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不動産投資の物件選び完全ガイド…初心者・副業でもできる始め方と注意点

不動産投資の物件選び完全ガイド…初心者・副業でもできる始め方と注意点
伊豫田 誠(FP事務所ストラット代表・不動産投資専門ファイナンシャルプランナー)

執筆者

FP事務所ストラット代表・不動産投資専門ファイナンシャルプランナー

伊豫田 誠

1972年生まれ、愛知県出身。東証一部上場企業・外資系保険会社の勤務を経て、2005年に自動車販売修理店および保険代理店で独立する。その後、会社は年商2億・従業員数15名に成長し、個人でも不動産投資を行い経験や実績を重ね45歳のときにセミリタイヤ(FIRE)を達成する。2010年より「FP事務所ストラット」を開設し、会社員・公務員に向けて、最適な投資などを『不動産投資セミナー』を通して伝える活動を行っている。

不動産投資は、30〜40代の比較的高収入なビジネスパーソンのあいだで人気の副業です。「副業大家」として、働きながら安定収入を得たいというニーズが急増していますが、知識や経験が乏しいまま勢いで投資を始めた結果、かえって損をしてしまう人も少なくありません。

そこで、初心者が不動産投資を始める際に押さえておくべきポイント、失敗を避けるための考え方をみていきましょう。不動産投資専門FPの伊豫田誠氏が解説します。

初心者が知っておくべき「不動産投資のキホン」10カ条

初心者が知っておくべき「不動産投資のキホン」10カ条

副業としての不動産投資が注目される背景には、いくつかの時代的な変化があります。

ひとつは、副業解禁の流れで「会社の給料だけでは将来が不安」「空いた時間で収入を増やしたい」という声が増えたこと。時間を切り売りしない“仕組み型”の収入源として、不動産投資が脚光を浴びているようです。

もうひとつは、年金制度への不安です。少子高齢化が進み、年金制度の問題から「老後は年金だけでは暮らせない」ことが現実味を帯びてきました。このことから、老後の備えを自己責任で行う必要があるいま、不動産投資は年金代わりの手段として注目されています。

とはいえ、副業として不動産投資を始めるにあたっては、いくつか事前に理解しておくべき点があります。

1.会社の副業規定を確認する

まずは事前に、会社の副業規定を確認しましょう。不動産投資は「投資扱い」「副業扱い」と会社によって判断が分かれるため、就業規則のチェックが重要です。

※会社によっては「年間家賃収入」「戸数」「管理形態」等によって副業禁止と見なされる場合があるため、迷ったら人事や専門家に相談することを推奨します。

2.物件の種類と特徴を知る

区分マンション・戸建て・1棟アパートなど、それぞれのメリット・デメリットを把握し、自分に合った投資対象を選ぶようにしましょう。

3.収益の仕組みを理解する

家賃収入(インカムゲイン)と売却益(キャピタルゲイン)の違い、収支との関係など、収益構造の基本を知ることが重要です。

4.資金計画と融資の基礎を学ぶ

収益の仕組みを理解したら、次は自己資金の目安や融資の条件(金利・返済期間・頭金)、返済比率など、金融面の基礎知識を押さえましょう。

5.収支計算の基本を理解する

想定家賃・ローン返済額・管理費・修繕費・税金などを含めた、損益計算書やキャッシュフロー表でお金の流れを読む習慣を持ちましょう。

6.リスクとリターンのバランス感覚を養う

空室リスク・家賃下落・災害・金利上昇などといった主なリスクを把握し、回避策や対策方法、リスクが発生した場合にかかる費用を押さえておきましょう。

7.エリア選定の重要性を理解する

人口動態、賃貸需要、交通利便性、再開発など、立地が収益性や資産価値を大きく左右します。エリア選びの重要性を理解しておくことも、失敗を避けるうえで重要なポイントです。

8.税金の基礎知識を学ぶ

固定資産税・都市計画税・所得税・住民税、損益通算・減価償却など、投資にともなう基礎的な税務知識は必要不可欠です。

なお、「赤字だから節税になる」といった安易な損益通算狙いの投資は、税務調査や税制改正リスクもあるため、必ず最新の税制と専門家のアドバイスを確認してください。

9.管理運営の基本を知る

入居者募集・契約・退去対応・修繕などを行う管理会社の役割と、オーナーとしての管理責任を理解しておきましょう。

10.長期的な視点で考える

不動産投資はすぐに大きく儲かるものではないため、10~20年先を見据えた資産形成・年金対策として計画を立てることが重要です。

不動産投資は知識を持たずに始めると、見かけの数字に騙されて失敗するリスクが高まります。まずは基本構造をしっかりと理解し、「自分が本当に投資に向いているか」を見極めましょう。

「フルローン」がアダに… 30代H氏の失敗事例

「フルローン」がアダに… 30代H氏の失敗事例

先述のように、不動産投資は、知識不足や計画の甘さが思わぬ失敗につながることがあります。ここでは、会社員として働きながら不動産投資に挑戦した2人の事例をもとに、不動産投資の“落とし穴”をみていきましょう。

都内在住の30代会社員H氏は、「不動産投資は将来の年金対策になる」という営業マンの言葉に背中を押され、都内の築浅ワンルームマンションを1室約2,500万円で2室購入。総額5,000万円を、自己資金40万円のほぼフルローンで契約しました。

当初は月々の家賃収入が合計16万円、ローン返済や管理費・修繕積立金などの支出が18万円で、毎月2万円のマイナスキャッシュフロー。それでも、「この程度なら会社の給料から補填できる」と考え、将来の資産価値に期待していました。

しかし、1年後に状況は一変しました。急に結婚が決まり、第1子が誕生。一気に育児費用や生活費が急増し、この月2万円の赤字が家計にとって大きな痛手となってしまいました。

そこで、H氏は思い切って保有物件の売却を検討することに。しかし、査定額は1室あたり約2,200万円で、この時点でのローン残債が1室あたり2,350万円だったため、2室すべて売却すると300万円の損失が確定する計算になり、泣く泣く売却を断念しました。

そこで、やむを得ず生活費の捻出のために所有していたマイカーを売却。月4万円(ローン残債280万円)の自動車ローン返済をカットして、なんとか家計をやりくりする体制が整いました。

H氏「物件を買った当時は『老後まで持ち続けられるだろう』と安易に考えていました。でも、フルローンで購入したことで、予想以上に余裕がなくなってしまって……。いまは悪い意味で“手放せない資産”です。売却価格がローン残債を超えるまで身動きが取れません。正直、車を手放すことになるなんて思いませんでした……」

マイナスキャッシュフローはハイリスク…「フルローン」の決断は慎重に

毎月のマイナスキャッシュフローは、将来のリターンを見込んでも、家庭環境の変化で耐えられなくなることがあります。フルローンはレバレッジ効果が大きい反面、早期売却時に損失が出やすく、ある程度返済が進むまで身動きが取れません。

また、ローン返済が家計の大きな負担となるため、病気・転職・家族の事情など“想定外の生活変化”が起きた際には、最悪自己破産など深刻なリスクにつながることもあります。投資は単独で見るのではなく、ライフプラン全体に合わせて判断すべきです。

〈1棟アパート〉で失敗した40代K氏

〈1棟アパート〉で失敗した40代K氏

40代の会社員K氏は、「長期的に安定収入を得たい」と考え、都内通勤圏の郊外にある築20年の中古1棟アパートを購入。戸数は8戸、物件価格は6,800万円で、頭金として800万円を自己資金で賄い、6,000万円は金融機関から融資を受けました。

当初は、表面利回りは約9.1%(満室時で年間家賃収入620万円)と、悪くない条件。

購入時は満室で順調な滑り出しだったものの、3年目に同時に4部屋の退去が重なる事態が発生。しかも繁忙期(1~3月)を過ぎた5月のシーズンオフだったため、なかなか新しい入居者が決まらず空室は半年間も続きました。

焦ったK氏は、入居促進のために合計で40万円以上の広告料を支払いましたが、反応はいまひとつ。しびれを切らし、管理会社と賃貸仲介会社の両方を変更しました。

ところが、新たに契約した管理会社は、「家賃を1室あたり5,000円下げれば、すぐ決まります」と提案。K氏は渋々承諾しました。

結果として、この年の家賃収入は620万円から298万円に急減し、表面利回りは9.1%から4.4%に低下。金融機関へのローン返済額(年間約340万円)は変わらないため、キャッシュフローも大幅に悪化してしまいました。

K氏「1棟アパートは『収益性がいい投資』だと思っていたのですが、複数の退去が重なったときの怖さを痛感しました。あのとき空室対策の知識もなく、いわれるがまま広告を出したり、家賃を下げたりしたことを後悔しています」

1棟アパートは「空室リスク」に要注意

1棟アパートは空室リスクが1度に複数戸に及ぶことがあり、特に賃貸需要が低い時期(シーズンオフ)の退去は大打撃です。

管理会社や賃貸管理会社の能力にも差があり、家賃を下げると即時的には空室が埋まるものの、収益性は長期にわたり低下してしまいます。

また、管理会社や仲介会社の変更は「契約内容・手数料・管理体制」の確認が不可欠です。安易な変更や家賃引き下げは、長期的に資産価値を損ねるリスクがあるため、複数の専門家の意見を必ず取り入れるようにしてください。

ストレスをかけた実質利回りのシミュレーションを行ったうえで、投資すべきかどうかを見極めましょう。

“時間を切り売りしない”メリットを生かした運用を

“時間を切り売りしない”メリットを生かした運用を

不動産投資は時間を切り売りしない投資・副業として、本業を持つ会社員にとっても実現可能な資産形成手段です。とはいえ、安易に始めると大きく失敗するリスクがあります。

本記事で紹介したポイントを踏まえ、自身のライフプランに沿った長期的な視点を意識して、あなたが不動産投資の第一歩を踏み出せることを願っています。

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

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