雨の日の相棒ともいえる傘。けれど「折りたたみと長傘、どっちが便利?」「軽量タイプと耐風タイプ、どちらを選ぶべき?」と迷うも多いのではないでしょうか。
そこで今回は、“傘ソムリエ”として数多くの傘を見てきた土屋さんに用途別の選び方から、骨の本数・素材・開閉の仕組みで決まる「強さ」と「使いやすさ」、さらには雨の日をもっと快適にする+αの機能まで、傘選びのプロならではの視点で解説していただきました。
何年使ってますか?傘の買い替えサインと寿命

ご自身の傘の寿命について考えたことはありますか? 平均的な傘の寿命は2~3年といわれていますが、使い方や保管状況によっても大きく変わります。
土屋さんによれば、傘の買い替えを検討すべき3つのセルフチェックポイントがあります。以下のいずれかに当てはまる場合は、傘の寿命かもしれません。
□ 表生地の汚れがある
特に傘の折り目部分に、目立つ汚れが見られる場合、防水性が落ちている可能性があります。
□ 生地の内側に破れや、小さな穴(ピンホール)が開いている
傘を光に透かしてみましょう。もし小さな針穴のような光が見える場合、生地の破れから雨が漏れてしまいます。
□ 開閉がスムーズにできない
傘を開いたり閉じたりする際に、骨が曲がっていたり、開閉がスムーズに動かなかったりする場合、骨や部品が劣化しているサインです。
これらのうち、2つ以上当てはまる場合は買い替えを検討しましょう。特に開閉がスムーズにできない場合は、無理に使い続けると骨が折れたり、怪我につながる可能性もあるため、すぐに交換することをおすすめします。
丈夫な傘とは?その定義と見極めるための3つのポイント

「丈夫な傘」と聞いて、あなたはどんな傘を思い浮かべますか? 「風に強い」「長く使える」「生地が破れない」など、人によってその定義はさまざまです。
はじめに、傘ソムリエの土屋ひろゆきさんに教えていただいた、丈夫な傘を見極めるための3つのポイントをご紹介します。これらの基準を知ることで、あなたにぴったりの一本を見つけられるでしょう。
風速10~15m/s以上に耐えるのが目安
傘の強度を測る基準として、多くのメーカーは「風速何メートルに耐えられるか」を表示しています。
一般的に、風速10〜15m/s以上をクリアしている傘は「風に強い」とされます。気象庁によると、風速10〜15m/sは「人が風に向かって歩けない」「転倒する人も出る」ほどの強風。つまり、これに耐えられる傘は日常生活で十分な耐風性能を備えているといえるでしょう。
風速表示はあくまで“一方向からの風”を当てた試験の数値です。ビル風や乱流は想定外なので、目安として参考にしてくださいね。
骨数より素材・構造が重要に
以前は、骨の数が多いほど丈夫な傘とされていました。しかし、最近は素材や構造の進化によって、骨の本数が少なくても十分な強度を持つ傘が増えています。傘を選ぶ際は、単に骨の数を見るだけでなく、どんな素材がどの部分に使われているかを確認することが非常に重要です。
店頭やオンラインショップでは、必ず商品に付いている“下げ札”や商品ページをチェックしましょう。風速試験の有無、素材の明記など、信頼できる情報が書かれています。
「ひっくり返っても壊れない」台風仕様の考え方
傘の中でも「耐風仕様」と表記されるものがあります。これは、強風で傘がひっくり返っても風を受け流し骨が折れにくい仕様で、開閉することにより傘の形に戻る設計のものを指します。
見た目が壊れていないかだけでなく、開閉を繰り返して骨が折れていないかが試験の基準です。単に「風に強い」とうたっている商品と比べると、安心感が一段上です。
きれいに形を保ったまま強風に耐えるのではなく、壊れずに復帰できるかが重要です。台風時に使用したい傘の場合は特に、この視点で傘を選んでみてください。
傘の素材と価格帯の違い

傘の「丈夫さ」を決める大きな要素が素材です。同じデザインに見えても、骨の素材によって強度・軽さ・価格が大きく変わります。代表的な素材と特徴を整理してみましょう。
アルミ・スチール:安価だが耐久性は劣る
最も安価なのがアルミやスチール。軽量ですが、強度や耐久性はグラスファイバー(FRP)やカーボン(炭素繊維)に劣ります。とりあえずの1本や置き傘など、サブ用途向けに選ばれることが多い素材です。
グラスファイバー:しなりで風を受け流す主流素材
現在最も広く使われているのがグラスファイバー(FRP)です。柔軟性があり、強風をしなって受け流せるため、耐久性と価格のバランスに優れています。丈夫さと手ごろさを両立した、コストパフォーマンスの良い素材といえるでしょう。
カーボン:軽くて丈夫だが高価
カーボン(炭素繊維)は非常に軽く、強度・剛性ともに優れた最上位素材です。折りたたみ傘でも軽量ながらしっかりした耐風性を持っているため、「軽くて丈夫」を求める方に最適です。ただし、価格はグラスファイバーの約2倍が目安。コスト面ではややハードルが高い素材です。
ポリカーボネート:受け骨など部分的に活用
ポリカーボネートは柔らかさを生かして、受け骨など傘骨の一部に使われることが多い素材です。衝撃を吸収して骨を守る役割を果たします。紫外線や高温に弱いという弱点もあるため、補助的な使い方が基本です。
カーボンは理想的な素材ですが、高価なのが難点。長く使いたい、頻度が高いという方なら投資の価値はあります。
体格・用途に合わせたサイズと形の選び方

傘は「大きければ安心」と思いがちですが、実は身長や体格に合ったサイズを選ぶことが大切です。合わないサイズを使うと、かえって風に煽られて壊れやすくなります。
親骨長は身長で選ぶ
傘選びで重要な「親骨の長さ」。これは、傘のサイズを決定する最も大切な要素です。親骨とは、傘の中心(中棒)から外側へ放射状に伸び、生地を支える長い骨組みのことを指します。親骨は傘の形状や丈夫さを左右する、構造の中でも特に重要なパーツです。
一般的に、傘のサイズは「親骨長 × 2 = 身長」を目安にすると、雨から体をしっかり守れる最適なサイズが見つかります。
| 親骨サイズ | 身長の目安 | 使い勝手 |
|---|---|---|
| 50cm | 100~120cm | 幼児~小学生低学年向き |
| 53cm | 150~155cm | 肩幅が狭い方や小柄な女性向き |
| 55cm | 120~140cm | 小学生中学年~高学年 |
| 58cm | 155~160cm | 標準的な女性向き |
| 60cm | 160cm前後 | 標準的な男性や女性向き |
| 65cm | 170cm以上 | 大柄な男性、肩幅をしっかりカバー |
サイズ感のみで購入するのではなく、靴を試着するように、傘も“お試し”してみるのが大事。特にシニアや女性は、握りやすさもチェックしてください。荷物が多い方は、目安よりも親骨をワンサイズ長めのものを選ぶと、荷物が濡れにくくなるので安心です。
大きすぎる傘は風で煽られやすいリスクも
大きいほど濡れにくいので良いと思うかもしれませんが、サイズが大きすぎると風を受ける面積が増え、かえって壊れやすくなります。適正サイズを超える傘は「重い・煽られる・持ちにくい」と三重苦になりやすいので注意が必要です。
| 長傘 | 丈夫で開閉しやすく、風への耐久性も高い。日常使いにおすすめ |
| 折り畳み傘 | 出張や通勤など携帯性が重視される場面に便利。軽量タイプか耐風性重視か、用途に合わせて選ぶ |
| 逆さ傘 | 閉じたときに水滴が外に出にくい構造で、車や電車で便利。 |
傘を選ぶ際にはデザイン性だけでなく、用途を決めてから選ぶのがポイントです。どんなシーンで使いたいのかや、リュックまで濡らしたくないなら大きめ、荷物より軽さ重視なら小さめと、ご自身の生活スタイルに合わせて選びましょう。
お気に入りの傘を長く愛用したい!傘を長持ちさせるメンテナンス方法

どんなに良い傘でも、使い方や手入れ次第で寿命は大きく変わります。ここからは、大切な傘を長く使いたい方に、土屋さんおすすめの傘のメンテナンス法をご紹介します。
捻らずに水を切るのが鉄則
折り畳み傘は、使用後に傘をねじって水を切るのはNG。骨が歪んで破損の原因になります。正しい方法は、露先と呼ばれる傘の先端を持って横方向に軽く振るだけ。これで水滴を落とせます。
月1回のぬるま湯洗浄と陰干し
傘の表面を38〜40度程度のぬるま湯をシャワーで10秒ほどかけるだけで、表面のホコリや皮脂汚れが落ちます。その後は陰干しして完全に乾燥させましょう。湿ったまま畳むとカビや生地の劣化につながるので要注意です。
撥水性が落ちたら防水スプレーで補修
水を弾きにくくなったと感じたら、傘の表面に防水スプレーを散布し、撥水性を復活させましょう。生地の寿命を延ばす効果があります。
まとめ:自分に合った丈夫な傘で快適な毎日を

雨傘、日傘、晴雨兼用傘など、傘はもはや一年中欠かせない大切なパートナーです。価格やデザイン面という理由だけで選ぶのではなく、「風に強い」「長く使える」「扱いやすい」といったポイントを意識して選びましょう。
この記事でご紹介した選び方を参考に、あなたのライフスタイルにぴったりの「丈夫な一本」を見つけて、雨の日を気分良く過ごしてください。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。