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実家はいくら?相続税はかかる?…超カンタン!不動産相続における「不動産評価」の方法

実家はいくら?相続税はかかる?…超カンタン!不動産相続における「不動産評価」の方法
山村 暢彦(山村法律事務所 代表弁護士)

執筆者

山村法律事務所 代表弁護士

山村 暢彦

実家の不動産・相続トラブルをきっかけに弁護士を志し、現在も不動産法務に注力。税理士・司法書士等の他士業や不動産会社からの複雑な相続業務の依頼が多数。遺産分割調停・審判に加え、遺言書無効確認訴訟、遺産確認の訴え、財産使い込みの不当利得返還請求訴訟など、相続関連の特殊訴訟の対応件数も豊富。

不動産相続では、相続税の計算や遺産分割協議を行うために、不動産の評価額を把握することが重要です。この記事では、不動産の評価方法や相続税の計算方法について、不動産相続に精通する山村暢彦弁護士がわかりやすく解説します。相続トラブルを回避するために注意すべきポイントとともにみていきましょう。

どのような場合に相続税が発生するのか?

どのような場合に相続税が発生するのか?

まず、すべての相続で相続税が発生するわけではありません。相続税が発生するのは、基礎控除の範囲を超えた相続財産の相続がある場合です。そのため、まずは基礎控除の基本を押さえることが重要です。

■基礎控除の計算式
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

たとえば、配偶者と子ども2人(計3人)が相続人であれば、3,000万円 + 600万円 × 3人=4,800万円が基礎控除となります。つまり、相続財産の合計が4,800万円以下なら相続税はかかりません。

ただし、基礎控除以外にも複雑なルールがあるため、あくまで基礎控除の計算式は目安として利用し、具体的な算定は税理士に算定してもらうほうがよいでしょう。税理士による相続税シミュレーションは、事務所によってまちまちで、簡易なシミュレーションであれば無料相談OKという事務所もあれば、数万円程度の費用が発生する事務所までさまざまです。

次に「なにが相続財産となるか」ですが、一般的には以下のように財産的価値のあるものが相続財産となります。

・現金・預貯金
・不動産(土地・建物)
・株式・投資信託などの金融資産
・自動車・貴金属・骨董品
・生命保険金(※一定の非課税枠あり)

現金・預貯金・不動産・株式等の金融資産は基本的に相続税の対象となるか否かで争いは起こりにくいです。基本的に市場価値を持つ以上、相続税の対象になるものですが、貴金属・骨董品などの動産については、その所在が争いになることも多く、現実に対象とするのは難しいものです。

また、日常用いていた衣服・家財などは、一つひとつに値段をつけることが難しいため、「家財一式10万円」など、ざっくりとした評価額をつけることが多いです。

そして、生命保険については注意が必要です。相続税の対象として考慮するのですが、裁判所で遺産分割を争う際、生命保険は相続財産ではないと基本的に考えます。そのため、税務署との関係では相続財産であっても、裁判所との関係では相続財産ではないという事態が生じますので、保険金には要注意です。

不動産の評価方法の基本、まるわかり

不動産の評価方法の基本、まるわかり

さて、不動産に相続税が発生するのは当然と思われるかもしれませんが、その価格の評価方法はさまざまです。今回は、基本的な評価方法についてお話ししていきます。

(1)路線価

相続税を計算するときに使われる土地の評価方法の一つが「路線価方式」です。

これは、その土地がどの道路に面しているかをもとに、1㎡あたりの価値を決めて、土地全体の評価額を出す方法です。たとえば路線価が「300D」と書いてあれば、その道に面した土地は1㎡あたり30万円と評価されます(単位は「千円」)。

路線価は毎年7月に国税庁が公表していて、インターネットから誰でも無料でみることができ、地図から該当の場所を選ぶだけで、面している道路の路線価がわかります。

【検索方法】 →「国税庁 路線価図」で検索
国税庁『令和6年分 財産評価基準書 路線価図・評価倍率表』
https://www.rosenka.nta.go.jp/

(2)倍率方式

倍率方式は、相続税を計算するときに使う土地の評価方法のひとつです。特に、路線価が設定されていない郊外や農村部の土地で使われる傾向があります。

(3)固定資産税評価

固定資産税評価額は、字の通り固定資産税や都市計画税等を課税するための基準となる評価額です。不動産取得税や登録免許税の課税標準にもなります。

建物における相続税評価額は、固定資産税評価額と基本的に同額と考えておけばよいです。

(4)実勢価格

これまででてきた評価額は相続税評価の際に利用されるものですが、「実勢価格」「時価」と呼ばれるものとのあいだには、ずれが生じることが一般的です。路線価が実勢価格の8割程度、固定資産税評価額が実勢価格の7割程度などとよくいわれます。実際にはエリアや不動産市況によってずれが生じるため、あくまで一つの目安です。

実勢価格自体が確定できないものといいますか、「幅があるもの」という言い方が近いでしょう。「取引事例比較法」という市場の取引事例を参考に評価額を考える方法、「積算評価・再調達価格」などと呼ばれる同じものを再度調達するにはどれだけのお金がかかるのかから算出する評価方法、賃貸収入・利回りから考える評価方法など、さまざまです。これらを組み合わせて実勢価格を算出するのが一般的です。

不動産評価が相続トラブルになりやすい理由

不動産評価が相続トラブルになりやすい理由

さて、不動産評価額は大きく相続税評価額と実勢価格とにわかれます。ここでも生命保険金と同じように、相続税申告には相続税評価額が参照され、裁判所にて遺産分割を行う場合には実勢価格が参照されるという点に注意しましょう。相続の手続きを進めていくと、先に相続税申告の問題が浮上することが多く、具体的な遺産分割を考える場面で相続税評価額と実勢価格が混在してしまい、この評価の差によって紛争が起きることが非常によくあります。

要は、不動産を取得する側は評価額の低い相続税評価額を利用しようとして、代償金を受け取る側は実勢価格にて遺産分割すべきだと主張して、トラブルになってしまうケースです。単純なようにみえてこのような争いは特に多いです。

また近年の不動産相場からすると、路線価が実勢価格の8割程度といわれているため、「路線価÷0.8」をすれば理論的には実勢価格と近くなるはずです。しかし、実際にはそれ以上の「路線価÷0.8」<実勢価格(取引事例比較等による)になってしまうようなケースが多く、やはり評価額の差によってトラブルが起きています。

このように評価額を巡って争いが生じた場合、最終的には不動産鑑定にて決着することが多いです。税務署との兼ね合いで評価額に争いが生じる場合にも不動産鑑定を利用しますし、裁判所の遺産分割調停・審判においても不動産評価額の最終決定の際には不動産鑑定を利用することになります。

基本を押さえたうえで冷静な話し合いを

基本を押さえたうえで冷静な話し合いを

今回は、相続税評価額の基本的な話から、裁判所での紛争との差異を説明してきました。不動産が絡む相続の場合には、早期に税理士へ相談することは必須だと思います。今回お話ししたのも基本中の基本であり、実際の相続税の算出には複雑な計算式や、特例の利用が絡んでくるため、相続税の申告を自分たちだけでやろうとすると、損してしまう可能性が高いです。

そして、相続トラブルを避けるためには、

・相続税で参照する評価額と裁判所で参照する評価額がまったく異なること
・評価額についてはどのような評価方法によるかで大きな差が出てしまうこと

これらを念頭にいれて冷静に話し合うことが大事です。

どうしても不動産は高額であり、その評価額次第で具体的な相続財産の受取金額が変わってきてしまうため、相続人の中には目の色が変わる人もでてきてしまうでしょう。しかしトラブルになると結局、時間とお金がかかって損をすると思います。冷静に、争いを避けるかたちで相続手続きを進めていきましょう。

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

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