暦の上で秋になり、少しずつ日中の暑さもやわらぎ、朝晩には涼しい風を感じる頃になっても、「なんだか疲れが取れない」「頭が重い」「気分が晴れない」。そんな不調を感じたことはありませんか?もしかするとそれは、“秋バテ”のサインかもしれません。
本記事では、秋バテの原因やよくある症状をわかりやすく解説するとともに、今日からできる対策や予防法をご紹介します。身体も心も整えて、心地よい秋を元気に過ごすヒントを見つけていきましょう。
秋バテとは?気づきにくい季節の不調

秋になって涼しくなったのに、なんとなく身体がだるい、頭が重い…。それは「秋バテ」と呼ばれる、季節の変わり目に起こりやすい不調かもしれません。
ここからは、秋バテの特徴や主な症状についてわかりやすく解説します。
秋バテの定義と特徴
「秋バテ」とは、一般的に夏から秋にかけての気温差や気圧の変動に身体がうまく対応できず、自律神経が乱れることで起こる心身の不調を指します。
「秋バテ」という言葉は、医学的な正式疾患名ではありませんが、「秋」と「バテる(疲れる)」を組み合わせた造語で、多くの健康情報サイトや医療機関で紹介されています。
原因は、以下のような状況です。
これらが重なることで自律神経のバランスが崩れ、血行不良や疲労感、頭痛、不眠などの不定愁訴が現れます。
主な症状とは?(だるさ・頭痛・食欲不振・気分の落ち込みなど)
特に以下のような症状がよく報告されています。
- 倦怠感・慢性的な疲れやすさ
朝起きても疲れが取れない、身体全体が重だるいという感覚が続きます。 - 頭痛・肩こり・めまい・立ちくらみ
気温や気圧の変動で血行が滞りやすく、頭や首、肩に重さや痛みを感じることがあります。 - 食欲不振・胃腸の不調
冷たいものを選びがちな夏からの切り替えがうまくいかず、食欲が落ちたり胃が重く感じる人もいます。 - 気分の落ち込み・やる気の低下・集中力の低下
日照時間の減少やホルモンの変化(セロトニン減少など)がメンタル面にも影響し、鬱々とした気分や意欲の低下が見られます。
これらの症状は複数が重なって現れることが多く、「なんとなく調子が悪いけれど、具体的な原因がわからない」と感じる際は、秋バテの可能性があります。
夏バテとの違いとは?
秋バテと夏バテは症状が似ていますが、発生時期や原因に違いがあります。
- 症状の傾向の違い
両者とも「だるさ・食欲不振・頭痛・めまい」などが共通していますが、 秋バテでは「気分の落ち込みや集中力の低下」など精神面の影響がより強く出やすい傾向にあります。 - 原因となる気候や生活習慣の違い
夏バテは、7〜8月の高温多湿な環境や強い日差しによって体力が奪われることが主な原因です。
一方、秋バテは9月以降、涼しくなってくる時期に起こりやすく、夏に溜まった疲労に加え、冷房による身体の冷えや冷たい食べ物の影響、さらに朝晩と日中の急激な気温差などが重なって自律神経のバランスが崩れることが主な要因となります。
夏バテと秋バテは起因や症状に重なりがあるものの、秋バテは 季節の寒暖差や夏の疲れ残存による自律神経の乱れ によって引き起こされやすく、精神面の不調も伴いやすい点が特徴です。
なぜ秋バテが起こるの?3つの主な原因

「秋バテ」は、ただの“夏の疲れの続き”ではありません。 実は、秋特有の気候や生活環境の変化が、身体にさまざまな負担を与えているのです。
ここからは、秋バテが起こる3つの主な原因―気温差、自律神経の乱れ、披露の蓄積、ホルモンバランスの変化―について、わかりやすく解説します。
気温差と自律神経の乱れ
秋は朝晩と日中の温度差が大きくなるうえ、台風や秋雨によって気圧も変動しやすくなります。
このような急激な気候の変化に、身体が適応しようとしている間に 自律神経のバランスが崩れ、倦怠感や頭痛、めまいなどの不調が現れやすくなります。
自律神経は、活動を促す「交感神経」とリラックスさせる「副交感神経」の2つから成り、気温変化への調整機能を担っています。
しかし、急な温度変化が続くと、交感神経が過剰に働き疲労が蓄積されるため、だるさや不眠、頭の重さなどの症状につながるのです。
さらに、冷房や冷たい飲み物、夏の間の生活習慣による 冷えの影響 も、自律神経の乱れを助長することがあります。これにより秋になっても体温調節がうまくいかず、体調不良が続きやすくなります。
夏の疲労の蓄積
猛暑の夏を乗り切る中で、強い直射日光や高温多湿の環境にさらされると体力は徐々に消耗します。これらの 夏の疲れをそのまま秋に持ち越すことが、秋バテの大きな原因のひとつとされています。
- 冷房や冷たい飲食により冷えが蓄積しやすい
夏場に冷房の効いた室内と外気の温度差が大きい環境が続くと、内臓が冷えてしまい、秋になっても体温調節がうまく働かず、疲れや胃腸の不調に繋がります。 - 睡眠リズムや生活習慣の乱れが回復を妨げる
暑さや疲労による睡眠不足、食生活の偏り、運動不足など、夏に乱れた習慣をそのまま秋に持ち込むと、身体がリセットできず体調不良が継続します。 - 自律神経にさらなる負担がかかる
夏に交感神経が過剰に働いた状態が続くと、自律神経の疲労が蓄積し、秋になっても切り替え・調整がうまくいかず、長引く倦怠感や、やる気の低下を引き起こしやすくなります。
日照時間の減少とホルモンバランスの変化
秋になるにつれて日照時間が短くなることで、体内ではさまざまなホルモンや生体リズムの変動が起こり、秋バテを引き起こす大きな要因になります。
- セロトニンの減少
太陽光によって生成される「セロトニン」は、気持ちを安定させる“幸せホルモン”です。日照が減るとセロトニンの合成が低下し、気持ちが沈みやすく、脳の活動が鈍くなりやすくなります。 - メラトニン分泌の乱れ
セロトニンは睡眠ホルモン「メラトニン」の原料です。セロトン不足によりメラトニンの分泌リズムも乱れ、眠りの質が低下したり、眠気が続くことがあります。 - 体内時計の乱れと自律神経への影響
これらのホルモン変化により、体内時計が狂いやすくなり、睡眠や覚醒リズムが乱れ、自律神経のバランスが崩れやすくなります。結果として、疲労感やだるさ、集中力の低下につながります。
今日からできる秋バテ対策!身体と心を整える習慣を

秋バテは、ちょっとした生活の見直しや意識で、軽減・予防することができます。気温差や日照不足による体調の乱れは、自律神経やホルモンバランスの影響が大きいため、無理なく心身を整えることがポイントです。
ここからは、今日からすぐに取り入れられる秋バテ対策として、衣食住や習慣づくりの工夫をご紹介します。
室温・服装で体温調節をサポート
秋は朝晩と日中の気温差が大きく、身体が冷えやすくなるため、服装や室温の工夫が自律神経を安定させるうえで重要です。
たとえば、薄手のカーディガンやストール、ジャケットなど脱ぎ着しやすい衣服を活用することで、寒暖差に応じた柔軟な体温調整が可能になります。
また、室内外の温度差が大きすぎると自律神経が過剰に働き疲労を招くため、エアコンの設定温度は外気との差を5℃以内に抑えるのが理想的とされています。
さらに、首・手首・足首といった血管が皮膚の近くにある部位を重点的に温めることで、血行が促進され、効率よく冷えを防ぐことができます。こうした日常の小さな工夫が、秋バテ予防につながります。
旬の食材で栄養バランスを見直す
秋バテ対策には、栄養価の高い秋の旬食材を意識的に取り入れることが効果的です。旬の食材には、体調を整える栄養素が凝縮されています。
- きのこ類+豚肉などでビタミンB1を補う
しめじ・舞茸・しいたけなどの秋のキノコには、疲労回復や代謝促進に役立つ食物繊維とビタミンB群が豊富に含まれます。
これに豚肉など、エネルギー代謝をサポートする ビタミンB1豊富な食材を組み合わせることで、効率よく疲労回復につながります。 - 鮭などの魚や栗・かぼちゃでビタミンCやミネラル補給
秋鮭にはビタミンB6・B12が含まれ、栗やかぼちゃにはビタミンCやカリウムが豊富です。これらの栄養素は、免疫力アップや疲労感の軽減に効果的です。 - さつまいも・にんじんなどで胃腸を整える
さつまいも、にんじん、山いも、かぶなどは、胃腸を整える作用とともに、潤いを保つ栄養素を含み、秋の乾燥対策や食欲不振の改善に適しています。
湯船につかる・睡眠を整える
秋バテ対策として、入浴と睡眠リズムを整えることが重要です。
ぬるめのお湯(38〜40℃)に15〜30分ほどゆったり浸かることで副交感神経が働き、血行が促進され、リラックス効果や疲労回復が期待できます。
その後に深部体温が自然に下がることで、入眠しやすくなります。理想的なのは、就寝の1〜2時間前に入浴を済ませることです。
また、就寝直前のスマホやPC操作を控え、暖色の照明で落ち着いた環境づくりを心がけることで、睡眠ホルモン「メラトニン」の分泌を妨げず、寝つきがよくなります。
さらに、毎朝同じ時間に起床して朝日を浴びることで体内時計がリセットされ、自律神経のバランスも整いやすくなります。こうした入浴・睡眠・生活リズムの見直しが、秋バテをやわらげるカギとなります。
軽い運動やストレッチで巡りアップ
秋バテ対策として、きつい運動ではなく、ウォーキングやラジオ体操、ストレッチなど軽めの運動を日常に取り入れるのが効果的です。
これらを習慣化することで自律神経が整い、血行が促進され、良質な睡眠にもつながるとされています。
たとえば、1回20分程度のウォーキングや肩回しストレッチ、脚のスクワットなどでも、筋ポンプ作用によって血流が促され、疲労回復の助けになります。
特に、呼吸と動作にリズムを持たせた“リズム運動”(例:リズミカルなウォーキング)は、脳内のセロトニン分泌を促し、気分の安定や自律神経調整にも好影響があります。
まとめ:身体と心をいたわりながら、秋を心地よく

秋は気温や日照の変化が大きく、知らないうちに身体と心に負担がかかりやすい季節です。
「なんとなく不調」を見逃さず、生活リズムや食事、入浴、運動など、日々の習慣を少し見直すだけでも秋バテの予防につながります。
無理をせず、自分に合ったペースで身体と心を整えることが、秋を健やかに、心地よく過ごすための第一歩。
やさしく自分をいたわりながら、穏やかな秋の日々を楽しみましょう。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。