不動産投資を始めたいけれど、空室リスクや収益の不安定さが気になる……そんな初心者におすすめなのが「ファミリー向けマンション投資」です。
家族世帯は一度入居すると比較的長く住む傾向があり、安定収入につながりやすいのが魅力です。一方で、事前に理解しておくべきリスクも存在します。
そこで今回、大家経験のある弁護士の山村暢彦氏が、ファミリー向けマンション投資の始め方から、失敗リスクを減らすためのポイントを解説します。
「ファミリー向けマンション」の特徴

不動産投資初心者にとって、もっとも不安なのは「空室リスク」と「家賃収入の変動」です。
その点、ファミリー向けマンションは、安定した賃貸需要が見込める投資対象として注目されています。この背景には、共働き世帯や子育て世帯の増加により、2LDK〜3LDKといった広めの間取りを求める家族層の根強いニーズがあります。
ファミリー層は、子どもの教育環境や生活利便性を重視して物件を選ぶ傾向があるため、一度気に入った物件に入居すれば、学区や保育園、地域コミュニティの関係から、簡単には退去しません。
これにより、平均入居期間が長期化し、空室リスクを抑えた安定収入につながるのが大きなメリットです。
単身者向けは1~2年程度で入退去が発生するケースが多いのに対し、ファミリー物件では5年以上の長期入居となる例も見られます(地域や物件の管理状況によって差あり)。
ファミリータイプは需給に強み
また最近では、賃貸市場全体で単身向け物件の供給が飽和気味なのに対し、ファミリータイプの供給は減少傾向にあります。そのため、築年数が経っていても管理状態がよく、立地が良好であれば、一定のニーズを見込むことが可能です。
一方、子育て世帯は生活音や使い方によって近隣トラブルの原因になることもあり、周辺住民との調和を意識した物件運用が求められます。
すなわち、単身者や高齢者層の多いマンションに、小さな子どもをもつファミリー層が入居すると、生活音などが原因でトラブルに発展する可能性があります。
その点も含めて、長期安定を狙うには、戦略的なエリア選定と入居者層の見極めが重要となります。ファミリー向けマンション投資は「しっかり仕込めば長く安心して運用できる」堅実な投資スタイルといえるでしょう。
選ばれる物件の「鉄則」

ファミリー向けマンション投資で成功するためには、物件の選び方が極めて重要です。特に初心者の大家は「駅から近いかどうか」だけでなく、子育て世帯が求める「生活環境全体」を見極める力が求められます。
まず、立地については「通勤・通学しやすい場所」「小中学校・保育園が近い」「公園や買い物施設が充実している」など、生活利便性と子育て支援が整っている地域が有力候補でしょう。治安のよさや、自治体による子育て支援策も、長期入居を促す要素のひとつです。
こうした点は、地元の入居者ニーズを把握する不動産仲介会社の意見を取り入れつつ、行政サイトや人口統計データ、「子育てしやすい街ランキング」の記事・ニュースなどを活用して客観的に判断するとよいでしょう。
次に間取りですが、2LDK~3LDKといった広めの部屋で、収納が多い・日当たりがよい・水回りが清潔感のある設計が好まれます。
築年数がやや古い物件でも、和室を洋室に変更したり、キッチンや洗面所を改修したりすることで競争力が高まります。ファミリー層を意識したリフォームで、月額家賃を5,000円〜1万円程度上乗せできた例もあります。
さらに、入居ターゲットの明確化も大切です。たとえば「小学生2人の4人家族」を想定する場合と、「未就学児を持つ若い夫婦」では、求める設備や周辺環境が異なります。
住民層のミスマッチによるトラブル(生活音や子どもの遊び声など)を防ぐためにも、属性をある程度統一する工夫が必要です。
家賃設定は「相場+付加価値」で勝負
家賃設定については、地域の相場だけでなく、競合物件の設備・築年数・空室状況も加味し、「相場+付加価値」で勝負する発想が重要です。
周辺相場より極端に高すぎると空室期間が延び、逆に安すぎると入居者の質を選びにくくなるリスクがあるため、慎重な設定が求められます。
特にファミリー向けとなると、ハザードマップの危険エリアから外れていることや、耐震性・環境基準などへの配慮など、安全面や環境適合性への留意も必要でしょう。
このように、「誰が・どのように住むか」を想定して、物件の選定からリフォーム、家賃設定まで一貫して考えることが、成功するための基本です。
漠然とした投資ではなく、現場ニーズに即した実践的な視点が結果を分けることになります。
考えることが多くて大変そうだと思うかもしれませんが、借りる人を具体的にイメージして、それに特化した物件にカスタマイズしていくのは、不動産賃貸業を行ううえで非常に重要だといえます。
ファミリー向けマンションのリスクとその対策

ファミリー向けマンション投資は、長期入居が期待できるという点で安定収入につながりやすい反面、一度トラブルが発生すると、他の入居者への波及や退去リスクにも直結するという側面があります。
安定経営を続けるためには、入居者との信頼関係づくりや、物件管理の仕組み化が欠かせません。
特に注意すべきは、「騒音トラブル」や「生活リズムの不一致」に起因する入居者間のクレームです。
ファミリー層は生活時間帯が一定していることが多い反面、小さな子どもの足音や泣き声などは、単身者や高齢者世帯と混在する環境ではトラブルになりがちです。
実際、単身者向け住戸とファミリー住戸を混在させた物件で、生活音のクレームが相次ぎ、結果的に空室が増えたという失敗事例もあります。
こうしたリスクを避けるには、物件のターゲットを「ファミリー層で統一」する方針が有効です。募集時に「子育て世帯歓迎」「同じ世帯属性が中心」といったメッセージを出すだけでも、入居者の意識や選定に一定の効果があります。
また、管理会社を通じて、入居前に「生活ルール」や「共有スペースの使い方」を丁寧に説明してもらうことで、入居後のトラブル予防につながります。
さらに、物件の設備や共用部の維持管理を怠らないことも重要です。ファミリー層は、単身者よりも「安心・安全・清潔感」に敏感です。外壁やエントランス、廊下などの清掃状態が悪ければ、内覧時の印象で敬遠されてしまうケースも少なくありません。
長期入居によって修繕のタイミングを逃すと、退去後に多額の原状回復費がかかることもあるため、年1回以上の点検や修繕計画の立案をルーチン化しておくことをおすすめします。
また、実際に受けた相談として「子どもが3階から物を投げている」という事例がありました。これは非常に危険であり、また証拠を残すことも一筋縄ではいきません。
そのケースでは、何度もこれが続き、当たると人が怪我をするような重たいものも投げられたということで、立退き要望を出して交渉中です。
もっとも、過去の判例をみても迷惑行為を理由とする立退きのハードルは高く、入居審査段階で、素行の悪くない家庭かなど、慎重に見極めたいところでしょう。
ファミリー向けマンション投資においては、中長期の視点で物件を育てていく感覚が欠かせません。「大家業=サービス業」という認識で、物件だけでなく人間関係にも丁寧に向き合うことが、結果として投資成功につながります。
「入居者選び」も、物件の価値を高める大事な要素
ファミリー向けマンションでは、入居者の具体的なニーズや利便性に目を向けて、物件の施設や入居者属性を絞ることが非常に重要な戦略です。
ファミリー向けマンションに投資する際は、物件だけでなく、「入居者同士」「入居した後のこと」まで含めて、「入居者の選定自体が物件価値に直結する」という視点をもって投資に取り組むことをおすすめします。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。