために、19時〜23時の時間帯の診療を実施。患者との対話を大切にし、自身の脳疾患からの回復経験を活かした共感的な診療を行う。心療内科や内科、皮膚科も含めた幅広い診療に対応し、著書に『夜しか開かない精神科診療所』『超付箋法』などがある。

なんとなく疲れが抜けない。些細なことでイライラする。夜、なかなか眠れない。 そんな「小さな変化」、ストレスが原因かもしれません。 でも、病院に行くほどじゃないし、誰かに相談すると心配されるし…。 そんなときに役立つのが、簡易ストレスチェックです。

本記事では、自宅や職場で手軽にできるセルフチェック方法と、ストレスの兆候を見逃さないためのポイントを精神科医・片上徹也(かたかみてつや)さんに解説していただきました。まずは、あなた自身の「今の心の状態」を知ることから始めてみませんか?

そもそも「ストレス」とは?

そもそも「ストレス」とは?

私たちが日常的に使っている「ストレス」という言葉。なんとなく「つらいもの」「避けたいもの」といったイメージがありますが、そもそもストレスとはどういう状態を指すのでしょうか?

まずはその定義や、どんな種類があるのかを知ることが、正しく向き合う第一歩になります。

ストレスの定義と種類

ストレスとは、外からの刺激(ストレッサー)に対して心や身体が反応する状態のことを指します。仕事、人間関係、環境の変化、将来への不安など、ストレッサーの種類は人によってさまざまです。

また、ストレスは「悪いもの」と思われがちですが、適度なストレスは集中力や行動力を高めることもあります

問題なのは、それが長期間にわたって続いたり、処理しきれずに蓄積してしまったとき。自律神経が乱れ、睡眠や消化、体温調節などに影響を及ぼすほか、心身の不調として現れてくるのです。

気づきにくい身体的・精神的サインを知る

ストレスによる不調は、必ずしもすぐに「ストレスが原因」と自覚できる形では現れません。以下のようなサインが見られたら、注意が必要です。

  • 眠れない、途中で目が覚める
  • 食欲がなくなる、または過食気味になる
  • 頭痛、肩こり、腹痛などの身体的な不調
  • 胃痛、下痢、便秘、蕁麻疹(じんましん)など(特に女性に多い傾向)
  • イライラしやすくなる
  • 気分が落ち込む、やる気が出ない

とくに「イライラ」「不安」「落ち込み」といった状態が24時間ずっと続くような場合は、より深刻な心の病気のサインかもしれません。そうした状態が長引くと、心身に深刻な影響を及ぼす可能性があります。早めに気づき、適切なケアを検討することが大切です。

なぜストレスに早く気づくことが大切なの?

ストレスは、少しずつ心と身体に負担をかけながら蓄積していきます。「なんとなくしんどい」といった小さな違和感を放っておくと、不眠や体調不良、意欲の低下などが慢性化し、回復にも時間がかかるようになります

だからこそ、大きな不調に発展する前の小さなサインの段階で気づき、対処することがとても大切です。
 早めに気づければ、セルフケアや生活習慣の見直しといったシンプルな対処で回復できるケースも多く、心身の不調を未然に防ぐことができます。

また、早期に専門的なサポートを受けることで、治療の効果も得やすく、予後が良くなる可能性も高まります。

あなたは大丈夫?簡易ストレスチェックをやってみよう

あなたは大丈夫?簡易ストレスチェックをやってみよう

「なんとなく疲れやすい」「イライラすることが増えた」そんな小さな変化が、実はストレスのサインかもしれません。

自分では気づきにくい心や身体の不調を見逃さないためにも、まずは現在のストレス状態をチェックしてみましょう。

簡単なセルフチェックを通して、今のあなたのコンディションを客観的に見つめてみることが、ケアの第一歩になります。

さっそく簡易チェックを実践

以下の項目に、最近の自分が「当てはまる」と感じるものがいくつあるか数えてみましょう。

  1. 手足が冷えやすい
  2. 胃がもたれたり、食欲がわかない
  3. お腹が張る・下痢や便秘をしやすい
  4. 頭が重く、すっきりしない日が多い
  5. めまいや立ちくらみを感じることがある
  6. 肩こりや腰痛が続いている
  7. 胸のあたりが苦しくなる・動悸を感じる
  8. 疲れているのに眠れない、または夜中に目が覚める
  9. 朝すっきり起きられない
  10. 十分寝たはずなのに疲れが取れていない
  11. イライラしやすく、怒りっぽくなってきた
  12. 気分が落ち込みやすく、やる気が出ない
  13. 物事への関心や楽しみが薄れてきた
  14. 人と会ったり話したりするのが面倒に感じる
  15. 「なんとなくしんどい」と感じる日が続いている

※精神疾患の診断は医師が面接や医学的評価をもとに総合的に行います。

結果と注意点

0~4個:今のところは大丈夫
 大きなストレスは溜まっていないようです。とはいえ、無理をせず、日々のセルフケアを大切にしましょう。

5~8個:ややストレスが蓄積しているかも
 心や身体が小さなサインを出している可能性があります。生活リズムを見直したり、リラックスできる時間を意識的につくるようにしましょう。

9個以上:ストレスが心身に影響している状態
 疲れや不調を我慢していませんか?セルフケアだけでの回復が難しい場合もあるので、必要に応じて医療機関や専門家への相談を検討してください。

なお、このチェックはあくまで簡易的な目安であり、医学的な診断ではありません。

科学的な正確性には限界がありますが、自分の状態に気づくきっかけとして活用することが大切です。

気になる症状が続く場合は、無理をせず専門機関に相談するようにしましょう。

ストレスサインを見逃さないためのセルフ観察法

ストレスサインを見逃さないためのセルフ観察法

ストレスはある日突然表れるものではなく、日常の中で少しずつ積み重なっていきます。
 「最近ちょっと違うかも?」という小さなサインに気づけるかどうかが、心身の不調を未然に防ぐ鍵です。

自分の状態を定期的に見つめ直す「セルフ観察」を習慣にすることで、ストレスとの付き合い方が大きく変わります。

日常の“小さな変化”に目を向ける

ストレスは「風邪をひきやすくなった」「寝ても疲れが取れない」「食欲に波がある」など、ささいな身体や心の変化として表れます。

日々の中で「あれ?」と感じるような変化を見逃さず、体調や気分の“いつもとの違い”をキャッチする意識をもつことが大切です。

自分のストレス傾向を知ることが予防につながる

ストレスのサインは人によって異なります。「眠れなくなる」「肩がこる」「食欲が落ちる」など、自分にとっての“前触れ”を知っておくことで、早めのセルフケアがしやすくなります。

スマホのメモや日記アプリなどを使って、体調や気分のパターンを簡単に記録するだけでも、十分に役立ちます。

セルフチェックの“習慣化”を

1回のチェックだけで安心せず、定期的に振り返る習慣をつけましょう。週に1回「自分の調子はどう?」と見直すだけでも、ストレスの蓄積に早く気づくことができます。

また、簡易ストレスチェックのようなリストを活用することで、感覚ではなく客観的に状態を把握しやすくなります。

ストレスとうまくつきあう!実践ケアのヒント

ストレスとうまくつきあう!実践ケアのヒント

ストレスを完全になくすことはできませんが、うまくつきあっていくための「実践ケア」は、誰にでも始められます。

大切なのは、難しいことではなく、“自分に合った小さな工夫”を生活に取り入れること。ここでは、日常にすぐ活かせるストレスケアのヒントを紹介します。

手軽にできる!心と身体をゆるめる方法

ストレスを感じたら、まずは身体を動かしてみるのがおすすめ。

深呼吸や軽いストレッチ、散歩、簡単な体操などは、自律神経を整える効果が期待できます。

また、読書や音楽、料理、手芸など、「好きなことに集中する時間」も心をゆるめるのに効果的です。

“がんばりすぎない”ための環境を作る

自分を追い込まないためには、「余白」を持てる環境を意識的に整えることも重要です。

たとえば、仕事や家事のToDoを詰め込みすぎない、スマホやSNSから一時的に距離を置く、時間にゆとりをもったスケジューリングを意識するなど、“やらない選択”もケアのひとつになります。

「話す」「頼る」という選択肢も

つらい気持ちをひとりで抱え続けると、ストレスはさらに強まってしまいます。

信頼できる家族や友人に話す、話しづらいときは専門機関やカウンセラーに相談することも、前に進むための大切なステップ。

「助けを求める」ことは、決して弱さではなく、自分を守るための“行動”です

まとめ「気づくこと」が心と身体を守る第一歩

まとめ「気づくこと」が心と身体を守る第一歩

ストレスは、すべて排除すべきものではありません。適度なストレスは、集中力や意欲を高める要素にもなります。重要なのは、それが過剰になり、心や身体に不調があらわれる前に、早めにサインに気づくことです。

「なんとなく調子が悪い」「最近、無理をしているかも」と感じたときは、そのままにせず、まずは自分の状態を客観的に見つめ直すことから始めましょう。

 セルフケアや生活習慣の見直しだけでリカバリーできる場合も多く、気づきが早ければ早いほど、心身への影響を最小限にとどめることができます

また、ストレスが強くなりすぎる前に、専門機関に相談することも有効な選択肢のひとつです。
 近年では、夜間診療を行うなど、ライフスタイルに合わせた通いやすい医療機関も増えています。「精神科」や「心療内科」と聞くと敷居が高いと感じる方も多いかもしれませんが、深刻になる前に軽い気持ちで相談することが、結果として回復の近道となることも少なくありません。

いつも頑張って完璧を求めるのではなく、場合によっては「ぼちぼちでいい」という視点を忘れずに。無理をせず、自分をいたわることが、ストレスとうまくつきあっていくための第一歩です。

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

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