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リフォームはどこから着手?プロが教える順序と優先順位の決め方

リフォームはどこから着手?プロが教える順序と優先順位の決め方
宮本 圭 (株式会社シーンデザイン建築設計事務所 代表取締役 一級建築士)

監修者

株式会社シーンデザイン建築設計事務所 代表取締役 一級建築士

宮本 圭

1970年長野県生まれ。ツリーハウスプロジェクト、絵馬プロジェクトなど建築とその周辺にあるものを面白く結びつけていくためのプロジェクトに多数携わる。2009~2018年に有限責任事業組合ボンクラを立ち上げ、善光寺門前にある古い建物に、建築家・編集者・デザイナーが集まり、建物の再生だけでなく、地域やコミュニティの再生も視野に入れた活動を展開。主な設計実績は、長野市施設『森の駅Daizahoushi』、東御市アトリエ・ド・フロマージュ『森のチーズテラス』等。

「家のあちこち、気になるところが…でも、リフォームって何から始めればいいの?」

そんなことに迷いはじめたら、それは住まいを見直す絶好のタイミングです。築年数による老朽化、家族構成の変化、もっと心地よく暮らしたいという想い——リフォームを考える理由は人それぞれ。ですが、限られた予算で満足のいく結果を得るには、専門家の視点による“正しい順番”と“優先順位のつけ方”が欠かせません。

本記事では、一級建築士の宮本さんにお話を伺い、リフォームの基本ステップと、後悔しないための意志決定ポイントをわかりやすくご紹介します。

リフォーム、まずはどこから?基本の流れを把握しよう

リフォーム、まずはどこから?基本の流れを把握しよう

「リフォームをしたいけれど、何から始めればいいの?」と悩んでいませんか?

リフォームをスムーズに進めるためには、全体の流れをあらかじめ把握しておくことが大切です。はじめに、一般的なリフォームのステップをご紹介します。

情報収集と相談

まずは理想の住まい像を描きながら、ネットや雑誌で情報を集めましょう。気になる施工会社やリフォーム業者が見つかったら、気軽に相談を。要望や予算、住まいの悩みなどを伝えることで、具体的な提案をしてもらえます。

現地調査・プラン提案

相談後、担当者が自宅を訪問して現地調査を行います。間取りや設備の状態、構造の確認を行い、要望に沿ったリフォームプランを提案してもらえます。この段階で見積もりも提示されることが一般的です。

契約・工事前準備

プランと見積もりに納得できたら契約を交わします。工事に必要な準備(仮住まいの手配や家具の移動など)もこのタイミングで進めておきましょう。

着工・施工

いよいよ工事がスタート。工期中は業者との連絡を密に取り、進捗を確認することが大切です。疑問や不安があれば、すぐに相談しましょう。

完成・引き渡し

工事が完了したら、担当者と一緒に仕上がりを確認します。問題がなければ引き渡しとなり、新しく生まれ変わった空間での生活がスタートします。

アフターケア

リフォーム後も、万が一の不具合やトラブルに備えて、アフターサポートの内容を確認しておきましょう。信頼できる業者であれば、定期的な点検や迅速な対応をしてくれます。

多くの方は、今住んでいる住宅や親から引き継いだ中古物件のリフォームを希望して相談にいらっしゃいます。「どこを直したいのか」「どんな暮らしがしたいのか」「予算はどのくらいか」など、ご家族で事前に話し合っておくことが大切です。これから中古物件を購入予定の方は、購入後に想定外の制約が発覚することもあるので、 購入前に必ず専門家へ相談するのがおすすめです。

リフォームとリノベーションの違いとは?

リフォームとリノベーション、どちらも住まいを改修する方法ですが、その本質は大きく異なります。

リフォームは、「住まいの部分的な修繕や更新」を指します。いわば、お気に入りの服の「お直し」のようなもの。着心地は変えずに、ボタンを付け替えたり、ほつれを直したりするイメージです。一方、リノベーションは「住まいの価値や構造を大きく変える改修」。古い洋服を全く新しいデザインの服に仕立て直すような「生まれ変わり」と言えるでしょう。

区分リフォームリノベーション
内容設備の交換や内装の更新など、現状の修繕や改善が中心間取りの変更や構造の見直しを含む、価値の再構築
キッチンやトイレの交換、壁紙の張り替え和室2間をLDKに変更、中廊下をなくして回遊動線にする
費用比較的抑えやすい規模によっては新築並みにかかることも

キッチンが古くなってきた、お風呂の調子が悪い、壁紙が黄ばんできた…そんなときはリフォームの出番です。リフォームの魅力は、比較的短期間・低コストで住まいの快適さを取り戻せること。「今の間取りは気に入っているけど、設備だけ新しくしたい」という方に最適です。

専門家が解説!着手すべき優先順位の考え方

専門家が解説!着手すべき優先順位の考え方

せっかくリフォームするなら家全体を一新したい――そう思っても、現実には「予算」という壁があります。そこで重要になるのが優先順位です。見た目を整える前に、毎日の安心と快適を左右する“機能面”から手をつけるべき、その理由と考え方を解説します。

まず確認すべきは「劣化&安全性」「生活への影響」

まず手をつけるのは、家そのものを守る“緊急エリア”です。雨漏りがあれば屋根や外壁の補修、配管が錆びていれば交換、さらにシロアリが見つかれば駆除と防蟻処理——ここを後回しにすると家の傷みはどんどん広がり、修繕費が数倍に跳ね上がります。耐震補強や古い電気配線の更新も同じ。これらは「いざというとき命を守る保険」と割り切り、最優先で対処しましょう。

次のターゲットは、毎日の快適さを直接左右する“水回り”です。トイレや浴室、洗面台は使うたびに劣化を実感しやすい場所。和式トイレを洋式に替えるだけでもストレスは激減し、さらに断熱効果のある床材にすれば冬場のヒヤッと感も解消されます。とはいえグレード次第で費用は大きく跳ね上がり、場合によっては500万円規模になることも。機能と価格、そのバランスを見極める目が必要です。

そして最後に検討するのが“間取り変更”や“大幅なデザイン刷新”です。壁を動かしたり柱を抜いたりする工事は、構造への配慮もあって予算も工期もかさみがち。収納の追加や内装の模様替えは、緊急対応や水回りが片付いてからじっくり計画すればムダや手戻りも防げます。余力がある範囲で、暮らしやすさと美しさを仕上げていく――これが後悔しないリフォームの順番です。

見た目よりも機能性!順番を間違えると後悔の元

壁紙やフローリングを張り替えてから配管に不具合が見つかると、せっかく新品にした内装を再び剥がす羽目に。先に機能、あとでデザイン——この鉄則を軽視すると「二度手間・二重コスト」で後悔します。まずは“隠れる部分”を健全にし、そのうえで仕上げを楽しむのが賢い方法です。

子育て世帯でもシニア世帯でも、「壊れているもの→安全性→水回り→意匠」の順番は共通。家族構成より建物の状態が優先順位を決めるカギになります。

マンションリフォームは “管理組合ルール” がスタートライン

マンション改修は“管理組合ルール”が出発点。まずできる工事・できない工事を確認することが大切です。構造躯体や共有配管は触れず、床材の防音性能や作業時間も規定済みであることを確認することから始めます。次に届出→理事会承認→住戸掲示の申請フローとなります。申請の可決が遅れると工期も延びるので余裕ある日程で進めましょう。

さらに給排水やインターホンは指定業者しか触れない場合があるため、管理会社への確認は必須です。このマンション特有の追加プロセスさえ押さえれば、見積もりチェックから竣工検査までの流れは戸建てと変わりません。

申請の可否や提出書類はマンションごとに千差万別です。工事を急ぐほど、早めの規約確認が時短のカギとなります。まずは管理組合に一報を——これがマンションリフォーム成功の第一歩です。

補助金はあくまでプラスアルファのボーナス

リフォームには補助金が出る場合があります。ただし、予算枠が早期終了したり、自己負担が想定以上に膨らんだりする点に注意が必要です。断熱改修は補助率が高めですが“早い者勝ち”。耐震補強は制度自体はあっても支給額は小さめ。空き家・移住支援やバリアフリー補助は自治体ごとに条件や上限額が大きく異なります。

まずは「補助金がなくても実施すべき工事」を決めたうえで、利用できる制度を確認し、タイミングが合えば申請する——補助金は計画を左右する軸ではなく“おまけ”と考えるのが賢明です。

業者選びと見積もりチェックのポイント

リフォームは人生の中でも高価な買い物です。信頼できる施工会社を選び、適正価格で契約するためには“目利き”が欠かせません。ここでは、業者の選び方から見積もり書の読み解き方、交渉のヒントまでを順序立てて解説します。

プロに目を通してもらうのが最短ルート

まず、見積書が届いたら真っ先に“セカンドオピニオン”を。最近では、無料・有料問わず、オンラインでセカンドオピニオンを依頼できるサービスが増えています。「この数量と単価、妥当ですか?」と尋ねるだけで、図面と見積書のズレや過剰・不足をサッと指摘してくれます。数万円のチェック料で数十万円のムダを防げることも珍しくありません。専門用語の解説や、値下げ交渉の“ツボ”も教えてもらえるので、素人が独学で挑むよりずっと早くて確実です。

工種ごとの単価をざっくり押さえる

次にやるべきは「ざっくり相場」を頭に入れること。たとえば、給排水設備は20〜35万円/箇所。電気設備は4,000〜6,000円/㎡・クロス貼りは1,000〜2,000円/㎡など、こんな目安を知っておくだけで、見積書の「○○工事 一式〇〇円」に対して「面積と単価の内訳を教えてください」と言えるようになります。“数量×単価”の内訳が細かいほど、根拠も値引き余地も見えやすいのです。

設備はショールームで“定価”を確認

キッチンやユニットバス、トイレはメーカーショールームでカタログ価格をチェック。適正価格かどうかの判断や、価格調整、オプションサービスの交渉材料にもなるので、一度は足を運ぶ価値アリです。

後悔しないために!リフォーム完了後のチェックリスト

後悔しないために!リフォーム完了後のチェックリスト

リフォームは「完成しました」で終わりではありません。いざ住み始めてから見つかる不具合や“使いにくさ”は、早めに気づけば簡単に直せても、後になるほど手間も費用も膨らみがち。そこで大切なのが 引き渡し直前の“竣工チェック”


これからご紹介する5つのステップを押さえておけば、細かなキズから動線の不具合まで漏れなく確認できます。

  • キズ・汚れを細部まで確認
    壁紙の継ぎ目、塗装のムラ、床の小キズ──まずは目で眺め、次に手でなぞって違和感を探します。小さな汚れでも遠慮せずマーキングしておくのがコツ。
  • 建具&設備は“全数”動かす
    ドアは開閉の軽さなどの建付け、収納レールは引き出し切るまで滑らかか、水栓は吐水・止水で漏れがないか。面倒でも一つ残らずテストしておけば安心です。
  • 図面と照合しながら現物チェック
    打ち合わせたコンセントの位置、棚の高さ、スイッチの数──図面片手に「ここにあるはず」を一つずつ確認。図面違いは早期発見が鉄則。
  •  家具を想定して生活動線をイメージ
    ソファや冷蔵庫を置く位置を想定して移動。扉や引き出しがぶつかる、通路が狭い…など実際の動きで気付く不便を洗い出します。
  • 気になることは即その場で質問
    「直せる?追加費用は?」と施工側へ即確認。理由を聞けば納得でき、修正が必要なら早いほど手間もコストも低く済みます。

立ち合いの際には、設計士も同行します。プロの厳しい目と施主の生活目線を合わせれば、「完成後のモヤモヤ…」を限りなくゼロにできます。遠慮は禁物――気づいた瞬間に声を上げることが、後悔しないリフォームの合言葉です。

まとめ:住まいに合った最適なリフォームで理想の暮らしへ

まとめ:住まいに合った最適なリフォームで理想の暮らしへ

リフォームを上手に進めるコツは、「何を優先するか」と「正しい情報を集めること」にあります。まずは家の安全を守る工事(構造補強や配管の更新など)から取りかかり、そのあとで水回りや断熱を整えて毎日の快適さを高めていきましょう。

業者選びは、専門家に見積もりをチェックしてもらったり、ショールームで実物を確かめたりして、価格と品質のバランスを見極めましょう。最後の竣工チェックでは、図面と見比べながら気になるところをその場で相談すれば、後悔のタネをぐっと減らせます。限られた予算でも効果を最大化して、毎日がもっとやさしく、もっと心地よくなる住まいをつくりましょう。

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

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