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民泊開業に必要な資金はいくら?内訳や失敗しない資金調達方法を徹底解説

民泊開業に必要な資金はいくら?内訳や失敗しない資金調達方法を徹底解説
堀乃 けいか

執筆者

堀乃 けいか

商業高校を卒業後、大学・大学院に進学。商業科教員として就職した後、高校から教員時代の知識や経験をもとに、2020年よりWebライターとして活動開始。2023年、2級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。元々持っていた簿記や法律の知識と掛け合わせ、正確な情報をもとにした記事を書ける金融ライターとして活動中。暗号資産や投資信託への投資も行っている。

民泊を始めてみたいと考えている方の中には「民泊を開業するには資金がいくら必要なのだろう?」「初期費用はどれだけかかるの?」と、資金面で不安を抱えているのではないでしょうか。

実際に民泊を始めるとまとまった資金が必要なため、あらかじめ把握しておかないと運営開始までに時間を要してしまいます。

開業資金について把握しておくことで、運営戦略を立てられたり資金調達方法を模索できたりするため、スムーズな開業が可能です。

本記事では、民泊開業の資金面について、必要な資金の相場から具体的な内訳、資金調達方法まで網羅して解説します。

本記事を読み終える頃には、民泊に必要な資金の全体像が明確になっているでしょう。民泊事業を始めるにあたり資金面で不安を持っている方は、ぜひご一読ください。

不動産投資ローン
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民泊開業資金の相場

民泊開業資金の相場

民泊を開業するときには、主に以下4種類の費用が必要です。

費用名詳細
物件取得費用物件の購入や賃貸にかかる費用
改装・リフォーム費用内装や設備の改修に必要な費用
備品購入費用家具や家電、インテリアなどの購入費用
許可申請費用行政への申請や各種手続きにかかる費用

これら初期費用の相場は、民泊の規模により変動します。自宅の一部やマンションの一室を活用して民泊を営む場合の目安となる費用は、50万円〜155万円程度です。

複数の部屋を民泊用にしたり、マンション1棟や一軒家をすべて民泊に活用したりする場合は、400万円〜1,000万円程度かかります。それぞれの具体的な費用相場については、次項「民泊開業にかかる初期費用の目安」で改めて解説します。

民泊を開業する際は上記の「初期費用」だけでなく、開業後の運営を継続するための「運転資金」も必要です。清掃費や広告宣伝費、消耗品の購入やクリーニング費用が運転資金に該当します。賃貸で民泊を行う場合は、家賃も運転資金の一部です。

民泊開業にかかる初期費用の目安

民泊開業にかかる初期費用の目安

民泊開業にかかる初期費用の目安を、以下5つの項目ごとに見ていきましょう。

  1. 物件取得費用
  2. 改装・リフォーム費用
  3. 各種備品の購入費用
  4. 許可申請や行政手続きにかかる費用
  5. 広告宣伝費

項目別の費用相場や計算例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

物件取得費用

物件取得費用は、物件の取得手段により大きく変わります。次のパターン別に見ていきましょう。

物件を新規で購入した場合、東京都内のワンルームマンションで多く見られるのは2,000万円台の価格です。地方であれば、500万円を切る物件も珍しくありません。

物件を取得する際は、仲介手数料もかかります。仲介手数料は物件価格に応じて、下表の料率をかけて算出します。算出した金額を合計した金額が、仲介手数料の上限です。

金額料率
200万円以下5.5%
200万円超~400万円以下4.4%
400万円超3.3%

例えば2,000万円の物件を購入した場合、以下の計算で上限を算出します。

金額料率手数料
200万円以下5.5%11万円 (=200万円 × 5.5%)
200万円超~400万円以下4.4%8.8万円
{=(400万円-200万円) × 4.4%}
400万円超3.3%52.8万円
{(2,000万円 ー 400万円) × 3.3%}

つまり、2,000万円の物件を購入したときにおける仲介手数料の上限は、72.6万円(=11万円 + 8.8万円 + 52.8万円)です。なお、物件価格が800万円以下であった場合は、上限額は「30万円 × 1.1倍(税込)」となります。

参照元:

消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ|国土交通省

自分で所有している既存物件を活用する際は、改装費用として1棟あたり300万円〜750万円程度は必要です。併せて、用途変更手続きの費用が80万円〜200万円ほどかかります。

賃貸の場合、必要な費用は下表のとおりで、家賃に応じて大きく変動します。

費用内訳
敷金家賃の1~2ヵ月分
礼金家賃の1~2ヵ月分
前家賃家賃1ヵ月分
仲介手数料家賃0.5ヵ月~1ヵ月分 × 1.1倍

民泊に使う物件が自宅もしくは自己所有物件の場合は、物件取得費用を抑えられる反面、改装費用が発生するかもしれません。賃貸物件を利用する際は、家賃や保証金が必要です。一方で、物件取得費用や改装費用といった初期投資を抑えられる場合もあります。

また、都会よりも地方のほうが、家賃や初期費用を安く抑えやすい傾向が見られます。都会のワンルームマンションを借りる金額で、地方では戸建てを借りられる場合もあるくらいです。

民泊での物件購入については、「民泊物件の購入の仕方は?物件選びのポイントや購入する際の注意点を解説」の記事も、併せてお読みください。

改装・リフォーム費用

民泊の開業資金として、改装・リフォーム費用も必須です。改装・リフォームの内容によっては、500万から1,000万円を超えることも珍しくありません。

民泊用物件に改修するにあたり、以下の箇所を中心にリフォームを行います。

  • キッチン
  • トイレ・浴室
  • 洗面所
  • 寝室
  • 配管工事
  • 部屋や玄関
  • 外壁内壁

上記の他にも鍵をつけたり防犯カメラを設置したりといった、セキュリティを強化するためのリフォームも必要となるでしょう。改装・リフォーム費用の平均は、リフォームの内容や民泊物件の種別で大きく変わります。

【リフォームや民泊物件の種別による改装・リフォーム費用の違い】

リフォーム種別民泊物件の種別費用
フルリフォームマンション300万円~700万円
戸建て1,000万円~1,500万円
部分的な改装マンション10万円~220万円
戸建て10万円~950万円

部分的な改装よりもフルリフォーム、そして、マンションよりも戸建てのほうが改装・リフォーム費用は高くなります

各種備品の購入費用

民泊を開業する際は、各種備品の購入費用も資金に含めましょう。以下の備品は優先的に揃える必要があります。

  • 家具、家電、インテリア
  • 消耗品(シーツや食器など)
  • 消防設備(消火器、自動火災報知器、誘導灯)
  • Wi-Fi

備品の購入費用は、およそ20万円~100万円程度となります。

許可申請や行政手続きにかかる費用

民泊の許可申請や行政手続きにかかる費用も必要です。民泊を開業する際に必要な手続きと費用について、以下の表にまとめました。

項目費用
旅館業営業許可書の取得2万円前後
水質検査5,000円~20万円程度
登記や建物図面の作成、申請・行政書士に依頼:20万円~40万円程度
・自分で実施:5,000円~1万円程度

旅館業営業許可書は、簡易宿泊所として民泊を営む場合のみ必須です。地域により異なるものの、費用はだいたい2万円前後となります。水質検査は項目により費用が異なり、最低限であれば5,000円程度で済むものの、細かく検査する場合は20万円前後はかかります。

また、登記や建物図面の作成・申請を行政書士に依頼した場合、依頼費用込みで20万円〜40万円程度が必要です。自分で行えば5,000円〜1万円程度で済むものの、非常に複雑な書類であり手間がかかるため、専門家に任せたほうがスムーズに進められるでしょう。

広告宣伝費

民泊の開業資金として、自分の施設を宣伝するための広告宣伝費も忘れてはいけません。以下のような宣伝方法を想定しておきましょう。

  • インターネットでの広告
  • SNSでのプロモーション
  • チラシ制作
  • ホームページ作成
  • 広告やプロモーション用の写真撮影
  • 民泊のポータルサイトへの掲載

合計すると、およそ1万円〜10万円程度はかかります。

民泊開業後にかかる運転資金の目安

民泊開業後にかかる運転資金の目安

民泊に必要なのは、開業時の資金だけではありません。開業した後も、運転資金=ランニングコストがかかります。運転資金のトータルは、月額およそ15万円〜30万円程度です。

観光庁が2021年に行った調査では、民泊を営む事業者のランニングコスト(固定費)の平均は182万円との結果が出ています。

参照元:

住宅宿泊事業の実態調査(2022年3月)|観光庁観光産業課 民泊業務適正化指導室

下表は、月額の運転資金を細分化した内訳です。年間で支払う資金もあわせて記載しています。

費用かかる資金の目安(月額)
清掃費15,000円~5万円
水道光熱費2万円~5万円
消耗品費1万円~3万円
通信費5,000円~8,000円
広告宣伝費売上の10~15%
※民泊サイトへの掲載費用や手数料
保険料5万円~10万円/年
固定資産税10万円~20万円/年
修繕費1万円程度

民泊開業資金の調達方法5選

民泊開業資金の調達方法5選

民泊を開業するためには資金が必須であり、場合によっては高額になることもあります。民泊開業資金の調達方法は、主に以下の5つです。

  1. 自己資金
  2. 金融機関からの融資
  3. 補助金・助成金
  4. クラウドファンディング
  5. 家族や友人・知人からの借り入れ

調達のしやすさやメリット・デメリットが異なるため、ひとつずつ見ていきましょう。

自己資金

自己資金は自分の預貯金から出す資金で、多いと融資も受けやすくなります。後述する融資と違って金利もかからないため、総支払額を安く抑えられる点もメリットといえます。

とはいえ、リフォームや物件購入などで1,000万円超の費用がかかるケースもあるため、自己資金ですべて賄うのは現実的ではありません。

開業資金として自己資金は重要であるものの、実際には後述する金融機関からの融資や補助金・助成金などの方法もあわせて活用するケースが多いでしょう。

金融機関からの融資

自己資金で賄えない場合は、金融機関からの融資により資金を調達することになります。金利が発生するものの、融資を受けることでいち早く開業までたどり着けます。

民泊で金融機関から融資を受ける場合、主なものは以下の3つです。

  • 民泊専用ローン
  • 日本政策金融公庫の融資
  • 不動産投資ローン

民泊専用ローンは、L&Fアセットファイナンスによる「民泊事業ローン」と東急不動産ホールディングス(HD)とオリエントコーポレーション(オリコ)、空き家活用株式会社の3社による業務提携で行われる「ホームシェアリングローン」の2種類です。

日本政策金融公庫の融資は「新規開業融資」が対象となります。

不動産投資ローンは多くの金融機関がサービスを提供しています。

例えばセゾンファンデックスの「不動産投資ローン」であれば、「年収が基準に満たないため銀行ローンが組めない」「自営業で審査が通らない」などの場合でも融資実績が多数あります。資金調達にお困りの方は、選択肢のひとつとしてご検討ください。

なお、民泊で利用できるローンについては「民泊で使えるローンとは?住宅ローンとの違いや活用のポイントを徹底解説」の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧いただくと理解がより深まるでしょう。

補助金・助成金

民泊の開業にあたっては、国や自治体でさまざまな補助金や助成金制度があります。2024年には、下表のような補助金制度が実施されました。

補助金名小規模事業者持続化補助金事業再構築補助金宿泊施設サステナビリティ強化支援事業
対象者商工会議所(市や区)商工会(町村)の管轄地域で事業を営んでいる小規模事業者等新市場進出や事業・業種転換など思い切った事業再構築に意欲を有する、中小企業等サステナビリティに配慮した宿泊施設の設置・管理者
補助内容販路開拓に必要な経費の一部・建物費
・機械装置やシステム構築費
・技術導入費
・外注費
・広告宣伝費
・販売促進費
・研修費 など
訪日外国人旅行者の受け入れに向け、旅館・ホテル等の宿泊施設が実施するサステナビリティの向上に関する取組
補助上限額通常枠:50万円
それ以外:200万円
通常類型:1,500万円 GX進出類型:3,000万円
※従業員数20名以下の場合
1,000万円
補助率費用全体の3分の2まで費用全体の2分の1まで費用全体の2分の1まで

参照元:

小規模事業者持続化補助金|商工会議所地区 小規模事業者持続化補助金事務局小規模事業者持続化補助金【一般型】|全国商工会連合会事業再構築補助金|事業再構築補助金事務局宿泊施設サステナビリティ強化支援事業|観光庁

自治体でも、民泊に対する補助金が複数あります。2025年には、以下のような補助金がありました。

自治体名補助金名補助率補助上限額
大阪府大阪府特区民泊施設の環境整備促進事業対象経費の2分の11施設につき40万円
鳥取県倉吉市倉吉市農山村地域の魅力ある滞在施設整備事業費補助金対象経費の2分の130万円
福岡県福岡市福岡市宿泊事業者受入環境充実支援補助金対象経費の2分の110万円

参照元:

令和7年度 大阪府特区民泊施設の環境整備促進事業|大阪府倉吉市農山村地域の魅力ある滞在施設整備事業費補助金|倉吉市【民泊用】 令和7年度 福岡市宿泊事業者受入環境充実支援補助金|福岡市

新規に事業を開始する際、民泊に限らず、国や自治体の補助金や助成金制度を利用できる可能性があります。ただし、地域ごとに条件が異なり、起業・創業に関する講義の受講が必要な場合もあるため、詳しくは各自治体のホームページをご確認ください。

クラウドファンディング

民泊の開業資金を集める方法のひとつに、クラウドファンディングがあります。

クラウドファンディングとは、不特定多数の人々がプロジェクトの主催者に対して資金を提供する仕組みで、資金調達だけでなく宣伝効果も期待できます。実際に、クラウドファンディングで民泊の開業資金を集めた事例もあります。

ただし、クラウドファンディングはサイトに掲載されただけでお金が集まるわけではありません。成功させるためには、SNSやブログなどを活用し、積極的に支援を呼びかけることが重要です。

また、クラウドファンディングでは、出資者の方にとって魅力的なリターンを用意することで、「出資してみたい」「このリターンが欲しい」と思ってもらえれば、より多くの支援を得られる可能性が高まります。

民泊の開業資金を家族や友人・知人から借りる方法もあります。この方法のメリットは、銀行や金融機関を利用する場合と異なり、書類作成や審査などの手続きが不要なため、短期間で資金を調達できる点にあります。

しかし、たとえ親しい間柄であっても、借りたお金を返さないとトラブルに発展する可能性があります。金銭トラブルを避けるためには、以下のような対策を講じることが重要です。

  • 借用書を作成し、借入額・返済期限・利息の有無を明確にする
  • 口約束ではなく、書面で記録を残す
  • 返済計画を立て、確実に返済を行う

家族や友人・知人との信頼関係を損なわないためにも、責任を持って借り入れを管理しましょう。

家族や友人・知人からの借り入れ

民泊の開業資金を家族や友人・知人から借りる方法もあります。この方法のメリットは、銀行や金融機関を利用する場合と異なり、書類作成や審査などの手続きが不要なため、短期間で資金を調達できる点にあります。

しかし、たとえ親しい間柄であっても、借りたお金を返さないことはトラブルに発展する可能性があります。金銭トラブルを起こさないよう、以下のようにきちんと対策を講じることが必須となります。

  • 借用書を作成し、借入額・返済期限・利息の有無を明確にする
  • 返済計画を立て、確実に返済を行う

家族や友人・知人との信頼関係を損なわないためにも、責任を持って借り入れを管理しましょう。

民泊開業には資金計画が必須!資金計画の作り方

民泊開業には資金計画が必須!資金計画の作り方

民泊ビジネスは初期投資や運営コストが多岐にわたるため、事前に正確な資金計画を立てることが不可欠です。資金計画が不十分であった場合は、民泊が継続できなくなったり資金繰りが困難になってしまったりするリスクが高まります。

ここからは、民泊事業の成功に欠かせない「資金計画」の作り方を順番に解説します。

  1. 事業計画書と資金繰り表を作成する
  2. 収支予測を立てる
  3. 収支シミュレーションを実施する
  4. 将来起こりうるリスクも想定しておく

ひとつずつ見ていきましょう。

事業計画書と資金繰り表を作成する

民泊を開業する際は、まず事業計画書を作成します。

事業計画書は、金融機関への融資申請や、国・自治体の補助金・助成金制度の手続きに必要な書類です。

これを作成することで、「なぜ民泊を始めようとしたのか」「どのような戦略で利益を出していくのか」といった点を明確に示せるため、融資や支援を受けやすくなります。

さらに、自分たちの事業方針を整理し、運営に迷った際の指針として活用できるメリットもあります。

事業計画書には、一般的に以下の内容を記載します。(インターネットにあるひな形を活用可能)。

  • 創業の動機・目的
  • 職歴・事業実績
  • 取扱商品・サービス
  • 取引先・取引関係
  • 従業員
  • 借り入れの状況
  • 必要な資金と調達方法
  • 事業の見通し

事業計画書と併せて、資金面の計画書にあたる「資金繰り表」を作成しましょう。資金繰り表とは、一定期間のすべての現金収入と現金支出を分類・集計し、現金収支の動きや現金過不足の実態などを把握できる表です。

この表を作成することで、事業の実務面と資金面の両方を計画的に管理できるようになります。また、事業計画書と資金繰り表は、事業の進捗に応じて定期的に更新することで、より効果的に活用できます。

民泊事業を円滑に進めるためにも、これらの書類を整備し、計画的な運営を心がけましょう。

収支予測を立てる

作成した資金繰り表に基づき、想定される収入と支出を算出します。民泊における、収入と支出それぞれの算出方法を見ていきましょう。

収入

収入の予測は、以下の流れで計算します。

  1. ゲスト1名あたりの宿泊費(客室単価)を設定する
  2. 稼働率を予測する
  3. 客室単価と稼働率を掛けて、想定収入を算出する

収入予測を立てる際に注意すべきポイントは、予約率と稼働率です。民泊を含む宿泊業では、繁忙期と閑散期があり、地域ごとに利用者の動向が異なります。

例えば、海辺のマリンリゾートでは夏に利用者が多く、冬は減少します。一方で、スキーやスノーボードが盛んな雪国の民泊施設では、冬に利用者が増加し、夏は閑散とする傾向にあります。

このため、地域や季節による利用者数の変動を考慮し、近隣の民泊施設をリサーチした上で、適切な予約率と稼働率を設定することが重要です。立地ごとのシーズン特性を把握し、それに応じた収入予測を立てましょう。

施設が位置する地域の観光需要や価格変動を考慮し、最適な予測を行うためにも、周辺の民泊物件のデータを参考にすることが不可欠です。

収入予測を立てる際に注意すべきポイントは、予約率と稼働率です。民泊を含めた宿泊業では、繁忙期と閑散期があり、地域ごとに利用者の動向が異なります。

例えば、海辺のマリンリゾートでは夏に利用者が多く、冬は減少するでしょう。反対に、スキーやスノーボードが盛んな雪国の民泊施設では、冬に利用者が増加し、夏は閑散とすることが一般的です。

このため、地域や季節による利用者数の変動を考慮し、近隣の民泊物件をリサーチした上で、適切な予約率と稼働率を設定することが重要です。立地ごとのシーズン特性を把握し、それに応じた収入予測を立てましょう。

支出

支出については上述した「民泊開業後にかかる運転資金」の項目で挙げた以下の経費が、毎月・毎年いくらかかるかを計算します。

  • 清掃費
  • 水道光熱費
  • 消耗品費
  • 通信費
  • 広告宣伝費
  • 保険料
  • 固定資産税
  • 修繕費

ここでは、税金や保険料といった年1回の支払いやメンテナンス費用のように、不定期で支払う経費も含めて年間の支出を計算します。

収支シミュレーションを実施する

収入と支出の予測を立てたら、定期的に収支シミュレーションを実施しましょう。これにより、予期しないトラブルや需要の変動といった経営状況の変化にも迅速に対応できます。さらに、収益目標を明確にし、リスクを可視化できるというメリットもあります。

収支シミュレーションは複数の条件下で行うことが重要です。通常の収支予測に加え、以下の2パターンも考慮しましょう。

  • 楽観的なケース: 収入が想定以上に増え、支出が少ない場合
  • 悲観的なケース: 収入が減少し、予想外の支出が増える場合

こうしたシミュレーションを行うことで、リスク対策をより効果的に講じることができます。その結果をもとに戦略を再調整し、収益の最大化を図りましょう。

また、シミュレーション結果を活用し、事業戦略の最適化やコストの削減案を検討することも有効です。

将来起こりうるリスクも想定しておく

資金計画を立てる際は、将来起こりうるリスクも想定しておくことが必須です。

将来起こりうるリスクとして災害やパンデミック、景気変動などが挙げられます。自分たちではコントロールできない要因により来訪者が減り、収入が減少するかもしれません。このような事態による収入減少リスクも考慮したうえで、収支計画を立てましょう。

あわせて、突発的事項に備えた予備資金の確保も欠かせません。民泊を営んでいると、突発的に以下の事項が発生する可能性があります。

  • 修繕の発生
  • 利用者の減少による収入減少
  • 急な法改正による出費

これら急な出費が起きたときにも、すぐに費用を出せるよう、予備資金を確保しておきましょう。

民泊開業で資金を抑える6つの方法

民泊開業で資金を抑える6つの方法

民泊を開業するにあたり、多額の資金が必要になります。高額であるほど開業までのハードルは高くなるため、なるべく資金を抑える必要があります。

以下の方法を積極的に取り入れて、民泊開業の資金を抑えましょう。

  1. 備品や設備の費用を抑える
  2. できるところはDIYで改装する
  3. 改装が不要・少なく済む物件を選ぶ
  4. 事業者を選ぶ際は必ず相見積もりを取る
  5. 届出手続きを自分で行う
  6. 手数料が安い代行事業者やサイトを選ぶ

ひとつずつ解説します。

備品や設備の費用を抑える

民泊の開業資金を抑えるには、まず備品や設備の費用を見直しましょう。

備品は意外に多いため、少しずつ購入しているうちに費用がかさみがちです。コスト削減のために、以下の方法を検討してみてください。

  • 中古品の活用: フリマサイトや中古品販売店では、状態の良い家具・家電を安く入手できます。
  • 譲渡情報の収集: 民泊を撤退する事業者から格安で備品を譲ってもらえるケースがあります。
  • レンタルの活用: 家具や家電、Wi-Fiなどをレンタルすることで、初期費用を大幅に抑えられます。

できるところはDIYで改装する

DIYで改装できる部分は、できるかぎり自分で行うことも開業資金を抑えるポイントです。例えば、以下のような作業はDIYで対応しやすいでしょう。

  • 壁紙の張り替え・塗り替え
  • 簡単な棚やラックの製作

空き家の有効活用ができる民泊施設のDIYは、自治体でも推奨されている手法です。例えば、

  • 栃木県栃木市: DIYで空き家をリフォームし、民泊施設として活用する取り組みが行われました。
  • 鳥取県: 「空き家利活用事例集」に、DIYで改修した民泊施設の事例が紹介されています。

参照元:

DIYと民泊普及による空き家の低コスト利活用|国土交通省

暮らしを楽しむ工夫を盛り込んで 家族でDIYした“自然と共存する家”|鳥取県

改装が不要・少なく済む物件を選ぶ

DIYによるコストダウンも一案ですが、そもそも「改装が不要、もしくは大きな改装がほとんどいらない物件」を選ぶことも有効です。

物件選びの際には、以下の点に注意しましょう。

リフォームの必要性: 価格が安くても大規模リフォームが必要だと、結果的に費用が高くなることがあります。

築年数と宿泊費の関係: 古い物件は宿泊費を低めに設定せざるを得ないため、利益率が低くなる可能性があります。

こうしたリスクを避けるためにも、なるべく改修が少なくて済む物件を選び、トータルの費用を抑えることを検討しましょう。

事業者を選ぶ際は必ず相見積もりを取る

開業にあたり事業者に依頼する場合、必ず複数社から見積もりを取って、比較・検討すると効果的です。

相見積もりを取るメリット

  • コスト削減: 安価かつ高品質なサービスを提供する事業者を見つけやすくなります。
  • リスク回避: 1社だけで決めると、高額で質の低い業者に依頼してしまう可能性があります。

適切な比較材料を得るためにも、必ず相見積もりを行いましょう。

相見積もり取るべきタイミングの例としては、以下があります。

  • リフォームの依頼
  • 消防設備の設置
  • 清掃の委託
  • 家電や家具の配送費用

コンサルタントへの依頼を検討している際も同様です。複数のコンサルタントに話を聞き、もっとも費用対効果が高いところを選びましょう。

届出手続きを自分で行う

民泊の開業資金を抑える方法の一つに、届出手続きを自分で行うことが挙げられます。行政書士に依頼した場合は20万円程度かかるのに対し、自分で手続きを進めれば、旅館業営業許可書の手数料や登記申請費用などの最低限のコストで済みます。

旅館業営業許可書や登記申請の書類作成方法はインターネットでも紹介されているため、多少の手間はかかりますが、開業資金を抑えるために可能な範囲で自分で対応するのがおすすめです。

手数料が安い代行事業者やサイトを選ぶ

手数料が安い代行事業者や予約サイトを選ぶことも、開業資金やランニングコストを抑えるうえで重要なポイントです。

民泊運営代行事業者に運営を委託する場合の費用や、民泊予約サイトの掲載手数料は運営コストの一部として考慮しなければなりません。

特に、ほとんどの事業者は売上に応じた手数料を設定しているため、わずかな手数料率の違いが最終的な収益に大きく影響することもあります。コストを抑えるために、複数の事業者やサイトを比較し、最適なものを選びましょう。

下記は、代表的な民泊予約サイトの手数料一覧です。民泊予約サイトを決める際の参考にしてください。

予約サイト名手数料率(経営者側=ホストの負担分)
Airbnb(エアビーアンドビー)分散負担型:3%
固定型:14%~16%
Vrbo(バーボ)5%
Rakuten Oyado(旧:Vacation STAY)3%
STAY JAPAN無料※リクエスト予約のみ3%

これらの費用を抑えるだけで、開業時の資金繰りが円滑になるでしょう。

民泊開業で必要な資金を把握し無理なく民泊を開始しよう

民泊開業で必要な資金を把握し無理なく民泊を開始しよう

民泊で利益をあげるには、初期費用やランニングコストといった支出を抑え、利益率を高める工夫が欠かせません。しかし、ある程度の出費は避けられないため、融資や補助金・助成金の活用とあわせて、綿密な資金計画も大切です。

民泊を開業する際は、事前に必要な資金をしっかりと洗い出し、資金調達の方法を検討しましょう。資金面の不安から民泊経営を諦めている方もいるかもしれませんが、適切なローンを利用することで解決できる場合があります。

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※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

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