「もっと節約しなきゃ!」と思うと、食費や娯楽費の節約ばかりに目がいってしまいませんか?
しかし、毎月の家計を根本から見直したいなら、まず注目すべきは“固定費”です。スマホ代や保険料、サブスク、光熱費など、毎月決まって出ていく支出の見直しこそが、家計を劇的に改善する第一歩。しかも一度見直せば、無理なく長期的に節約効果が続くのも魅力です。
本記事では、「節約は苦手」「どこから手をつけていいか分からない」という初心者でもすぐ実践できる、固定費削減の具体的な方法をファイナンシャルプランナー・高山一恵さんに分かりやすく解説していただきます。今日から家計にゆとりを生み出す第一歩を踏み出しましょう。
なぜ固定費の見直しが家計改善のカギになるのか?

節約といえば、食費や日用品などの変動費に目が向きがちですが、実は家計改善のカギを握っているのは「固定費」です。毎月ほぼ同じ金額が引き落とされる支出は、一度見直すだけで、効果が長く続くのが最大のメリット。
しかも、我慢や節制を強いられることも少なく、“仕組み”を整えるだけで家計がスッと軽くなることもあります。
この章では、なぜ固定費の見直しが効果的なのか、その理由とメリットを分かりやすく解説します。
固定費とは?変動費との違いを知ろう
家計を見直すうえで、まず理解しておきたいのが「固定費」と「変動費」の違いです。固定費とは、毎月ほぼ一定額が必ず発生する支出のこと。
たとえば、住宅ローンや家賃、通信費(スマホ・ネット)、保険料、電気・ガスなどの光熱費、サブスクリプションサービスなどがこれにあたります。金額にあまり波がなく、自動的に口座から引き落とされるため、つい「当たり前の支出」として見逃されがちです。
一方の変動費は、月によって増減する支出。食費や日用品、外食費、交際費、交通費などが含まれます。日々の買い物の見直しは、節約の入口として手をつけやすい項目でもあります。
家計を圧迫する“気づきにくい出費”の正体
節約を始めるとき、多くの人が真っ先に手をつけるのが「食費」や「日用品」などの変動費。しかし、本当に家計を圧迫しているのは、目に見えにくい“固定費”のほうかもしれません。
毎月自動で引き落としされる固定費は、じっくり見直す機会が実は少ないもの。つい“仕方ない出費”としてスルーしてしまう方が多いのです。しかし、ここにメスを入れないと、家計はなかなか軽くなりません。
例えば、スマートフォンの契約内容を見直さずそのままになっていたり、昔加入した保険が今の生活に合っていないまま放置されていたり。あるいは、サブスクやクレジットカードの年会費など、「使っていないのに払っているもの」が意外と多いことに気づくはずです。
さらに、固定費は「気づきにくい」だけでなく、「手をつけるのが面倒くさいと思われがちな支出」でもあるといいます。
たとえば保険を見直したいと思っても、代理店に行ったり契約内容を調べるのが億劫で、そのままになってしまう方が多いですね。でも、一度見直してしまえば、効果がずっと続くのが固定節約の魅力なんです。
つまり、“手間をかける価値がある支出”こそ固定費。見えにくい出費にこそ目を向け、仕分けをすることで、今の生活に本当に必要な支出とそうでない支出がクリアになります。
一度の見直しで効果が続く「固定費削減」の魅力
固定費削減の大きな特徴は、「一度見直せば、何もしなくても節約効果が続く」という点です。まさに、手間をかけるだけの価値がある“コスパの良い節約”といえるでしょう。
変動費を毎月コツコツ節約するのは、どうしてもストレスが溜まりやすいですし、労力の割に成果も小さくなりがちです。
でも固定費は、一度きちんと見直してしまえば、あとは“放っておいても節約状態が続く”のがメリット。
例えばスマホや保険の契約変更や解約など、最初の手続きが面倒で挫折してしまう方が多いのですが、逆にその壁を越えさえすれば毎月の負担がぐっと軽くなるんです。手続きが済んだ後は、何もしなくてもずっと節約効果が続きますよ。
また、手帳やカレンダーに“固定費見直しの日”を決めてしまうのもおすすめです。あらかじめ予定として組み込んでおくことで、後回しにすることなく“やる日を決めて動く”きっかけになります。
まず見直すべき固定費4選

固定費と一口にいっても、見直しやすさや節約効果には差があります。
この章では、初心者でも取り組みやすく、効果の大きい「見直し優先度の高い4つの固定費」を紹介します。
スマホ・インターネット料金の見直しポイント
通信費は、固定費の中でも特に見直し効果が大きい項目のひとつ。特に、長年大手キャリアを使い続けている方は、格安プランに乗り換えるだけで月5,000円以上の削減が期待できることもあります。
通信費は意識すればすぐに下げられる“取り組みやすい固定費”です。大手キャリアだと月1万円近く払っていることもめずらしくありません。しかし、格安SIMに乗り換えるだけで、今までの半額以下になるケースもあります。
とはいえ、エリアによっては電波状況に不安があるなど、使い心地が気になる方もいるのも事実。通信の安定性を重視するなら、“大手キャリアのが出している格安プラン”という選択肢も視野に入れましょう。
また、自宅にWi-Fi環境がある場合は、スマホの通信量を抑えて、より低容量プランを選ぶ、という工夫もおすすめです。「格安スマホはハードルが高い」と感じる方でも、自分の使用状況を把握し、プランの見直しやデータ容量の最適化をするだけで、確実に“削れる固定費”の代表格といえます。
保険(生命保険・医療保険)の最適化
「保険の見直し」と聞くと、「難しそう」「面倒くさそう」と感じてしまう方も多いのではないでしょうか。ですが実は、保険料の削減こそ、固定費を減らすための大きなチャンス。しかも、月々の支払いが数千円〜1万円以上変わるケースも少なくありません。
保険は一度加入すると“なんとなくそのまま”になりやすい固定費の代表格。しかし、ライフステージや家族構成が変われば、必要な保障も変わります。
なので、定期的な見直しがとても大切なんです。実際には、「家族で保障が重複している」「特約で似たような保障に二重加入している」「古い保障内容のままで、今の医療制度に合っていない」などのケースもよく見られます。
また、最近では「入院5日目からしか保障されない保険」など、現代の医療事情に合わない内容のまま放置されている保険も多いとのこと。
今は“即日入院給付”や“通院保障付き”のものが主流です。働きながら治療する方も増えているので、時代に合った保障内容かどうかは重要なポイントです。
また、貯蓄と保障は切り分けて考えるのもポイント。貯蓄型の保険に頼りすぎず、保障は“掛け捨て”の方が割安になることも多いです。必要な保障だけを残して、あとは貯蓄や資産運用でカバーするというのが今のスタンダードです。
つまり、「入っていれば安心」ではなく、「必要な保障を必要な分だけ」がベスト。古い契約を見直すことで、今の生活にフィットした安心と家計のゆとりの両立が可能になります。
電気・ガスなどの光熱費を切り替えて節約
数年前の「電力・ガス自由化」により、今や私たちは自分に合った会社やプランを自由に選べるようになりました。とはいえ、「どこに変えればいいか分からない」「逆に高くなったらどうしよう」という不安から、見直しを後回しにしている方も多いのではないでしょうか。
光熱費は、家庭の人数やライフスタイルによって“お得になる会社”が変わってきます。たとえば“夜に電気を多く使う家庭”と“日中に在宅している家庭”では、選ぶべき料金プランも違います。
比較サイトを使ってみたら、“今の契約が実は一番安かった”っていうパターンもあるのです。
「変える=お得」とは限らないからこそ、一度条件を入力してシミュレーションしてみることが大切です。
また、さまざまな「セット割引」を活用するのもおすすめです。
例えば、電気とガスを同じ会社で契約すると、セット割が適用されて安くなるケースも多いです。特に都市ガス対応エリアにお住まいの方は、一度まとめて見直す価値があります。
自由化により、選択肢が増えた反面、「選ばないと損をする時代」にもなりました。放置している契約はないか? 条件は今の暮らしに合っているか? ほんの数分でできる見直しが、大きな節約につながる可能性もあるのです。
サブスク(定額サービス)の棚卸しと見直し方
動画配信、音楽、雑誌、美容、食品、ファッション……今や“サブスク(定額サービス)”は、私たちの暮らしにすっかり浸透しています。しかしその一方で、「使っていないのに払い続けている」サービスが、知らぬ間に家計を圧迫しているケースも少なくありません。
サブスクはそれぞれの月額は小さくても、積み重なるとかなりの金額になります。1つ500円〜1,000円程度でも、いくつも契約していれば、年間で数万円の支出になることもあります。
最近では、お花の定期便、パンやお菓子の詰め合わせ、洋服のレンタルなど、選択肢が多く興味本位で始めたものの、利用頻度が低いまま“惰性”で続けているケースも増えているともいわれています。
一方で、解約の手間や「まだ使うかも」といった心理的ハードルが高く、つい「見直しはまた今度」と放置してしまいがち。
まずは“何に入っているか”を全部書き出して、ジャンルごとに重複していないかを確認することが大切。たとえば、動画配信なら1つに絞る、化粧品のサブスクは“買い切り”に切り替える、という判断が必要です。
また、初回だけお得で“その後自動課金”というサブスクも多く、解約方法が分かりにくいものもあるため注意が必要です。最近は電話解約しかできないケースや、引き止められてスムーズに解約できないといったトラブルも増えているので注意しましょう。
固定費を減らすためのステップ

固定費を減らしたいと思っても、いきなり契約を見直したり、解約を進めたりするのはハードルが高く感じるもの。 大切なのは、焦らず段階を踏んで取り組むことです。
この章では、家計の現状を把握し、必要・不要を見極め、実際に見直しを進めていくための基本ステップを分かりやすく紹介します。
現状の固定費を書き出して「見える化」
「固定費を削減しよう」と思っても、そもそも今どんな支出があって、毎月いくらかかっているのかが分からない―。そんな状態では、どこから手をつけていいか判断できません。
まず最初にやるべきことは、「自分の家計の全体像を把握すること」=見える化です。
固定費というと、銀行やクレジットカードから“勝手に引き落とされている”というイメージもあり、何にいくら払っているかを把握していない方が本当に多いんです。しかし、書き出してみるとこんなに払ってたの?と驚くことが多い。
「見えていないからこそ、無意識に払い続けてしまう」ものなのです。まずはすべての固定費をリストアップして、金額と契約内容を“見える化”するところからスタートしましょう。家計簿アプリでも、紙に手書きでも、漏れなくリストアップできればOKです。
また、手取りの収入に対して固定費が5割を超えていたら、生活にかなり圧迫感がある状態かもしれません。まずはその比率を知ることが、次のアクションにつながります。
必要・不要を分ける「仕分けの視点」
固定費を「見える化」できたら、次は“本当に必要なものかどうか”を一つずつ仕分けるステップです。
ここで大切なのは、単に「使っている・使っていない」だけで判断するのではなく、“自分や家族にとって価値があるかどうか”という視点で見極めること。
もし同じカテゴリーで複数加入しているのであれば、優先順位をつけ、どれか1つに絞るだけでも節約効果があります。
例えば動画配信サイトが“毎日の癒やし”でモチベーションを保つための必需品なら無理にやめる必要はありません。大切なのは、“削りすぎてストレスにならないこと”です。
また、「カテゴリーで重複していないか」も要チェックポイントです。もし同じカテゴリーで複数加入しているのであれば、優先順位をつけ、どれか1つに絞るだけでも節約に効果があります。削るよりも、「整える」という意識で進めることが、無理のない家計見直しのポイントです。
固定費削減で月1万円のゆとりをつくるコツ

スマホや保険、サブスクなど身近な項目を上手に見直して、ムリなく月1万円を生み出す具体的なコツや考え方をご紹介します。
貯蓄にも、レジャーにも、将来の投資にもつながる一歩として、ぜひチェックしてみてください。
節約ストレスを感じずに続ける工夫
固定費の見直しに取り組むうえで忘れてはならないのが、「家族との共有と合意形成」です。
家計を管理する立場から「これは削れる」と判断しても、パートナーや子どもにとっては“大事な楽しみ”かもしれません。
節約はひとりで頑張っても、家族がそれに気づかずお金を使っていたら意味がないですよね。価値観のすり合わせが大切なんです。特に保険の見直しや通信費、サブスクの解約などは、家庭内で意見が分かれやすい項目です。
「最低限、何を守りたいのか」を家族と一緒に洗い出すのがおすすめです。
例えば、“死亡保障はこのくらい必要”と計算してみたり、“動画サブスクは1本だけ残そう”と決めたり。妥協点を探ることが、ストレスのない節約につながります。
また、家族が納得しやすいように「節約したらこんなメリットがある」と可視化するのもコツ。
1万円浮いたら、家族で月1回外食できるかもしれない。旅行に行けるかもしれない。“我慢”じゃなく“前向きな選択”として提案すると協力を得やすくなります。
節約を「制限」ではなく「チームで取り組むプロジェクト」として共有できたとき、固定費の見直しは“家族にとっての大きな転機”になります。
節約で生まれた余剰資金の「使い道」も考える
固定費を見直して、もし月に5,000円〜1万円のゆとりが生まれたら——。あなたはそのお金をどう使いますか?「ただ浮かせて終わり」ではなく、“何に使うか”を考えることが、節約を継続するモチベーションにもつながります。
節約で大切なのは、“節約したお金で何ができるか”を意識すること。たとえば浮いた1万円を将来のための投資に回してもいいし、家族での外食や旅行など、自分たちの楽しみに使うのも大事だと思います。
また、節約が苦手なご家庭こそ、“目的のある使い道”を持つことがカギ。浮いた分をそのまま投資に回すのももちろん良いのですが、“実感がない”と感じる方が多いのも事実。だからこそ、“節約したお金で楽しむ”という目標があると、節約もポジティブな行動になります。
そしてもう一つ大切なのは、「成功体験を積むこと」にあります。
“固定費の見直しができた”という手応えと、“その分でご褒美を楽しめた”という実感。この2つがそろうと、節約は“がんばった自分を肯定できる習慣”になりますよ。
まとめ:家計改善の第一歩は固定費の見直しから

家計を見直したい、貯金を増やしたい―。そう思ったとき、最初に取り組みたいのが「固定費の見直し」です。
スマホ代や保険料、光熱費、サブスクなど、毎月自動的に引き落とされているこれらの支出には、気づかないうちに家計を圧迫している“見えない無駄”が潜んでいることも少なくありません。
- 固定費は、少しの手間で大きな効果が続く「高コスパな節約」
- 節約とは削ることではなく、「自分にとって価値ある支出を選ぶこと」
- 小さな成功体験が、「続けたい気持ち」へとつながる
例えば、毎月1万円を削減できれば、1年で12万円のゆとりが生まれます。そのお金で旅行に行くもよし、将来のために積み立てるもよし。節約は、“我慢”ではなく、“暮らしを整える第一歩”です。
“やらなきゃ”ではなく、“やってみたら意外とラクだった”という声がとても多いのが固定費削減の魅力。一度やってみると、気持ちも家計もスッと軽くなりますよ。
物価上昇が続く今こそ、固定費の見直しに取り組む絶好のタイミング。
無理なく、でも確実に。未来の安心のために、“今日できるひとつ”から始めてみましょう。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。