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新しい資金調達のかたち!融資だけに頼らない、共感を資金に変えるクラウドファンディング

新しい資金調達のかたち!融資だけに頼らない、共感を資金に変えるクラウドファンディング
辻 哲弥(税理士・公認会計士)

執筆者

税理士・公認会計士

辻 哲弥

有限責任監査法人トーマツにて会計監査業務に従事。23歳時、「日本一若い会計事務所」として”ACLEAN(アクリーン)会計事務所”を開業。スタートアップ、マイクロ法人を中心とした税務業務や補助金・融資等の資金調達支援、経理を対象とした業務改善コンサルティングを展開。 2023年に同事務所を”税理士法人グランサーズ”と統合。同法人の代表に就任。中小企業の税務顧問対応、内部統制構築支援、組織再編支援、事業承継・企業のクラウドサービス活用と経理効率化サービスも提供。また、自身のボディメイクの経験を活かした健康経営に関するコンサルティングも得意としている。YouTube「社長の資産防衛チャンネル」絶賛配信中。

近年、インターネットの普及により新たな資金調達手段として注目されている「クラウドファンディング」。不特定多数の個人や企業からインターネットを通じて小口の資金を集める仕組みであり、従来の銀行や投資家に頼らず、「共感や応援を資金に変える」新しい資金調達モデルです。本記事では、公認会計士・税理士の立場から、クラウドファンディングの種類や選び方、メリット・デメリット、実践的な活用ポイントを解説します。

クラウドファンディングの種類と特徴

クラウドファンディングの種類と特徴

クラウドファンディングと一口に言っても、資金の集め方や支援者へのリターン内容によって、いくつかのタイプに分かれます。それぞれの特徴を押さえておきましょう。

(1)購入型(リターン型)クラウドファンディング

支援者に対して、商品やサービス、体験などのリターンを提供するタイプです。

・新商品開発や先行販売プロジェクトによく使われる
・実質「先行予約販売」として機能し、事前に市場反応を確認できる
・CAMPFIRE、Makuake、READYFORなどのプラットフォームが代表的

(2)寄付型クラウドファンディング

支援者からの資金提供に対して、金銭的なリターンを求めないタイプです。

・社会貢献活動、地域支援、災害復興など、公益性の高いプロジェクトに向いている
・ふるさと納税型やNPO法人による資金調達などでも活用されています

(3)融資型(貸付型)クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)

インターネット上で小口の資金を募り、融資という形で企業や事業者に貸し付けるタイプです。

・投資家に対しては、利息収入や元本返済がリターンとなる
・利用企業側は、銀行融資よりも柔軟な調達が可能
・maneo、クラウドバンク、SBIソーシャルレンディングなどが主なプラットフォームです

(4)投資型(株式投資型)クラウドファンディング

未上場企業が株式を発行し、インターネットを通じて不特定多数から出資を募るタイプです。

・投資家は、株式の値上がりや将来の配当・キャピタルゲインを狙う
・成長ベンチャー企業などが資本調達手段として利用
・FUNDINNO、Unicornなどが主なプラットフォームです

クラウドファンディングの選び方

クラウドファンディングの選び方

クラウドファンディングを検討する際は、自社の事業内容や資金ニーズに合ったタイプを選ぶことが重要です。以下の観点を参考にしてみましょう。

(1)目的に応じたタイプ選択

  • 新商品開発・先行販売→購入型(リターン型)
  • 社会貢献、地域支援→寄付型
  • 事業資金調達、借入代替→融資型(ソーシャルレンディング)
  • ベンチャー資本調達、株式発行→投資型(株式投資型)

(2)調達希望金額・調達スピード

  • 数十万円~数百万円:購入型・寄付型が比較的取り組みやすい
  • 数百万円~数千万円:融資型・投資型が選択肢になり得る

なお、プロジェクト公開から資金が集まるまでには1~3ヵ月程度が一般的ですが、準備期間も含めると全体で数ヵ月以上かかる場合が多いです。

(3)プラットフォーム選定

クラウドファンディングはプラットフォーム選びも成果を左右します。

・利用者数や集客力
・得意ジャンルや実績
・掲載費用や手数料率

これらを事前に比較して、自社のプロジェクトに最適なプラットフォームを選定することが重要です。

クラウドファンディングのメリット・デメリット

クラウドファンディングのメリット・デメリット

クラウドファンディングには、資金調達以外にもさまざまなメリットがあります。一方で、注意すべきリスクやデメリットも存在します。事前に両面を理解しておきましょう。

〈メリット〉

・返済や出資比率の調整をせずに資金調達できる(購入型・寄付型)
・資金調達と同時に市場テストやファン獲得ができる
・プロジェクトを広くPRすることで認知度を高められる
・銀行融資に頼らず資金調達できる
・資金の使い道を明確に説明することで共感・応援を得られる

〈デメリット・注意点〉

・プロジェクトの公開や広報活動に手間やコストがかかる
・目標金額に達しなければ不成立となるリスクがある(All or Nothing方式の場合)
・リターン設定や配送対応など、運営負担が増える場合がある
・成功しても、手数料(概ね10%前後)が差し引かれる
・計画通りにリターンを提供できない場合、支援者の信頼を損なうリスクがある

クラウドファンディング活用のポイント

クラウドファンディング活用のポイント

クラウドファンディングを成功させるために重要なのは、「資金を集めること」だけに意識を向けるのではなく、事業全体をどう設計し、どのように共感を集めていくかという総合的なプロジェクト設計です。

そのために押さえるべき、具体的な3つのポイントを解説します。

(1)共感を呼ぶ「ストーリー設計」

支援者は、単に商品やサービスそのものだけではなく、「なぜその事業に挑戦するのか」という背景や想いに共感して支援を決めるケースがほとんどです。

・誰のために、何を実現したいのか
・どんな社会課題を解決し、未来にどんな価値を届けたいのか

こうしたストーリーを具体的かつ情熱を込めて丁寧に伝えることが、支援者の心を動かし、資金調達成功への第一歩となります。

「共感を集める力」こそが、クラウドファンディングにおける最大の武器と言えるでしょう。

(2)実現可能な「目標設定」と「リターン設計」

支援者が安心して支援できるようにするためには、現実的で信頼感のあるプロジェクト設計が不可欠です。

・達成可能な目標金額を設定すること
・支援したくなる魅力的なリターン内容を用意すること
・支援者目線に立った価格設定や数量設定を行うこと

これらをバランスよく設計することで、支援のハードルを下げ、より多くの共感や参加を引き出すことができます。支援者がリターンを受け取るまでの流れを具体的にイメージできるような設計が求められます。

(3)事前広報・SNS活用で「支援の土台」をつくる

クラウドファンディングは、公開すれば自然に支援が集まるものではありません。
成功するプロジェクトの多くは、事前から周到に広報・告知を重ねているのが特徴です。

・SNSやメールマガジンを活用した情報発信
・既存顧客や取引先、関係者への事前周知
・メディアやプレスリリースによる認知拡大

こうした取り組みを、公開前から計画的に行い、公開後も継続的に発信し続けることが、支援者を集めるための土台となります。「知ってもらう」「興味を持ってもらう」「応援したくなる」までの仕掛けづくりが、クラウドファンディング成功のポイントです。

まとめ

クラウドファンディングは、単なる資金調達手段ではなく、「共感」「応援」「認知拡大」「ファン獲得」を同時に実現できる新しい経営ツールです。

・銀行融資に依存しない資金調達の選択肢として
・新商品開発や地域貢献など、想いを届ける挑戦として
・市場の反応をダイレクトに確かめるテストマーケティングの場として

クラウドファンディングは、資金調達を超えた価値を提供してくれます。

 公認会計士・税理士として、多くの企業の成長を支援してきた立場からも、「資金調達=銀行や投資家だけ」という固定観念にとらわれず、クラウドファンディングという新たな選択肢をぜひ活用してほしいと考えています。

資金だけでなく「共感」を集めて、あなたの挑戦を次のステージへ。クラウドファンディングの可能性を、戦略的に活用していきましょう。

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

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